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哀れなるものたち



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【この小説が収録されている参考書籍】
哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫 ク 7-1 epi111)

哀れなるものたちの評価: 3.88/5点 レビュー 16件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.88pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(4pt)

あの映画はなんだったんですか……

読み終わってからずっとこればっかり考えています。ミステリーの殺人事件の殺人シーンで終わってしまったような、原作を読んだあとはそんな印象さえあります。
映画を先に見てしまったがばっかりに、話の展開がスローテンポで読むのが苦痛に思え、なかなか読み終わるまでに時間がかかったのですが、進むにつれて「あー、このシーンね」「!?」「えっ?どういうこと!?」と衝撃の連続でした。多くの本の注釈はそれほど読むにあって重要性は高くありませんが、この本の注釈はそれ自体が物語の一部であり、必ず読まなければなりません。
『哀れなるものたち』を映画だけで知ってるつもりになってはならないと思いました。原作を読んで良かったです。
哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫 ク 7-1 epi111)Amazon書評・レビュー:哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫 ク 7-1 epi111)より
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No.10:
(5pt)

フランケンシュタインへの最高のオマージュ

著者メアリーの両親の理想主義を巧みに反映している点に感動。マルサスまで出てきて思想史の蘊蓄も完璧。映画があまりにも良かったので、原作にも手を出して大成功でした。
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No.9:
(5pt)

メビウスの輪の様な世界観・・

映画は「笑っちゃうほど、えげつなく、頭が痛くなるほど、面白かった」のです。たまらず、翌日アマゾンにて原作の文庫版を所望。この、とんでもなく不思議で、巧妙に仕掛けられた物語は、映画を先に観て良かったと思う程込み入って、読み終わっても、又もとに位置に戻される様な、並外れた力量を感じました。2019年に亡くなられたアラスター・グレイ氏に哀悼の意を表します。
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No.8:
(5pt)

手に入るなら単行本がオススメだけど…

単行本も文庫本も、中身なにも変わらないってあって(文庫本訳者あとがきには訳を少し変えたという文言あるらしいが)
わたしがamazonで取り寄せた文庫本には、あの書画やイタズラ書きのような走り書きは見当たらず、返品した。文庫本もそっくりそのまま内容同じ(訳じゃなくて挿絵や写真やら書画やら)なら、単行本売っ払っおうと思って購入した。
しかし、ざっと見たところ明らかに文庫本はそれらが抜けてて、ガックリきたので返品した。
どちらにせよ、話のあらすじ、内容の流れは変わらないのでオススメです!
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No.7:
(5pt)

文庫本も同じ

映画よりコクがあると感じる読者も少なくないように思います。なお、単行本は絶版ですが、文庫本も手書き文字やフォントの変化など、すべて単行本から移行されているようです。訳者の「あとがき」によれば、訳文も修正されているみたいですから、楽しむならむしろ文庫本の方がいいのかも。
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No.6:
(5pt)

一筋縄ではいかない一種の叙述ミステリ、または「ミステリにおいて最も警戒すべきは作者である」

三人の語り手(アラスター・グレイ、マッキャンドルズ、ヴィクトリア)という重層構造、物語の語り手としてのアラスター・グレイは作者ではなく作者が作者自身であると読者に思わせたい飽くまで物語の中の人物であるということ、敢えての「ヴィクトリアによる序文」を文末に異動させたという設定、なにもかもが罠に満ちている叙述ミステリと言ってもいいでしょう。

読み進めていけばこれが バーナード・ショウのピグマリオン (映画マイフェアレディの原作ですがもっと苦い)や メアリー・シェリーのフランケンシュタイン を意識した物語だなあ、とか「Born Sexy Yesterday(「無垢な心を宿したセクシー美女」という、映画 フィフス・エレメント のリー・ルーや スプラッシュ のマディソンみたいな「おっさんの夢」みたいな概念)のカリカチュアでもあるなあとか、それが読み取れる自分って知的で開明的、とか悦に入っていると最後に背負い投げをくらいます、ヴィクトリアに(というか真の作者に)。
そういう意味では、例えば「やっぱ差別はいかんよね」とか思いながら免許センターのナマケモノに笑っていいたらラストで自らの無自覚の差別に気付かされて衝撃を受けた ズートピア 」を思い出したり。

なお私の買った文庫版はちゃんと手書きのお手紙とか図版とか掲載されてますし、ベラ部分はフォントも変わってましたので版によるのかな?

そうそう、性を中心テーマのひとつに据えつつ無垢な女性が世界を知って、最後は世界を変える力を付けるお話という意味では 酒見賢一の後宮小説 との精神的姉妹とも言えそう。「哀れなるものたち」が1992年で「後宮小説」が1989年と、ほぼ同時代なのもたいへん興味深いです。
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No.5:
(4pt)

大人の遊び

わたしは真実しか言わないし、書きもしない、
嘘をつくとき以外は……。

クスクス。この作家、
完全に人を喰っている。

著者の親友である天才外科医は、
身投げした美女を、彼女が身ごもっていた子の脳を移植する手術で
蘇生させて調教し、理想の女性に改造することに成功したという。
美女の手記。無数のイラスト、学術データ、「証言」。巻末にも詳細な注釈。
著者だけじゃなく訳者までが一緒になって、信ぴょう性を盛り上げる。

大人の、手のこんだ遊びは楽しい。
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No.4:
(5pt)

