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憧れ写楽
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憧れ写楽の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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来年(2025年)のNHK大河ドラマが、蔦屋重三郎を主人公にするというので、その関連書がわんさか出版されている。私も、毎年この時期になると、流行に乗り遅れまいと、大河ドラマの主人公に関連した本を読むことにしている。今年は、谷津矢車の「蔦屋」(文春文庫)と、新刊の「憧れ写楽」(文藝春秋)の2作品を手に取った。 ところで、私は、これまで、江戸時代を舞台にして書かれた歴史小説を漫然と読んできた。例えば、池波正太郎「鬼平犯科帳」は、一時熱中して読んでいたのに、また中村吉右衛門のドラマをあれだけ好んで見ていたのに、どの時代を背景にして書かれているものなのかということを、全く考えたことがなかった。Wikipediaによれば、「長谷川平蔵が火付盗賊改方長官であったのは1787年(天明7年)から1795年(寛政7年)まで」。田沼意次が失脚し、松平定信の「寛政の改革」の時代である。蔦屋重三郎の活躍した時代に、まるまる重なっているのである。このことを知っただけで、凄い驚きだった。 「蔦屋」は、蔦屋重三郎の半生を上手に描いた佳品だ。作者は文庫版のあとがきで、蔦屋重三郎と丸屋小兵衛の「バディもの」という書き方をしているが、この二人のやりとりを軸に、喜多川歌麿、朋誠堂喜三二、宿屋飯盛、太田南畝、山東京伝、恋川春町を配して、狂歌集を出版した時代、定信の老中就任後の節倹を批判して戯作(草双紙)を手がけた時代、それに対する公儀の厳しい締め付け、恋川春町の自死、山東京伝の手鎖50日と蔦屋重三郎への罰金、そして写楽の役者絵を流行させた時代。これらが流れるように描かれている。この一冊を読むことで、私は、蔦屋重三郎とその時代を、大まかにわかった気になったし、それぞれの人物の造形もよいし、何よりも小説として小気味よい。評価は「最優秀の作品」である☆5つを付けたいと思うし、皆さんに推薦したい。なお、文庫化に際して、大幅に改稿されているそうだ。 一方、「憧れ写楽」は、ミステリー仕立てである。東洲斎写楽とされる猿楽師、斎藤十郎兵衛は、版元である鶴屋喜右衛門に対して、幾つかの写楽の作品は、自分が描いていないと告げる。「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」「市川男女蔵の奴一平」「二代目市川門之助の伊達与作」「市川蝦蔵の竹村定之進」「四代目岩井半四郎の重の井」「谷村虎蔵の鷲塚八平次」の6枚である。写楽は、実は二人いたのか?鶴屋は、当時、蔦屋に雇われていた曲亭馬琴、十偏舎一九、北斎宗理や、多くの役者らに真実を尋ねていく。私はミステリー読みではないので、こうした作品の出来不出来が、いま一つよくわかっていないところはあるが、最後の謎解きまでの布石は分かりにくかったし、探偵役の鶴屋の人物が魅力的でないこともあり、この謎解きが真実に迫っているのかもしれないが、今一つ、読書の興は乗らなかった。読んでいて、重かったのである。評価は標準点としての☆3つとした。 これは私の書いた66番目のレビューである。「蔦屋」は2024年11月15日読了。「憧れ写楽」は2024年11月22日読了。 | ||||
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