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言語都市



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【この小説が収録されている参考書籍】
言語都市
言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)

言語都市の評価: 4.10/5点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.10pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全10件 1~10 1/1ページ
No.10:
(2pt)

少女漫画の主人公が生理的に無理だった

まあ海外のSF大体こんなんだけど。主義主張だけで引っ張るもんね、他に何もないから。
言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)Amazon書評・レビュー:言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)より
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No.9:
(4pt)

面白いけれど。。。

直喩は陳述できるが、隠喩になるとプロセスがストップするというのは、発想は面白いけれど、ちょっと掘り下げが足らない気がする。。。
単に、修辞学上の問題ではなく、精神構造上の問題ならば、教育で統語論上の問題として解決できるかどうか、大いに疑問。
言語構造そのものは、二つの口で同時に発話可能にもかかわらず、二段階のネスティングまでを許容する人類の言語と同じというのもつまらない。
アエリカ人世界の設定が大変すばらしいので、言語学的な考察と飛躍が全く不十分ないのが大変に残念。
彼は常々、言語学者でもあるトールキンの「指輪」を鋭く批判しているので、言語をテーマにするファンタジーならこう書くんだ!! と言いたかったのかも。
トールキンのテーマは、どちらかというと比較言語学だが、異星人の言語には類型論のアプローチを使った「地球人の言語」とは違う構造を設定しなければ面白くない。その点、修辞学と構文論に縮退してしまっている設定やおちが残念。
でも、話としては面白いし、小説の技法としては申し分ない。
それと、書籍の形態だが、この縦長のハヤカワミステリーシリーズは心理的に読みにくい。
普通の大きさのハードカバーにしてほしかった。
言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)Amazon書評・レビュー:言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)より
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No.8:
(3pt)

難解でした。

「都市と都市」が面白かったのと、この作者には珍しく異星を舞台にした物語だったので、かなり期待して読み始めましたが、話にヤマがないまま、いつの間にか終わってしましました。
地球人の言語と、異星人のコミュニケーション方に横たわる大きな差異をめぐる考察やドラマには興味深いものがありましたが、何とも言えず理解しにくい物語でした。娯楽小説というよりは文学作品に近いもののような気がします。
言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)Amazon書評・レビュー:言語都市 (新★ハヤカワ・SF・シリーズ)より
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No.7:
(4pt)

二段組みで500頁になんなんとする異世界を、溺れず渡り切るのは至難なことかもしれないが…

舞台は惑星アリエカにある人類の入植地エンバシータウン。現生種である異星人には口が二つあり、その二つから同時に発せられる音声によって言語活動がおこなわれている。当然のごとく、単一の口しか有さない人類との間では通常のコミュニケーションは成立しない。そこで人類は「大使」という存在を作った。二人一組の人間が同時にアリエカのゲンゴを語ることで意思疎通を図るのだ。このゲンゴの崩壊と変性を描く物語…。

 作者チャイナ・ミエヴィルは『都市と都市』で、隣接しあう二つの都市国家の国民同士が互いを見て見ぬふりをするという奇妙な掟の中に生きる様を提示してみせました。それが視覚上の幻惑世界であるとしたら、今回は聴覚の面で奇妙奇天烈な異界を紡いだといえます。
 さらにいえば、アリエカ人はウソをつくことが出来ないという性格をもっています。現実に存在しないものを描写することができないために、わざわざ指し示すことができる存在となることを人類に要求する…と、こう書いたところでそれが何を意味するのかはここでは説明しきれませんが、ともかく、この物語の語り手である女性アヴィスも少女時代に「食事のために作られたがしばらく食事には使われていなかった古い部屋であたえられたものを食べた苦しみのうちにある人間の少女」という「直喩」となった人物です。
 読者を煙に巻くような風景を地平の果てまで精密に描写するミエヴィルの相続力の際限のなさに、眩暈(めまい)がして仕方ありません。

