切羽へ

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評判

切羽への評価:

3.98/5点 レビュー 43件。 B ランク

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平均点3.98pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全72件 61〜72 4/4ページ
No.12
(4pt)

まずまず楽しめる作品

直木賞作品なので読んでみた。直木賞作品の中でも文章は平易なほうだと思われる。スラスラと簡単に読み進められる。物語の展開にもスピード感はない。1その島の九州弁?の味わいとか、2比喩に味がある所などが魅力で、なんとか放り出さずに読了できた。

同じ平易な文章の川上弘美さんのような純文学的な味わいも少しあった。微妙な心理の綾を文章の、行間に織り込もうとしている努力は、決して全否定はできないくらいの成功はもたらしている。
主人公の他に、夫、石和、本土さん。月江、本土さんの妻。3人の男と3人の女が、濃密にと言うよりも、淡くそして時に一瞬、激しく絡む。その複雑な関係性は、なかなかに印象深く、直木賞に値する文芸性を持っていた。
またしずかさんという老いてゆく女性も別角度から本作を、印象深く彩っている。
石和に魅かれてゆく主人公の物語であるが、上記7人の書き分けも、学校の教師や子供たち、島の住民もクリアに印象に残り、創作空間はかなり強固に構築されていた。

自分個人の印象ではクライマックスで主人公と石和が二人で話す場面よりも少し前の、保健室で彼女が石和の足の指を治療処置する場面の「ドキドキ感」が、読んだ価値があった場面だと思えた。

そのようなことを読後に反芻してみると、直木賞を取ったことに不満はない佳作という結論にだけ行き着く。絶賛も出来ないが、読み通せばきっと納得できる読者が多いであろう、丹念に作られた文芸作品だ。
田舎の倦怠感と言うよりも、都会的な人間観察眼でもって人を見ている。淡い文体、淡い展開には、強く胸を揺すられる感じはあまりない。また主人公と石和のやりとりが最後まで薄すぎる。ずっとそうであるがクライマックスでも「切羽まで行きつかない」としか言えない。このあたりが弱く、そこにこの作品の限界があるとは言えるけれど、作者に感謝できる1作だと思えた。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.11
(4pt)

まずまず楽しめる作品

直木賞作品なので読んでみた。直木賞作品の中でも文章は平易なほうだと思われる。スラスラと簡単に読み進められる。物語の展開にもスピード感はない。1その島の九州弁?の味わいとか、2比喩に味がある所などが魅力で、なんとか放り出さずに読了できた。

同じ平易な文章の川上弘美さんのような純文学的な味わいも少しあった。微妙な心理の綾を文章の、行間に織り込もうとしている努力は、決して全否定はできないくらいの成功はもたらしている。
主人公の他に、夫、石和、本土さん。月江、本土さんの妻。3人の男と3人の女が、濃密にと言うよりも、淡くそして時に一瞬、激しく絡む。その複雑な関係性は、なかなかに印象深く、直木賞に値する文芸性を持っていた。
またしずかさんという老いてゆく女性も別角度から本作を、印象深く彩っている。
石和に魅かれてゆく主人公の物語であるが、上記7人の書き分けも、学校の教師や子供たち、島の住民もクリアに印象に残り、創作空間はかなり強固に構築されていた。

自分個人の印象ではクライマックスで主人公と石和が二人で話す場面よりも少し前の、保健室で彼女が石和の足の指を治療処置する場面の「ドキドキ感」が、読んだ価値があった場面だと思えた。

そのようなことを読後に反芻してみると、直木賞を取ったことに不満はない佳作という結論にだけ行き着く。絶賛も出来ないが、読み通せばきっと納得できる読者が多いであろう、丹念に作られた文芸作品だ。
田舎の倦怠感と言うよりも、都会的な人間観察眼でもって人を見ている。淡い文体、淡い展開には、強く胸を揺すられる感じはあまりない。また主人公と石和のやりとりが最後まで薄すぎる。ずっとそうであるがクライマックスでも「切羽まで行きつかない」としか言えない。このあたりが弱く、そこにこの作品の限界があるとは言えるけれど、作者に感謝できる1作だと思えた。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545
No.10
(4pt)

