仏果を得ず

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仏果を得ずの評価:

4.49/5点 レビュー 91件。 B ランク

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Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全122件 101〜120 6/7ページ
No.22
(5pt)

男の本質を突いている

「恋愛や家族よりも、まず芸(仕事)ありき。」主人公の健が、恋人に対して、芸の精進が恋よりも何よりも優先することを告げる場面があるが、文楽の大夫として大成するには、恐らく朝昼晩もなく、芸の道に励まなくてはならない。そして、同じことは歌舞伎など他の伝統芸能だけでなく、陶芸や漆器といった伝統工芸や、長くて辛い訓練を必要とする全ての伝統的な職人の技に共通する問題でもある。(ちなみに、学者として大成するためにも、同じような長い訓練が必要だ。)

こうした芸や技といった「一生の仕事」に魅せられてしまった男(及び女)にとっての職業観とはどんなものかを、さらりと、青春小説の形を借りて作者は語っている。今やこうした職業観(及び人生観)は絶滅に瀕しているように思え、かつてはありふれた光景だった師弟関係や、しきたりや、稽古や厳しい訓練といったものが日本から消えつつあればこそ、本書で描かれる文楽の世界がとても魅力的に思える。

文楽の入門書として読むのも面白いけれど、男の思考回路がどうなっているのか、といった見方で読んでも楽しいと思う。何故彼氏または彼女がデートよりも残業を優先するのか理解したい人(「私と仕事とどっちが大事なの?」が口癖の人)には特にお勧め。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.21
(5pt)

古典芸能ユーモア青春小説

えーっ“文楽”?ナニソレ。しかも人形浄瑠璃の人形の方じゃなくって、義太夫節?あの、おじいさんが唸ってるようなヤツ?どうしちゃったの、しをんさん。あ、彼女の趣味だったのね。
 ところが読んでびっくり、あれよあれよと引き込まれる。素敵なユーモア青春小説じゃないの。しかも、文楽に関する基本知識が抵抗なくスルスルと理解できちゃう。
 これぞ読書の効用。またも新しい世界をのぞかせてもらいました。感謝、感謝。今度NHKで文楽中継があったら録画してみようっと。
 ど素人をそんな風に感化してしまう、凄い力を持った作品です。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.20
(4pt)

文楽を観に行きたくなる!

著者の作品はこちらが初めてです。
文楽をたまに見る程度の知識ですが、
表紙の不可思議さに惹かれて手に取りました。

出てくる演目は歌舞伎でも著名なもの(元々のオリジナルは文楽だし)
なので、戸惑うことなく入り込めます。
文楽というと、つい人形方に目が行きますが、
伝統芸能の中で世襲制を取らない組織の中、
その人形方も、大夫も、どのような背景で、
どのような人間関係で構築されているのか、
一般のポピュラーな芸能と比べて、ブラックボックスの
ような印象が今までありました。

それを堅苦しくなく、
ぐいぐい読ませるテンポ、鮮やかな人物像で、
気持ちの良い読後感を味わえて、かなり楽しめました。
逆に軽すぎて拍子抜けしてしまったほど。

すべて読み終えた後に、表紙の絵を見ると、
また違った感慨があります。
なんだか今すぐにでも文楽が観たい!という
気持ちにかられます(笑)。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.19
(4pt)

伝統芸能はたいへんだ

おもしろい。でも文楽を見たことがない。なんという人生の不覚。表紙のかわいらしさで手にとってしまった。文楽の演目は聞いたことがあるけど内容まではわからない。でも若い太夫の日常と演目が重なってとてもおもしろかった。伝統芸能がすごく身近なものに感じられた
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.18
(5pt)

「文楽」とはなんぞや?

