■スポンサードリンク


インソムニア



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
インソムニア

インソムニアの評価: 4.00/5点 レビュー 25件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全18件 1~18 1/1ページ
No.18:
(5pt)

圧倒!最高!

圧倒された、という以外の言葉がありません。そろそろミステリー小説は何を読んでも「普通」になりつつあった昨今ですが、これには驚かされました。何はともあれ、まずは読んでほしいです。元自衛官の友人たちも、みな「これは…すごい作品だ!」と言っていました。注意点としては、一度ページをめくると電車を降りたくなくなるし、仕事したくなくなるし、食事や睡眠時間などが惜しくなります。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.17:
(4pt)

待望久しい社会派の問題作

自衛隊の海外派遣という、国家的な政治課題を取り上げ、ミステリーにまとめあげたこと自体、高く評価できるでしょう。近年、こういう骨太な社会派ミステリーが少なくなり、不満を抱いていました。社会派の有力新人の登場は大歓迎です。
レビューを眺めると、ミステリーファンではない方、自衛隊や武力紛争といったテーマに詳しい方の、長文のレビューが目につきます。他の作品には見られない現象です。こうした傾向を踏まえて、作者がこの分野を掘り下げていくのか、ミステリーの枠内で新たな分野に挑むのか、興味のあるところです。
細部を揺るがせにしない、完結な文章は読みやすく、ほぼ一気読みでした。新人の作品としては高水準の作品で、近年の乱歩賞作品よりも余程優れていると思います。
内容紹介については、他のレビュアーが詳しく書いておられますので省きますが、気になった点をいくつか挙げておきます。
・視点人物が多数にわたるのは、構成上やむを得ないと思うものの、主人公がワン・オブ・ゼムの位置付けになってしまっていて、感情移入や共感が薄くなる。
・防衛大臣秘書官は、多分30代後半くらいの背広組キャリア官僚のはずだが、もっと年長の上位階級の者のように書かれていて、リアリティーを損ねている。
・これだけの大問題ならば、担当局長や官房長といった最高幹部が関与するはずだが、これらの者の影が見えない。
作者の紹介を見ると、職歴が全く書かれていません。ひょっとすると防衛省の官僚を辞めた人か?と思いながら読んでいましたが、上記の点を踏まえると、そうではないようです。
また、帯にある「社会派と本格ミステリーを見事に融合」とありますが、「本格」的要素は薄いと思います。「待望久しい社会派の問題作」といったところで十分でしょう。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.16:
(5pt)

寝なきゃいけないのに、読んでしまった

素晴らしいです。かなりおもしろかった。こういうエンターテーメント小説が読みたかった。時を忘れた。ありがとう。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.15:
(4pt)

最後の最後の最後で明かされるどんでん返しの真実

よく取材がなされた跡がみられる記述で、現実から乖離したただのファンタジーではありません。
制服組と背広組の関係についても、正しく描写されているのではないかと思います。
真実が分からないままに終わるのかと思いきや、エピローグになって明かされる真実はまさにどんでん返し。
強烈な印象が残りました。
非常に面白い一冊です。

ただ、性描写をあそこまでしつこく書く必要があったのかどうか、少々疑問が残ります。
性描写は嫌いではありません(笑)が、物語の本筋から外れてしまうような気がしました。
そんなわけで、星1つを減じて4つとさせて頂きました。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.14:
(4pt)

想像していた内容とは違った

第22回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。率直な感想として、作品の面白さは別として、ミステリーの範疇に入るかなと思いました。

自衛隊のPKO活動中におきたことを巡り、当事者たちと真実を探る防衛省のメンタルヘルス官と精神科医の視点から展開する物語は興味をそそられ抜群と思います。
しかし終章で明らかにされる真実は確かに衝撃的ではあるけれどすっきりとはしませんでした。本書は自衛隊の海外支援活動について様々な問題点を採り上げた社会派エンターテインメント小説と思います。
文章は読みやすかったです。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.13:
(4pt)

ストーリー展開、上手い

本作のお陰で日頃ニュースや新聞で目にするPKOやNGOという言葉をとてもよく理解した。
話の進め方が上手くどんどん読み進めた。
自衛隊の人々の貢献にも思いを馳せた。

最後に出てきたインソムニアの原因、これが無くとも十分に不眠症(インソムニア)を絡めた人間ドラマが描けたんじゃないかな〜。
そうした方がよりPKOの現場の大変さが伝わったんじゃないかな。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.12:
(5pt)

最高に面白かった!

