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(短編集)
死の黙劇: 山沢晴雄セレクション
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死の黙劇: 山沢晴雄セレクションの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.86pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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氏の作品に触れるのは、かなり以前に「死の黙劇」と「離れた家」を読んで以来。 改めて思うのは、プロットの濃密さ。 短いストーリーの中に、様々なトリック・アイデアを惜しげもなく詰め込み、複雑なプロットを構築している。 この「やりすぎ感」から、わたしは小島正樹氏の初期の作風を連想した。 また、内容は複雑だが、文章は意外と読みやすい。 「砧最初の事件」 :事件が目まぐるしく展開し、謎が謎を呼ぶ展開。 これ以上複雑になったら理解不能、というギリギリのところで踏みとどまっている印象。 複数のトリックを駆使し、堅牢なプロットを築き上げている。本書の中のベスト。 「死の黙劇」 :傷ひとつないのに顔中が包帯の男、という魅力的な謎に対する解答は肩透かし。 だが、事故という偶然を利用して事件を複雑化させる手腕はお見事。 また、ある小道具の使い方も巧妙。 「銀知恵の輪」 :盗難事件の犯人と目される人物が死体となって発見される。 犯人の偽装工作は巧妙とは言いかねる面もあるが、錯覚を利用したアリバイトリックは鮮やか。 「金知恵の輪」 :冒頭は犯人視点からの叙述でひきつけられるが、アリバイトリックは隙が多く稚拙な印象。正直、イマイチといわざるをえません。 「見えない時間」 :プロットは複雑だが、まとまりがない。アリバイトリックも平凡。 この作品もイマイチでしょう。 「ふしぎな死体」 :真相は意外だが、登場人物の行為に意味不明なところがあったように思える。わたしの理解不足かもしれないが。 「ロッカーの中の美人」 :ショートショートというごくごく短い中にも、手品的なトリックを仕込ませているあたりはさすが。 「密室の夜」 :本作は詰め込み感がなく、本作品集中で最も状況が飲み込みやすい。 だが、不可思議な状況を演出するために最も大事な箇所のトリックに不満が残る。 「京都発“あさしお7号”」 :鉄道アリバイ物だが、それを一捻りして、様々な人物の思惑が錯綜することで事件を複雑化させる手腕は 見事。 以上、9編。面白いと感じたのは、収録順でいうと、①・②・③・⑨。 それ以外は水準かそれを下回る出来のため、手放しで絶賛、とまではいかないが、いずれの作品も本格推理に対する愛情が感じられ好感を持ちました。 次回刊行の長編が楽しみです。 | ||||
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〇別冊シャレード51巻山沢晴雄特集(1999年)巻頭の手塚隆幸氏によるインタビューで、山沢晴雄は次のように答えている。 「・・ご自身の作風を表現すると、どうなりますか?」→「手品文学です」 「・・トリックを思い付いて、それを生かす世界を考えるのですか」→「トリックに合わせて世界を作ります」 「キャラクターの作り方を教えて下さい」→「トリックに合わせて作ります」 「読者層はどのようなものですか」→「ごく少数のマニア(思考回路の似通った)人達だと思っています」 一、概要 〇本書はこの手品文学、トリック文学の魔術師山沢晴雄の短編集である。編者は戸田和光氏。 戸田氏は、別冊シャレード51巻に「極私的・山沢晴雄短編鑑賞」という山沢晴雄全短編(掌編の数篇除く)の鑑賞エッセイを書いていたが、本文庫では「編者解題」となっている。 〇本書は砧順之介ものが5編(1951年、1953年、1952年、1996年、1999年)、犯人当てものが2編(1994年、1954年)、1980年代の短編2編(1984年、1989年)である。 二、私的感想 〇山沢晴雄の短編集が文庫化されるということは、昔は少なかったごく少数のマニア(思考回路の似通った)が増えてきたということかな。何はともあれおめでとうございます。 〇手品文学である個々の短編について何か書くと、ネタバレになってしまいそうなので、全般的なことだけ、ちょっと書いておく。 ①短編はどれもちょっと難解である。 ②難解な理由としてよく言われるのは、山沢の発表の場として与えられた枚数が少なすぎるということである。しかし、これには逆に言うと、少ない枚数に複雑なストーリーを書き込んだということになる。 ③基本的にトリックはアリバイトリックだが、それを支えるサブトリック及び偶然の重なり等が加わって、複雑な犯罪構成となっている。 ④同じトリックまたは類似トリックのバリエーションが比較的多い。 ⑤小道具で多いのは、作者の趣味の将棋。あとは死体を入れるもの。 〇戸田氏の編者解題は丁寧な解題で、よくできている。しかし、「極私的」ではないので、真面目過ぎ感、よそ行き感もなくはない。たとえば、「極私的・山沢晴雄短編鑑賞」には次のような絶妙のフレーズがあった。「下半身には無縁の作家であった筈の山沢としては珍しく、ロマンティックなエンディングを描いている」(「仮面」評)。本書にも、下半身そのもののベッドシーンが出てくる「死の黙劇」が収録されているので、この名フレーズを収録してもよかったように思うのだが・・。 三、次の刊行予定 〇次の文庫刊行予定は、長編第2作『砧自身の事件 ダミー・プロット』となっている。原本は、別冊シャレード54巻(2000年)で発表されたもので、51巻のインタビューでは、全作品中の一番の自信作と著者は言っている。 〇天城一は、長編第一作『悪の扉』も、この第二作も、手品文学+恋愛小説として評価している。山沢も54巻のノートでこれを認め、「やはりストーリーの究極の面白さは男と女であります」と手品文学作家らしからぬことを放言してしまっている。 〇このノートの最後に山沢の本音のようなものが出ていて面白い。山沢はデザイナーのことを『ダミー・プロット』にリアルに書き込むつもりで、女性誌やTVなど資料を集めてみたが、知らない世界なのでうまく書けなかった。「手品文学を表看板にしているのは、そんなことで、弱みを見せまいと開き直りの心境であります」 | ||||
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優れた「手品小説」が収録されています。 解説で(それとなく)ふれられている様に ・同一パターンが多い ・「犯人当て」としては良いが「短編小説」としては微妙 ・執筆時期によって出来不出来の幅がある というのが特徴でしょうか。 | ||||
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山沢晴雄さんは、生涯アマチュア作家を貫き、自分の書きたい「理想の本格ミステリ」を書き続けた人。 作風は地味たが、バリバリの「本格」なところは、彼を高く評価した鮎川哲也さんと似ている。 「アリバイ崩し」が多いところも。 なので、大いに期待した。 しかし、微妙だ。 確かに、既に他社から「離れた家」と言う代表傑作の単行本は、あるが高額で既に絶版状態。 なので創元推理文庫らしく、その紹介作品も網羅しつつ未収録も入れた「真の傑作集」として欲しかった。 とは言え、本文庫で紹介されている作品も「純度の高い本格」で本格ミステリ好きの必読書だ。 ある意味、これを読めば鮎川さん同様に、バリバリの本格のマイナス要素も見えてくる。 それに何より、今後に期待だ。 山沢さんはアマチュアの為に単行本は、他社を含めても2冊目て、ほとんど埋もれたままだが、近日中に長編小説が初めて創元推理文庫から刊行されるそうた。 創元推理文庫の事たから今後は「赤江瀑アラベスク」みたいに、ドンドン山沢さんの長・短編小説を発掘して事実上の「全集」を刊行して欲しい! | ||||
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