「風が強く吹いている」の、しをんさんの新作ということで手に取りました。

「文楽」と聞いてもピンと来ず、「女殺油地獄」が出てきた所でやっと、江戸時
代でいう「浄瑠璃」のことだと気付いた次第でございます(笑)。
恥ずかしながら、私、卒論は近松門左衛門でした…。
「女殺油地獄」や「心中天網島」は、人形浄瑠璃の戯曲として書かれたものです
が、「文学」として専攻していたので、俄かには結び付きませんでした。
私と同じく、「へえ、文楽が題材なんて面白そう」というよりは、「風が〜」の
しをんさんの新作だから、と手にされる方がほとんどだと思います。
そんな方でも大丈夫!
心配いりません!
「女殺油地獄」の「与兵衛」とはどんな人間なんだ?、と必死に模索する健とと
もに、300年前から語り継がれてきた「文楽」の世界に、一気に引きずり込ま
れること間違いなしです。
もしかしたら、「風が〜」があまりに傑作だったので、この本を読むのを躊躇し
ている方もいらっしゃるかも知れません。
ですが、私は、江戸期における「文学」としても捉えられている「文楽」という
題材の方が、活字で表現するのに向いていると思います。
「風が〜」の、そのまま映画やドラマになりそうな、デフォルメされきったキャ
ラの書き込みはやや抑え目で、その分、各演目の内容が掘り下げられているので、
マンガチックな小説はちょっと…という方も、きっと読み応えを感じられると思
います。
とは言え、健の師匠の銀太夫さんが、ちゃんと、しをんさんらしい面白さも醸し
出してくれていますよ(笑)。
個人的なことですが、実際に戯曲を読んだことのある、「女殺油地獄」や「心中
天網島」が出てきたことや、社員旅行で実際に内部を見学したことのある「内子
座」が登場してきたことなどから、この本に出会えたことに、「不思議な縁」を
感じています。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.17
(5pt)

純粋に面白いです

本書の書名にある「仏果」とは、仏教用語で、修業を積むことによって得られる悟りのことを意味します。本書は、主人公として描かれる健が、文楽の修行を通じて悩みながらも、成長していく物語です。とても人間くさい登場人物の性格が、うまく生き生きと表現されています。ちなみに文楽とは、義太夫節・三味線と人形劇から成る人形浄瑠璃のことです。伝統芸能の世界には馴染みがありませんので、その世界で繰り広げられる様々な事件の中で、登場人物が悩んだり恋をしたり人間関係で衝突したり・・・という内容になっています。章ごとに読みきりの独立した内容になっていますので、文楽の名作を毎回うまく紹介してくれながら、人間ドラマを描く本書の内容は、久しぶりに読みごたえのある小説に出会う興奮をもたらしてくれました。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.16
(4pt)

三浦しをんの才能

改めて言うことではないし、皆様ご存知の通りかもしれないが、三浦しをんは文章を書く能力が非常に高い。具体的にいうと、読者を物語の中に引きずり込んで、あっという間に読まさせてしまう力がすごくある。文章の構成が良いのか、リズムが良いのか、語句のチョイスが良いのか、多分全部兼ね備えているからこんなにも夢中にさせてしまうのだと思う。そのことを今回の作品を読んでまざまざと再認識させられた。文楽という自分にとっては全く興味のない分野で、知りたいとも思わない題材だったのだが、読んで行く内にどんどんと惹き付けられて、一気に読んでしまった。本当に読者に読ませるのが上手い作家だなとしみじみと思ってしまった。やっぱり三浦しをんの作品は面白い。表紙のイラストも良い感じで、本の装丁も特徴的で面白いです。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.15
(4pt)

しをんさんらしい作品です。

三浦しをんさんの新作。「文楽」がテーマということで知識が全くない私でも楽しめるのかとちょっと不安でしたが、これ面白かったです。 所謂、青春小説の部類です。
大夫の世界に身を置く健が一人前に成長して行く姿。そして、亡き大夫の相方を忘れることが出来ない三味線弾きの相方。そこに恋の問題ともりだくさんです。
「文楽」という世界に身を置き一途に芸を磨く主人公が、時にはつまずきそして更なる精進を遂げる姿がすがすがしく好感が持てます。しをんさんならではの世界です。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.14
(4pt)

