(短編集)

遠い接近

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

遠い接近の評価:

4.48/5点 レビュー 25件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.48pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全53件 21〜40 2/3ページ
No.33
(4pt)

復讐

赤紙が来て、戦争に行かされる、それとも行くかは個人の気持ちしだいだが、主人公は戦前の身体検査で乙種合格であったため、32歳で初めて衛生兵としてまたは、初年兵としての訓練を受けるのです。年齢が初年兵としては行き過ぎであること、乙種であることでもう戦争に行くことはないと思い始めていた時の突然の赤紙でした。「ハンドウを回されたな」という謎の言葉を追求するうちに召集令状のからくりをあばき、幸運にも帰還するのですが、家族は広島に疎開して、原爆投下により全員が亡くなり天蓋孤独で復讐を誓うのです。引き込まれるように読み進めて、どんでん返しが待っていました。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.32
(5pt)

清張のリアル眼

発端はいわば負の忖度。
役所の文書が闇なのは、今に始まったことではないようですね。
係長を公正さから逸脱させたいびつな愛国心は、いつの世にも存在し得るものだと思い知らされる昨今です

本作には国家に対する徹底的な反逆者が登場します。
でも、作者の松本清張はその反逆者、私的制裁と練兵休の安川哲次を、いささかもヒーローやヒューマニストとしては描きません。
あくまでもちっぽけなエゴイストとして造形します。
ちっぽけなエゴイストはそれ自体、軍隊にとってのアンチテーゼであり、国家に対する反逆者であるのは当然だと言えます。
ヒロイズムやヒューマニズムは日本では戦時中のプロパガンダにおいて使い果たされ、すっかりすり減ってしまったと清張は感じていたのではないかと想像されます。
戦争賛成であれ反対であれ、それがヒロイックに、あるいはヒューマンタッチで描かれるとき、それに対して清張の中では止むことのない警報ベルが鳴っていたのではないでしょうか。

ところで、本作は倒叙ミステリーです。倒叙ミステリーといえば刑事コロンボです。コロンボは修道女から浮浪者と思われ同情されますが、本作の“コロンボ”は魚屋の親爺と評されます。
この魚屋は、スーパーの鮮魚コーナーの担当者ではありませんが、もはやそのイメージは永遠に日本からは失われたと言っていいでしょう。

魚屋の親爺に限らず働く人の風俗は時代とともに変わりゆき、失われたり変造されたりするものです(早い話、「風俗」という語にしてからがそうではないですか)。
しかし逆に、国家に対する反逆者を排除する感覚は、日本では今後ますます強まっていくだろうという予感がします。
それも誰に強制されるわけでもなく、普通の人間の普通の感覚として強まっていくだろう。そんな気がしています。
たとえば「軍隊は運隊だと言うが、あれ本当だ。運の悪い人は死んだ。よかった、俺は生きて帰れた」(『p206)という言葉のリアリティが失われれば失われるほど、そうなっていくのではないでしょうか。
その一方、そういう言葉がリアリティを回復する日(つまり戦争)を望む人はいません。
あちらを立てればこちらが立たずというわけです。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889
No.31
(5pt)

清張のリアル眼

発端はいわば負の忖度。
役所の文書が闇なのは、今に始まったことではないようですね。
係長を公正さから逸脱させたいびつな愛国心は、いつの世にも存在し得るものだと思い知らされる昨今です

本作には国家に対する徹底的な反逆者が登場します。
でも、作者の松本清張はその反逆者、私的制裁と練兵休の安川哲次を、いささかもヒーローやヒューマニストとしては描きません。
あくまでもちっぽけなエゴイストとして造形します。
ちっぽけなエゴイストはそれ自体、軍隊にとってのアンチテーゼであり、国家に対する反逆者であるのは当然だと言えます。
ヒロイズムやヒューマニズムは日本では戦時中のプロパガンダにおいて使い果たされ、すっかりすり減ってしまったと清張は感じていたのではないかと想像されます。
戦争賛成であれ反対であれ、それがヒロイックに、あるいはヒューマンタッチで描かれるとき、それに対して清張の中では止むことのない警報ベルが鳴っていたのではないでしょうか。

