憧れ写楽
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写楽テーマの時代小説。かつては日本中を熱狂させた「写楽の正体」の謎もいまや遠い昔、学術的にはとっくに決着がついた形で阿波藩のお抱え能役者「斎藤十郎兵衛」でもう動かしようがないだろう……という令和の現在にそれでも写楽の謎解き小説を成り立たせるにはどうやってお話を作ったらいいのか?といったアプローチですっごい離れ業を決めてみせるのであります。この発想はなかった! ただ伏線があからさまでして、大方の読者は途中で(だいたいは岩井半四郎の証言で、遅くても歌川豊国の証言あたりで)トリック?に気づいてしまうような。版元・鶴屋喜右衛門といい喜多川歌麿といい、真相に繋がる手がかりを充分以上につかみながら、首謀者の蔦屋重三郎自身の口から明かされるまで見破れないままだったのはまことにじれったく、それとも、そんな風に感じるのはこちらが推理小説の読み過ぎでしょうか。鶴喜も歌麿も時代小説の登場人物で、推理小説のキャラクターじゃないからね。 ついでにもう一つ、実説よりも一般的なイメージを優先したのか、ところどころで設定が引っかかるのが残念なところ。鶴屋喜右衛門さん、あなた、写楽と同じ時期に勝川春英の役者大首絵を売り出していましたよね……。 そして、最も引っかかったのは作中の写楽のオリジナルは歌舞伎役者を適度に美化して描いているから魅力的で、跡を引き継いだ斎藤十郎兵衛の作は役者に似せ過ぎたから不評だった……というものですが、後世で写楽が高く評価されたのはそれこそ役者を美化せずに写実的に似顔を描いたという点にあったのでは。江戸の価値観で写楽の評価を位置づけようとしたら後世の評価を否定してしまったわけでして、いったいぜんたい著者さんがどこまで意識して書いたのか、気にかかるところであります。 | ||||
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来年(2025年)のNHK大河ドラマが、蔦屋重三郎を主人公にするというので、その関連書がわんさか出版されている。私も、毎年この時期になると、流行に乗り遅れまいと、大河ドラマの主人公に関連した本を読むことにしている。今年は、谷津矢車の「蔦屋」(文春文庫)と、新刊の「憧れ写楽」(文藝春秋)の2作品を手に取った。 ところで、私は、これまで、江戸時代を舞台にして書かれた歴史小説を漫然と読んできた。例えば、池波正太郎「鬼平犯科帳」は、一時熱中して読んでいたのに、また中村吉右衛門のドラマをあれだけ好んで見ていたのに、どの時代を背景にして書かれているものなのかということを、全く考えたことがなかった。Wikipediaによれば、「長谷川平蔵が火付盗賊改方長官であったのは1787年(天明7年)から1795年(寛政7年)まで」。田沼意次が失脚し、松平定信の「寛政の改革」の時代である。蔦屋重三郎の活躍した時代に、まるまる重なっているのである。このことを知っただけで、凄い驚きだった。 「蔦屋」は、蔦屋重三郎の半生を上手に描いた佳品だ。作者は文庫版のあとがきで、蔦屋重三郎と丸屋小兵衛の「バディもの」という書き方をしているが、この二人のやりとりを軸に、喜多川歌麿、朋誠堂喜三二、宿屋飯盛、太田南畝、山東京伝、恋川春町を配して、狂歌集を出版した時代、定信の老中就任後の節倹を批判して戯作(草双紙)を手がけた時代、それに対する公儀の厳しい締め付け、恋川春町の自死、山東京伝の手鎖50日と蔦屋重三郎への罰金、そして写楽の役者絵を流行させた時代。これらが流れるように描かれている。この一冊を読むことで、私は、蔦屋重三郎とその時代を、大まかにわかった気になったし、それぞれの人物の造形もよいし、何よりも小説として小気味よい。評価は「最優秀の作品」である☆5つを付けたいと思うし、皆さんに推薦したい。なお、文庫化に際して、大幅に改稿されているそうだ。 一方、「憧れ写楽」は、ミステリー仕立てである。東洲斎写楽とされる猿楽師、斎藤十郎兵衛は、版元である鶴屋喜右衛門に対して、幾つかの写楽の作品は、自分が描いていないと告げる。「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」「市川男女蔵の奴一平」「二代目市川門之助の伊達与作」「市川蝦蔵の竹村定之進」「四代目岩井半四郎の重の井」「谷村虎蔵の鷲塚八平次」の6枚である。写楽は、実は二人いたのか?鶴屋は、当時、蔦屋に雇われていた曲亭馬琴、十偏舎一九、北斎宗理や、多くの役者らに真実を尋ねていく。私はミステリー読みではないので、こうした作品の出来不出来が、いま一つよくわかっていないところはあるが、最後の謎解きまでの布石は分かりにくかったし、探偵役の鶴屋の人物が魅力的でないこともあり、この謎解きが真実に迫っているのかもしれないが、今一つ、読書の興は乗らなかった。読んでいて、重かったのである。評価は標準点としての☆3つとした。 これは私の書いた66番目のレビューである。「蔦屋」は2024年11月15日読了。「憧れ写楽」は2024年11月22日読了。 | ||||
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