PKO部隊の陸上自衛官7名(うち、2名は女性)が、現地で民兵の襲撃を受けた。
1名(男性)は死亡。でも、残りの6名は無事に帰国。
奇跡だ! 良かったね!
と思いきや、生還した1名(女性)が自殺。
どうも、何かとんでもなく悲惨な事があったのに、それを隠しているっぽい。
一体、何があったのか?

本書はこの「一体、何があったのか?」について、じわじわと真相に迫っていくという話です。
理屈なんて通じない、殺気だった民兵に襲撃される。でも犠牲者は一人だけ。そこで起こった「悲惨な事」と聞いて、普通に想像できるのって次のような感じですよね。

・女性、民兵にレイプされる
・女性、民兵だけでなく自衛隊員にもレイプされる(強制されて)
・犠牲となった自衛官を殺したのは、実は自衛官(強制されて)
・自衛官、子供(もしくは女性)を殺してしまう

「これが真相だったら、たしかに悲惨だけど、ちょっとありがちすぎてイマイチだな。でも、これ以外で悲惨な出来事なんてあるか?」などと思いつつ読み進めると、7割くらいの段階で「何があったのか(上記4点が正解なのか)」については判明します。
なんか微妙。
でも、残りのページ数を考えるとまだ「真相の、更に真相がある」ってのは間違い無い。

で、その「真相の、更に真相」ですが・・・なるほど。
真相の更に真相が明かされ、それで終わりかと思いきや、そのまた真相が最後に、本当に最後の最後に明かされます。
うん、これは凄い。
予想を超えた驚愕の、容赦の無い真実でした。
うわー、マジか。
最悪の読後感(誉めてます)。

いやいや、大満足の一冊でした。
映画『戦火の勇気』みたいな、「極限状態下で何があったのか」的な話はもともと大好きなのですが、これは大当たりでしたね。
ページをめくる手が止まらなかったし、締めも文句なし。
星五つとさせていただきます。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.11:
(5pt)

読みやすい

時事にのった
自衛隊モノ
ミステリーとして一気読み
できます
 
映画化したら
面白そうな小説ですね
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.10:
(4pt)

さらば長き眠り

本書を謎解き小説(ミステリ)として読んだ場合、真相は必ずしも想像予想を超えるものではなく、その点を指摘するレビュアーの存在は当然ものである。しかしまた、それを補って余りある本書のテーマの切実さは、本書が「カンボジアPKO派遣・文民警察官殺害事件」と「南スーダンPKOをめぐる一連の情報隠蔽事件」を下敷きにして書かれ、その極めてアクチュアルなテーマ性を、作者が新人らしからぬ巧みさで「小説化」した功績にあり、高く評価されて然るべきものだと言えよう。

そのうえで、私が指摘しておきたい点は「本書は、なぜ公刊できたのか?」という問題である。

端的に言えば、それは、本書のラストで描かれるような、極めて「悲惨な戦場体験」が「現実のPKOでは、日本人は体験しなかった」という一般的了解が、日本国民の間にあるからである。

喩えて言えば「東日本大震災にともなう大津波を、死体移動トリックをつかった本格ミステリ」などといったものは、とうてい公刊できない。いくら「小説」だ「フィクション」だといっても、現に被害を被った多くの人たちの感情を思えば、とうてい「娯楽小説」に出来るような題材ではないからだ。

これは「PKO」についても同じで、もしもカンボジアや南スーダンで、本書に書かれたようなことが現に起こったと「日本国民一般」が知っていたとしたら、本書のような小説は、とうてい刊行できなかったろう。
言い変えれば「そんなことはなかった」とみんなが了解しているからこそ、本書に描かれた事件は「小説=フィクション」として「楽しみ消費される」ことが許されているのだ、とも言えよう。
一一しかし、本書に描かれたような事件が、本当に、現実には無かったのであろうか? それは絶対に確かな話なのか?

