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(短編集)
風に舞いあがるビニールシート
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風に舞いあがるビニールシートの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全93件 21~40 2/5ページ
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短篇集だが、その中でも「ジェネレーションX」と「風に舞いあがるビニールシート」がよかった。 これまでは犬の保護活動を応援している作家ということくらいしか認識していなかったが、それだけではなかった。 対人間でも、自分を必要としている相手に手を差し伸べる、自分の殻を割って一歩踏み出す勇気を応援している。 物語の流れが自然で、いつの間にか、無理なく、読者の私もその流れに乗ってしまっている。 「風に舞いあがるビニールシート」の中で、安楽な生活や財産に目がない友達を、絶妙なタイミングで登場させる。彼女達の登場で、ヒロインが「あの友達と私とは同じじゃないか?」とそれまでの自分に疑問を持つようになる流れが無理のないものになっている。 「ジェネレーションX」では、若者言葉で延々としゃべりまくる青年に、主人公と同様私もウンザリしてくる。しかし止まらない、わけがわからない!と思っていると、そのおしゃべりが次第に輝いてくるのだ。主人公がおしゃべりの意味に次第に気がついて行くタイミングと読者の私が気がつくタイミングが重なり、主人公の感動と私の感動が重なる。森絵都さんに、気持ちの良い流れに乗せていただいた気がする。そして、そこで「終わり」とはならない。主人公は最後に青年を手助けするためちょっとした行動に出る。「あなたも主人公のように、一歩踏み出すことができるのよ。」という森絵都さんの柔らかな微笑みが見えるようだ。 | ||||
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タイトル作「風に舞いあがるビニールシート」を含む全6編からなる短編集。それぞれに通低するのは、人が迷いをふっきる瞬間となるだろうか。 国連機関で働く夫婦を描いたタイトル作は、愛と使命のはざまで逡巡し、すれ違っていく二人の姿が印象的だ。難民救済の重い現実を盛り込みつつ、スッキリとまとめ、ラストは清々しくも淡い感動を呼ぶという短編にしては充実した内容になっている。 本作品集の他の収録作も、背景や主人公の年代、性別、置かれた立場や、シチュエーションは異なるものの、読後感がとても爽やかである。 作品の中で語られる、専門的な分野に対する著者の知識量には脱帽。 | ||||
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森絵都さんは初めて読んだのですが、なんでもっと早くに読まなかったんだろうと悔しくなった。まったくカラーの違う短編で、でも底に流れる人間ドラマと、じんわりくるユーモアが抜群。作者のほかの作品も読んでみたいです。 | ||||
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生き方を考えさせられる本。6本の短編が収録されている。どれもいい話である。忘れていた感情や忘れてはいけない気持ちに気がつかせてくれる。表題作の「風に舞い上がるビニールシート」は2006年上半期の直木賞受賞作品。この作品は自分の心をえぐるように入ってくる作品。愉快に読める話ではないが、作品としてすばらしい。この他に気に入った作品は「犬の散歩」「守護神」「ジェネレーションX」。自分の生き方について考えさせられる。 以下、個別作品の感想。 ◎器を探して 私がよく知る岐阜県多治見市での器探しの物語。スイーツを撮影するために、それを乗せる器を探す。クリスマスイブに東京から出張を命ぜられ、恋人との重要な約束を果たせなくなってしまう。シチュエーションだけでもドキドキしながら読める。そして、スイーツに映える器に出会うまでの話は、新しい恋人を見つけるかのよう。偶然の出会いが必然と思ってしまうのは、器探しが恋愛と同じであることを暗に示している。結末はもう少し先まで物語を進めてもよかったのではないかと思う。前菜だけ食べて終わったみたいな感じだ。そこだけが物足りないところ。 ◎犬の散歩 えぇ話や。読んでいて涙が出そうになった。犬を飼っている人ならこうなってしまう気持ちを理解してもらえるだろう。