ところで、本作は倒叙ミステリーです。倒叙ミステリーといえば刑事コロンボです。コロンボは修道女から浮浪者と思われ同情されますが、本作の“コロンボ”は魚屋の親爺と評されます。
この魚屋は、スーパーの鮮魚コーナーの担当者ではありませんが、もはやそのイメージは永遠に日本からは失われたと言っていいでしょう。

魚屋の親爺に限らず働く人の風俗は時代とともに変わりゆき、失われたり変造されたりするものです(早い話、「風俗」という語にしてからがそうではないですか)。
しかし逆に、国家に対する反逆者を排除する感覚は、日本では今後ますます強まっていくだろうという予感がします。
それも誰に強制されるわけでもなく、普通の人間の普通の感覚として強まっていくだろう。そんな気がしています。
たとえば「軍隊は運隊だと言うが、あれ本当だ。運の悪い人は死んだ。よかった、俺は生きて帰れた」(『p206)という言葉のリアリティが失われれば失われるほど、そうなっていくのではないでしょうか。
その一方、そういう言葉がリアリティを回復する日(つまり戦争)を望む人はいません。
あちらを立てればこちらが立たずというわけです。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167106213
No.30
(5pt)

清張のリアル眼

発端はいわば負の忖度。
役所の文書が闇なのは、今に始まったことではないようですね。
係長を公正さから逸脱させたいびつな愛国心は、いつの世にも存在し得るものだと思い知らされる昨今です

本作には国家に対する徹底的な反逆者が登場します。
でも、作者の松本清張はその反逆者、私的制裁と練兵休の安川哲次を、いささかもヒーローやヒューマニストとしては描きません。
あくまでもちっぽけなエゴイストとして造形します。
ちっぽけなエゴイストはそれ自体、軍隊にとってのアンチテーゼであり、国家に対する反逆者であるのは当然だと言えます。
ヒロイズムやヒューマニズムは日本では戦時中のプロパガンダにおいて使い果たされ、すっかりすり減ってしまったと清張は感じていたのではないかと想像されます。
戦争賛成であれ反対であれ、それがヒロイックに、あるいはヒューマンタッチで描かれるとき、それに対して清張の中では止むことのない警報ベルが鳴っていたのではないでしょうか。

ところで、本作は倒叙ミステリーです。倒叙ミステリーといえば刑事コロンボです。コロンボは修道女から浮浪者と思われ同情されますが、本作の“コロンボ”は魚屋の親爺と評されます。
この魚屋は、スーパーの鮮魚コーナーの担当者ではありませんが、もはやそのイメージは永遠に日本からは失われたと言っていいでしょう。

魚屋の親爺に限らず働く人の風俗は時代とともに変わりゆき、失われたり変造されたりするものです(早い話、「風俗」という語にしてからがそうではないですか)。
しかし逆に、国家に対する反逆者を排除する感覚は、日本では今後ますます強まっていくだろうという予感がします。
それも誰に強制されるわけでもなく、普通の人間の普通の感覚として強まっていくだろう。そんな気がしています。
たとえば「軍隊は運隊だと言うが、あれ本当だ。運の悪い人は死んだ。よかった、俺は生きて帰れた」(『p206)という言葉のリアリティが失われれば失われるほど、そうなっていくのではないでしょうか。
その一方、そういう言葉がリアリティを回復する日(つまり戦争)を望む人はいません。
あちらを立てればこちらが立たずというわけです。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.29
(4pt)

