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(短編集)

おいしい命 阿刀田高傑作短編集



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【この小説が収録されている参考書籍】
おいしい命 阿刀田高傑作短編集 (集英社文庫)

おいしい命 阿刀田高傑作短編集の評価: 2.67/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.67pt


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(5pt)

悪魔に自分の手相を売ってしまった大学生に起こったこと

『おいしい命――阿刀田高傑作短編集』(阿刀田高著、集英社文庫)に収められている『掌(てのひら)の哲学』は、何とも不思議な作品です。

「あの特徴のある姿が・・・黒いコートの下に長い尻尾を隠し、尻尾の先端に三角の突起がついている(悪魔の)姿が目撃されたのは、私の知る限りでは、昭和四十一年秋のこと、東京都千代田区、皇居に近い路地の一郭・・・。ローマ法王庁に報告すべきかどうか私は迷い続けている。ここにあえて報告する所以である。とはいえ私自身はほんの瞥見をしただけである。確かに見たと言うのは大学生のK・・・君である」。

そのころフランスから帰国し、都内の私立大学で教鞭を執りながら翻訳の仕事に励んでいた私に、教え子の学生が、「先生、助けてください、悪魔に遭いました。悪魔と取引きをしてしまいました」と助けを求めてきたのです、

「『うしろから来た男に呼ばれて・・・借金取りかと思ったけど、ちがいました』。『うん?』。『黒ずくめの男で・・・。私、グデングデンに酔ってましたけど、へんなことを言うんです』。『なんて?』。『あのう、あんた、いい手相をしている。<譲ってくれ>って』。『手相を譲ってくれって言ったのね?』。『はい。なんのことか、よくわかりませんでした。その男が言うには<さっき酒場で見た。チャーミングだから譲ってくれ。お礼に二十万円、どう>って』。『ふうん』。『二十万円あればずいぶん助かるなって思ったのはよく覚えています』。今よりはずっと物価の安かった頃のことだ。『それで君はその取引きに応じたわけだ?』。『そうです』。Kはブルッと身震いをした。思い出しても恐ろしいことがあったらしい」。

何ということでしょう。Kの両手から手相が消え、掌がノッペラボウになってしまったのです。「怖い・・・つまり昨夜の出来事がまぎれもない事実だったということ。黒い男がただものではなかったということ。多分、悪魔のようなもの・・・。そう言えば、うしろ姿になったとき、半コートのすそから紐のようなものが垂れていたのではなかったか。あのときは酔っていて気づかなかったけど、――あれは尻尾?――そうでなかった、とは言いきれない。いや、確かに尻尾だった。だとすれば、――本当にいるんだ――悪魔が・・・。なんと、それと取引きをしてしまったんだ」。

最後に意外な結末が、それも実存主義的な結末が待ち構えていようとは!
おいしい命 阿刀田高傑作短編集 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:おいしい命 阿刀田高傑作短編集 (集英社文庫)より
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