時間をえぐる

緩やかに時間が流れていく島人の雰囲気を感じる。妻として存在する主人公に、本土さんの愛人のコントラストが面白い設定だと思った。主人公は決して浮気などしなくて、そんなことは文章の間から染み出しているのに、あやうい心の動きを望んでしまう自分に愕然とする。
島人の方言が物語をよりゆったりと運んでいく。ひとつの命が消えることも、同僚が島を去っていくことも、ひとつも不自然ではない。あっても仕様がないこと。受け入れながら島人として、先生として妻として暮らして行くことにひとつも動じない。力強い物語だ。
食事の場面が多く出てきて、楽しい。そんなところも安心する。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.9
(4pt)

時間をえぐる

緩やかに時間が流れていく島人の雰囲気を感じる。妻として存在する主人公に、本土さんの愛人のコントラストが面白い設定だと思った。主人公は決して浮気などしなくて、そんなことは文章の間から染み出しているのに、あやうい心の動きを望んでしまう自分に愕然とする。
島人の方言が物語をよりゆったりと運んでいく。ひとつの命が消えることも、同僚が島を去っていくことも、ひとつも不自然ではない。あっても仕様がないこと。受け入れながら島人として、先生として妻として暮らして行くことにひとつも動じない。力強い物語だ。
食事の場面が多く出てきて、楽しい。そんなところも安心する。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545
No.8
(5pt)

誰もが口にしないが知っている秘密

離島の日常である。絵描きの夫と静かに幸せに暮らす養護教諭である。官能小説にも恋愛小説にもなりようもない設定である。寿命の尽きそうなばあさんが、淫夢を見ているらしいということが、大事件のように囁かれてしまう平穏な離島である。
 そんな小説世界なのに、非常にエロチックで、たまらなく緊張感のある恋愛小説である。物理的にはほとんど何も起こらない。手さえ握り合わない。だがセイと石和は、間違いなく惹かれ合っている。周囲の何人かも、確実にそのことに気がついている。気づきながら誰も言葉にしない。
 独白も解説もなくそんな様子を描ききっている。もしも何かが起こってしまったら、とたんにつまらない小説になってしまったかもしれない。ひょっとしたら、すべての女性が一つは持っているに違いない秘密を、言葉少なに描ききっている。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.7
(5pt)

誰もが口にしないが知っている秘密

離島の日常である。絵描きの夫と静かに幸せに暮らす養護教諭である。官能小説にも恋愛小説にもなりようもない設定である。寿命の尽きそうなばあさんが、淫夢を見ているらしいということが、大事件のように囁かれてしまう平穏な離島である。
 そんな小説世界なのに、非常にエロチックで、たまらなく緊張感のある恋愛小説である。物理的にはほとんど何も起こらない。手さえ握り合わない。だがセイと石和は、間違いなく惹かれ合っている。周囲の何人かも、確実にそのことに気がついている。気づきながら誰も言葉にしない。
 独白も解説もなくそんな様子を描ききっている。もしも何かが起こってしまったら、とたんにつまらない小説になってしまったかもしれない。ひょっとしたら、すべての女性が一つは持っているに違いない秘密を、言葉少なに描ききっている。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545
No.6
(4pt)

微妙な文章の彩

井上荒野の作品は、短編は読んだことはあるのですが、長編は今回が初めてです。
今回読んでみて、非常に読みやすくどんどん読み進むことが出来ました。

物語は、九州のとある小さな島での物語です。
そこで養護教諭を務めるセイが主人公です。彼女は島育ちの女性で画家の夫も島育ちです。
この島へ新任の教師石和がやって来て、そんなセイの心を乱します。