 物語の後半は、惑星上の酸鼻を極める内戦へと突入していきます。その原因は言語にあります。この展開は伊藤計劃『虐殺器官』を髣髴とさせます。

 アリエカ人とはアメリカ人の寓意なのか。通常宇宙(マンヒマル)や恒常宇宙(イマー)、そしてブレーメンから着任した大使など、ドイツ語が頻出するのはナチスや国家の分裂の謂(いい)なのか。
 そういうことをあれこれ想像しつつ頁を繰るのですが、おそらく『都市と都市』同様、ミエヴィルはこの小説をアレゴリーとして読むことを頑なに拒むのでしょう。

 奇怪なアリエカ人の世界を目にすることで、私たち人類が言葉とどう対峙しているかを多少なりとも意識的かつ主体的に見つめる便(よすが)にする。
 私個人は、そんな風にこの小説を読みました。

*残念ながら早川書房の書籍にしては誤植が目立ちました。
48頁下段3行目「とてつもないスキルと時間を要するもある」→「〜要するものもある」
120頁下段10行目「カル/ヴィンにすばやく質問ぶつけたら」→「〜質問をぶつけたら」
467頁上段2行目「野生化したりものも」→「野生化したりするものも」
 私が手にしたのは初版本ですが、増刷の際は修正されることを期待します。
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4153350087
No.6:
(4pt)

二段組みで500頁になんなんとする異世界を、溺れず渡り切るのは至難なことかもしれないが…

舞台は惑星アリエカにある人類の入植地エンバシータウン。現生種である異星人には口が二つあり、その二つから同時に発せられる音声によって言語活動がおこなわれている。当然のごとく、単一の口しか有さない人類との間では通常のコミュニケーションは成立しない。そこで人類は「大使」という存在を作った。二人一組の人間が同時にアリエカのゲンゴを語ることで意思疎通を図るのだ。このゲンゴの崩壊と変性を描く物語…。

 作者チャイナ・ミエヴィルは『都市と都市』で、隣接しあう二つの都市国家の国民同士が互いを見て見ぬふりをするという奇妙な掟の中に生きる様を提示してみせました。それが視覚上の幻惑世界であるとしたら、今回は聴覚の面で奇妙奇天烈な異界を紡いだといえます。
 さらにいえば、アリエカ人はウソをつくことが出来ないという性格をもっています。現実に存在しないものを描写することができないために、わざわざ指し示すことができる存在となることを人類に要求する…と、こう書いたところでそれが何を意味するのかはここでは説明しきれませんが、ともかく、この物語の語り手である女性アヴィスも少女時代に「食事のために作られたがしばらく食事には使われていなかった古い部屋であたえられたものを食べた苦しみのうちにある人間の少女」という「直喩」となった人物です。
 読者を煙に巻くような風景を地平の果てまで精密に描写するミエヴィルの相続力の際限のなさに、眩暈(めまい)がして仕方ありません。

 物語の後半は、惑星上の酸鼻を極める内戦へと突入していきます。その原因は言語にあります。この展開は伊藤計劃『虐殺器官』を髣髴とさせます。

 アリエカ人とはアメリカ人の寓意なのか。通常宇宙(マンヒマル)や恒常宇宙(イマー)、そしてブレーメンから着任した大使など、ドイツ語が頻出するのはナチスや国家の分裂の謂(いい)なのか。
 そういうことをあれこれ想像しつつ頁を繰るのですが、おそらく『都市と都市』同様、ミエヴィルはこの小説をアレゴリーとして読むことを頑なに拒むのでしょう。

 奇怪なアリエカ人の世界を目にすることで、私たち人類が言葉とどう対峙しているかを多少なりとも意識的かつ主体的に見つめる便(よすが)にする。
 私個人は、そんな風にこの小説を読みました。

*残念ながら早川書房の書籍にしては誤植が目立ちました。
48頁下段3行目「とてつもないスキルと時間を要するもある」→「〜要するものもある」
120頁下段10行目「カル/ヴィンにすばやく質問ぶつけたら」→「〜質問をぶつけたら」
467頁上段2行目「野生化したりものも」→「野生化したりするものも」
 私が手にしたのは初版本ですが、増刷の際は修正されることを期待します。
言語都市Amazon書評・レビュー:言語都市より
B00C20MZOK
No.5:
(5pt)

