(短編集)
壜詰の恋
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great book | ||||
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夢と現実の間の世界を描き決して叶わない幸福を求めて右往左往する人間の性を感じさせる短編小説の名手・阿刀田高の絶品作品集です。著者の作品には殆どと言って良い程にハッピー・エンドはなく暗い結末が多いのですが、でも人生に一攫千金の様な美味しい話がそうそう転がっている訳もなくて、真面目に生きる事が一番大切で決して道を誤らずにほどほどの幸せでよしとして満足すべきなのだろうなと思わせてくれている様な気もしますね。 『壜詰の恋』砂丘で出逢った絶世の美女は一夜を共にして翌朝すぐに香水ノワール・ノワールを残して男の前から去ってしまう。神秘性が失われると魅力も消え去ってしまうという男にとっては誠に残酷な結末ですね。『姉妹抄』姉と共にバー・パピヨンで働く杏子は昔家電メーカーに勤めていた頃に騙され捨てられた男にそっくりなタイプの客と出会う。姉妹とは言っても双生児ではなく性格は全く別物で、やや筋書きが出来すぎではありますが世のプレイボーイの不誠実な男はくれぐれもご用心ですね。『追われる男』借家暮らしで二人の子供が大きくなるにつれ手頃な家を欲しいと願うが金銭的に苦しむ男が偶然にも子供が車に轢き殺される現場に居合わせる。男にとっては降って湧いた幸運ですが(不正で得た幸せで気分爽快になるとは到底思えませんので)死の恐怖に脅かされる事で(真実はどうであれ)結果的には悪事に染まらずに済んで良かったと思うべきなのでしょうね。『冷たい関係』妻子ある男と不倫の逢瀬を重ねる女の家に爛れた関係を清算する様にと説得をしに友人の男が訪ねて来るのだが・・・・。題名と共に一行目の文章から騙しのトリックの伏線が張り巡らされていた事に最後に気づかされる巧妙な仕掛けですね。『長距離ランナー』十キロのマラソンが入社試験という過酷な試練に臨んだ男が苦しくなり亡き母の今際の言葉にすがって「母さん、助けて」と呟くと次の瞬間不思議にも痛みが消えて気力が湧き上がるのだった。母に助けてもらえるのは非情にも3回だけで、不甲斐ないマザコン男とは言え最後の残酷な結末には憐憫の情が込み上げて来ますね。『夫婦の休日』妻は最初の子供を流産で失った事実を認めようとせず、実際にはいない架空の息子を遊園地に連れて行ってと夫にせがむのだった。そんな異常な夫婦生活を逃れて夫が不倫相手の女との密会に向かったアパートで待つ物とは・・・・まさかの戦慄の結末に誰もがぞっとするでしょう。『セールスマン講座』経営コンサルタントの男が突然の雨に降られ通りかかった車に乗っていた経営セミナーの聴講生の男に助けられる。心の中で相手を完全に馬鹿にし切っていた男が迎える最悪の運命とは?相当に荒っぽい結末ですので心臓の弱い方はご用心下さいね。『夢の街』久々に故郷の近くの街を仕事で訪れた男は昔見た不吉な悪夢を思い出す。それは男が夢の中で報酬と共に殺人を依頼され絞殺した赤の他人が目覚めると実際に殺されていて枕元には現金が置かれているという信じられない正夢だった。合理的に真相が判明する様なミステリーではないですが、最後のあまりの無気味な恐ろしさに震えが止まらなくなりますね。『灰色の声』人が話す声に得体の知れない弱弱しさを感じると、その人がすぐに死んでしまうという奇妙な知覚能力を持つ男が或る日朝から出会う人全ての声に弱さを感じて「もしや大災害では?」と恐怖に襲われる。何とも皮肉で残酷な結末に常人と異なる超能力者の悲劇を感じますね。『賢者の贈り物』男の元へ差出人不明で手袋、ネクタイ、若い女の写真が次々に届き、やがて鍵と地図が贈られて来て男は導かれる様にそのマンションへと向かったのだが・・・・。オー・ヘンリーの同題の名作とは似ても似つかない奇妙な味の殺人ミステリーで、やや掟破りですが誰もが騙される快感に心地良く酔わされる事でしょう。『魔除け』女性客が落とした印鑑を見つけた若い歯科技工士の女が患者の家に届けに来て夫と出会ったのをきっかけに不倫の恋が始まる。何ともえげつない犯罪かもと思わせておいての痛快などんでん返しに思わず苦笑いさせられる鮮やかなオチですね。 | ||||
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11の短編が収められています。どれも人間のはかなさや哀しさや、時にずるさやあくどさを、ちらっと垣間見せてくれます。 少々ブラックなものを好むのでしたら、「冷たい関係」「セールスマン講座」「賢者の贈り物」といったあたりが良いかもしれません。 「夫婦の休日」は、何故か妙に悲しくなります。 | ||||
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