伝統芸能青春小説

青春小説といって一般に思い浮かべられるものといえば、
スポーツか、バンドか、それともひたすら恋愛、とか
そのへんだと思うのですが、今回、三浦しをんが描いたのは
文楽(人形浄瑠璃)にかける青春だ。
主人公の健は、30才ちょっと、青春モノの主人公にしては
トウが立っている気もするけれど伝統芸能の世界ではまだまだ
これからの若手。三味線と人形の動きにあわせて物語を語り、
演じる太夫という役割を舞台ではになう。大先輩のもとでの
修行と公演の日々を送る健。頑固な三味線奏者と組むように
師匠に言われて困惑しつつも、自分なりの役作りや作品の
理解につとめ(心中だの仇討ちだのという古典的な文楽の
テーマやキャラクターを、現代の日常生活におけるトラブルや
自分の恋愛から学ぶ、というパターンがユニークである。
文楽の有名な演目のストーリーにも興味を持てるし)、
精進する健のすがすがしさ、未来への不安など、誰もが
通る青春という季節の危うさ、力強さを感じられて、
大抵の人には遠いはずの文楽の世界に生きる彼がすごく
身近に思えてしまう。三浦しをんが大の文楽愛好家で、更に
すばらしい文章力と描写力を持つ作家だからなしえた
奇跡の様なすばらしい小説である。
最初の章は、文楽についての概要をある程度説明する描写が
多いので、少しテンポがゆったりめ?と思うかもしれないけれど
すぐに入り込めるのでご安心あれ。
仏果を得ず Amazon書評・レビュー: 仏果を得ずより
4575235946
No.13
(5pt)

文楽の世界に、少し近づける?名作!!!

文楽の世界のお話。
主人公は、健。
高校の修学旅行で文楽に出会い、魅入られて、入門した研修生あがりの若き義太夫。

芸の道は厳しいけれど、文楽をこよなく愛す、健は、常に前向き、もしくは時に落ち込むけれど全てを芸の精進につなげていくけなげな若者なので、読んでいてすごく楽しい。

周りを取り巻く師匠銀太夫、兄弟子の幸太夫、相方の三味線の兎一郎兄さん、大家?の誠二他と、登場人物もいい。
文楽の作品についてもおおよその筋がわかるように書き込んでくれていて、それだけでも文楽に近づけたような気がしてくる。

三浦しをんさんの勉強ぶり、博識で、研究熱心さがよくわかるとても素晴らしい作品だと思う。

ぜひとも、文楽を見てみたくなった。
名作だと思う。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.12
(4pt)

文楽が見たくなる、もっと知りたくなる青春小説

伝統芸って何だろう。本当に自分には縁もゆかりもない世界なのだろうか。
変わった題名だなあと思って手にとって、すっかりこの世界にはまってしまった。

文楽の世界をこんな風に描く作家がいるのか。
文化そのものを嫌悪しているのかと思うくらい、理解を示さない市長のいる大阪。
苦戦している国立文楽劇場に、強い味方となる若手を育ててくれる本なのかと
伝統文化応援に書かれた本かと思ったくらい感心、感激。

青春物とは一概に言えない年齢の主人公だが、
芸の道は若くして極められるわけではないから、設定としてはこれでよし。
それにしても兎一郎の相方が月太夫って、月に兎じゃ、主人公勝てない。
健康の健のネーミング、意味深。
帝塚山と寝屋川、緑地公園や豊中の辺り、
土地勘のある人間には楽しい背景。

土地柄も人間関係も自分の身に引き寄せて考えさせられる、
仕事に打ち込む人間の横顔を、伝統芸と青春を交えて打ち上げた、
心温まるストーリー。本当に久しぶりに文楽劇場に足を運びたくなる!
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.11
(4pt)

ジョースター

まるで漫画を読んでいるみたいに楽しく読ませていただきました。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.10
(5pt)

無間地獄の沈まば沈め

初三浦しをんだったが,浄瑠璃と青春小説を上手く融合させて,その筆力に瞠目。読みながら文楽の台詞と共に三味線の音が聞こえてくるようで贅沢な仕上がりになっていて,何倍も楽しめる。今後の活躍にさらに注目。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.9
(5pt)

文楽愛をものすごーく感じます!