言語・・・その起源、機能とは、SF的実験小説であろうか・・・。な〜んてことを考えなくても

チャイナ・ミエヴィルは、2009年の「都市と都市」(皆さんもお読みになったでしょう)で主要なSF賞を受賞し、2011年の本作品でもローカス賞を受賞している現代SF界を代表する英国の作家である。
彼は、1994年ケンブリッジ大学で社会人類学の修士課程を修了後、1995年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで国際関係論の博士号を取得。現在、大学でも教鞭をとっている。そのような著者による本作は、やはり”傑作“である。彼においてはSFのSは”Science +Social”のフュージョンを意味する。したがって、科学、政治、経済が複雑に交差絡み合う、この都市生活において、著者・チャイナ・ミエヴィルの強調する多様性とは何か?・・・な〜んて、思っても思はなくても十分に楽しめます。
物語の舞台は、或る惑星である・・・この辺境の惑星に住む先住種族は非常に不思議・奇妙な言葉をあやつっているのだ。相手=先住種族の言葉は分かるが、こちらがその言葉を話すには、発声器官の構造の違いから、”大使“と呼ばれる特殊に育成された人間(?)が必要となる。ここで、興味深いことは、先住民族の言語には”嘘”をつくという機能がないということである。異種族同士の共同体と非同等・非対称・不平等な言語交渉しかできない先住民族・・・新たに木星から送り込まれた”大使“の言葉と先住民の言語特性”嘘をつけない“という齟齬によって引き起こされる混乱は惑星全土に拡大し・・・サバイバル小説という状況に至るのか?この面白さもある。
しかし、本書を少し読み変えてみれば、政治小説にもなるように著者・ミエヴィルの構想の中に考慮されていたのだろう。政治と言語は切り離せないものだし。政治における言葉とは人を操作することである。機能的に”嘘“をつけないALIENの意味、英国の歴史を知っていれば・・・ただちに植民地に関する政治小説が浮かんで来よう。この小説では、言語についての実験的記述が非常に多く見受けられる・・・言語の起源や機能についてである。”言語が思考限界を規定するか“という人間における多くの議論は本書を超えているが、そのように思っている人が多い。言語が思考の限界を定めるという見解は、人間界の各国語間では否定されていると思っていいであろう(最近の議論では)。ところが、本著に登場するのは、何を考えているのかを容易に理解できない、特殊な言語機能を持つ異星人なのである。著者の主張・支持する”多様性“は語り合う言語を持たない者たちとの共存を前提とした強固なる多様性である。そこに、著者の学者としての一面が窺われよう。しかし、そのようなことに関係なく、本書は非常に面白く読めます。
傑作でしょう。お薦め!
☆☆ ご存知、Fredric William Brown「Angels and Spaceships」"Politeness"(天使と宇宙船「挨拶」)でも読んだらきっと笑えるでしょう。こういう異文化交流ならいいけどね。
また、他書「危機言語: 言語の消滅でわれわれは何を失うのか (地球研ライブラリー)」を本書と同様に読みこなせる者の存在性の低さが寂しいですな。
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4153350087
No.4:
(5pt)

