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急行霧島 それぞれの昭和
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急行霧島 それぞれの昭和の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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山本巧次の著作を読むのは、「留萌本線、最後の事件 トンネルの向こうは真っ白」(2020/4月)以来になります。 「留萌本線・・・」は、列車ハイジャックを描いた小体のスリラーでしたが、昭和への郷愁と共に「権力」に動じない友人たちを描いて心惹かれるものがありました。 本篇の時代は、1961年から62年(昭和36、7年)ぐらい。篇中、福岡県、香春で起こった炭鉱事故の後という記述があって、およそそのぐらいの頃なのか?舞台は、ほぼ全編、タイトルどおり(15:55、鹿児島発⇒翌18:20、東京着)「急行霧島」の車内。 主人公は父親に会うために東京へ向かう美里。二等車座席の向かいに座るは、お嬢さん風の前田靖子。そしてその車内で起こるいくつかの騒動が交錯しながら「急行霧島」は東京へと向かいます。伝説のスリ「千恵蔵」を追って乗り込む二人の公安職員。傷害犯を探して乗り込まざるを得なくなる二人の警察官。奮闘する車掌、鉄道職員。ノスタルジックなその頃の寝台急行の車内の構造、道具立てが巧みに利用されてサスペンスを醸し、飽きさせません。 とは言え、スリラーと言えるほどのドキドキがあるわけではなく、ここにはあの時代のもしかすると現在よりも遥かに平和だったこの国の雰囲気がまるで昭和の時代に見た松竹や大映の映画を見ているように進行していきます。よって、いくつのご都合主義が顔を出しますが、でもかつてのプログラム・ピクチャで許されていたことは今でも許されると私は思っています(笑)。自分が映画を創るつもりで登場人物たちに誰を当てはめるのか?とても興味深い。美里は「岸恵子」以前の今では覚えていない女優さんたちを思いましょう(笑)。 また、「留萌本線・・・」の炭鉱事故がここでも少しだけ引き継がれ、「水俣」が重要なファクターとしてこの時代の或る種の深刻さを垣間見せてくれたりもしますが、尽きるところ、この時代の鉄道旅の(決して裕福ではない)優雅さと縁が取り持つ人情がじんわりと描写されていて良い読書ができたなと言っておきたいと思います。 私は1970年代後半、何度か「寝台特急はやぶさ」に乗車した貴重な思い出がありますが、旅はやはり携帯電話もTikTokもないところから始まるのだと思います。現在においてもその時代時代の「手軽さ」を拒否した時、世界はダイナミックに変わる、ような気がします(笑)。 □「急行霧島 それぞれの昭和」(山本巧次 早川書房) 2023/5/26。 | ||||
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