トリックにおかしな箇所が

文章に読者を最後まで惹きつける迫力がある作品です。また、プロットも秀逸で常人の及ばない発想には感嘆するばかりです。
しかしながら私には腑に落ちない箇所がありました。それは被害者の自殺偽装のトリックです。
作品の評価を左右するほど大きな齟齬ではありませんが疑問に思った箇所を挙げておきます。
最後に近い部分で主人公と捜査課長が一緒に自殺の現場を検証する場面です。
課長が「あの桧の枝の位置を見てくださいーーーー垂れ下がった足の先から地面までは1メートル近くもありましたよーーー」
このセリフと主人公が犯行後に現場を偽装する方法の箇所を対比すれば私の疑問が分かって頂けると思いますが如何でしょうか?
高さ1メートルの大石はおいそれと持ち上げられないーーー。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889
No.28
(4pt)

トリックにおかしな箇所が

文章に読者を最後まで惹きつける迫力がある作品です。また、プロットも秀逸で常人の及ばない発想には感嘆するばかりです。
しかしながら私には腑に落ちない箇所がありました。それは被害者の自殺偽装のトリックです。
作品の評価を左右するほど大きな齟齬ではありませんが疑問に思った箇所を挙げておきます。
最後に近い部分で主人公と捜査課長が一緒に自殺の現場を検証する場面です。
課長が「あの桧の枝の位置を見てくださいーーーー垂れ下がった足の先から地面までは1メートル近くもありましたよーーー」
このセリフと主人公が犯行後に現場を偽装する方法の箇所を対比すれば私の疑問が分かって頂けると思いますが如何でしょうか?
高さ1メートルの大石はおいそれと持ち上げられないーーー。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167106213
No.27
(4pt)

トリックにおかしな箇所が

文章に読者を最後まで惹きつける迫力がある作品です。また、プロットも秀逸で常人の及ばない発想には感嘆するばかりです。
しかしながら私には腑に落ちない箇所がありました。それは被害者の自殺偽装のトリックです。
作品の評価を左右するほど大きな齟齬ではありませんが疑問に思った箇所を挙げておきます。
最後に近い部分で主人公と捜査課長が一緒に自殺の現場を検証する場面です。
課長が「あの桧の枝の位置を見てくださいーーーー垂れ下がった足の先から地面までは1メートル近くもありましたよーーー」
このセリフと主人公が犯行後に現場を偽装する方法の箇所を対比すれば私の疑問が分かって頂けると思いますが如何でしょうか?
高さ1メートルの大石はおいそれと持ち上げられないーーー。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.26
(4pt)

面白い着想

戦時中の召集令が隣組の世話役の思惑一つで決まっていたという着想(実際にそうであったかどうかは分からない)が極めて面白い。筆者は幸運にもその年齢に達しなかったのでわからないが、ありそうな話である。旧制高校の教練の教官が、「教練の授業をサボると幹部候補生の推薦をしないようにしてやる」といったことを思い出す。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889
No.25
(4pt)

面白い着想

戦時中の召集令が隣組の世話役の思惑一つで決まっていたという着想(実際にそうであったかどうかは分からない)が極めて面白い。筆者は幸運にもその年齢に達しなかったのでわからないが、ありそうな話である。旧制高校の教練の教官が、「教練の授業をサボると幹部候補生の推薦をしないようにしてやる」といったことを思い出す。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167106213
No.24
(4pt)

面白い着想

戦時中の召集令が隣組の世話役の思惑一つで決まっていたという着想(実際にそうであったかどうかは分からない)が極めて面白い。筆者は幸運にもその年齢に達しなかったのでわからないが、ありそうな話である。旧制高校の教練の教官が、「教練の授業をサボると幹部候補生の推薦をしないようにしてやる」といったことを思い出す。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.23
(5pt)

生々しい軍隊経験ー「遠い接近」

本巻は「黒の図説」という通しタイトルのもと「生けるパスカル」「遠い接近」
「山の骨」「表象詩人」「高台の家」の五作品を収録。いずれも「週刊朝日」に
連載された力作ぞろい。入手をお勧めする。

