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怒り
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怒りの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全130件 121~130 7/7ページ
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冒頭から引き込まれる。 事件の謎。動機。犯人。全てが上手く隠されて、真相を知りたくならせて次々とページを繰らせる。 そして登場人物それぞれのエピソードに引き込まれる。 各パート独立した小説としても成立する内容の濃さ。 吉田修一は現代人の心の闇を丹念に描かせたらトップクラスの小説家になった。 | ||||
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定価より安く買えて良かったです 。まだ忙しくて読めませんが 下も購入したいです | ||||
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東京で起きた未解決殺人事件と、逃走する犯人。そこになにかから逃げている男三人と取り巻く人間の感情が交差する。 上巻より、スピード感の増した下巻で、ぐっと面白くなる。 人の無力さと業を感じさせる力作。 | ||||
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殺人者を追求する刑事と様々な人間模様、それが交錯し、ひとつの焦点を結ぶのが楽しみです。登場人物と場面が次々に転換されていくので、読者は注意深く話の流れを追いかけていく必要に迫られます。一気に読める作品ではありません。吉田修一の作品は『パークライフ』以来です。複雑な人間の心理とその変化に迫るこの作品で成熟を遂げています。人間の不可解さこそ、文学や小説のテーマです。ミステリーの場合は謎解きが中心であり、すべてが解決するように構成されていますが、本書は読めば読むほど謎が深まるように構成されています。まさに秀逸な文学作品です。姿を変える犯人と巻き込まれて混乱する人間模様、今後の展開が楽しみな小説です。もう一つ、この作品の面白さは、登場人物の設定にあります。ゲイ友達二人、逃げる女と子ども、漁師の家族など、一見平凡な設定に見えますが、どの人物たちも心に悩みを抱えてぎりぎりの状態で生きている。このような設定が殺人事件と不思議にシンクロする空間に本書を読み味わう妙味があります。ぜひ、じっくりと読み味わって下さい。 | ||||
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ある人を疑っていると言うときは、その人を信じているとき。ある人を信じたいと願うときは、その人を疑っているとき。 信頼と疑念が打ち消し合ってゼロになったときに、はじめて人が人を受けいれている関係と言えるのだろう。たとえば 母と娘、母と息子、そして父と娘。この小説に出てくる親と子の間にはことさらの信頼や疑念はなく、わからないことは わからないままに。言われないことは聞かないままに。自分の親、自分の子供。そこには良くも悪くも確固たるメタがある。(それが故に 悲劇が起こることも往々にしてあると思うが)対照的に、他人との関係をそういった関係に昇華させることは難しい。 特に、メタの不確定な人間が現れたときに、人は不安、恐怖を感じる。 その相手の本質に対して、愛があり、期待がある場合はなおさらその不安や恐怖は大きくなる。故にメタを自分の思うように一致させようとする。 結果、「一致させたい」と思う感情に支配され、相手の本質が見えなくなっていく。そんな人間の有り様を吉田修一は書いているのであって 事件そのものは装置でしかない。そう感じた。 また、彼の筆致にはそういった人間のパラドキシカルな行動、心理に対して、全くジャッジがない。それもまたこの小説の秀逸なところだと感じた。 | ||||
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殺人現場に残された「怒」の血文字。犯人・山神一也を警察が追うが、彼は顔を整形して逃げていることが判明する。事件から1年後に物語は始まる。世田谷に住むゲイの前に現れた男。房総の浜崎の父娘に近づく男。沖縄の離島に流れ着いた男。3人の男はいずれも前歴を隠してひっそりと生きている。まわりは彼らを受け入れて新しい生活を始めようとする。しかし、懸命の捜査が山神を一歩一歩追い詰めていく。上巻は犯人らしい男とそのまわりの人々を描く。下巻は、「男」を信じるか、疑うか、まわりの者が葛藤する様を描き、意外な結末へと進む。 実際の事件を彷彿させる犯罪を主軸に据えて、ワーキングプア、性的少数者、沖縄問題、闇金融など現代のトピックが扱われる。