ええ話である。 ◎守護神 最後の方で明らかになる登場人物の背後にあるストーリーに瞠目した。格好いい生き方だなあと。元気をもらえた。これもええ話である。 ◎鐘の音 不空羂索(ふくうけんじゃく)という仏像と交わるシーンが印象的な物語。 ◎ジェネレーションX 石津の生き方が格好いい。格好悪いように見えるけど格好いい。 ◎風に舞い上がるビニールシート 風に舞い上がるビニールシートはどこかに飛んでいって消えてしまう命を表現している。地球上にははかなく奪われる命が、今もどこかで散っている。誰かかがその命をきちんと見なければいけない。誰かがその命が飛ばないように押さえないといけない。難民を救う仕事に携わる命のストーリー。心をえぐられたような読後感だった。 | ||||
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「器を探して(2006年3月号・256号、「美濃焼の器」を改題)」、「犬の散歩(2006年5月号・257号)」までは他の作家に秀でる/差別化されるとも思えないが、「守護神(2006年7月号・258号)」で呆気、とても気に入る。 「鐘の音(2006年9月号・259号、「残響」を改題)」も好い味で、元が童話作家だけに、お話に逃げ道がない。 別のところで書いたが、構成が緻密なので読者が寄り添って読むのに最適。 その代償は別の結末が想起されないとなるが、それはまた別の作家に任せよう。 「ジェネレーションX(2006年11月号・260号)」でやや失速し(つまり結末が見えるお話なのに経緯まで見えてしまう)、「風に舞いあがるビニールシート(2007年1月号・261号)」では大量の資料をバックボーンに究極の恋愛劇を語る。 もっともこのお話も結末の予想は付くし、資料が煩い(世間に反感を持たれるような意見を言わない)部分も併せ持つので短篇集中の最高作ではないだろう。 ……というようなことを書くとアンチが騒ぐんだよね。 | ||||
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生きていく希望、元気をもらえた。 表題作を含む6つの短編集。 共通するのは、日々辛いことだらけの中で、最後には明るい兆しで終わる。 短編ながらものすごく濃密な物語。 自分の好きなことに没頭すればいいんだ。 思い出したのは、映画「阪急電車 片道15分の奇跡」のキャッチコピー。 「死にたいほど辛いわけじゃないけど、 辛くてどうしようもない気持ちを抱えながら生きている」 背景が違うのは、各主人公はその仕事が好きということだ。 自分が気にいったのは、3つ。 『器を探して』 洋菓子職人を目指していた弥生が、カリスマ・パティシエの元での奔走物語。 翻弄されていた彼女が、最後には主導権を握っていくような終わり方。 『守護神』 夜間大学の卒業に足りない単位修得のため代筆依頼に奔走する社会人学生・祐介。 軽そうに見える彼の代筆の勘違い、勉強熱心さがわかるどんでん返し。 『ジェネレーションX』 クレーム訪問に向かう野田が、車中で取引先の年下の行動に嫌悪する。 しかし、クレーム対応への真剣さ、そして、若さあふれる馬鹿っぷりに いつしか惹きこまれ、意気投合、晴れ晴れとした終わり方。 苦悩。 真剣に取り組んでいるからこそ、向き合うことになる壁。 各主人公の重苦しい状況が伝わってくる。 世の中には、いろいろな仕事、境遇があることに気付かされる。 しかし、一人で生きているわけではない。 ちゃんと見守ってくれている人がいる。 それは、真剣に生きているからこそのこと。 この本が教えてくれる。 著者は、この本を書くにあたり、 どれだけ、参考文献を読み漁ったり、体験したのだろうか? 緻密な内容に敬服する。 第135回(平成18年度上半期) 直木賞受賞作 | ||||
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短編集だから少し物足りなさを感じるけれど、それぞれよくまっとまっています。 | ||||
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久しぶりに直木賞受賞作を読みましたが、相変わらず焦燥感が漂います。 それぞれのストーリーは多少のハッピーエンドで終わるものの、直木賞受賞作はその文章内容よりもその背景を読ませる作品が多い。 風に舞いあがるビニールシートが1つの象徴となり、仕事と性別と社会問題を同時に考えさせてくれる本書は、2000年以降の人々の価値観の変化をうまく捉えている。 1度読めば、もう1度読みかえそうとは思わないが、1度で静かにインパクトを残す作品でした。 | ||||