ここで、タイトルの「切羽」が意味を持ってきます。
「切羽」とは、「トンネルを掘っている一番先端の場所」と定義されており、更に掘り進まなければ繋がることのない地点です。
セイはこの「切羽」に立ち、「妻」という立場に従順です。同僚の月江からは「妖怪」とまで揶揄されますが、この「切羽」までくるのが彼女の限界でした。

この小説自体全体が「切羽」を意識し、セイのギリギリの心情を追って行きます。本人の意識では、それが周りに知られていることは意識されてないのですが、それを周りの言葉、態度によって既知の事実として語られます。この微妙な文章の彩が堪らない作品です。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.5
(4pt)

切羽とは

今回、直木賞受賞とのことで井上さんの本を初めて読みました。
サラサラ流れる文体は読んでいて全く苦痛にならないので4時間ほどで読みきってしまいました。
「切羽」とは帯では「それ以上先へは進めない場所」とされていますが、
作品中では「トンネルを掘っている一番先端の場所」と表現されています。
切羽をどちらで取るか、またはまったく別の意味と取るかで物語はがらりと色を変えます。
(私は後者の表現を取りましたが。)
トンネルはセイと石和の惹かれあう思い。切羽は切羽であり続ける限り絶対に突き抜けることはない。
切羽が突き抜けてしまったらそれはトンネルの開通を意味するからです。
切羽までしか行かなかったセイと切羽を超えてしまった周囲の人物たちが対照的に描かれていて、
セイの揺れ動く内情が巧妙にあぶりだされています。
さらりと読める文章の中にいろいろなものが隠されている。
面白い作品だと思いました。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.4
(4pt)

微妙な文章の彩

井上荒野の作品は、短編は読んだことはあるのですが、長編は今回が初めてです。
今回読んでみて、非常に読みやすくどんどん読み進むことが出来ました。

物語は、九州のとある小さな島での物語です。
そこで養護教諭を務めるセイが主人公です。彼女は島育ちの女性で画家の夫も島育ちです。
この島へ新任の教師石和がやって来て、そんなセイの心を乱します。

ここで、タイトルの「切羽」が意味を持ってきます。
「切羽」とは、「トンネルを掘っている一番先端の場所」と定義されており、更に掘り進まなければ繋がることのない地点です。
セイはこの「切羽」に立ち、「妻」という立場に従順です。同僚の月江からは「妖怪」とまで揶揄されますが、この「切羽」までくるのが彼女の限界でした。

この小説自体全体が「切羽」を意識し、セイのギリギリの心情を追って行きます。本人の意識では、それが周りに知られていることは意識されてないのですが、それを周りの言葉、態度によって既知の事実として語られます。この微妙な文章の彩が堪らない作品です。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545
No.3
(4pt)

切羽とは

今回、直木賞受賞とのことで井上さんの本を初めて読みました。
サラサラ流れる文体は読んでいて全く苦痛にならないので4時間ほどで読みきってしまいました。
「切羽」とは帯では「それ以上先へは進めない場所」とされていますが、
作品中では「トンネルを掘っている一番先端の場所」と表現されています。
切羽をどちらで取るか、またはまったく別の意味と取るかで物語はがらりと色を変えます。
(私は後者の表現を取りましたが。)
トンネルはセイと石和の惹かれあう思い。切羽は切羽であり続ける限り絶対に突き抜けることはない。
切羽が突き抜けてしまったらそれはトンネルの開通を意味するからです。
切羽までしか行かなかったセイと切羽を超えてしまった周囲の人物たちが対照的に描かれていて、
セイの揺れ動く内情が巧妙にあぶりだされています。
さらりと読める文章の中にいろいろなものが隠されている。
面白い作品だと思いました。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545
No.2
(4pt)