しかし、作者の狙いはそこにはない。犯人探しと動機の究明を主題としていない。「怒」の血文字の意味も最後まで明らかにされない。つまり吉田修一氏はミステリーを書こうとはしていないのだ。彼が執拗にこだわるのは、その男を信じたいのだが信じきれないというまわりの人間の葛藤であり、人間の弱さである。だから人間の怖さと優しさ、信頼と裏切りが描かれる。犯人かもしれない男をめぐって揺れ動く心理を克明に記していく。タイトルの「怒り」とは犯人ばかりか、普通の人間も心の奥に秘めている「怒り」ではないのか。読み終わってそんな思いにもとらわれた。 帯に「『悪人』から7年、吉田修一の新たな代表作」とある。吉田修一氏はこの7年間に「静かな爆弾」「さよなら渓谷」「横道世之介」「路」「愛に乱暴」と優れた著作を送り出してきた。いずれも佳作であったと思う。しかし、私はどの作品からも「悪人」のヒリヒリと胸が痛むような焦燥感は得られなかった。作者の「これを書かずにはおれない」との切羽詰った意気込みを感じ取ることは出来なかった。本作品にはいくつもの新しい試みが施されており、厚みのある小説に仕上がっているが、「悪人」に並ぶ傑作と呼ぶには足りないものがあるのではないか。私の吉田修一氏への期待は高いのである。 | ||||
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意欲作であると思いました。ネタバレになってはいけないので詳しくは書けませんが、ある凶悪な殺人事件のために、ここに描かれた人びと以外にもいくつか同様の事柄が起きていたのではないかと読者に感じさせるところが、この作品の最も特筆すべき点ではないかと思います。様々な生が丹念に描かれ、リアリティがあるため、小説に描かれた事象は一部であり、描かれていない人物やストーリーが同じようなかたちで他にも存在したのではと感じさせてくれるのです。気になる点としては、仮に閉じた店舗等であっても検索にまったくかからないことはほぼ有り得ないので、そこは違和感がありました。誰のブログ等にも出ておらず、キャッシュにも残ってないというのは考えにくいです。しかし、これもリアル感のある小説だからこそ感じられたことかもしれません。 | ||||
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小さな綻びから偶然が積み重って、とりかえしのつかない裏切りや誤解につながる日常の悲劇。(以下ネタばれあり)殺人犯が顔の整形をして偽名を使いながら全国を点々とし、沖縄の無人島に潜伏…という、明らかに数年前千葉県で起きた英国人女性英語教師殺害事件を連想させるストーリを幹としているが、一見それと間違うような枝葉がずぶずぶとこの幹から生えている。千葉の漁港で、出戻り娘の婿に落ち着いた寡黙な田代哲也。平凡な中流家庭に育ち、一般企業に勤める同性愛者のもとに転がり込んだ大西直人。沖縄の無人島暮らしから民宿の手伝いをするようになった田中信吾。彼らは同一人物なのか。そうでなければ、いったい誰が八王子郊外で共働き夫婦を惨殺した犯人、山神一也なのか。 テレビニュースで容疑者に関するあらたな情報が流れるたびに、日本のあちこちでさまざまな名前を名乗る素性の知れない若い男の正体をめぐって小さな波紋が広がる。日本には、捜索願が受理された家出人だけでも8万人以上いるという。彼らも生きていれば、何らかの仕事をするなり、誰かの世話になるなりしているはずだ。最近自分の前に姿を現したあの男は何者なのか。なぜ彼は昔の話をしないのか。誰とも連絡をとろうとしないのか。普通に考えれば、過去や他人に無頓着な人間はいくらでもいるが、逃走中の殺人犯との類似点に気が付いてしまったとき、その男への疑念がどんどん深まっていく。自分の人生にとって重要な人間になりそうだという予感があったからこそそうではないことを強く祈りつつも、そこは強い自己防衛本能というものが人間には働くのかもしれない。 私たちは小説の最後に誰が犯人であり、誰がそうでなかったかを知り、自分自身の判断力のおぼつかなさを思い知る。結果的に自分にとっていちばん大切な人間を疑ってしまうことになった登場人物たちは、決して狭量な人間でもひねくれた人間でもなく、むしろその逆だ。そして犯人も常に凶悪な顔を見せていたわけではなく、働き者で面倒見のいい側面もあった。同じ著者による小説『パレード』という小説を読んだとき、「私たちは誰ひとりとして同じ世界には住んでいない。同じ人物に対しても異なる評価、同じ出来事に対するしても異なる解釈がいく通りも存在し、最大公約数的なものを「真実」とか「事実」と思い込んでいるに過ぎない」と書いた。今回もそれに近いことを感じた。 タイトルの『怒り』は、犯人が犯行現場に血で殴り書きしていた「怒」という文字からとったと考えられるが、結局、山神一也が何にそれほどまでに怒っていたのかは明らかにされない。