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とてもよく出来た小説だと感じた。 文章は精緻だし、比喩も作者の素晴らしい感性を感じさせる。 そして、国連難民高等弁務官という設定と風に舞いあがるビニールシートというタイトルは、読者に大きな期待を抱かせる。 ただ、残念なのは、主人公の夫であった、エドが情熱を注ぐ、世界の難民を救うという仕事の内容があまり描かれていない。 何故愛し合っていた二人が離婚をしなければならなかったのか、妻より仕事を難民救護という仕事にのめりこむエドの背景 などが見えてこない。 エドが死ぬシーン、現地の女性が打たれるのをかばって死んでいくというのはちょっと安っぽい感じがした。 そして、最後に主人公が、あんなに嫌がっていた海外の現場、アフガニスタン駐在を希望するところも 無理やりという感じがする。 タイトルや設定の割に、日本の家庭内で起きている男女のすれ違いとあまり変わらないという印象が残った。 | ||||
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難しくなくすんなり読めて、色んな感動もちゃんと与えてくれました。 | ||||
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内容はさわやかかつ丁寧な描写がきにいってます 他の作品も機会があれば読んでみたくなりました | ||||
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直木賞を受賞した表題の「風に舞いあがるビニールシート」他5作品、計6つの短編を集めたもの・・・ どれもが力作で外れなし、物語として完成度も高く、飽きることなく読める作品です・・・ どの作品もごく普通の人・・・・が主人公とは言えないけれども・・・・ なんとなく自分の心の奥底に眠らせた、人間が人間としてのプライドを持って生きる何か・・・ それらを呼びさましてくれるような作品ですね 読後にすがすがしい気持ちになりました | ||||
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6編からなる直木賞作品ですが、どれもそれぞれに賢明に生きる 人間力のようなものを感じました。 元気をもらえた、そんな作品でした。 登場する人物のそれぞれのキャラに愛着をもてました。 6編すべて満足度が高かったです。 | ||||
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短編小説集です。 この本は他の小説と比べてちょっと変わってます。 というのも主人公の個性が強すぎてなかなか共感しにくい小説なのです。 不満を持ちながらも天才パティシエに尽くし人、犬を救うために水商売をする人など、ふと読んだだけでは共感できない人がこの本では多いのです。 ただ読み進めていくと、その人はその人でちゃんと考えがある。 共感できるけど共感できない不思議な短編集です。 自分にとって大切なものってなに?と考えたい人はおすすめの本です | ||||
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森絵都の短編集。元々児童文学で有名になった作家だが、これは大人向けの作品集。それぞれ異なる個性の物語が以下のように6編収められている。 ・器を探して ・犬の散歩 ・守護神 ・鐘の音 ・ジェネレーションX ・風に舞い上がるビニールシート 柔らかく緻密な文体。繊細な表現力。スキのない構成。ストーリーにくるんである人間性に関する力強いメッセージ。仏像やUNHCRを取り上げた作品は、あらかじめしっかり裏づけ調査を行って書き上げたことが、本文からも最後にさりげなく書かれている参考資料一覧からも読み取れる。粒ぞろいの名品集。第135回直木賞受賞作。 | ||||
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葛藤しながらも、たぶん普通以上に何かに拘っている人のストーリー。普段、まあいいかと終わらせている自分に気付かされます。 | ||||
