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(短編集)

伝奇集



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【この小説が収録されている参考書籍】
ボルヘス「伝奇集」
伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集の評価: 4.12/5点 レビュー 41件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全30件 21~30 2/2ページ
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No.10:
(4pt)

膨大な書物の館の、短い物語。

'@神秘主義者たちの描く宇宙のかたち。
'A危機に直面する人々の脳裏にひらめく人生訓。

ボルヘスの文章には、'@と'Aが端から端まで敷き詰められています。これらが軽く流せる人でないと、この人の文章の本意を汲むことは難しいでしょう。
「作家のための作家」と呼ばれた所以です。

彼の書く、感傷にひたる暇もない簡潔な文体はチェスタトン的で、読むのに少々骨が折れます。彼の描く世界は広大無辺でありながら、自壊する運命をも内包しており、実に複雑なのですが、ボルヘスは物語の骨子を「膨大な知識の独り語り」によって表現し、様々な世界をほんの10-20頁で語り終えてしまいます。短編一篇一篇が、伝奇SF一冊に相当する密度の濃さです。
――――――――――――――――――――――――
想像から人間を創り出し、消滅するまでの過程を描く「円環の廃墟」
イスカリオテのユダの行為についての論考群「ユダについての三つの解釈」
ほとんど要約のようで在るために、形而上の部分に比重が傾く推理小説「死とコンパス」
ひとつの言葉に対する仮定から広がる解釈が、現実世界と相反し合うまでを描く「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」
アカシックレコードのような「無限に続く図書館」の言語の混乱を描く「バベルの図書館」
などを含む、全十七篇。
――――――――――――――――――――――――
下に示したボルヘスの宣言文から、彼の小説作法が簡単に理解できると思います。いきなり核心に迫る外国語の新語句が現れるところや、全体を'まないと意味が分からないところ、そして、全体が'めた瞬間になるほどと思えるところが。

「二つの美学が存在する。鏡の受動的な美学と、プリズムの能動的な美学。前者に導かれて芸術は、環境もしくは個人の精神史の客観的な模写となる。後者に導かれて芸術は、自らを救い、世界をその道具とし、空間と時間という牢獄から遠く隔たったところで、独自のヴィジョンを創出する。これが&lt;ウルトラ>の美学である。その意思は創造にある。宇宙に思いもよらぬ切子面を刻むことにある」
伝奇集 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.9:
(5pt)

無限の迷宮

おそらくこの作家の短編集の中では一番、密度が濃い短編集だと思います。 一つ一つの短編が非常によくできていて何度も読むとさらに理解や発見が広がり一冊だけでとても長く楽しめます。 この作家の短編集は不死や連続といった無限性がテーマになっている作品が多いです。 ひとことであらわすと迷宮といわれる所以でしょう。
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4003279212
No.8:
(5pt)

未来を予言した本

何度となく読み返した短編集。 今までにこれだけ私に影響を 与えた小説はあったかろうか? この小説は未来をも予見した1冊とも言えます。 「バベルの図書館」は現在Googleが行なっているミリオンズ ブックサーチを想起させるし、「記憶の人、フネス」は 今流行の脳科学ブームの先鞭をつけた内容とも言えます。 また「バビロニアのくじ」は柄谷行人もそのアイデアを 評価しています。 短編小説としては難解な部類だと思います。 私も何度か再読して理解した短編もあります。 小説の内容を圧縮すると哲学に近づく。 そして文体は極めて詩的です。 最高の小説です。
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4003279212
No.7:
(4pt)

小説のおもしろさ、読書の幸福

~エンターテインメント小説を読むなんて暇つぶしとしての意味しかない。何の腹の足しにもならない、人生の時間の浪費だ。
というような非常に荒んだ考え方にとりつかれてしまっていた私は、その頃数年、新書や選書、学術文庫などしか手に取らなかった。
しかし、たまたま気が向いて読んだこの本で、小説のめくるめくような面白さを思い出した。上質な愉悦の~~時間を過ごすことこそ人生の良質な使い方だということに気づくことができた。(齢をとったのかも知れないが。)
その後幸運にもG.マルケスやU.エーコをはじめ私を軽い酩酊感とともに素敵な異世界へと迷い込ませてくれる小説家たちに次々と出会うことができ、子供の頃感じていたような読書の楽しさが蘇ってきた。何度も読み返してみたい小説って、そうだ、あの~~頃もあったなあ。~
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4003279212
No.6:
(4pt)

難著ですが、それだけに本質に訴えかけてきます

■この本をお勧めできるのは・・・
物語をお求めの方にはお勧めしません。
『小説には哲学的、観念的なものがないと物足りない』と感じる方にはお薦めです。
■この本の構成
この本は、『八岐の園』と題された前半と、『工匠集』と題された後半に分けられていますが、前半に非常に難解な幻想的、観念的、記号的作品がかたまっています。後半は比較的わかりやすい今日の短編小説のスタイルに沿った作品で構成されています。
■本質を映す鏡として
前半の難解な作品群が、小説家としてのボルヘスの真骨頂であると思います。代表作『バベルの図書館』、『バビロニアのくじ』、『円環の廃虚』など、現代社会のどこか空虚な感じと現実感の薄さを象徴しているような作品は、メディアを通して入ってくる直接的な言葉による情報とは違い、また別の角度から現代社会全体(の本質)を認識させてくれるように思います。
個人的には、具体性のある設定と比較的物語性があるという点で、いちばん最初に収録されている『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』という作品がもっとも好みでした。
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4003279212
No.5:
(4pt)