いわゆる「私小説」というのは自分の体質には合わない。そういう素材は仮構の世界に
作り変える。その方が、自分の言いたいことや感情が強調されるように思える、というのが
清張氏の説である。骨の折れる一日の仕事の後、眠りにつく束の間を癒す時に読む小説は
まず面白いものでなければならない。

興味深いことに「表象詩人」と「遠い接近」には松本氏の個人的体験が色濃い。前者は小倉の
文学青年時代の交友、後者は34歳にして召集を受け衛生兵として朝鮮に従軍した体験が基に
なっている。戦争を主導した政府・軍部を真っ向から批判するというより、一枚の「赤紙」で
人生も家族も悲惨な運命をたどることになるしがない生活者の視点で物語られる。
昨今の浮薄で危険な好戦的風潮に踊らされているとしか見えない若年層ーいわゆるネットウヨ諸君も
願わくは「遠い接近」で描かれたかっての戦争・軍隊生活の内面をよく知ってもらいたいと思う。
何度も戦慄し気が重くなった。時代がどう進もうと人間は進歩しない。危機における人間集団では、
保身、暴力、幹部の怠慢、弱者虐待がむきだしとなる。

かっての国民は赤紙が届けば黙々として「名誉」の出征に赴いた。だが兵士不足の戦争末期、駆り出される高年者をいかなる手続きで選定したのか。それを追跡し責任者に復讐を果たすというのが、後半のストーリー。少々強引なミステリー仕立ての感があるが。
いずれにせよ前半の軍隊生活、戦後の闇市時代が活写され重厚な作品となっている。
松本清張全集 (39) 遠い接近・表象詩人 Amazon書評・レビュー: 松本清張全集 (39) 遠い接近・表象詩人より
4165080101
No.22
(5pt)

生々しい軍隊経験ー「遠い接近」

本巻は「黒の図説」という通しタイトルのもと「生けるパスカル」「遠い接近」
「山の骨」「表象詩人」「高台の家」の五作品を収録。いずれも「週刊朝日」に
連載された力作ぞろい。入手をお勧めする。

いわゆる「私小説」というのは自分の体質には合わない。そういう素材は仮構の世界に
作り変える。その方が、自分の言いたいことや感情が強調されるように思える、というのが
清張氏の説である。骨の折れる一日の仕事の後、眠りにつく束の間を癒す時に読む小説は
まず面白いものでなければならない。

興味深いことに「表象詩人」と「遠い接近」には松本氏の個人的体験が色濃い。前者は小倉の
文学青年時代の交友、後者は34歳にして召集を受け衛生兵として朝鮮に従軍した体験が基に
なっている。戦争を主導した政府・軍部を真っ向から批判するというより、一枚の「赤紙」で
人生も家族も悲惨な運命をたどることになるしがない生活者の視点で物語られる。
昨今の浮薄で危険な好戦的風潮に踊らされているとしか見えない若年層ーいわゆるネットウヨ諸君も
願わくは「遠い接近」で描かれたかっての戦争・軍隊生活の内面をよく知ってもらいたいと思う。
何度も戦慄し気が重くなった。時代がどう進もうと人間は進歩しない。危機における人間集団では、
保身、暴力、幹部の怠慢、弱者虐待がむきだしとなる。

かっての国民は赤紙が届けば黙々として「名誉」の出征に赴いた。だが兵士不足の戦争末期、駆り出される高年者をいかなる手続きで選定したのか。それを追跡し責任者に復讐を果たすというのが、後半のストーリー。少々強引なミステリー仕立ての感があるが。
いずれにせよ前半の軍隊生活、戦後の闇市時代が活写され重厚な作品となっている。
松本清張全集 (39) 遠い接近・表象詩人 Amazon書評・レビュー: 松本清張全集 (39) 遠い接近・表象詩人より
4165080101
No.21
(5pt)