じっさい、本書に描かれたような事件が現に発生していたら、本書で描かれたように、政府が事件を隠蔽するのは無論のこと、その当事者が口を噤むのも間違いない。
それは先の戦争(太平小戦争)の戦場で、「虐殺」や「強姦」あるいは「人肉食」といったことを経験した、兵士たちや大陸からの引揚者たちが口を噤んだ(噤まざるを得なかった)「悲惨な歴史的経験」に照らして、確実な話だと言えよう。
だから、カンボジアや南スーダンで、本書で描かれたような悲惨な事件が現実にあったとしても、私たちはそれを知る由もないのだが、私たち(つまり、私自身を含む)日本国民の大半は「さすがにそんなことは無かったろう」と思っているし、そう思っているからこそ、本書が刊行されたことに何の抵抗も覚えないのである。

しかし、この先、自衛隊の海外への派遣が進んでいけば、それは間違いなく「より悲惨な戦場」への派遣となるのだから、本書で描かれたような体験、あるいは先の戦争で日本兵たちがしたような体験をすることも「必然的に起こる」ことになる。それが「現実」になるのである。いや、すでになっているのだ。

つまり、私たちの「戦後平和」という「長い眠り」は、もはや失われようとしている。
私たちは、否応なく「悲惨な現実への目覚め」を要求されているのだ。

本書のような「目覚まし時計のベル」は、今後もくりかえし、私たちを呼び起こそうとするだろうが、貴方はいつ、その温かい寝床から起き出ることができるだろうか。

『一同がゲツセマネという所に来ると、イエスは弟子たちに、「わたしが祈っている間、ここに座っていなさい」と言われた。
そして、ペトロ、ヤコブ、ヨハネを伴われたが、イエスはひどく恐れてもだえ始め、彼らに言われた。
「わたしは死ぬばかりに悲しい。ここを離れず、目を覚ましていなさい。」
少し進んで行って地面にひれ伏し、できることなら、この苦しみの時が自分から過ぎ去るようにと祈り、こう言われた。
「アッバ、父よ、あなたは何でもおできになります。この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしが願うことではなく、御心に適うことが行われますように。」
それから、戻って御覧になると、弟子たちは眠っていたので、ペトロに言われた。
「シモン、眠っているのか。わずか一時も目を覚ましていられなかったのか。誘惑に陥らぬよう、目を覚まして祈っていなさい。心は燃えても、肉体は弱い。」
更に、向こうへ行って、同じ言葉で祈られた。
再び戻って御覧になると、弟子たちは眠っていた。ひどく眠かったのである。彼らは、イエスにどう言えばよいのか、分からなかった。
イエスは三度目に戻って来て言われた。
「あなたがたはまだ眠っている。休んでいる。もうこれでいい。時が来た。人の子は罪人たちの手に引き渡される。』
(マルコによる福音書)
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.9:
(5pt)

迫力が凄かった

実際にあったけど大きくは報道されていない内容がちょいちょいあって、自衛隊や国際協力分野の人が読むとより心に響くものがあるのかな、と感じました
私にはそんな背景はありませんが、事件の現場の描写が読み進むにつれて点から線、面から立体になりカラーになりリアルになっていくような不思議な感覚になりました なので、前半は描写が全く足りず、怒りさえおぼえる物足りなさがありました笑 その分、後半、頭の中で映像を越えて土埃さえ感じるようになると、もう読むのが止まらなくなりました
作家さんの力量を感じました デビュー作とのことですが、次回作も期待したいです
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.8:
(5pt)

おすすめです!

重いテーマながらも読みやすく、あっという間にのめり込み、あっという間に読み終えてしまいました。
PKO派遣された当事者たちと、真実を明らかにするべく動く、現地にはいなかったメンタルヘルス官たちという、いわば近と遠の目線が交互に描かれることで、現地の様子にぐっと近寄る場面と、引いて大きな組織として考える場面とのバランスが絶妙です。
社会派だけれど、やはりミステリー。最後まで読むと、もう一度読み返したくなります。
内容が内容だけに目を覆いたくなる描写もあり、若干食欲も失せますが、
ふだんこのようなジャンルを読まない方にもオススメです。
真実を明らかにすることの是非と、インソムニア(不眠症)という言葉の重みを考えさせられます。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.7:
(5pt)

ベールに包まれた真相は。

自衛隊のPKO任務の「駆け付け警護」がテーマ。
インソムニア(Insomnia)とは「不眠症」という意味。
防衛省のアンケートでは海外派遣等でPTSD傾向にある自衛隊員は毎年1千人以上で推移しているそうだ。
不安な環境下に置かれた自衛隊員に対してメンタルケアが必要であることを力説している。
ストーリーは真相を求めてミステリアスに展開。
真相を追っていくごとに、赤裸々な内情が明らかになってくる。
現地での悲惨な体験により、心には深い傷が残されてしまった。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.6:
(5pt)