人類によってもたらされたエイリアン社会文化の崩壊と新生。

二つの音を同時に放つ事の出来る発声器官を持ち、異なる二音を同時に発する事で“ゲンゴ”と呼ばれる独自の言葉(?)を操り、嘘のつけぬアリエカ人達と人類始め他からの移住者達が共に暮らすエンバシータウンを舞台に、その一大転換期に当事者となってしまった人間の女性を主人公に展開する難解な文化叙事詩的作品。
録音再生された音を何故か“ゲンゴ”として認識出来ぬアリエカ日とに対して人類が試みたのは、互いにリンクさせられた一組の双子が同時にそれぞれ異なる単語を発する事で、漸く“ゲンゴ”らしき言葉を発すると云うものだが、それですら完璧では無かった。しかし、こうして送り込まれた大使達に依り、アリエカ人達は人間に可能な嘘の魅力にとりつかれ、やがてエンバシータウンの現状に一石を投じるべく送り込まれた異色の新任大使はその個性の強烈さから、アリエカ人の聴衆達に対し語る言葉が麻薬として作用し、アリエカ人社会に混乱と崩壊をもたらす。その時、主人公と一部の人々の取った行動がアリエカ人の社会に大きな転換を生じさせる。
ちなみに嘘をついたり空想上の存在を語る事の出来ぬアリエカ人達は現実に存在している事物の中から話の引き合いに出す為の「直喩」を選ぶが、主人公は生きた「直喩」。いわば“ゲンゴ”と「直喩」がアリエカ人の思考、社会、文化の基盤であり、又、発声器官である羽の存在自体が個々の思考と人格に影響を与えてもおり、一筋縄では行かぬ独特なエイリアン文化を、よくもまあこんな具合に着地させたと想う。
只、結果的には先住種族アリエカ人の文化を根本から破壊し、人間化してしまった事にもなる。人類や他の種族からすれば喜ばしい事なのだろうが、文化的に見た場合、賛成し難い面があるのも事実で、主人公の結婚相手だった男が最後は手段を選ばずアリエカ人達の転換を止めようとしたのも、理解出来る。南方の島々に戻って文明化され貨幣を使う人々を見て「楽園は失われた」と嘆く水木しげるや、先進諸国の先住民族の文化を対象とする文化人類学者達なら、その心情は理解出来るものがあるだろう。
それでも、新たな社会と文化を得たアリエカ人達に対し、エールを送るべきなのだろうな。

ところで313頁、「三つの声で成り立つ言語があると思う?」だが、多分、作者はCthulhuを想い浮かべての事ではないだろうか。三つの子音を同時に発する事が出来ればCthulhuの名を正しく口に出来ると云う設定なのだから。
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No.3:
(5pt)

全く異なった世界で起きたできごとを本当に体験させてくれる

この本の解説にあるように、必ずしもわかりやすい本ではない。ストーリーを楽しむ作品と言うよりは、言語がゲンゴである世界に浸るという読み方をする作品である。私は、いつもは速読派なのだが、この本は、1冊読むのに、じっくりと時間をかけた。時間をかけて読む楽しみを与えてくれる作品でもある。
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4153350087
No.2:
(4pt)

異世界への引き込み方はこの作者の真骨頂です

この作家はいつも作品の導入部から話が回り出すまで、冒頭数10ページの書き方が非常にうまいと思います。
今回も、主人公の子供の頃の体験と、人類と異なる知的生物との共棲の様子が魅力的に描かれ、話がどんな方向に進むのか大きな期待を持たせます。

その話の方向は、「ホスト」と呼ばれる種族の言語と思考のありようが、人類によって崩されるさまを、なぜそんな事態になったのかという謎を含めてミステリ風に進んでいくというものです。
これもこの作家らしく、ベタといえるくらいステレオタイプな表現と斬新な印象を巧みに組み合わせることで、ストーリーとしては読みやすいのに充実感もある作品になっています。言語と知的生物のかかわりはSFのテーマとしては珍しくないですが、テーマに関心がなくてもこの言語のあり方には興味を惹かれると思います。

ただ、実はそこまでのめり込み面白いと言えない自分がおり、むしろ何がのめり込めない原因なんだろう、と自問してしまいました。結果、おそらくは主要登場人物の実際の行動と、エモーショナルな部分での描き方がどうも完全に噛み合っていないように見えることが理由かな、と結論付けたのですが。
実はこの行動と感情の若干の違和感は、個人的にミエヴィルの他の作品にもこれまで感じていたものです。この違和感がなくなると最高に楽しめる作家になるのにな、と私としてはちょっと残念ですが、こうした違和感は個人のテイストによるものなので、これまで違和感を持たなかった方ならこの作品も十分満足なさるでしょう。
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No.1:
(5pt)

面白かった!

