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(短編集)
臨場
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臨場の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.32pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全104件 61~80 4/6ページ
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横山秀夫の短編はどれも名作ぞろいだが、中でも本書は「終身検死官」倉石義男という魅力的なキャラクターによって統一された、より完成度の高い作品集に仕上がっている。 冒頭の「赤い名刺」は、横山にしては珍しく殺害シーンによって幕を開ける。被害者が警察官の不倫相手という何やら不穏な展開に、読者はページをめくる手を止めることができない。伏線も周到であり、犯人が明らかになる結末では「やられた」という心地よい悔しさに満足させられること請け合いである。 登場人物のちょっとしたエピソードに重い人生が凝縮されているのも横山作品の魅力の一つである。例えば「赤い名刺」では被害者の女性が幼い頃、貧しさのため自殺した父親から誕生日に名刺53枚を使った手書きのトランプをプレゼントされたという泣かせるエピソードを、捜査官の口からさらりと語らせている。これだけで長編小説が書けるのではないかと思われるような魅力的な挿話を、惜しげもなく短編の小道具として使い捨ててしまうところに横山の底知れぬ力量がうかがわれる。 横山秀夫の作品は映画化・ドラマ化されることが多く、本作もドラマ化されているようだが、まず活字から入ることを個人的にはお薦めしたい。俳優のイメージという雑音を刷り込まれた後に読むのは勿体無い、先入観なしに横山の名人芸を堪能してほしい作品集である。 | ||||
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短い文章の中に、気付かれないように伏線を張るという短編推理小説の難しさをクリアする技術はきわめて高い。 細かな点であるが、17年蝉については1点だけ指摘(というか要望)がある。 16年も土の中にいる蝉は生物学においてもミステリーだ。16年という数字が極めて長くそれに付合える生物がいないというのは、この本に書かれている通りだが、もっとおもしろいのは17年が「素数」であることに着目した学説。 つまり、17年という周期が素数であるため、寄生虫や鳥等の外敵の周期と合いにくいというもの。学説が正しいか否か別にして面白い考え方であり、推理小説の題材にするのであれば、「素数」もファクターに入れれば完璧だったような気がする。 | ||||
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臨場とは、警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることを言う。ここでは、自殺なのか他殺なのかを判断する初動捜査のカギを握る場面である。そこで活躍するのが、終身検視官の異名を持つ倉石義男である。倉石義男は組織に与しない、己の道を貫く人物である。8編の短編を読んでいくと、言葉はぶっきらぼうなのだが、ところどころやさしさが垣間見られる姿は男らしいハードボイルドな感じがする。倉石の人間らしさがかえって際立たせる結果になっている。 8編の短編のなかでよかったのは、「鉢植えの女」が良かったですね。一ノ瀬が倉石から卒業する卒業試験としての役割を果たす話である。また、高嶋課長との決戦という側面もある。そういう2つの楽しみが感じられ、良かったです。 鉢植えの女以外の7編の短編の紹介をします。 赤い名刺:一ノ瀬とゆかりのつながりは? 眼前の密室:主人公の記者が密室を結果的に作り上げることになった。 餞:小松崎の餞となる話。ヒントは霧山郡 声:斎田梨緒の苦悩を上司が救えなかった 真夜中の調書:親子関係の在り方 黒星:倉石の優しさがいちばん感じられるかな。自殺だとわかっていたが、他殺だといって隈なく調査させた。2番目に好きな作品。 十七年蝉:クソガキを殺したがっている人間と十七年蝉に興味を持っているものの殺人。永嶋がカギを握る。 | ||||
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最近テレビでやってたのを見て買って読んだが、 とても面白い。横山秀夫さんはこういう短編ものがいいのではないかと思う。 テレビもよくできていたが、この本にないテレビ用の創作はやはり話のレベルが低い。 | ||||