大いなる眠り

2018年の日本ミステリー文学大賞新人賞の受賞作で、自衛隊のPKO派遣部隊による〝駆け付け警護〟問題をテーマにした長編サスペンスだ。新人作家のデビュー作とは思えないぐらい、ディテイルは精確、筋立ても重厚且つ企みに満ちた作品で、「選考委員各氏絶賛!」というオビのコピーもまんざら嘘じゃない。
 舞台はアフリカ大陸の中央部に位置する架空の国「南ナイルランド」。2011年にナイルランド共和国から分離独立を果たしたが、2013年からは内戦に突入し、政府の正規軍と反政府勢力が戦闘を繰り返している。日本政府は国連決議に従って、2011年から陸上自衛隊のPKO派遣を開始した。現地情勢の悪化が伝えられる中、2016年に安全保障関連法が施行され、同年12月に着任した総勢350名から成る第十一次隊から、新たなミッション――駆け付け警護と宿営地の共同防護が加わった、という設定だ。
 物語は2017年2月24日午後3時、自衛隊宿営地に、現地で活動しているNGOから緊急支援を要請する連絡が入って動き出す。直ちに、葛城信司・一等陸尉を隊長とする七人(うち女性自衛官が二人)の特務警備小隊が編成され、NGOの移動診療車が消息を絶った現場に急行し、反政府勢力と思しき敵に遭遇する。自衛隊史上初の駆け付け警護任務は、〈未だかつて戦ったことのない軍隊〉だった自衛隊による史上初の戦闘に転じた――これだけのてんこ盛りで、まだ序章にすぎない。
 本作の核心部は第一章から始まる本編で、戦闘に参加したPKO隊員六人――そう、自衛隊は、史上初めて、戦闘による犠牲者を出したのだ――の帰国後を執拗に追うところにある。焦点は主に二つ:
 隊員六名が南ナイルランド国防軍によって無事、救出されるまでの〝空白の一日〟に何があったのか、
および、
 亡くなった自衛官の遺体はどこに消えたのか? 
防衛省が政府に提出した中間報告書にも書かれてはいないのだ。
 謎を追いかけるのは、隊員のメンタルケアを担当するメンタルヘルス官で、臨床心理士の資格を持つ神谷啓介(三等陸佐)。やはり自衛官だった兄を自殺で亡くした。もう一人は、自衛隊中央病院精神科の医師・相沢倫子。相沢は防衛医大出身の自衛官でもあり、南ナイルランドのPKOに参加した経験があった。PTSD、帰還兵士の精神的ケアの専門家だ。
 ぐいぐい惹き込まれて読み進むうちに、本作はノンフィクションか?と錯覚した。そうなれば、作家の術中に絡めとられたようなもの。作中、極めて魅力的な一節がある。
 「時に真実は人を傷つけることも、不幸にすることもある。」
 戦闘で亡くなった三崎二曹の両親には、真相を「知る権利と同時に知らないままでいる権利がある」と、葛城・元隊長に神谷が語りかけるシーンだ。フィクションでは、「真実」や「真相」を連呼するのはご法度だと、この作家は十二分に承知していながら、敢えて掟破りの野蛮な!大博打を打ったのだ。〝駆け付け警護〟問題がテーマだと信じて読み進むと、あまりにも鮮やかに裏切られる(これぐらいなら、ネタバレでもいいでしょ)。それぐらい、泥臭い人間ドラマに満ちているのだ。
 次作以降にも期待のかかる大型新人の登場だ。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.5:
(5pt)

骨太なストーリー

読み出したら止まらなくなり一気に最後まで読んでしまいました。
PKOに参加した7人の口から徐々に明らかになる真実、、と思いきや、ラストは思いもよらぬ展開に!
真実とは何か、という事を考えさせられる一冊でした。
今夜は眠れなくなりそう、、、
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.4:
(5pt)

日本ミステリー大賞新人賞!