歌舞伎は何度も見に行ってますが、文楽なんてしょせん人形劇。
ハイ、私はそう思っていました。
これを読んだら、文楽を見に行きたくてしょうがない。
読み終わった翌日、文楽協会のHPを開いて公演スケジュールとにらめっこしてました。そんな人がいっぱいいるに違いない(笑)
橋下知事もこれを読んでから、見に行ってほしかった。(今はもう興味ないだろうけど〜)
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4575514446
No.8
(4pt)

健太夫がんばれ!

学校行事で義務的に参加する講演会とか観劇会とか、寝るなといってもかなり無理なシチュエーションだけど、高校の修学旅行で強制的につれて行かれた文楽観賞会で、健(この物語の主人公)は「がーん」石をぶっつけられたみたいな衝撃を受けます。そして『グレている』『要注意の生徒』で、卒業後のことなんて真剣に考えたこともなかった健が、なんと、そのときの「がーん」が忘れられなくて文楽の研究所に入所してしまいます。そして無事卒業、「がーん」の発生元、義太夫の銀太夫の弟子入りし、大夫への道を歩み始めるんです。

お話はこのあとしばらく時間がたってから、健がそこそこ一人前に舞台を務められるようになったあたりから始まります。

ちゃらんぽらんな高校生男子を「がーん」とさせ、将来の進路を決めさせてしまう文楽ってなんでしょう。詳しい人って少ないと思うんです。難しそうって敬遠したくなる感じもありますよね。

でもね、文楽の太夫として芸を極めたい! 健が情熱と努力を傾ける先が、たまたまなじみの薄い伝統芸能だっただけで、イチローやダルビッシュにあこがれて、将来大リーガーになる、決意を固めるのとちっとも変わらない、要はきっかけの問題なんだなと、健の懸命さに実感します。

こういうふうに書くと、芸道一直線のお堅い物語みたいな印象ですが、三浦しおんさんのそこはかとないユーモアが、しっかりとまぶされているし、どことなく田中啓文さんの『笑酔亭梅寿謎解噺』に似た師弟関係にも笑えます(あそこまでかっとんでませんけどね)

たとえば恋愛は自主規制したはずなのに、ひとめぼれをしちゃって悶々としたり、師匠の夫婦喧嘩の板挟みで冷や汗をかいたり、健、がんばれ!!! ついつい応援したくなってしまうし、もちろん芸に対する真摯な苦悩もありで、読み進めるうちに、すっかりストーリーに取り込まれてしまいます。

それと最後にもうひとつ、文楽に関して、さりげなくも丁寧な説明解説が織り込まれているので、文楽なんて知らないし興味ないでもだいじょうぶ。読み終わる頃には一回ぐらい文楽ってものを見てみようかなという気持ちになる(と思います)
なんだか興味あるけど敷居が高いかな、そういう方には、ぜひぜひおすすめ。ご一読を。
仏果を得ず (双葉文庫)
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.7
(5pt)

何かに夢中でいられる、そんな青春が見える作品

文楽の世界を中心にした作品です。が、文楽入門というよりは
文楽に青春を賭ける人々のお話といった方がいいのかと思います。

主人公・健が文楽の世界に、研究生いわばしろうとから踏み込んでいきます。
この作品では文楽の世界がわからなくても
十分に感情移入できるように、
あくまでも健のプロになろうとすることへの苦しみやもがきを土台に描かれています。
健が乗り越えていこうとする課題と文楽の演目がうまく絡めてあって
人間関係も織り込みながら、健の心の成長や葛藤が暗くなりすぎません。
また、まわりの重鎮たちや健とコンビを組む兎一郎も個性的なキャラで読んでいて楽しく
声を出して笑えるようなところも有りました。

