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(短編集)

一茶



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【この小説が収録されている参考書籍】
白き瓶/一茶 藤沢周平全集 第八巻
新装版 一茶 (文春文庫)

一茶の評価: 4.00/5点 レビュー 33件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全33件 21~33 2/2ページ
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No.13:
(4pt)

埋もれた人の最期

一茶は生きている間に成功しなかった。時流に乗った俳人がちやほらされ、一茶はとうとう江戸から田舎へ戻らざるを得なかった。
この屈辱、悔しさはこの小説で藤沢周平が書いたよりも、もっとも激しいものであったに違いない。
一茶という男は俗物中の俗物である、とぼくは思う。名声欲、性欲、金銭欲、どれも凄まじい。そこにはもちろん、作句欲もある。生涯二万句というのは凄まじい狂気にも似た情熱なくしてありえない。凄まじい、というのは良くも悪くも才能なのだ。
この小説では、その作句欲があまり伝わってこない。あらゆることを、自分の私生活も、全部句にしてやろうと思わなければ二万句も作れないだろう。飢えている時も、財産をぶんどってやろうと目論んでいる時も、性欲が強まった時でも、一茶は常に句を考えていたのではないか。
しかし、それでもその努力は報われなかった。現実は厳しい。
でも一茶の生き方は、ぼくに重要なことを教えてくれた。一茶の人生には作句というすがれるものがあった。それが度重なる困難にみまわれても、彼の支えになった。成功するかどうかが問題なのではない、人生をいかに生ききるか、それこそが問題なのだ。
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No.12:
(4pt)

有り難い

一茶の生誕地は訪ねたが、この度藤沢周平作「一茶」が映画化されるとのことで購入。文庫本は字が小さく読みずらいので、単行本を探した結果、古本の単行本が入手できた。20年位前は東京・神保町の古本屋街を捜し歩いたものだか、なかなか目的の本を探し出すのに苦労した。今日アマゾンで探すことが出来るという便利な時代となり、ありがたい。☆が一つすくないのは、字が期待に反して文庫本程度の大きさであったこと。梱包は丁寧であった。
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No.11:
(5pt)

苦しみの一茶

一茶の生涯をテ-マにした小説は、他に田辺聖子著「ひねくれ一茶」がありますが、どちらもメモ魔の一茶の記録をもとに描かれていて、おもしろいです。
田辺著の一茶は明るく、こちらは暗く、生活苦を前面に押し出しています。一茶を知る上ではこの二作品を読むことが必要かと思います。
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No.10:
(4pt)

面白い!

俳人一茶の人となりに興味津々。俳句や川柳が生れた経緯が実に面白い。これかにの展開が楽しみです。
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No.9:
(3pt)

藤沢周平がみた一茶

お勧めです。幾つかの類似作品を読みましたが、類書との違いは、一茶の俳諧としてデビュー前の生活と俳句との接触の発端が想像されています。そして一茶の西国での放浪が詳しく語れています。ただ全体のトーンは、田辺聖子や井上ひさしの作品とは異なり、一貫して暗く重いものです。この作品には、場面として房総や西国が登場しても、太陽の光が注ぐことはないようです。
これは藤沢周平がとらえた一茶の人生なのです。というわけで著者の人生が、一茶の生涯の解釈に強く投影されているのかもしれません。それは田舎の出身者の何の後ろ盾も持たない人物の上京と挫折の一生です。業俳としての生活もそのネガの部分に必然的に焦点が置かれます。一茶の信濃への帰還とその後の生活の解釈にもこの視角が強く投影されます。露光のように行き倒れにもなりかねない江戸での後ろ盾のない業俳としての生活からの脱出そして脱出後の生活の基盤となるホームグラウンドの信濃での確保、その観点から遺産相続の争いの激しさが位置付けられます。
ここでは江戸での様々な生活上、芸術上の袋小路と信濃へ都落ちした一茶の俳人としてのdead endとしての状況が強調されます。ただこの部分は類書では疑問が提示されている部分でもあります。そして一茶の最後の部分も、ある一点をのぞいては重く描写されていきます。これはあたかも信濃の気候を描言いているようです。
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No.8:
(4pt)

納得できる価格と状態でした。

以前から読みたいと思っていた本が安価に入手できました。これからもよろしくお願いします。
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No.7:
(4pt)

俗にまみれ俳諧をもって俗出ずる

貧乏句が多いのか―秋の風乞食が我を見くらぶる
一茶は、俗にまみれて、俳諧を詠んでいる。

 芭蕉は、高く心を悟りて俗に帰すべし、と教える。そして一茶の師匠成美も「あなたはご自分の肉声を出してきた…、独自の句境が開けるか、俗に堕ちてそれだけで終わるか」と話す。はたして、いずれなのだろうか。

 読後、一茶の素朴な作風が、したたかに変わって見えてくる。
たとえば、彼は人間が鬱陶しくなると、物言わぬ動物や草木に語りかけた。
     痩蛙まけるな一茶是に有り
義弟と遺産争いで、しのぎを削り、家を得て詠んでいる。
     是がまあついの棲か雪五尺