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6編の短編の中、印象に残ったのは「器を探して」と表題の「風に舞いあがるビニールシート」です。「器を探して」は気まぐれな女性上司に振り回され、恋人と仕事との間で悩む優しい女性の話・・・かと思っていましたが、いやいやどうして。最後の数頁ですっかり見方が変わりました。「風に舞いあがるビニールシート」はタイトルから想像する日常的なストーリーとは全くかけ離れた、国連で難民の救済に奔走する男性とそんな男性を愛してしまった女性の話ですが・・・・私は通勤電車の中で読んでいたにも拘わらず、不覚にも涙を溢してしまいました。お勧めです! | ||||
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働く女性の問題から、果ては国連の難民問題まで、多種多様な6つのテーマを扱った短編集。「いつかパラソルの下で」でも感じましたが、この方は文章を組み立てる力、とくに会話のセンス、ユーモアのセンスは抜群ですね。 個人的には「鐘の音」という作品が一番気に入りました。仏像の美しさに魅了された修復師が、自分とその仏像だけの世界に閉じこもっていく姿が妖しげ描かれていて、読み応え十分なお話です。とくに、その仏像への一途な愛情が、実に残酷な形で終焉を迎えるのが面白いです。自分にしか救えないはずだった存在を、自ら壊し、そして決定的に汚してしまう。その喪失感が何とも言えません。おまけの大オチも、さらにひとひねりといった感じで楽しませてくれます。 全体として、何かに一生懸命になっている人に、耳元でそっとエールを送るような、ほんのり暖かい話が満載なので、落ち込んだりしたときに読んでみるのもいいのではないでしょうか。 | ||||
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「お金より大切な何かのために懸命に生きる人々・・」と、この6短編の主人公たちのことを文春文庫は紹介する。そんな綺麗な言葉だけでは彼らのことを表現できてない気がして、自分の頭の中で言葉を捜し始めた。 6人の主人公たちは一生懸命に生きていて、実は人生の大事な曲がり角に差し掛かっている。そして気まぐれなボスか男かを選ぶよう迫られる弥生も、代筆依頼してでもレポートを仕上げて卒業しようとしている裕介も皆、懸命に乗り切ろうとするあまり実は自分を見失いかけている。しかし彼らの側には誰かがついていて、その誰かとの会話を通じて自分の人生のポイントを再び見出していく。まぁ観音と対話するしかなかった潔はちょっとかわいそうだったけど、テンポの良い会話を通じて彼らの心の霧がすうっと晴れていく様は、読んでいて清々しくまた心が暖まる。 これだけの文章力を持つ森さんだが、本職は児童文学で小説家としては寡作だ。会話描写と行動描写で物語を構成するしかない児童文学でこそ、このテンポの良さは養われたのだろうか。次作を読んでみたい作家だ。 | ||||
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まずは表題作。現地採用という殻に閉じこもっていた主人公が、ついに危険な現場に赴くことを決意するまでの心の動きを描いています。国際機関に勤務しながらも、なお性役割を引きずって生きている日本人女性を、異なる文化背景を持つ外国人の元つれあいがどう見ていたかなど、なかなか興味深い記述も多く、直木賞受賞にふさわしい仕上がりとなっているように思います。 「器を探して」というタイトルは、真に自分に見合うような男性を探してという意味も込められているのでしょうか。まあ「俺と仕事のどっちを取るんだ?」という男性には、間髪入れず「仕事!」と答えて、さっさと別れるのがよろしいかと思いますが、結末は… 「犬の散歩」では、ふとしたきっかけから、安易な専業主婦の日常に訣別し、ハードな毎日に身を投じてゆく女性を描きます。「守護神」では、ひたむきに生きる女性が、ともすれば落ちこぼれそうな主人公の男性に元気を与えています。 いずれの作品も、落ち込んでる人にはぜひすすめたい物語ばかりです。ここに登場するような女性たちがこの国の主流であればいいなと思いますが、まあ現実は残念な状況です。 残る2作品は、打って変わってほぼ男性ばかりが登場します。 「鐘の音」はミステリ仕立てのお仕事小説。上記4作品を生み出した作家が、一方でこんな作品も書けるということに、大きなポテンシャルを感じました。 「ジェネレーションX」もなかなか後味のよい友情物語で、6編全てが帯にある「お金よりも大切な何かのために懸命に生きる」というコンセプトで一貫していることを確認しました。 | ||||
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