戦争ができる国になるとどういうことが起きるのか

戦前、印刷の原版作画の職人として自営していた主人公に軍隊への教育(2ヶ月)召集が掛かる。主人公は虚弱体質で徴兵検査不合格となり、結婚して子どもを設け30代後半になっていた。徴兵検査の結果や年齢を考慮すれば、召集されるはずがなかった。そして、入営した日から、ある上官に目をつけられ連日、凄まじい制裁を受けることになる。この描写は読んでいて、反吐が出そうになるほどだ。清張の軍隊経験が反映してるのであろう。ところで主人公は、2ヶ月の我慢と思っていたところ、赤紙による正規の召集が掛かり戦地へ送られるのである。その間、広島へ疎開した家族は原爆で死んでしまう。ここまでが、本書のちょうど半分。
 帰還した主人公は召集のからくりを探り出し、自分を戦地へ追いやった男への復讐を誓う。それに、自分を制裁した上官への復讐が絡み合い、倒叙型清張ミステリーが展開するのが後半である。警察が復讐を果たした主人公を追い詰めていくのだが、そこにはしっかりとトリックも準備され、ミステリーの落ちとして上々である。
 日本では今、戦争ができる国への準備が着々と進んでいるが、兵隊がいなければ戦争はできない。どうやって兵隊を集めるか。その過程で、本書で書かれているようなことが起きないとは言えない。本書は別に反戦小説でもなんでもないが、物語前半の内容はリアルである。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.20
(5pt)

戦争ができる国になるとどういうことが起きるのか

戦前、印刷の原版作画の職人として自営していた主人公に軍隊への教育(2ヶ月)召集が掛かる。主人公は虚弱体質で徴兵検査不合格となり、結婚して子どもを設け30代後半になっていた。徴兵検査の結果や年齢を考慮すれば、召集されるはずがなかった。そして、入営した日から、ある上官に目をつけられ連日、凄まじい制裁を受けることになる。この描写は読んでいて、反吐が出そうになるほどだ。清張の軍隊経験が反映してるのであろう。ところで主人公は、2ヶ月の我慢と思っていたところ、赤紙による正規の召集が掛かり戦地へ送られるのである。その間、広島へ疎開した家族は原爆で死んでしまう。ここまでが、本書のちょうど半分。
 帰還した主人公は召集のからくりを探り出し、自分を戦地へ追いやった男への復讐を誓う。それに、自分を制裁した上官への復讐が絡み合い、倒叙型清張ミステリーが展開するのが後半である。警察が復讐を果たした主人公を追い詰めていくのだが、そこにはしっかりとトリックも準備され、ミステリーの落ちとして上々である。
 日本では今、戦争ができる国への準備が着々と進んでいるが、兵隊がいなければ戦争はできない。どうやって兵隊を集めるか。その過程で、本書で書かれているようなことが起きないとは言えない。本書は別に反戦小説でもなんでもないが、物語前半の内容はリアルである。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889
No.19
(5pt)

戦争ができる国になるとどういうことが起きるのか

戦前、印刷の原版作画の職人として自営していた主人公に軍隊への教育(2ヶ月)召集が掛かる。主人公は虚弱体質で徴兵検査不合格となり、結婚して子どもを設け30代後半になっていた。徴兵検査の結果や年齢を考慮すれば、召集されるはずがなかった。そして、入営した日から、ある上官に目をつけられ連日、凄まじい制裁を受けることになる。この描写は読んでいて、反吐が出そうになるほどだ。清張の軍隊経験が反映してるのであろう。ところで主人公は、2ヶ月の我慢と思っていたところ、赤紙による正規の召集が掛かり戦地へ送られるのである。その間、広島へ疎開した家族は原爆で死んでしまう。ここまでが、本書のちょうど半分。
 帰還した主人公は召集のからくりを探り出し、自分を戦地へ追いやった男への復讐を誓う。それに、自分を制裁した上官への復讐が絡み合い、倒叙型清張ミステリーが展開するのが後半である。警察が復讐を果たした主人公を追い詰めていくのだが、そこにはしっかりとトリックも準備され、ミステリーの落ちとして上々である。
 日本では今、戦争ができる国への準備が着々と進んでいるが、兵隊がいなければ戦争はできない。どうやって兵隊を集めるか。その過程で、本書で書かれているようなことが起きないとは言えない。本書は別に反戦小説でもなんでもないが、物語前半の内容はリアルである。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167106213
No.18
(5pt)