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TVドラマ化という流れに、非常に納得のいく作品です。 この作品は、「超人」検視官である倉石検視官と彼の関わった事件を、周囲の警察関係者の目線から追っていく短編集なのですが、とにかくこの倉石検視官には抜群のスター性があり、かっこ良いです。ドラマは未見ですが、さぞかし絵になるキャラクターだな、と感じました。 そしてミステリー部分も、検視官という目線のみから、限られた情報量で事件をあっという間に読み解いてしまう倉石の超人ぶりが非常に心地よく、監察医の立場から変死の謎を解く「きらきらひかる」などの作品と若干の類似はあるものの、死体そのものだけでなく、事件現場そのものに最初に足を踏み入れる(しかも熟練した)検視官ならではの発見に基づく推理は、とても読み応えのあるものでした。 事件の周囲で繰り広げられる人間ドラマも見ごたえがあり、とても満足度の高い一冊でした。 | ||||
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“臨場”という言葉も知らなかった自分が、読後、そのドラマ性を勝手に膨らませています。 横山秀夫氏は、一般人に縁遠い“事件捜査”を、普遍性のある人間ドラマとして見せるのが 本当に上手いと、いつも感心させられます。 今回の短編集も文句なく楽しめました。 「赤い名刺」から「十七年蝉」の短編が八つ。 死体となってしまった人間と残された人間の生き様が、『終身検視官』を通して響いてきます。 倉石の人物造詣は、好き嫌いが分かれるところかもしれません。 ただ、ここまで強いキャラクターとしなければ、逆に、人間の弱さを見せて“揺れる” 他の登場人物を描けきれなかったとのではないかと想像します。 TVドラマ化していることを帯文で知りました。こちらも愉しみに見てみたいと思います。 | ||||
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孤高の検死官 倉石義男のものがたり。 全八編をとおして倉石本人の心情を描いたものはない。他者のくるおしいほどの情念の周辺に、淡々と存在しているだけだ。にもかかわらず、読み進めるうちに、倉石という人間がかたちづくられていく。事件の真相を、冷徹な視点で組み立てていく男が見せる優しさは、胸を熱くするものがある。私の拙い読書量では、このような主人公の描き方をする小説は初めて。 派手な事件があるわけでないけれど、この”臨場”感はたまらない。大人のミステリと思う。 TVドラマでどこまで表現できるかちょっと心配。 | ||||
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◆「赤い名刺」 検視官である一ノ瀬は、かつて自分と不倫関係だった 女性の変死体の検視を担当することになる。 女は一ノ瀬の名刺を持っており、それが発見されれば、 容疑者扱いされなかったとしても、組織内での信用は失ってしまう。 一ノ瀬は、誰よりも早く、現場で名刺を回収しようとするのだが……。 秘密が発覚することへの脅えと女への想いの間で揺れ動く一ノ瀬の内面の葛藤が、 事件の謎解きと並行して語られていくことで、終始サスペンスが途切れません。 ◆「眼前の密室」 張り込みをしていた新聞記者がポケベルで 急に呼び出され、現場から離れることに。 その際、玄関のドアノブの上に石粒を置いておくことで、 人の出入りの有無を後で確認できるようにしておいた。 17分後、現場に戻って確認すると、 石粒は変わらずドアノブの上に。 しかし、のちに家の中で死体が発見されて……。 密室の形成方法もユニークで興味深かったのですが、 社会派らしい犯行動機には、身につまされます。 ◆「鉢植えの女」 ジキタリスとサルビアの鉢植えにまつわる二つの事件。 ジキタリスの事件は《ダイイングメッセージ》もの、 そして、サルビアの事件はホワイダニットです。 結末での一ノ瀬とカリスマ検視官・倉石の 師弟愛が、じつに男臭く、いい感じです。 | ||||
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横山秀夫のものとなると、ハードルは高い。 だから、この作品も星を4つとした。 横山作品の最もいいところは、 作品自体が濃密で、読んでいても、 自分の息遣いさえ聞こえてきそうなところだと思う。 この「臨場」では、それが薄かったということである。 それと、横山作品にスーパーヒーローは不要ではないかと思うからである。 横山作品には、事実の一つ一つの積み重ねで全体像を築き上げるところに魅力を感じているが、主人公倉石は、一を見て十を知ってしまうタイプである。 かつ、それを上からずばりと言ってしまう。 それゆえ、作品が粗くなる。 スーパーヒーロー不要の理由である。 同じ短編集なら、「深追い」を横山作品の横綱として推薦する。 | ||||
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そこそこの短編集。買う前に一話読んでみて試してから買うべき。 ここの評価がまぁまぁだったので買ってみたが外れだった。 | ||||
