(短編集)
霊魂の足: 加賀美捜査一課長全短篇
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霊魂の足: 加賀美捜査一課長全短篇の総合評価:
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過去に、加賀美刑事もの全短篇と長編「奇跡のボレロ」を収録した傑作集が単行本化されたが既に絶版。 最近、戦後の日本ミステリの紹介に力を入れている創元推理文庫から「全短篇集」が文庫で刊行されたのは、ファンとして嬉しい。 どれも、短編ながら、戦後の世相を反映させた、やや暗めの世界観と中々鋭いトリックが味わえる逸品ぞろいで、強くお勧めする。 しかし、問題は、「解説」だ。 冒頭「妖棋伝」等の伝奇時代劇作家として知られた、と言う主旨の文があるが、今どき、こうして紹介された作品を知っている「若い人」が、どれだけいるのか? 「解説」で、書かれるまでも無く、こうした伝奇時代劇が、不可能犯罪や犯人・結末の意外性に富んだミステリである事は、知っている人には、今更だが、知らない人には、ちんぷんかんぷん。 仮に、興味を持っても「春陽文庫」が、消滅した今、入手は不可能に近いので、全然、紹介の意味がない。 更に言えば、この短編集で興味を持った人には「長編」をお勧めする、 と言われても、現在、簡単に読めるのは、創元推理文庫「日本探偵小説全集」収録の「高木家の惨劇」のみ。 創元は、良く絶版本を出して暮れるが、現段階で、作者の「長編」の出版予定は無い。 まるで、美味しい前菜を出されて期待させてメインディッシュは、オアズケにされた様な感じだ。 創元推理文庫にしては、珍しく不親切極まりない「解説」だ。 この機会に、現在、絶版状態の作者の優れた「長編」と「伝奇時代劇」の復刊をお願いしたい。 | ||||
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戦後日本の本格ミステリの黎明期をつくった三大イニシャル“K・K”名探偵といえば、金田一耕助、神津恭介、そして本書に登場する加賀美敬介。飄然とした自由人という感じの金田一も、イケメンの天才エリートの神津も、いささか浮世離れ感のあるキャラであるなかで、ジョルジュ・シムノン生んだメグレ警視の遺伝子を移植したという加賀美敬介が、いちばん人間くさい存在感を示している。刑事としての長年の経験と鋭利な論理的頭脳によって、ふとした街中の日常風景のなかに犯罪の臭気を嗅ぎあて、鮮やかに解決にみちびく。冷徹な法の番人でありながら、人生の酸いも甘いもかみ分けた人情家でもあり、多くの刑事ドラマの名刑事たちのルーツになったのではないかと思わせる、シブい敏腕捜査一課長。 犯人逮捕の瞬間が最高にキマッてカッコいい『緑亭の首吊男』、展開の妙が素晴らしい『怪奇を抱く壁』、緻密な論理と複雑な犯罪構成で読みごたえ充分な『霊魂の足』、エラリー・クイーンだけでなくヴァン・ダインも想起させる『Yの悲劇』、謎の設定がユニークな『髭を描く鬼』、涙腺がゆるむ『黄髪の女』、そして涙腺が崩壊する『五人の子供』。それぞれタイプの違いもあるが、戦争によって狂わされた多くの人生の道程が、過酷な戦後社会のなかで、悲惨に絡み合って形成された犯罪を描いている点では共通している。評価は人それぞれだろうが、『緑亭の首吊男』『霊魂の足』『五人の子供』が筆者のベスト3。寡黙な背中と鋭い眼光のおくに、時代の悲惨や不条理への怒りと憂いを秘めた加賀美捜査一課長の姿が、いかにも何処かに佇んでいそうなカバー画も、とてもステキだと思った。 | ||||
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角田喜久雄がメグレ警視をモデルにして書き、終戦後の昭和21年から22年にかけ発表した加賀美捜査一課長シリーズの全短編集である。加賀美に関するエッセイ2編も収録されている。なお、加賀美シリーズには短編のほかに、長編『高木家の惨劇』『奇跡のボレロ』がある。 一、収録作品 ◯短編 事件の起きる順に並んでいる。すべてが昭和21年に起きた事件である。 ☆「緑亭の首吊り男」(「ロック」昭和21年12月)・・事件は昭和21年1月。 ☆「怪奇を抱く壁」(「旬刊ニュース」昭和21年9月)・・事件は昭和21年3月。 ☆「霊魂の足」(「宝石」昭和22年2・3月合併号~4月号)・・事件の日時不明だが、梅雨の1ヶ月前なので、昭和21年5月頃か。 ☆「Yの悲劇」(「新青年」昭和21年11月号)・・昭和21年10月。 ☆「髭を描く鬼」(「旬刊ニュース」昭和22年1月)・・昭和21年10月下旬。 ☆「黄髪の女」(「ロマンス」昭和22年2月号)・・昭和21年10月30日。 ☆「五人の子供」(「物語」昭和22年2月号)・・昭和21年12月2日。 ◯エッセイ 「加賀美の帰国」と「怪奇を抱く壁について」。 二、私的感想 ◯終戦後まもなくの世相風俗情念が、ミステリーの背景に取り入れられているのが興味深い。復員または大陸帰りの男は全短編に登場する。ほかに、新聞の尋ね人欄、空襲焼け跡の建物、フランス風の花屋兼果物屋兼コーヒー店、女給の明るい酒場、野良犬、貧乏子だくさんの母親、感状、大陸巡業の太平洋劇団、一部がアパート化した連れ込みホテルなどなど。 ◯ミステリーとしては、世評高く、著者も気に入っていて、展開鮮やかで、情念の深い「怪奇を抱く壁」が第一位と思う。第二位は巧みなトリックの「緑亭の首吊り男」か、緻密な論理と複雑な犯罪構成の「霊魂の足」かであるが、「緑亭の首吊り男」は今日的な理解からは問題があり、「霊魂の足」はよく考えられているが、複雑になりすぎた感があり、私的には、機械トリックが鮮やかで、時代風俗的に面白い「Yの悲劇」を第二位にあげたい。 ◯「黄髪の女」と「五人の子供」は、最後が人情ものの展開になっていくのが興味深い。 | ||||
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