ボルヘス入門書

難いイメージのあるボルヘスですが、意外と多彩で読みやすい本でした。 数多くの短編の中でも私のお気に入りは「トレーン~」「記憶の人、フネス」 着眼点が新鮮で面白く、目からうろこでした。 ミステリー性の高い「八岐の園」「死のコンパス」 特に「八岐の園」は、最後の一文を読んだ瞬間、「やられた」と思いました。 かなりオススメです。 真偽のほどの分からない引用や、哲学めいた言説の多さに 取っ付き難さを感じるかもしれませんが、 価格、入手しやすさ、内容から鑑みても、 ボルヘスの本の中で一番取っ掛かり易い本だと思います。
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No.4:
(5pt)

落ち穂拾い

unoさんのレビューで、既にボルヘスの魅力は語り尽くされていそうなので、まだ話題にのぼっていない作品の落ち穂拾い(笑)
ぼくが特に好きなのは、「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」と「記憶の人、フネス」
「ドン・キホーテ・・・」は、現代において、ピエール・メナール氏が、ドン・キホーテをもう一度書く、という話。
パロディーにするわけでも、書き写すわけでもなく、一言一句まったく同じドン・キホーテを、新しく書く、わけです。
ただそれだけなんですが、作品の最後に『「キリストのまねび」をジョイスやセリーヌが書いたと思えば、その作品にはまったく新しい意味が生じる』といったことがサラっと書いてあってボルヘスの文学観が鮮やかに浮かび上がる仕掛けになっているわけ。
「記憶の人、フネス」は、一転して笑える悲劇。
落ち葉一枚一枚の葉脈の模様まで鮮明に記憶して忘れることができないフネス氏のお話。
このフネス氏、記憶力が良すぎて、昨日のAさんと今日のAさんを別人としてしか認識できない。皺の本数とかが違うからフネス氏にとってはまったくの別人なわけです。
もちろん、深読みしたいひとは、人間のパターン認識の精妙さとかに感じ入ったりもします。
などなど、ボルヘスの短編はどれもこれも何度でも読み返す価値のある傑作ぞろいなので、難解そうだと敬遠せずに、是非。
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4003279212
No.3:
(5pt)

ボルヘス印全開の代表作

ボルヘスの最もボルヘスらしさが凝縮された傑作短篇集。とても短い短篇のそれぞれに無限の宇宙が封じ込められている。ボルヘスの幻想はイメージ先行ではなく逆説的なロジックや観念から生まれてくるところに特徴がある。またその恐るべき博識は言うに及ばず、宗教や古典文学の題材が多いことから難解で学者的な印象があるかも知れないが、実はこの人の小説は徹頭徹尾遊びだというところに最大の魅力があると思う。縦横無尽に引用されるテキストやその出典は必ずしも真偽が明らかではないし、お得意の架空の小説の書評その他のメタフィクショナルな仕掛けもきわめて遊戯的。「数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である」というボルヘス世界の本衊??はその外観に反してとことん軽やかなのだ。
彼の小説は物語ともエッセーともつかないような体裁をとることが多いが、この短篇集には究極の幻覚的エッセー「トレーン」からポーを思わせる完璧な小宇宙「円環の廃虚」まで、典型的ボルヘス作品がずらりと並んでいる。すべてのボルヘス作品のメタファーのような「バベルの図書館」やもう一つのボルヘス的テーマである無法者の決闘を描いた「結末」も素晴らしいし、「死とコンパス」の超絶的幾何学ミステリも楽しい。読めば読むほど無限に広がっていく魔法の一冊。
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4003279212
No.2:
(5pt)

まずこの一冊

ボルヘスといえばまずこの一冊。 値段もお手ごろで収録されている作品も粒ぞろいです。 なかでも「死とコンパス」は必読。 ミステリー仕立ての味わい深い一品です。
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No.1:
(5pt)

この素晴らしい新世界

アルゼンチンが生んだ今世紀最大の幻想作家ボルヘスの 文字通り代表作である自選の短編集。 文学の豊富な知識 を背景とし、哲学的宗教的テーマを縦横に援用しながら 彼独自の幻想文学を見事に織り上げている。 あまりに 著名な、また至極現代的にインターネット空間の隠喩と 読み取る新たな解釈も新鮮な「バベルの図書館」、 パロディーとしての書評「アルムターシムを求めて」、 物の名前が*存在しない*新たな世界との出会いを探偵 物仕立てで描く(しかも主人公がボルヘス本人である!) 「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」 等全17篇収録。
伝奇集 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:伝奇集 (岩波文庫)より
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