文楽に詳しい方にとっては、また違う見方があるのかもしれませんが
知らなくても知らないなりに楽しめて、
何かに夢中になることは、苦しいけど幸せも感じられるという
そんな青春を感じられる読み物です。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.6
(4pt)

初対面の真智は恋に落ちるほど魅力的?師匠を手招きしてもいいの??

とっても面白く読みました。文楽について、あ、こういう見方があるのか、と感嘆したところも多かったです。例えば「女殺油地獄」の与兵衛の解釈、下級士族を母に持ち、油屋の次男として生まれた与兵衛が魂の自由に憧れれば憧れるほど抱くやり場のない閉塞感、から、成り行きで親切な近所の主婦を殺してしまった悲劇を描くことによって、「あらかじめ定められた生への疑問」を近松が与兵衛に托したという解釈には、なるほど!と納得しました。私は「油地獄」が好きになれなかったのですが、是非もう一度鑑賞したい、と今は思います。この作品のすごいところは、この本を読んだ多くの人に「一度文楽が見てみたい」とか「あの作品がもう一度見たい」とかと思わせるところだと思います。
 しかし、文楽に関してではなく、登場人物に関して不満に思う点が二点あります。
 一つは、「油地獄」で初めて出会い、健が一目惚れする真智が、この時点ではそれほど魅力的には描かれていないために、私は健の恋心に寄り沿うことができなかったということです。文楽の主人公もそうだったように健が一目で真智に惚れたことに理屈はない、と言われても納得しがたかったです。なぜなら、文楽では人形の美しさや、義太夫と三味線の切なさが、主人公の一目惚れを観客の心に訴えますが、小説であるからには筆で真智の魅力を描写していただかないと、読者は恋に落ちた健に共感できないからです。真智は後にはそれなりに魅力のある人としても描かれるわけですが、初対面の場面では健に一目で惚れさせてしまった具体的な魅力には乏しいです。むしろ「疎開物の映画に教師役として出てきそう」な藤根先生の方が、『瀬戸内少年野球団』の夏目雅子を連想させることから、その魅力が彷彿とします。
 不満の他の一つは、健の師匠に対する態度です。p.143の「ちょうどよかった。師匠、師匠」健は手招きし、窓辺に座るようにうながした、という箇所ですが、師匠を手招きしたりしてもいいのでしょうか??私には長上を手招きするなんてできないなあ、と強い違和感を抱きました。加えて、弟子が師匠と話すとき、自分を「俺」なんて言ってもいいのでしょうか。私自身は、実は教師なのですが、学生が私に向かって自分を「俺」と言ったら、注意しますね。「私はあなたと話す時『私』と言っているのですから、あなたも『俺』と言わないで下さい」と、言います。私は学生が「僕」というのは許容しますが、私の先生は学生が「僕」と言うと、「相対的に『君』と言われているような不快感を相手に与えるから、『僕』と言わないほうがいい」と注意なさっていました。銀師匠は自身を「俺」と言っていますが、たとい銀師匠が「俺」と言っても、弟子の健が「俺」というのはいかがなものでしょうか?…それとも文楽のお弟子さん方は「俺」と言っているのでしょうか?些細なことですが、p.129の「しばらく修業に打ちこんでいるうちに、中学生みたいな恋しかできなくなったみたいだ」という文は雑駁です。
 文楽への造詣の深さで☆4にするか、小説としての荒さで☆3にするか、迷うところですが、全体として楽しめましたし、「お迎え」も近づいた今、意地悪するのも後生が気遣われますので☆4です。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.5
(5pt)