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死体は語るというが、マニュアル通りには行かない現場で死体が訴える言葉をどれ程多く捉えられるのか。初動捜査の方向付けをするという意味では検視官は大変な重要な職業であるということを教えてくれる。ある種職人的な域に達している主人公の検視官の倉石は、警察という強大な機構にとって扱い人種であるが、多くの現場の若手刑事が先生と崇めるだけのプロである。ぶっきら棒な言動の中に垣間見える人間味溢れる性格が倉石を更に魅力ある存在に描いている。 | ||||
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終身検視官との異名をもつ男(倉石義男)を主役に展開される計8本の短編が所収された一書。「横山作品として新たな魅力を放つ作品集である」というのが、読み終えての率直な感想だ。捜査の最前線にいるのは刑事部である以上、初動捜査に「臨場」する検視官の役割がすべてを決める決定的な重要性を有していることに間違いはないが(本文にも、「検視という職務は今日も明日も明後日も、すべての現場において完璧な作業を行うことが当たり前のこととして要求される」(116頁)と記されてある)、それを中心とした短編集からどれほどの衝撃や感銘を受けるのか、読む前はいささか疑問であった。平板で退屈な内容か・・・、いやそうであるはずがなかった。なぜならば、横山秀夫が作者だからだ。検視にあたっては「現場」のすべてが重要である。人間離れした凄腕の検視官である倉石の洞察と嗅覚。人間離れした職人芸をもつ男であるがゆえの人間味溢れる情感。作品においては前者を強調し、後者をむしろ控え目に描き出すことによって、検視官倉石の「人間らしさ」・「人間くささ」がかえって際立っている。私は、それを「黒星」、「十七年蝉」という最後の2つの短編から強く感じた。「黒星」では、9年近い検視官生活で初の黒星をつけることになった倉石であるが、それは自殺原因の真相を徹底的に知るべく、あえて他殺であるという見立てを行った彼の職務への痛いほどの誇りを如実に示している。彼の言動によって、ある婦警の男性観が根本的に変わってしまったほどだ。「十七年蝉」もエンディングが何とも切ない。倉石の体の変調を綴った一文に、今後の横山作品で彼はどのような形で登場(いや「臨場」)するのか、大いに気になるところだ。横山秀夫は「人間」を知り尽くしていると思わせるに値する作品ばかりを書き続けている。人間心理のダイナミズムとリアリズム、彼の作品が多くの読者を惹き付ける主要因である。 | ||||
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異動を拒み、生涯一検死官に徹する倉石警視の連作短編集。検死、死因の向こうに、それぞれの人間模様が透けてみえる。 ストーリー的にやや強引な面があるが、警察小説として十分に楽しめる。横山節は健在。 | ||||
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警察において「臨場」とは、事件現場に臨んで、初動捜査に当たる事を指す。 つまり、事件がおきて間もない現場で何かを見つける眼力が必要とされる。 この物語の主人公である検視官・倉石が現場を見る眼の確かさは、多くの刑事たちを救い、 事件を解決に導いて来た。有能でありながら、大先輩のベテランにもタメ口、酒も女も 嫌いじゃないし…という、警察組織から見ると、扱いにくい男でもあるのだが そこが人間的には魅力だったりもする。 そんな倉石が、さまざまな事件現場から、被害者の人生、加害者の動機など 多くの情報を読み取っていくスリリングなプロセスも魅力だが、一見口が悪く ぶっきらぼうなところもある倉石が見せる不器用な優しさ、男っぽさにも 読んでいるうちに心惹かれる。横山さんの警察小説の連作短編で ハズレがないのはいつものことだが、「臨場」の場合、 倉石、というぶっとい縦糸が背骨のように物語を支え、 横糸としてさまざまな事件やその関係者、警察の同僚の 人生が織り込まれて、なんとも複雑で見飽きない模様を描き出している。 ミステリーとして最高レベルなのはいうまでもなく、「臨場」に限っては、 ハードボイルド小説としても見事な完成度だと思う。 今まで、同性に横山秀夫を勧めるのってどうかしら?と思っていたの ですが(私は女子です)このツンデレで男っぽい倉石さんが素敵なの!と ポイントを添えつつ、横山作品初心者の女子にお薦めしてみたく なってしまった1冊です。 | ||||