製本の苦労も忍ばれるメタフィクションの傑作

まず、編者の序文でいかにしてこの本を作ったかの理由が簡潔にもっともらしく語られる(この辺はシャーロック・ホームズの贋作のようで面白い)。後ろの脚注も編者のものと説明される。
続いて、ある医師が若い頃体験したとされる奇怪な話が全体の3分の2を費やして詳述される(この辺はこの当時の伝奇小説を彷彿とさせる禍々しさで面白い)。
更に最後の3分の1で前の話に出てきた女性が先に書かれたことは全て嘘であると、暴露する(この辺はポー以降の合理的精神で書かれた感じで興味深い)。
しかし、最初の3分の2の話と後の3分の1の話が両方とも1人称で主観的に書かれていて、どちらが嘘でどちらが本当かは判然としない。これはどういうことか。
ここからは私の個人的解釈ですが、この当時の英国で自己中心的な考え、欺瞞、偽善、が蔓延りそれらが至って虚しい世界大戦に繋がっていったという編者を装う著者グレイの当時の英国への暗喩的批判ではないかと思いました。小説の構成を破壊するかの如き一番最後に出てくる34番目のやたらに長い脚注がその考えを補足してるようにも感じました(脚注が重要な意味を持つ所はナボコフの「青白い炎」の影響でしょうか)。
だから題名の「哀れなる者たち」とは戦争に突き進んだ当時の世界にたいする揶揄であり哀惜であるようにも思いました。
という解釈も哀れなる私の主観的なものなので100%信用しないでください。

夥しく挿入されるイラスト、凝った目次、写真等、版元や訳者の苦労が忍ばれます。最初は図書館から借りて済まそうかと思ってましたが、面白かったので買うことにします。2読3読できる面白さでこの内容でこの価格は安いと思いました。
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No.3:
(5pt)

素晴らしい仕掛けの数々

ありえないような設定から始まるのですが、その世界観に入り込めるかどうかが問題。
しかし、著者の力量で案外すんなり入れました。
注釈まですべてに仕掛けが施されていますので、見逃してはいけません。
ある種のフランケンシュタイン同様の物語です。
よみがえったベルはなんとも魅力的に感じます。
そして、彼女は「哀れなる者」なのです。
いや、登場人物が皆、ある意味「哀れなる者」なのです。
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No.2:
(4pt)

『騙り』の技法が冴えてます

本書は作者アラスター・グレイが入手した古い私家版を翻刻して世に出したという体裁になっている。ここで、すでに作者のたくらみは始まっている。このグレイが手にした医学博士アーチボルド・マッキャンドレス著「スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話」という本には、19世紀末に実在した医師の驚くべき半生が書かれていた。それは外科手術によって死から蘇った美女が登場する、もう一つのフランケンシュタインの物語だったのである。驚くべきは、詳細にわたる訳注によって浮かび上がってくる物語の信憑性だ。どこまでが真実で、どこからが虚構なのか?ただ単純に物語を楽しむだけなら、そんなことに関わらなくても十分楽しめるのだが、これだけ綿密な訳注が付加されていると、読み手としてはそれに思いを馳せないわけにはいかなくなってくる。それほどまでにグレイの手の込んだ術中にまんまとはまってしまうのである。物語自体もタイトルから汲み取れるように、登場人物すべての人が憂愁をまとっていて忘れがたい。ラストにいたって当の女性が書いた書簡も登場し、いままで読んできた物語が根底からひっくり返される構成も秀逸だ。しかし、これを鵜呑みにしてはいけないのだ。ここにも作者のたくらみがあるのである。いわば本書はポストモダンを代表する『騙り』の技法で語られた物語なのだ。作者自身による本書確立の過程を綴った『序文』から、付加された『批評的歴史的な注』まで徹頭徹尾この精神で貫かれた、大いなる疑惑の書なのである。
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No.1:
(4pt)

神の最も包括的な働きは動き。いろんなものをかき混ぜ動かして新しいものをつくるのだから

グレイが序文で自ら言ってるように面白い話が衒いなく語られればそれが何よりです。ただ商品の説明にある通りの内容(天才医師による創造物:クリーチャーはニンフォマニア?)と構成(グレイは序文と脚注を作成、きな臭い自家出版本とその作者の妻<クリーチャー?>の書簡をほぼ原文通りに編集)であれば策略と陥穽の臭いがプンプンします。でも読み終わった今その猜疑に満ちた読書態度は訳者も忠告されてるように誤っていると反省しています。

天才外科医は語ります。「(病理解剖重視の風潮は)多くの医者を、生命とは本質的に死んでいる何かにおける揺れや動きである、という思考に導くことになる。患者の身体を治療する彼らには、心つまり<命>に対する敬意など微塵もない」と。レンブラントの作品をいくら解体/分解して微細に観察したところで巨匠の技芸を学んだことにはならないということです。『哀れなるものたち』はグレイの技芸であり息づく生命/心の動きこそ主点なのです。虚実の些細にこだわる人は、偉大な名著『グレイの解剖学』からの挿絵で癒されて下さいということなのでしょうか。(その他にも図譜は豊富で楽しめますが、虚実にこだわらなければです。)グレイにとっては心のダイナミックな動きを通してひとつの社会の全体像を明らかにしていればそれは真実の書なのです。心の動きでは「慎重に隠された嫉妬」や「いくばくかの放縦な官能性の要素」などが描かれ「19世紀に蔓延したあらゆる病的なものの放つすえた臭い」や「ヴィクトリア朝趣味の強烈な臭み」「戦争の本質である自己卑下という流行病」を体感できるのです。ということでやはりグレイは「真実しか言わないし、書きもしない。嘘をつくとき以外は」という訳者のあとがきもまた真実であると確信しました。

そして奔放なヒロインが最後に求めるのは「暖かく揺らがないもの」ですと。泣くなりわめくなりしたい方にはお勧めです。
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