仏果を得ず
評判
仏果を得ずの評価:
4.49/5点 レビュー 91件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全122件 121〜122 7/7ページ
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仏果を得ずの評価:
4.49/5点 レビュー 91件。 B ランク
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後者は、師匠にうながされて、師匠の妹の通夜の席で祭壇に向かって『ひらかな盛衰記』の「神崎揚屋の段」を語る場面と、『忠臣蔵』六段目に抜擢されて、勘平の腹切りを語る場面によくあらわれています。そこでは、古典の物語が音曲の力で、現実の人生にぶつかり、重ね合わさって発火します。
ことにラストの『勘平腹切り』の段。母子家庭の小学生の女の子に惚れられ、お母さんと深い仲になってしまっている主人公は、女の子の行方不明という事件のさなか、必死に初の「勘平」を舞台で語るうち、勘平の苦悩に乗り移られ、神がかりのような瞬間を体験します。
「脳髄が冴えわたり、魂が首筋から抜けでて頭のうしろで浮遊する感覚がする」
このクライマックスの描写は圧巻です。
一生のコンビとなる三味線の兎一郎との物語が、これから始まるという予感もあり、文楽の真髄にせまった作品です。
ただ、主人公の輪郭がいまひとつはっきりしない憾みもあります。
どちらかといえば勉強の苦手な不良高校生だった主人公が、文楽の太夫の絶叫エネルギーに打たれて、その道を目指すわけですが、たとえば、その彼が、別の太夫に稽古をつけてもらうよう師匠に命じられたとき、そんなところへ行っても、けんもほろろに追い返されるだけだから、どうせ「深草の少将」か「カノッサの屈辱」になる可能性が高い、とつぶやく場面があります。この言葉など、何か彼のキャラクターに合わない、スマートな洒落で、微妙に違和感を感じました。
ともあれ物語と健自身の人生が重なって織りなしてゆく文楽人生、ぜひ続巻を(特に兎一郎に光をあてて)書いてもらいたいと思います。