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「終身検視官」の異名を持つ捜査一課調査官・倉石義男。組織に与せず上からは疎まれ、私生活は破天荒で修羅場もくぐる。しかし死者からのメッセージを掴み取り、真実を見通す眼力の鋭さはもはや伝説化、信奉者も数多い。そんな倉石の活躍を描く連作短編集・・・だが、各編の主人公、中心人物は彼ではない。主人公は新聞記者や他の警察官、退職間際の刑事部長、恋に破れた婦警・・・倉石はあくまで他者の視点から描かれる。それがなんとも効いている。倉石から投げかけられる言葉、倉石の挙動、それに接して衝撃を受けたり感情を揺さぶられる主人公たちの姿を通して、彼のすごさが浮かび上がる。直接的に描かれるよりおそらく鮮明に。伝説の人物にふさわしい描かれ方だと思う。 倉石の魅力に加え、各編の主人公たちの内面の動き、謎解きももちろん堪能できる。ただし、他の警察官の見立てを覆しあっと驚く真実を導き出す検視官という設定だけに、いささか現実離れした展開も。とはいえ、十分に読み応えがある作品。哀感の滲む最終章が後を引く・・・伝説の人物は、本当に伝説になってしまうのか・・・ | ||||
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余人の及ばない卓越した技術を持ち、終身検視官と呼ばれる倉石警視。 どんな小さなことも見逃さない倉石の冷徹とも言える観察眼は、同時に被害者に注がれる優しい眼差しとなる。 短編集なので、一つ一つの作品は独立しているにもかかわらず、長編を読むような読み応えを感じさせるのは、 倉石の検死官としての筋の通った生き様が全編を通して強烈な印象を残すからにほかならない。 殺伐とした事件風景を描きながら、仄かな温もりさえ感じさせる秀逸な短編集である。 | ||||
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主人公は、終身検視官或いは校長と呼ばれる、「倉石警視」。 臨場とは、事件に臨み初期捜査に当たることを言います。 短編が8編収録されていますが、とても組織人とは思えない超越した言動にプラスし卓抜した分析力を持っている一方で、自分の優秀さをひけらかす訳でもなく、人間味溢れる「倉石」が実に魅力的に描かれています。 う〜ん、やられたと思う場面も何箇所も出てきます。 読み終えると心がすっきり晴れ渡ります。 | ||||
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短編を一冊にまとめたものであるが、長編に匹敵するくらい面白いし読み応えがある。型破りな警察官(検視官)が主役であるが、実に魅力的な人物として描かれている。 長編では殺伐としたストーリーであっても最後に心温まる情景が描かれるが、本書は短編にもかかわらず最後に心が暖かくなるストーリーが用意されているものが多い。 ページを追うごとに著者の倉石検視官に対する愛情が感じられる。 続編を期待したいが、最終話の流れからすると実現されそうにないのが残念である。 ドラマ化されるとのことで編集しました。 読後にドラマ化するなら。。。とイメージした俳優さんがいます。 寺島進さんがぴったりではないかと思っていましたが、テレビ朝日でドラマ化されるそうですが内野聖陽さん主演だそうです。少々残念ですが、興味のある方はお読みください。 冷酷かと思えば限りなく優しい。。。そんな素敵な検視官が主人公です。 | ||||
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「終身検視官」と呼ばれる男、倉石義男を主人公とした作品8編を収めた短編集。主人公の目ではなく、彼の周囲の人物の目を通じて物語が展開していくという手法で主人公の個性を際立たせていくのだが、相変わらず上手い。 コンスタントに作品を発表している人であり、登場人物の職業・職種が異なっていても物語の構成が似通っている傾向の作品(特に短篇)が多いので新鮮味はないのだが、それでも、読んでよかったとシミジミと満足できるのは、著者の作家としての実力なのだろう。 横山秀夫の小説は、毎日食べても飽きないゴハンとミソ汁。そんな気がする。 | ||||
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警察組織に詳しい(?)私も「検視官」知りませんでした。 確か昨年の秋に読んだので、忘れてしまったところもあるのですが、「時来たり」の話は圧巻でした。 また、「老人臭がなかった」や「孝行息子を持った母は自殺しない」などの(まだまだありましたが)セリフも泣かされました。 また、私も多少報道関係者と関わったことがあるので、地元新聞社の記者の「大新聞の記者は一発特ダネを当てて、本社に帰ればいいが、俺たちはずっとのつきあい」というところは、上毛新聞の記者だった作者ならではの文章ですね。(正確な文章は忘れているので多少の違いは大目にみてください。) | ||||
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