文楽というもの

この本を読んでの感想は皆様がお書きになっているので、ちょっと違う視点から書き込んでみたいと思います。
「仏果を得ず」を読んで、文楽というものについての認識がガラリと変わりました。
文楽が全盛期であったころを現代として生きた人々にとって、文楽とは我々の世代におけるラップのようなものだったのかなと思いました。
歌うのではなく語りであること。三味線との掛け合いであること。人形浄瑠璃はラップと同時に上映されるPVかな?(笑)
文楽の描く世界観は、現在に生きる私たちとって理解しがたいし共感しがたい。しかし人生はいつの世にも不条理で、理不尽なことばかり。
だからこそ健は、八重垣姫の狂気を、身勝手な治平の最後の誠意を、堪平の無念を、我が身に引き寄せて謳い上げる。それが多くの人々の感動を呼ぶ。
畳み掛けるような語り、弾けるような三味線の音、盛り上げて盛り上げて、山場の後にやってくる虚しいほどの静寂。おそらく三百年後の人々にも同じ感動が共有されるであろうと、それが可能であると、信じられる。文楽ってスゴイなあ。
最終章を読みながら、ずっとラップが頭の中で鳴り響いていました。普段ラップなんて聞いたこともないのに(笑)
このような解釈が成り立つと教えてくださった作者に、心から感謝して、これからじっくり文楽を学んでみたいと思います。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.4
(4pt)

ミラちゃんカワイイ

まずは人形浄瑠璃についてふれておきます。
なんやかんやで人形劇です。人形は三人で操ります。これを人形遣い。
効果音を担当するのは三味線。
台詞を言う者を大夫(たゆう)と言います。

この話は、大夫の道を極めようとする健(たける)の物語。
一話一話は短編で、浄瑠璃の題目と健の葛藤がリンクするオシャレな作り。
笑いもふんだんに盛り込まれています。
阿呆な比喩もちょこちょこ。
終章(八章)仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)では、人形が演じる主人公と健が一体化する。
「うわ〜」と鳥肌ものでした。惜しむらくは、健と周りの人との関係のその後が蛇足でした。親切な説明も善し悪しですね。
大阪に土地勘があれば、別の楽しみ方もできます。
谷町筋、千日前、寺町、黒門市場などなど、私には懐かしい響きでした。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446
No.3
(5pt)

今度は芸の世界が舞台

生活の全てを捧げて一生懸命に取り組んでいる人は魅力的です。
たとえそれが、文楽人形浄瑠璃の世界であってもそれは同じことでしょう。
活躍の舞台は数あれど、「風が強く吹いている」では駅伝、「神去なあなあ日常」では林業と
いわゆるメジャーどころとは一歩離れた舞台を描き、そしてみごとにその世界を書き上げ、読者を引きこませる三浦さん、さすがです。
今回の「仏果を得ず」も、ご自身が大の日本芸能好きということで執筆にあたり念入りな取材とインタビューとあふれんばかりの愛が込められており、
浄瑠璃なんて一度もみたことは無い私でも、面白くてグングン読めたのはそういった裏打ちがあったからこそではないでしょうか、と思います。

浄瑠璃とか、あんまり興味ないな。良く知らないし…と思って敬遠してる方、ぜひぜひ一度読んでみて下さいませ。
序盤から引っ張られてあれよあれよと終盤まで読んでしまいます。
文楽の古典は知らなくても、主人公の健はじめとする相方や師匠のキャラの濃さと魅力だけでも十分読めます。保証します。

そして、この一冊で浄瑠璃のお話に興味をもった方、もう一冊「あやつられ文楽鑑賞」もあわせて読まれると
ああ、あれってこういう話だったのね!と納得するかと思います。
先に読むのが一番だったと思うのですが…

個人的に三浦さんの作品で一番好きなのがこの「仏果を得ず」です。繰り返しくどいようですが、本当にオススメですのでぜひ。
仏果を得ず (双葉文庫) Amazon書評・レビュー: 仏果を得ず (双葉文庫)より
4575514446