隠れた傑作!

清張の作品はだいぶ読破したつもりだつたがこんな傑作が、残っていたとは、終盤の筋書きは読ませます。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.17
(5pt)

隠れた傑作!

清張の作品はだいぶ読破したつもりだつたがこんな傑作が、残っていたとは、終盤の筋書きは読ませます。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889
No.16
(5pt)

隠れた傑作!

清張の作品はだいぶ読破したつもりだつたがこんな傑作が、残っていたとは、終盤の筋書きは読ませます。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167106213
No.15
(5pt)

35歳で教育召集された松本清張自身の実体験と重なっていることを知る必要がある

420ページの長編。印刷業を営む山尾は毎日家族のために家業に専念せねばならず、戦時訓練を休みがちであった。それを"反動"と受け取った軍のおかげで3ヶ月の教育訓練に呼ばれ、そこで古参の先輩兵士から地獄のごときイビリにあう。しかもそのあと本式の赤紙を受けて朝鮮へ出兵。稼ぎ頭のいなくなった親と家族は田舎の広島へ疎開、原爆により全滅する。
終戦後、東京に帰った山尾は、イビリにあっていた古参兵の仕事の手下となるが、恨みは決して忘れてはいない。また自分と家族を破滅に追い込んだ赤紙を出した役人まで突き止め、復讐劇を実行するのであった…

赤紙にまつわる手続きの実態と徴収された兵隊への扱いがどんなだったかを学べるとてもよい教材。しかもここまでの話は35歳で教育召集を受けその後朝鮮へ送られた松本清張の自伝そのもの。

一見、赤紙を出していた小役人をそこまで恨まなくても…と思うけれど、実際に辛酸を舐めた経験をしていない我々に何を言う権利があろうか。何もかも失った男の人生には復讐という残り火しかない。なんとも言えない虚しさが残る話でした。
遠い接近 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (カッパ・ノベルス)より
4334030467
No.14
(5pt)

35歳で教育召集された松本清張自身の実体験と重なっていることを知る必要がある

420ページの長編。印刷業を営む山尾は毎日家族のために家業に専念せねばならず、戦時訓練を休みがちであった。それを"反動"と受け取った軍のおかげで3ヶ月の教育訓練に呼ばれ、そこで古参の先輩兵士から地獄のごときイビリにあう。しかもそのあと本式の赤紙を受けて朝鮮へ出兵。稼ぎ頭のいなくなった親と家族は田舎の広島へ疎開、原爆により全滅する。
終戦後、東京に帰った山尾は、イビリにあっていた古参兵の仕事の手下となるが、恨みは決して忘れてはいない。また自分と家族を破滅に追い込んだ赤紙を出した役人まで突き止め、復讐劇を実行するのであった…

赤紙にまつわる手続きの実態と徴収された兵隊への扱いがどんなだったかを学べるとてもよい教材。しかもここまでの話は35歳で教育召集を受けその後朝鮮へ送られた松本清張の自伝そのもの。

一見、赤紙を出していた小役人をそこまで恨まなくても…と思うけれど、実際に辛酸を舐めた経験をしていない我々に何を言う権利があろうか。何もかも失った男の人生には復讐という残り火しかない。なんとも言えない虚しさが残る話でした。
遠い接近 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 遠い接近 (文春文庫)より
4167901889