 一茶は俳諧で喰った。飯を食う手段とした。だが彼は、俳人でもあった。“俗にまみれ俳諧をもって俗出ずる”―独自の作風を得た人だったのだろう。だから時に風化せず、今に残っている。
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No.6:
(5pt)

貧の俳諧師、生きて詠んで、くたばる。

一茶の旅は「漂泊」でも「悠々」でも「気儘」でもない。一茶にとっての旅は「出張」なのだ。旅そのものが、喰うことであり、生きることなのだ。ひたすらパトロンになり得る裕福な同好の士を訪ね歩く。行く先々で俳諧の師としてもてなされながらも、句会を主催し、素人の句を添削し、それを集めて句集を出版する。その中で、数夜の食や宿を得、また餞別銭を押し頂いて恥じない。今の感覚で言えば、どう見ても芸術家の行動ではないし、風流でもない。しかし、田舎者で貧乏な一茶には江戸を去るまで、あるいは旗本、あるいは豪商・富農が占める一派の頭領の地位を築くことはかなわなかった。しかも一茶の句は田舎くさく、貧しく、日常でありすぎた。蕉風では全くなかった。米びつの底に地獄を覗くような毎日。老いて江戸を去り、弟の田畑、家屋の半ばを寝穢くもぎ取って暮らし始める。若い嫁をもらい子も4人授かるが、全て死別する。家も焼けて失う。なんとも哀しい人生ではある。にも関わらず、いやだからこそか、人々の心の琴線に響く数多くの、なんと2万もの句を残してくれたのだ。一茶の句が詩歌の歴史の中になければ、この国の人々の魂はずいぶんと貧しいものになってしまったような気がする。

山寺や雪の底なる鐘の声

涼しさや欠け釜一つひとりずみ

痩蛙まけるな一茶これにあり

小便の身ぶるひ笑へきりぎりす

どちらから寒くなるぞよかがし殿

やれ打つな蠅が手を摺り足をする

目出度さもちう位也おらが春

名月を取ってくれろとなく子哉

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る

なまけるなイロハニホヘト散桜
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No.5:
(3pt)

これが真実なのかもしれないが

しかし、一つも楽しくなれなかった。
一茶に感情移入することも、その生き方に共感することも、正直難しかった。

多少なりとも趣味で、句というものに触れ、だからこそ、元々フアンであった藤沢周平の一作品の中に、一茶を見つけたときには、少なからず興奮して、期待を持ってこの一冊を手に取った。
しかし、これが確かに一茶の人間像、人物像なんであろうが、さすれば一茶とは、正直私はとうてい好きになれる人間ではない、と言う気分になった。

一茶が江戸で過ごしても、西国を旅しても、どこにいても、彼の生家新潟の、重く雲が垂れ込め、雪に閉じ込められた日常が、いつもいつも、一茶の頭の上を覆っているような、そんな人生であった。
これが彼の句作に必要だったのかもしれない。
と言うか、だからこそ、血を吐くように、ほとばしるこの世への、不遇の思いが機関銃のように、滝のように、怒濤のようにほとばしったのだろう。
自分自身も決して恵まれてはいないな、と言う思いがある私は、だからこそ一茶を見るとまるで自分の嫌な部分を見せられているようで、たまらなかった。

正直、読後決してさわやかとは言えない、一茶の青春であり、成熟であり、老年期であった。
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No.4:
(5pt)

新装版・風狂人の俳諧魂

俳聖芭蕉と違って、一茶は親しみやすい俳句を作る俳人であるという常識をもつ我々である。何の説明もない「一茶」というタイトル。上(14章)・中(9章)・下(12章)の名称がない。これは一茶の評伝でもなく、俳句の紹介で終始しているのでもない。風狂の人として全国各地を行脚する放浪人として描かれている。「僧とも俗ともつかない薙髪の男」と原文にある。本書は評伝・伝記ではない。四国は讃岐金毘羅・観音寺、伊予松山に俳諧紀行しているが、こちら特有の地方色は表出されていない。
 ないものねだりをしてはいけない。作者の意図したものは、一茶の生き方「むしろ他郷で野垂れ死にすること」を願って旅しながらも、最後は故里にもどり、幾人目かの女を抱いて、六十五歳の生涯を閉じる。一茶の生涯は一体何だったのか。それは俗中の俗に流されながらも、生涯二万句を詠んで後世に残した【風狂人の俳諧魂】ではなかったか。
この小説を結ぶ一文は次のように何事もなかったように、何かの鼓動を感じさせて終る。

 雪はまだ降りやまずに、柏原の山野を白く包みこんで動いていた。
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No.3:
(5pt)

