■スポンサードリンク


(短編集)

機龍警察 火宅



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

機龍警察 火宅の評価: 4.54/5点 レビュー 24件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.54pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全24件 21~24 2/2ページ
<<12
No.4:
(5pt)

機龍警察ファンは必読

巻を重ねるごとに物語の厚みを増す本シリーズだが、本巻も完成度の高さに完全に
ノックアウトされ、一瞬で読了。短編集といえば、傑作が1~2本収録されていれば
めっけもので、玉石混淆なのが常なのだが、本巻は1つ残らず傑作。見せかけの
派手さとは無縁な文体ながら、物語の熱気と冷気がひしひしと伝わってくる作品ばかり
で、ページを繰る手が止まらなかった。高価なハードカバーだが、機龍警察ファンなら
脊髄反射で購入して後悔なし。

ちなみに「火宅」は、数年前に読んだSF短編集『結晶銀河』に収録されていた
のだが、恥ずかしながら当時は機龍警察を未読だったので設定も登場人物も意味が
分からず、まったく楽しめなかった。しかし機龍警察にどっぷりハマった今、同じ
短編がこれほど違ってみえるとは。

『自爆条項』でライザの、『暗黒市場』でユーリの過去が語られたいま、最強の
ドラグーン搭乗員である姿の過去を描く作品を心待ちにしているのだが、次回作は
その願いが叶えられることを切に願う。

ところでSFファンとして気になるのが、本巻で明確に浮き彫りにされた「龍骨」
と「龍髭」のオーバーテクノロジーぶり。ほとんどオーパーツと言っても差し支え
ないこれらの超技術を、特捜(というか沖津?)はどこから、どのようにして入手
したのか。この著者なので、墜落したUFOなどの安直な設定だったりすることは
ないだろうが、、、
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
4152095091
No.3:
(5pt)

機龍警察の短編集

まず表紙がイイ。

ライザやあの人やあの人、それぞれの人生の断片を濃厚に魅せてくれる。

「火宅」は警察官の人生、それも終焉に近づいている人生におけるなにげない日常の一コマを、
じっとりした夏の空気やそこに流れる会話の間を感じるくらい、じっくりと丹念に紡いでいる。
人間関係やら、それぞれの警察官の見えている景色やら思考やら想いを。
ショートムービーを観た後のような余韻の残る読後感。
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
4152095091
No.2:
(5pt)

鮮明にして底なし沼のような、人間の謎が匂い立つ

『機龍警察』の短編集。主要な登場人物と舞台を、既刊の長編群と共有している。 個々の短編は独立した読み切りだ。

各編の読後感に、強い印象がある。
「寒気のするような」止まった笑い。 意味の読み取れないあどけなさ。真意を察知できない笑み。
虐待と親殺し。潜在的なネグレクトと、潜在的な親の見殺し。 不信と信頼の間を揺り動かされる若い心。
鮮明な、それでいて底なし沼のような、人間の謎に対する恐ろしいイメージだ。

長編の緻密な構成を一旦離れたとき、人物に、あるいは手短な一連の場面に、人間のこれほど強い謎が匂い立つことに、息を呑む。
著者の、人物達に対する思い入れと、長編群で育て上げてきた物語空間に対する愛情を、感じる。

虚構らしい虚構に加え、リアルな描写の短編もある。それらにもまた、固有の味わいを感じる。
不規則な過重労働に翻弄される勤め人の心理を、著者がこれほど正確に知ってくれていることに、嬉しくなった(登場人物は、僕とは階層が異なるエリートだけど)。 コミカルですらある。

長編を一編でも読んでいるなら、本書は必読だ。
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
4152095091
No.1:
(5pt)

アルファからオメガまで…全てに遍く歯車の短篇集

今年始めに長編第4弾「未亡旅団」を、そして長編第1弾の完全版を刊行し
最早「サーガ」としての地位を確立しつつある月村了衛の「機龍警察シリーズ」
数年前より各雑誌に掲載されていた短篇を書籍化したのが本書である。

各短篇を読了したが、ネタバレを避けてレビューをするのが苦難だ…
「火宅」は先の「未亡旅団」でも大活躍だった捜査主任・由紀谷志郎警部補の
新人時代の恩師が物語る、絶望とそして「慄然すべき」現実の一篇。
実際に基づいた事件を元に、短篇一つの主軸となる人物だけにこれ程の存在感を与えるとは…
やはり著者は組織の中に於ける人間を書くのが上 手い、この「火宅」はお気に入りの一つ。

「焼相」では籠城する凶悪犯を打倒する特捜部の活躍。
「自爆条項」以来感じた、技術主任である緑と突入要員・ライザの微妙な交感が垣間見れる。
最後に見せた「顔」は、ライザの本来の人間性を確かに証明するものだった。

「輪廻」…「方向転換といきたいのだがね」
ウガンダ反政府軍・LRA(神の抵抗軍)の幹部を追跡する特捜部。
特捜部長・沖津の機転により身柄を拘束したものの、それから語られる事は…
これもまた「自爆条項」での既視感を覚える。決して絶たれる事のない、忌まわしき地獄の因果。

「済度」は特捜部加入直前のベネズエラでのライザを描く、長編との内容に極めて関連性の高い短篇だ。
私にとって漸く 溜飲が下がった。いや、合点がいった。
彼女が彼を「あの人」に似ていると評した、その片鱗を見たからだ。
沖津部長…貴方の本性は釈迦か、それとも魔羅か。

「沙弥」ではまたも捜査主任である由紀谷の「未亡旅団」で語られた過去について詳細に記されている。
彼は地元・山口では「白面鬼」と呼ばれる程に荒れた少年時代を過ごしたが、
自身の正義感は決して失ってはいなかったのだ。福本との遣り取りがそれを物語っている…
夏川やユーリといい、彼は警察官としての現在に於いて同僚に恵まれている。
それを私は本当に喜ばしいと思っている。

「勤行」…正直な話。これ程までに………爆笑した一篇はなかった(笑)
一言宜しいだろうか。宮近くん、君の辛さは理解で きる。でも浮気はダメだぞ!
特捜部の理事官に心からの敬礼を捧げたい。(庶務主任の桂女史こそ「鬼子母神」なんじゃ…)
「小説屋 sari-sari」に出誌されたのも妙に納得である。

そして、本書掲載の短篇の中でもずば抜けて異彩を放つ「化生」
これはご自身の目で確かめて頂きたい。
特捜部の、そして主要登場人物が直面するとてつもない闇を予期させる
まさに「オーメン(予兆)」と形容するに相応しい一篇。

本編の補完というには到底収まらない本書。
これから先、一体何が待ち構えているのだろうか…
月村了衛の創り出す世界は、まだまだ果てしない…!
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
4152095091

スポンサードリンク

  



<<12
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!