物語となる世界観の把握に少し難儀したけれど、使われる単語の意味や、舞台設定が掴めてからは、グイグイと惹き込まれてしまった。 共生していた異星人と人間の、支配と被支配の関係が、微妙に揺れ動いていく様子も面白い。
『都市と都市』や『ペルディード・ストリート・ステーション』と同じく、この作品も、あまりの異世界ぶりに脱帽だった。

地球からものすごく遠くにある、アリエカという惑星が舞台。
アリエカには原住民(ホストと呼ばれる)がいて、その都市の一角に植民者であるテラ人(地球人?)は街(エンバシータウン)を作らせてもらい、空気や生活に必要な物資などをホストから供給されて暮らしている。テラ人のほか、死なないシュラース人や、ケディス人などの異星人が生活している。また、ホストの生活する家や、道具などは全て生き物(バイオリグ)である。
惑星アリエカは、あまりにも辺境にあるものだから、ブレーメン(という地球人の政府?)の関心は薄く、何かあったとしても救援には時間がかかる状況に置かれている。
アリエカ人=ホストとの対話はとても難しい。会話は特殊な環境で育てられた”大使”にしか行うことができない。 大使マグ/ダーは、マグとダーのペアとしてはじめて機能する。”大使”以外の人々が話しかけたとしても、ホストは聞き取ることができない。”大使”は同じ外見の、互いに共感を持つペアである。発する言葉の背後に事実があって、精神がないと、ホストは一切、聞き取る事ができない。ホストに対して、ウソは通じず、真実しか語れないし、認識できない。
ホストへの説明のために”直喩”(他にも”用例”や”話題”など)が必要になる。”毎週魚と泳ぐ男”だとか、”与えられたものをたべる少女”だとか・・。
子どもたちは、役割を与えられて存在している。主人公のアヴィスは”直喩”の一人だが、若いときにイマーサー(別世界に遊学すること?)としてアウト(遠い惑星や宇宙のこと?)を経験した事でアリエカに帰還したときには、大使館で特別な立場を担っている。
事件は、ブレーメンから派遣された新任の大使エズ/ラーが着任したために起こる。従来、大使はエンバシータウンの出身者(”大使”の育成秘話は、少なからずグロテスク。人体実験のようなもの)であったのだが、エズ/ラーはこれまでの大使とは大きく異なっている。新しい大使の言葉に、ホスト達は麻薬中毒のようになる。そのためエンバシータウンの都市機能が麻痺してしまう。アリエカ人は圧倒的な数である。大使の声を求め、暴力的になるホストや、餓死するものなど、統制を失う。バイオリグも麻薬に感染したため、一部のコンピュータも汚染されてしまう。
麻薬を克服するために、言語機能を自ら切除した集団(アブサード=ゲンゴナシ)の見境なしの殺戮や、都市襲撃など、エンバシータウンはもとより、生命全てが危機にさらされていく・・・。

アリエカ人にとって「ウソをつくこと」は驚異である。直喩しか存在しない世界から、ウソ(隠喩)を話せるようになる事は革命である。彼らの世界認識・社会構造がガラリと変わるのだから。
アヴィスが、差し迫る危機のなか大使を通じてではなく(また直喩としてではなく)一人の人間としてアリエカ人に自分の存在を認識させる場面では、少し感動する。
麻薬中毒のアリエカ人と、躊躇無く殺戮を繰り返すアリエカ人。同族で殺し合うのは凄惨であるが、破滅的な行動の裏には、愛があるのだ。 アリエカ人が変われば、テラ(地球)人の側も、変革を強いられる。必要なくなった”大使”の末路は、悲惨に思える。ブレーメンとの応対も同様である。異星人とのファースト・コンタクトでは、きっと予想も付かないような事が致命的な結果を招くのだと思う。
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