サリエルの命題
- パンデミック (29)
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
サリエルの命題の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
笠井はウイルス研究者である。アメリカのCDCでインフルエンザウイルスの研究をしている。遺伝子操作による新型インフルエンザウイルスの予防研究である。しかし、日本の科学界の重鎮がその研究がテロに使われる危険があると言い、中止されることになった。その結果、笠井はCDCをクビになった。 そして、日本や中国の少子高齢化の問題が語られる。本当に深刻で、このままでは日本の社会保障制度は持続できず、日本の財政は崩壊してしまう。 話は笠井に戻る。彼がCDCを去る準備をしていると、サリエルの研究データが流出したという知らせがあった。サリエルとは、笠井が行っていた研究である。しかも、そのデータは世界中のウイルス研究者が情報交換をするサイトに公開されていたという。 その情報を手に入れたのが、野原という日本のウイルス学者である。東大理学部を卒業した優秀な人物だったが、運やコネに恵まれず、助教のままキャリアを終えた。 そして野原はアメリカのある人物にそのデータを送って実際に会いに行った。その人物は、前立腺がんを患っていた。その結果起きたのは……。 こうなれば、この後の展開はだいたい予想がつく。すごいと思うのは、この小説が発行されたのが2019年6月だということである。まさに、予言の書といえるだろう。 著者の問題意識は、人間が長生きしすぎるようになったというところにある。解決策としては、例えば日本なら、高齢者の年齢が上がるにつれて医療費の自己負担額を上げるという考えがあるようだ。長生きしたければカネを出せ、ということだ。こんな考えが実現するとは思えないが、現状を変えなければならないのは明らかだ。それも、抜本的な改革が必要だろう。いろいろ考えさせられた。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
コロナ 流行の前に書かれた作品とは思えない発想 豊かな臨場感のある作品でした コロナの流行の前に 著作 されたとは思えない 臨場感あふれる想像力で著作されており楽しく読ませていただきました | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
楡周平が、ウイルスとパンデミックについて、どんな洞察をするかと思って読んだ。いくつかの可能性を述べている。それにしても、2019年6月に出版されたというのが驚きである。コロナ禍に入る前に、ウイルスとパンデミックについての物語を生み出している。すごい才能だ。 ウイルスの変異はなぜ起こるのか?その研究の最中に、遺伝子組み換えで凶暴なウイルスを生み出した。生物兵器としても、ウイルス研究は繋がっていく。日本海に浮かぶ孤島でサリエルという名前がついたウイルスが発生し、瞬く間に島民全員が死亡した。島民は高齢者ばかりだった。最初に罹ったのは、ウイルス研究の日本の第一人者の八重樫だった。アメリカから送られてきた郵便物に、ウイルスが梱包されており、それを開けたことで発症する。そして、島民に急速に伝染する。台風が来ていたので、密閉状態だった。島民全員が死んだというのがニュースになる。このウイルスは、細胞を壊死させる破壊力も持っていた。鳥から人に伝染することも推定された。 サリエルに対応する治療薬とワクチンがわずかしかない。ここで問題となるのは、量が限られているので、治療する優先順位が、問題となる。沈没する船は、女、子供を優先的に救命ボートに乗せる。つまり、老人は後回しだ。日本の超高齢化を是正するには、コロナ感染が最適でもある。政府や与党の国会議員の中で、優先順位を検討するというと長老の国会議員のドンが反発する。年寄りに死ねというのかと怒る。若手議員たちが、積極的に動く。 日本の保険制度について、国の負担が多く、税金を投入しないと保険制度が維持できない。問題は少子化ではなくて、日本では医療や保険制度が発達して、長生きする人が増え、平均寿命も伸びているのだ。それが医療制度を破壊するという。アメリカでは、金のある人しか医療を受けられないので、格差が広がり、2021年で、76.1歳。平均寿命が2年ほど低下している。アメリカらしい。 まぁ。健康保険制度が平均寿命の短かったときに成立したので、長寿化することが想定されていなかった。その歪みをどうするか?楡周平は、『プラチナタウン』のように老人問題が一つのライフワークのようだ。孤島でのサリエルによる島民全滅に続いて、東北のリタイアーした夫婦が、サリエルにかかる。自給自足に近い生活をしていた。鶏も飼っていた。その鶏が、サリエルにかかり、夫婦もそれで死ぬ。政府は迅速にその村を封じ込め、サリエルに対抗する治療薬を飲ませることで、サリエルの感染を防ぐ。物語では、政府は手際よく対処する。 政府の首相たちは、治療薬を使用しないと明言していたのだが、ワクチンを接種して、副作用のギランバレー症候群に罹るのだった。ふーむ。政治家も自分のことしか考えていなかった。楡周平らしい締めくくり。確かに、コロナウイルスとの共存時代に入ったが、コロナウイルスは変異し続けて生き残り、いつ猛威をするかもしれない。インフルエンザで死ぬ人をいるから、ウイルスの死亡率という視点だけで論じられない。色々、考えさせられる本だった。やはり、平等ってあり得ないのだ。日本の保険制度がいいので、「日本に行こう」と保険制度の悪い国からやってくるという話は、実際聞いたことがある。格差社会はさまざまな面で矛盾を孕む。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
正に今読むに相応しい作品だった。人工的に作り出した新型インフルエンザウイルス。元上司である医学学術会のトップに復讐するためにウイルスを郵送する。短期間に死亡すると同時に他の地域でも感染が発覚。賢明な隔離政策のおかげで被害を最小限に抑えることができた。問題はウイルスの治療薬が30万人分しかなく。ワクチンも1000万人しかない。誰を優先に治療を始めるか。政府、厚労省はじめ大論争となる。ウイルス名サリエルはこうした日本の医療制度、健康保険制度の矛盾を鋭く突き人命の優先順位とは何かを問う読み応えある作品だった。まさに今の新型コロナウイルスを廻る問題と一致する。幸いコロナワクチンは高齢者から優先接種でよかったのか。一般文学通算2670作品目の感想。2022/07/29 17:20 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
投稿者自身、後期高齢者ですが今回の新型コロナについては愚妻と冗談交じりに「このコロナは平成の姥捨て山考的視点でとらえないと医療も行き詰まるネ。」と常々話していました。この小説でも同じように政治家の本音が描かれていてフ、フ、フ、と思いました。この作者も多くの医療関係者からアドバイスを受けていたと思いますが、m-RNA医薬情報まではキャッチしていなかったのですね・・・。 先見的にm-RNA医薬を小説の一部にでも取り入れていた作品はあるのでしょうかネ? | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 26件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|