犯行現場に残されていた「怒」という文字、そして潜伏していた無人島の廃墟の壁に書かれていた「怒」という文字。この事件が本当に起きていたら、当局もメディアも識者も「怒」に何らかの意味づけをしようとしただろう。しかしときに他者の理解を完璧なまでに拒絶する怒りが存在する。事件を追う刑事、北見が山神の父親が生まれ育った福岡と大分の県境にある奥谷地区を訪ねたとき、地元の巡査長が、戦前あったという殺人事件の話をする。毎年夏の鎮魂祭によそ者を読んで先祖神の化身として歓待するという村の慣習があったこの村で、祭りで歓待されたあと村に住みついた男が突然村人7人を無差別殺人したという話である。「気がふれていた」としか記録には残っておらず、その後村では事件のことは封印された。この殺人犯と山神の理不尽な怒りが重なる。 北見刑事に山神と工事現場で土木作業現場で一緒だったと証言したムショ帰りの男はこんな言葉を吐いた。「……ムショに何度も入っているからわかるんすよ。ほんとにイカれてる奴ってのは、ああいう顔してんですよ。一見、普通の顔してっけど、その普通の顔で人殺すんですよ」。「荒んだ生活の中にいれば、その人間の心が荒むのは当然だが、やはり顔もまた、同じように荒んでいく」と単純に考えていた北見は自分を見透かされたような気になる。県警でこの男の取り調べを終えて出てきた廊下のベンチに座っていた老婆を見た北見は出来の悪い息子を何度もこの場所に引き取りにきている薄幸の老母だろうか、と思う。しかしそうではなく、優秀な大学生の孫がたまたまバイクで転んだのに付き添って来ていただけだった。北見の上司の南篠は言う。「結局、場所なんだよ。たとえば山神が沖縄のリゾート地にいたとして、誰が殺人犯だと疑うかってことだ。……」 人間は文脈なしに日々の記憶を紡いでいくことはできない。だから自分なりのストーリーが必要だし、起きたことに対して理由を求める。結局、犯人ではなかった娘婿を疑い、追い詰めることになってしまった槇洋平は、自分の描いたストーリーが妄想だったと知って悔いる。「自分はいったい何に目をつぶろうとしていたのだろうか。目をつぶろうとしていたのはこの事件ではなく、自分や愛子の、期待できそうにない人生に対してだったのではないだろうか」。私たちは事件が起きるたびにもっともらしい理由ともとめ、ありがちなストーリーを当てはめて何かを理解したような気になっている。本書で描かれた「怒り」はそのような理解や説明をまったく受け付けない、人間存在のなかの暗部である。その暗部に切り込んでいけるのは、これもまた説明することを拒絶する強い怒りを抱えた者だけである。神話における正邪の対決の原型。「怒り」は山神の怒りではなく、辰哉の怒りではなかったか。 | ||||
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巧い。 点に散りばめられた小さなエピソードが、それぞれ化膿した傷のように痛み出す。 その各キャラクターたちの痛みに共感したら、もうこの物語から逃げられない。 吉田修一はこの作品で、よりエンタテイナーになったように思う。 パワフル且つ繊細で、読む者を、吉田ワールドへ引きずり込む。 ただ、エンディングあたりで、前作「愛に乱暴」と似たような失速感?を感じる。 唐突に、読者はドラマティックな世界から、ドライで無機質な現実に戻されるのだ。 吉田修一が敢えてそういう手法を選ぶのか、それとも飽和して尽きた結果なのか。 いずれにしても、前後編の85%まで、読み手は激しい感情に揺さぶられるのだから、凄い力量には違いない。 イッキ読み必至の面白さ。保証します。 | ||||
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殺人を犯し、整形をして逃げる犯人の男といえば、誰もが実際に起きた事件の容疑者を思い浮かべるだろう。 沖縄の離島や、千葉の漁港で働き、はたまたゲイの居候をしていたと聞けば、より上記の事件の犯人の足取りと結びつく。 殺害現場に残された怒りの文字。犯人は怒りを体現し、それを示したかったのか、それとも何か別の理由があるのか。 この三人の男たちは同一人物なのだろうか。「怒り」はどこにあるのか? 読み終えて最初に思ったのは、ある意味で肩透かしの部分はあるし、掘り下げるべきテーマがもっとあったのではないかということだった。 しかし、それをやってしまえば他のエンタメ小説と変わらないし、作者が書きたかったのは、ワーキングプアの実態とか同性愛者の差別とか、そんな世俗的なものではないと思い直した。 誰の心にも潜み、そして時折抑えられない衝動として湧き上がる、怒り。 けれど、それさえも本当のテーマではない。激しい怒りのあとに訪れる虚しさや哀しみ、そして虚無。 ラストには救いがある。同じく、救いはない。 | ||||
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