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(短編集)
あまたの星、宝冠のごとく
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あまたの星、宝冠のごとくの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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名手伊藤典夫による1篇をのぞいて、残りの9篇は筋金入りの三流ホンヤクカ小野田和子によるもの。 読んでいる途中で「ん? よく分からんぞ」と思うような部分があったら、それはすべて小野田訳のせいだと思ったほうがよい。そして、そうした思考の流れを中断させるような部分が実にたくさんある。ウィアーの「火星の人」でとんでもない誤訳をたくさんやらかしていた小野田和子氏の翻訳だが、ここでもゼッコーチョーである。 最初の作品「アングリ降臨」を読みはじめたが、冒頭からして状況がつかめない。がまんしてしばらく読み進めてはみたものの、よく分からない部分が続出だったので、英語版をキンドルにダウンロードし、初めからおかしな部分を照らし合わせてみた。どうやら小野田和子氏は、原文を読んでいるときに意味が分からない箇所に出くわすと、コンテクストを理解しないまま、辞書を引いてテキトーに訳語を当てはめ、直訳ですませているらしいのだ。ご自分でも状況が分かっていないから、翻訳を読まされている読者はなおさらわけが分からない。 最初の作品でいくつも低レベルな誤訳をみつけたあとは、なんだか真剣に読むのはジェームズ・ティプトリー・ジュニアに対する冒とくに思えてきた。もう一つか二つはがまんしようと、数篇飛ばして「ヤンキー・ドゥードゥル」を読んでみた。数ページ読み進めたところで、なんの脈略もなくいきなり銃が一発ぶっ放され、皆が「気をつけ」の姿勢を取る場面にでくわす。とつぜんの発砲だから、天才バカボンの「本官さん」が登場したのかと思ったが、どうもそうではなさそうだ。きっとまた、この三流ホンヤクカ小野田和子がやらかしたなと思いながら原文にあたったら、もとの英文 (...there is a bark, and all come smartly to attention.) から聞こえてきたのは「銃声」ではなく「咳払い」だった。銃声が突然ひびいたから「気をつけ」をしたのではなく、お偉いさんが「えへん!」と咳払いをしたから、兵隊たちが「気をつけ」をして居ずまいを正しただけであった。そもそも、吉本新喜劇じゃないんだから、とつぜんの銃声に「気をつけ」をする阿呆がどこにいるというのだろう。役者のそろった演芸なら爆笑ものだが、訳者の劣った文芸は、失笑の対象でしかない。 これを最後と決めて読んだ「もどれ、過去へもどれ」でもいくつも低レベルの誤訳、悪訳が出てくるのだが、極めつけはピストルを相手の背中に当てがって引き金を引く場面。小野田訳ではこうなっているーー「彼の愛する心を吹き飛ばした」。おいおい、まさかあんた heart を訳し間違えて、本来「心臓」とすべき部分を「心」とやっちまったんじゃないだろうな! そんな中学生でもやらないような間違いをやっちまうプロの翻訳家っているわけないよな? そうひとりごちながら、原文にあたってみた。 ...and blew his loving heart out. おお、中学生でもやらない間違いをやるホンヤクカがここにいた! 案の定、原文は「そして、いとしい彼の心臓を撃ちぬいた」である。 アンディ・ウィアーの「火星の人」で、You're pissed. (きみ、怒ってるだろ)をなんの脈略もなく「ちびったな」と訳した人だから、わたしは驚きはしない。あのときは、直後に話し手が「15の歳から君と一緒にいるから、君が be pissed ならすぐわかる」と言っているのだから、常識を働かせれば「ちびった」は誤訳だと気づきそうなものだが、気づかないのが小野田サマなのである。この人だったら、全校集会でざわついている生徒を黙らせるのに、校長先生にピストルを持たせて一発バキューンと撃たせるに違いない。冗談ではなく、この人の訳文を読んでいると、ほんとうにそういうことが起りえるのだ。ただ、ただ、ひとえに、あきれるのみである。せっかく買った文庫本ではあったが、全部には目を通さぬまま、小野田和子訳を読むのをやめた。 わたしの頭は訳(わけ・やく)の分からない日本語を読まされて、ぐちゃぐちゃである。一篇だけ入っている伊藤典夫氏の翻訳で、悪文と誤訳の断片でとっちらかった脳内の清浄につとめたが、もう、小野田和子の翻訳とは縁を切ろうと思う。いや、正直なところ、この筋金入りの三流ホンヤクカによる「大笑いトンデモ誤訳」をもっと見てみたい気持ちもないわけじゃない。"怖いもの見たさ" にも似た感覚だ。しばらく時間をおいて気力が充実してきたころ、中古(定価で小野田訳を手に入れるのはバカらしい)で小野田女史の最近の翻訳「アルテミス」を手に入れて、ウィアーの原文と比べてみようかとも思っているが、レスリングやボクシングやトランプ、日大ネタ、芸能ネタもきちんと追っていかなくてはならないから、人生なかなか忙しい。 | ||||
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