うつろう

行間にあふれるものを掬いあげながら読まないと、と思いつつもさらさらと
読めてしまう文体につい先を急いでしまう。
「三月」から月を追って、ぐるりと季節がめぐり「四月」まで。
舞台は九州の小さな島。主人公のセイは島の小学校の養護教諭。夫は画家だ。
このセイの秘めた恋心の移ろいが綴られてゆく。
新任教師・石和に惹かれながら、なにも進展はない。
石和の気配やことばの端々や、行動の意味するところや、さまざまな
触れることのかなわない彼の痕跡に、セイはただ心を這わせる。
その描写が妙に官能的だ。
心に夫以外の人がいて、それを周りに気取られまいとはするが、
醸しだされる凝縮された、ある感じが非常にリアルで
ちりちりと灼かれるセイの胸のうちが滲み出る。

のんきな島暮らし。なんでも筒抜けだが、それと認めあってしまえば気楽なものだ。
まわりの人々も性に関することでさえ鷹揚に口にしてからかったりするほどだ。
セイとは対照的な位置に在るのが、島の住民も公認の奔放な不倫を続ける
女教師・月江だ。月江の派手な恋愛模様が描かれることで、
セイの心のたゆたいが匂やかに引き立つ。
登場人物のなかで忘れてならないのは、老女・しずか。「きっきっき」といやらしい笑い方を
してはセイをやりこめることで、コミュニケーションをとるばあさんだ。
病を得て入院中でも、命の残り火を点すように口にする男の名前。エロティックなのだが
むしろその思いにあるエネルギーに、私は気圧された。

セイの恋は「切羽」ということばに象徴されているが、これは荒野さんの妹の名前
でもあるという。としてみれば、荒野さんには「切羽」のイメージも意味も身に親しんだもの
であったに違いない。

ラストのセイの行動が意味するところは、二通りの解釈ができそうだ。
しばし、思いを致し余韻を楽しんだ。
切羽へ Amazon書評・レビュー: 切羽へより
4104731021
No.1
(4pt)

うつろう

行間にあふれるものを掬いあげながら読まないと、と思いつつもさらさらと
読めてしまう文体につい先を急いでしまう。
「三月」から月を追って、ぐるりと季節がめぐり「四月」まで。
舞台は九州の小さな島。主人公のセイは島の小学校の養護教諭。夫は画家だ。
このセイの秘めた恋心の移ろいが綴られてゆく。
新任教師・石和に惹かれながら、なにも進展はない。
石和の気配やことばの端々や、行動の意味するところや、さまざまな
触れることのかなわない彼の痕跡に、セイはただ心を這わせる。
その描写が妙に官能的だ。
心に夫以外の人がいて、それを周りに気取られまいとはするが、
醸しだされる凝縮された、ある感じが非常にリアルで
ちりちりと灼かれるセイの胸のうちが滲み出る。

のんきな島暮らし。なんでも筒抜けだが、それと認めあってしまえば気楽なものだ。
まわりの人々も性に関することでさえ鷹揚に口にしてからかったりするほどだ。
セイとは対照的な位置に在るのが、島の住民も公認の奔放な不倫を続ける
女教師・月江だ。月江の派手な恋愛模様が描かれることで、
セイの心のたゆたいが匂やかに引き立つ。
登場人物のなかで忘れてならないのは、老女・しずか。「きっきっき」といやらしい笑い方を
してはセイをやりこめることで、コミュニケーションをとるばあさんだ。
病を得て入院中でも、命の残り火を点すように口にする男の名前。エロティックなのだが
むしろその思いにあるエネルギーに、私は気圧された。

セイの恋は「切羽」ということばに象徴されているが、これは荒野さんの妹の名前
でもあるという。としてみれば、荒野さんには「切羽」のイメージも意味も身に親しんだもの
であったに違いない。

ラストのセイの行動が意味するところは、二通りの解釈ができそうだ。
しばし、思いを致し余韻を楽しんだ。
切羽へ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 切羽へ (新潮文庫)より
4101302545