引き込まれる展開、抑制的でありながら創造力を掻き立てる文章力。映画を見ているような錯覚の中、いつの間にか読み終えていた。
真実とは何か。事実に意味があるのかということを考えさせられる作品。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.3:
(5pt)

インソムニア

自衛隊員のメンタルヘルスという重い内容なのにリアルな描写と徐々に解き明かされていく秘密が気になり一気に読まされました。
最終章でいままでの伏線を見事に回収し、予想を超える結末にやられたと唸らされました。
買って損はない読みごたえのある本でした。
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.2:
(5pt)

インソムニア(意味:【医】不眠症)

過去に黒沢清監督で映画化もされた前川裕『クリーピー』などが有名な、光文社の第22回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作です。
投稿時のタイトルは「エンドレス・スリープ」だったのですが、これは「インソムニア」のほうが100倍かっこいいですね!!

いわゆる自衛隊の「駆けつけ警護」をテーマにした創作ミステリーです。しかし、現実に自衛隊が派遣された南スーダンではなく「南ナイルランド」というアフリカ大陸中央部の仮想国家で起きた「わずか4か月前の事件」の真相をめぐるフィクション。
オープニングで事件の輪郭をなぞったのち、自衛官のメンタルヘルスを担当する幕僚監部衛生部のメンタルヘルス官・神谷啓介を狂言回しに、本国に帰還した自衛官のその後が語られていきます。

駆けつけ警護は(※詳しくはググってください)もちろん、日本の自衛隊では「非戦闘地帯」における「戦闘上の安全」が確認された任務しか行うことが出来ません。
現地でとあるNGO職員(邦人含む)が行方不明となり、安否確認のため国連から駆けつけ警護の要請が下されます。
7人の自衛官(WAC2人含む)が「ジュペル」という茫漠とした土地に赴くと、案の定、謎の武装勢力から襲撃を受け…………というのが外殻。

さて、この作品、あらすじのとおり、自衛隊モノということもあり、読んでるあいだリーダビリティを喚起させる衝撃的なエピソードのつるべ打ちなので「うわーっ!」の連続なんですが……、
読み終えて「うわー! うわーっ!! マジかー……!!!? えぇー……っ!!!??」ってなりました。

この構成は「どんでん返し」というか何というか、しばらく茫然としたいような「浮遊感」に満ちていて、しかし、リアリティが無いわけでもなく、ちょっと個人の感想を拒むような美しいラストでした。
あぁー、帯の煽り「社会派と本格ミステリーを見事に融合した傑作」ってこういうことかぁー、みたいな。

ラストに向けての風呂敷の畳み方が綺麗で、乗り越えたと思ったらまたさらに伏線が作用した礫の群れが待ち受けている……優れたミステリーに特有の構成だと思います。すごい! 最高におもしろかったです。
帯に選考委員4人(綾辻行人・篠田節子・朱川湊人・若竹七海)による絶賛の選評が載っていますが、その通りだと思いました。

あらすじを読めばガッチガチの社会派ミステリーに思えてしまうんですが、上述した『クリーピー』に負けず劣らず不気味な側面があって、この賞の特色がよく出ている形になっているのかな?
「こういう真相なのかな?」と思って読み進めていくと「ん!?」となって終盤に至ると「んんん????」の連続。
そしてそれすらも覆される。
久しぶりに問答無用で「すごいな!」と思える力技を見た思いでした。
アンフェアな部分も皆無ではないんですが「社会派と本格ミステリーを見事に融合した傑作!」という謳い文句に偽りはないですね!
「本格」といっても90年代の島田荘司さんが活躍していたころのような重厚さに、それこそ『相棒』のようなとっつきやすいテーマ選びのセンスを備えていて読みやすい。
文章にもわかりにくい部分がなく、かなりスラスラとストレスを感じることがなかったのもポイントが高いです。

加えてこの「自衛隊モノ小説」としてのクオリティの高さも素晴らしい。
ともすればルサンチマンがほのかに香って改憲派の広告塔や暴露モノになりやすいテーマが多かった状況に、斜め上からの鉄槌を喰わされた気分でした。
これは国際化の路線を避けられない自衛隊フィクションの、新たな鉱脈なんじゃないだろうか。

難点を挙げるとすれば、表紙が『プライベート・ライアン』というか『シルミド』というか、ちょっと戦争映画を意識しすぎているのはミスリードすぎるとこかな。
そういう話ではないように思えた部分もあるので。

とにかく素晴らしい読書体験でした。オススメ!
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699
No.1:
(5pt)

本格的!

本格的でした。重い内容ながらも構成が素晴らしく、飽きさせない展開に驚きました!
インソムニアAmazon書評・レビュー:インソムニアより
4334912699

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!