食わず嫌いでした

それがしは、藤沢周平著書読破に後何冊かに迫っている。
しかし、残りの本には何かしらの理由があって後回しになったものばかりだ。
その訳とは、「実在の歴史上の人物を扱ったものが嫌い」、先の「白き瓶 長塚節」、「回天の門 清河八郎」がそうだ。
しかし、嫌いと言えども、一旦著者の本を読むとその人物に引かれ嵌り、更にその人物の別の本まで購入し読んでいる。単なる「食わず嫌いか?」不思議で現金な者だ。
さて今回は「一茶」。

「小林一茶」については全く無知であった。生涯、何でも題材にし2万もの句をつくったという尋常ならざる風狂の俳人。2万もの句の中で確実に知っていたのはたかだか10句前後だ。情けない。
・大根引き 大根で 道を教えけり
・われと来て 遊べや親の ない雀
・雀の子 そこのけそこのけ 御馬が通る
・やせ蛙 まけるな一茶 ここにあり
・名月を とってくれろと 泣く子かな
・春雨や 牛に引かれて 善光寺
などなど

ところが、この人物、ここまで哀れな人物であったとは全く知らなかった。これは驚きだ。「目から鱗」というのはこういうことか?「無知」とはなんと情けなく、恥ずかしいことか。

■人物像:
現・長野県信濃町の農家の長男として生まれた。幼少に生母と死別、その後継母と合わず、15で江戸に奉公。職業を転々としその後何処で何をしていたか10年間消息不明。51で、夢であった「江戸の俳諧師」を諦め、生まれ故郷に無念の都落ち。
・秋寒や 行先々は人の家
・秋の風 乞食は我を 見くらぶる

ここまで住処も妻も持たず、食うや食わずの生活。継母、義弟と財産分けで大もめ10年。やっと定住場所を得、54歳で28の女子と結婚。妻、子供4人を次々と亡くし、再婚の妻には2ヶ月で逃げられ、その後3度目の結婚。65で他界。最後までお金や運に恵まれず貧乏、不幸連続の生涯。ここまで人物を知ると、句の見方も変わってくる。

「・・・そこのけそこのけ 御馬が・・」の“御馬”が、どうして“お馬”でなく“御馬”なのか、「名月を・・泣く子かな」、「親のない雀」の意味も理解した。

実は、今は無きそれがしの実家は、一茶の生まれ故郷からかなり近いところにあった(長野市の北、野尻湖のすぐ近く、黒姫駅がある信濃町)。駅で言うと3駅南である。そう、今に思うと極近。帰省の際のはいつも素通りしていたことになる。学生時代「近くである」ことはうすうすとは知っていたがその程度。一茶と良寛もダブっていた。しかし、これを読んだ後は思いっきり「一茶」について勉強した。即、別の本も注文した。

しかし、一茶の生涯は1763-1828年(明和〜文政の江戸時代)。明治維新もペリー来航も更にもっと後の時代。田舎百姓を追われた15の少年は江戸でさぞ苦労したことでしょう。

「mm−、“知る”とは楽しいことだ、読書の醍醐味ですかな?和尚 ハハハ・・」
さて、今年の夏、「一茶記念館」でも行って来よう。

■お薦め度:★★★★★(一茶の句の読み方が変わります、是非)
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No.2:
(3pt)

俳人一茶の生き様

一茶というと、「痩せ蛙まけるな一茶是にあり」、「やれ打つな蠅が手を摺り足をする」といった句で知られるように、善良な目を持ち、多少こっけいな句を作る俳諧師のイメージがありました。しかしこの小説を読んでみて、一茶の全く違ったイメージにびっくり。世俗にまみれ、生活に苦労し、諸国を廻っては生活の糧を得る。貧乏は生涯ついて廻る。それでも俳句を捨てず、独自の境地を開いていく。その俳句は、結局は俳諧には受け入れられず、孤高の人となっていきます。とうとう晩年は遺産分配でトラブルを起こしてまでも、故郷に帰らざるを得なくなってしまいます。老境に入ってから娶った妻と子どもに死に別れ、これでもかこれでもかと不幸が襲ってきます。しかしそのような境遇にあっても、けっして俳句への情熱は忘れません。自分や自分の境涯を皮肉った句の中にも、どこかユーモアが漂うのはなぜでしょう。初めて一茶という人に触れ、その生き様に感銘しました。
新装版 一茶 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:新装版 一茶 (文春文庫)より
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No.1:
(2pt)

やっぱり暗い

藤沢周平さん自身の性格・生い立ちなどから、彼の作品は暗いものが多く、読んでいるこちらまで暗くなるものが多いのですが、この「一茶」もそうした暗ーい作品の一つ。
一茶の人生を丹念に追い、その思うところ、考えるところを本人になりきって細かく再現しています。藤沢周平のスゴいところは、本人の暗い経験から暗い人生を送った偉人をまるでそこにいるかのように再現してみせることです。
その再現には合理性や情念が込められていて、余人ではまず同じ事は出来ないでしょう。
人生上手く行っていないときに読むと痛い一冊です。かといって上手く行っている時に読んでもつまらないので、困った一冊かもしれません。
新装版 一茶 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:新装版 一茶 (文春文庫)より
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