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(短編集)
有栖川有栖選 必読! Selection3 突然の明日
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有栖川有栖選 必読! Selection3 突然の明日の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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平凡な家庭が突然壊れてしまった事件。そしてそこから立ち上がる親子の描き方が絶妙に上手いと思いながら読んでいたのだが、真相まで読んで息をのんだ。突然の明日というのはそういうことなのか。 | ||||
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有栖川セレクションの三冊目だ。 夫婦と二男二女の幸福な家庭は、ある事件で崩壊した。衛生監視員の長男がマンションの屋上から飛び降り自殺したのだ。同じマンションの一室で調査中の男が毒殺されていた。状況は殺人のあと後悔のあまり自殺したように思える。その前日に長男は群衆の中で知人に会ったのに消えてしまったという奇妙な経験をしていた。消えた女は事件に関係があるのか。次女と父親は、真相を求めて調査を開始した。 サスペンスに加えて冒頭の謎解きが絡む贅沢な味わいである。意外な真相が少しづつあきらかになっていく過程が読みどころだ。不自然な部分があるし、バランスが悪いのだが読んでいる最中は気にならない。 | ||||
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この『有栖川有栖選 必読! (笹沢左保) Selection』シリーズは、有栖川有栖による巻頭の “Introduction” と巻末の ”Closing” で本編を挟む親切構成。…で、有栖川有栖の口上が実に「簡にして要なり、約(つづま)やかにして深し」(©弘法大師) を地で行くもので、素晴らしい。 よい書き手はよい読み手でもあるようだ。先年創元推理文庫で復刊した『有栖川有栖の密室大図鑑』は楽しい読み物だったが、こういうのもいいね。作品本編や笹沢左保に全然触れないのは、クォリティが保証付きだからであって、他意はない。未読の方は安心して手にお取り下さい。 | ||||
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講談社文庫版を底本とする、待望の復刊。 「後期クイーン的問題」など語られていなかった1963年の作品であるのに、その問題をクリアするべく書かれたとしか思えない、先駆的傑作である。 有栖川有栖の前説から、本文へ入る流れも良い。 講談社文庫版に書いたレビューを、もう一度書く。 保健所に所属する食品衛生監視員の男が、「銀座4丁目の交差点で元恋人の女性を見かけたので声をかけようとしたら、相手が突然いなくなった」と家族に話した翌日、不審な死に方をする。 警察は、男が仕事上のトラブルから料亭のオーナーを毒殺し、自分も発作的に自殺したと断定する。 男の家族は、長男が殺人事件を起こした家だと後ろ指を指されてしまう。 父親は勤務先を退職せざるを得なくなり、結婚間近だった長女は婚約を破棄され、ショックで自殺未遂までしでかす。次男はグレて不良の仲間に入ってしまう。 勤務先をやめて時間の出来た父親と、もともと家事手伝いだった次女とが、事件の真犯人は元恋人の女ではないかと疑いを抱き、素人調査を進める。 あくまでも素人捜査なので状況証拠を積み重ねていくしかないのだが、その積み重ねの過程、推論の組み立て方が、緻密に描かれている。 物語の冒頭部から、さりげなく縦横に張られていた伏線を回収した時、恐るべき非情の犯人像が浮かび上がってくる。 だが、これはあくまでも推論に過ぎない。 物語は、組み立てられた推論と、それが示す真犯人とを警察に話に行こうとする場面で終わり、その推論が正しかったのかどうか、犯人が逮捕されたのかどうかは、全く描いていない。 なぜなら、家族にとっては、たとえ真犯人が逮捕されたところで、濡れ衣を着せられ殺された長男が帰ってくるわけでもなく、父親が勤務先に復職できるわけでも、長女が元の婚約者と結婚できるわけでもない。 失ったものは取り返しがつかない。 犯人の逮捕など、どうでも良いことなのだ。 自分たちが、長男は真犯人ではなかったと納得できれば良いのである。 結末において、物語の冒頭で示された、交差点での人間消失の謎も解明される。 むろん、人間が突然、消えるわけがない。消えたと錯覚する心理的盲点があったのだ。 その心理の動きがどのようなものであったかに気付いた時、父親も次女も、長男は、自分たちが思い抱いていた通りの職務熱心で真面目な男であり、真犯人ではありえないと確信する。 その確信を、人生を立て直す契機にしようとする。 本人たちにとっては、それで十分なのである。 たくみに張られた伏線の回収と推論の組み立て方の見事さ。しかしその推論が正しいかどうかは根本的な問題ではない。 主人公たちが現実とどう向き合い、どう折り合って生きていくかが重要なのだ。 笹沢左保のミステリの中でも最高傑作の一つである。 | ||||
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