東京自叙伝

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評判

東京自叙伝の評価:

3.68/5点 レビュー 28件。 B ランク

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平均点3.68pt

Amazonレビュー一覧

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全23件 21〜23 2/2ページ
No.3
(4pt)

東京と云う名の日本人論

本書は、複数の人間また数多の動物として意識を共有する「私」を通じた、幕末から3.11に至る日本の歴史を描いている。
とはいえ、虚虚実実というか、有名無名・有象無象の出来事・人物を巧みに換骨奪胎した架空の歴史であり(なにせ、歴史的出来事の多くが「私」の仕業となっているのだから)、むしろ、歴史の中心にいた人物の自叙伝をパロディにしたものだろう。

本書はパロディであるとともに、無責任で何事も反省せずに諦念にも似た形で受容していく日本人論でもある、自意識の拡散を繰り返し人格崩壊から犯罪へと踏み出していき、ラストでは「私」の妄想ではあるが福島原発事故で焦土と化した東京と重ね合わせることで、成り行き任せの日本人の行き着く果てをシニカルかつ破壊的に描き切ったストーリーは大変読み応えがある。

著者が、いわゆる日本人論を核としたのか、それすらもパロディの素材としたのか、見極めづらいところだが、私としては、架空の名前(正刀杉次郎のように分かりやすいものはわずかで、昭和史をよく知らないと多くの出来事がモデル的にはあったことに気付かない人も多いのではないだろうか)と巧みに組み替えられた出来事によるパロディを多く評価したい。
東京自叙伝 Amazon書評・レビュー: 東京自叙伝より
4087715590
No.2
(4pt)

奥泉光、堂々の新境地。

東京の「地霊」の一人称という奇抜なスタイルで、今そこにある日本を描く、
ヴォネガットの『ガラパゴスの箱船』を彷彿させる痛快風刺小説。

「私」こと東京の地霊は、ボディスナッチャーよろしくくるくると宿主を替えるのだが、
その中でもメインとなる語り手が6人いて、それぞれが独立した一章をなしている。
あえて名前をつけるならば、幕末編、第二次大戦編、戦後混乱期編、
高度成長期編、バブル経済期編、2000年代編、といったところだろうか。

近現代の日本の大きな出来事をダイジェスト的に追いながら、
史実と虚構を緻密に織り交ぜ、時空を股にかけた壮大なパノラマとして
再構築してみせた著者の力量は見事と言うほかない。

本作の終盤、現実の風景の向こうに透けて見える廃墟と化した東京の光景は、
著者のデビュー作、『地の鳥、天の魚群』中で、いささか唐突に挿入される、
鳥の足にびっしりと埋め尽くされた荒野のイメージとぴたりと重なる。
破滅の予感と隣り合わせの笑いは、氏が一貫して扱ってきたテーマであろう。
実力はありながらも、引き出しが少ないというか、端的にワンパターンな作風が
難であった奥泉氏だが、本作で一歩突き抜けた感がある。

将門公から某有名ネズミキャラまで、徹底的に茶化してみせる氏の筆致は
まさに怖いもの知らず。人を選ぶ作品ではあるが、気になったならばぜひ一読を。
東京自叙伝 Amazon書評・レビュー: 東京自叙伝より
4087715590
No.1
(5pt)

これは間違いなく傑作だ

3.11を出発点にして書かれた初の奥泉作品。
自らの虚栄心を満足させるために国民を騙し続け、
一切反省せずに邁進してきた「東京」の地霊が主人公である。
彼は、地震や火災が大好きで、高層ビルや道路でオシャレして、
高いところからその姿を眺めることに狂喜するナルシストである。
明治維新、太平洋戦争、高度経済成長、バブル経済などが
そんな無責任キャラ「東京」の地霊によって引き起こされたことが
乗り移られたさまざまな人物の証言によって饒舌に語られる。
そして、「東京」は、福島原発事故でもあいかわらず反省しないし、
その経験から何も学ばない。そのことを述べた最終章が
分量的に乏しく、失速感があるのは残念だが、これは間違いなく傑作だ。
東京自叙伝 Amazon書評・レビュー: 東京自叙伝より
4087715590