(短編集)
過去を運ぶ足
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ミステリーに軸足を置きながら怪奇幻想の味も加えて一作毎に違う趣向で楽しませてくれる著者の技が冴え渡る初期作品集です。著者は外国の作家で言えば怪奇幻想の味を取り入れているという面に於いてロバート・ブロックに近いのではないかなとふと思いましたね。本作は割合に現実味の濃い物語が主流を占めておりますので、著者のミステリー作家としての確かな実力がうかがい知れるのではないかと思いますね。 『自殺菌』本社への栄転が間近で幸福な男が、会社で会って話をした結婚前の女性が直後に屋上から投身自殺した奇妙な事件に遭遇する。今の日本の人口減少を加速させそうなこんな恐ろしい菌が現実にあったらと思うと怖すぎますね。『死亡診断書』寝た切り老人となった義母の介護に疲れた妻が夫と険悪な関係になるが、ある夜不意に夫が妻に自分が過去に犯した忌まわしい殺人の秘密を打ち明ける。強烈などんでん返しにしてやられ、厳しくも衝撃の結末は今度こそ真実の様ですね。『幸福を交換する男』恐妻家で切手蒐集が趣味の男が値打ち物の切手をガラクタと交換してくれる気前の良い人物と幸運にも巡り合うのだが・・・・。不自然に気前の良い男が最後に明かす凶悪な真の目的に愕然となりますね。『シーソーゲーム』女友達と川崎球場で大洋−巨人戦を観戦していた男が同じく女と二人連れで近くの席にいる男を見つけて不審を抱く。巧妙な殺人を暴く見事な推理とゲームの動きにつれて移り変わる男の心の動きが興味深く誠に意味深なタイトルだと思いますね。『幻聴マンション』住居のトラブル続きで悩んでいた夫婦が新たにマンションに移り住んで一息入れたと思いきや、またもや新手の災難に見舞われる。ノイローゼや不審な死と必ず不幸を招くマンションという現代の怪異譚ですね。『蠢く夜』夫ある身なのに時折どうにも血が騒いで行きずりの男との情事にのめり込んでしまう女が今夜もコーヒー店で見つけた包帯を巻いて肩を吊る男に魅かれてしまう。何て恐ろしいまさにブロックに負けない戦慄のラストですね。『天国に一番近いプール』マンションの屋上にあるプールで女の水死体が発見され最上階の部屋に一人いた夫に警察は疑惑を抱くが自他殺のどちらかを含め決め手に賭けるのだった。巧く考え抜かれた奇抜な殺人方法に感嘆したのと因果応報とは言えラストは凄まじい恐怖に襲われますね。『過去を運ぶ足』母と嫁が突然に遭遇した奇妙な謎の泥棒の襲撃事件に続いて今度は義父が急死と不幸続きの男が、義父の納棺に立ち会って漸く不幸な事件の真相に気づくのだった。うーん、これは派手さこそない物のれっきとした殺人で古典探偵ミステリーにはよくある動機ですね。結末は曖昧にボカされていますが、どう考えても平和的に解決するとは思えず、きっとこの先に待っているに違いない不幸を思うと暗澹たる気分になりますね。『氷のように冷たい女』真夏に怖い話を披露する会で新入りの青年が語ったのは冷凍庫のある倉庫に男と共に入った女が不可解にも消え去った事件だった。季節の風物詩を恐怖と結びつけるという真にえげつない殺人トリックでしたね。『断崖』三年の間に冷え切った関係になった夫婦が車に同乗し二人でドライブをしていたのだが・・・・薄々こんな感じの残酷な結末を予感していましたが案の定でしたね。『毒のある女』三ヶ月前にバーで意気投合し良い仲になった女を探し出して金を強請ろうと企んだ男だったが・・・・最後になって漸く題名の意味がじんわりと効いて来ますね。『ゴキブリ幻想』部屋にうようよいるゴキブリ退治を趣味にする男が悪夢を見て一夜明けると・・・・虚実が入り混じり結局これはやられっ放しのゴキブリの痛烈な復讐なのでしょうね。『記号の惨殺』某国立図書館に勤め多くの女達から怨まれていた嫌な男が職場の書庫で殺されているのが見つかる。冒頭から犯人のモノローグを挿入した本格ミステリーですが、殺人トリックよりも哀れな女の薄幸の人生が強く胸に迫りますね。『不在証明』見合い結婚から3年が過ぎ妻にほとほと愛想をつかしたのと職場のアルバイト女性に惚れた男は巧妙なアリバイ・トリックを仕掛けて予定通りに殺人を実行したのだが・・・・。何たる不運!刑事の推理が丸っきりの見当外れでも負けは負けで、(完全犯罪は難しいのですから)やはり悪事はするものじゃありませんね。『窪んだ壁』元教師の男の家に女子大の教え子の女が訪ねて来て姉の失踪とその夫の義兄への疑惑を相談するのだが・・・・著者の騙しのテクニックは素晴らしい切れ味で、一時的な悪の勝利の後味は良くないですが、でもやっぱり何時かは露見して悪は滅ぶだろうと思いたいですね。 | ||||
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若いころ読んで、記憶に残っていたこの本。 書店で探しても見つからず、あきらめかけていたので、また読めて 嬉しかったです。 旧い友達に会えたような気持ちです。 | ||||
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最後にゾクッとさせる15編 ある者は鬱積した感情の出口を求めて、また、ある者はマンネリ化してしまった日常に在りし日の興 奮が再び訪れることを求めて、計画を実行に移す。 見慣れた日常から起こりうる「死」の話が様々な形式で語られる。 特に夫婦間に生じる殺意については、生活臭のあるシチュエーションが「本気でそう思った瞬間があ るのではないだろうか?」と思えるほどリアルに表現されている。 表題作の「過去を運ぶ足」のほか、「氷のように冷たい女」「死亡診断書」が作家の上手さを感じる ことが出来て面白い。 パズルの最後のピースがはまる様な瞬間を味わえるだろう。 | ||||
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