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キャパの十字架



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【この小説が収録されている参考書籍】
キャパの十字架

キャパの十字架の評価: 4.36/5点 レビュー 74件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全74件 21~40 2/4ページ
No.54:
(4pt)

キャパの数奇な人生の実証を試みた

載せられているキャパの写真はすべてマグナム・フォトから提供されたようだが、当社が沢木氏の本の内容を認めているわけではない、との見解を入れるように言われたそうだ。そうは言ったが写真は提供した。そのことが面白い。少なくともかの有名な写真「崩れ落ちる兵士」は "有名な戦争写真家" キャパが撮った写真ではなく、この写真がキャパを有名にし、彼に戦争写真家の道を歩ませることになった。著者の演繹を理解するため文と写真を行ったり来たりしなくてはならず理屈ぽさはあるが、読み応えのある内容です。
キャパの十字架Amazon書評・レビュー:キャパの十字架より
4163760709
No.53:
(5pt)

ロバート・キャパがスペイン内戦中に写した(とされる)「崩れ落ちる兵士」の写真の「真贋」をめぐってのノンフィクション・ルポルタージュ。傑作

沢木耕太郎氏の『キャパの十字架』 (文藝春秋)は面白い本。戦争カメラマン(戦場カメラマン)として著名なロバート・キャパがスペイン内戦中に写した(とされる)「崩れ落ちる兵士」の写真の「真贋」をめぐってのノンフィクション・ルポルタージュである。傑作。

「ここに一枚の写真がある」で本文が始まり、「崩れ落ちる兵士」の写真がその向かいに掲載されている。
そこから、300ペ-ジちょっとの「読書の旅」が始まる…。楽しく面白い!「真相」「真実」を求めて、スペインにも何度も出かけ、関連する地(パリ、ニューヨーク)にも足を伸ばし、一冊の当時の資料としての雑誌を求めて古本屋を行脚していく様(パソコン検索にもひっかからない時もあり)は「古本虫がさまよう」姿でもあった。

沢木氏が「文藝春秋」で「キャパの世界、世界のキャパ」なる連載をしていたのは愛読していた。キャパの足跡(スペインや英国など)を訪ね、彼が撮影した写真を掲載し、自分自身もその場に立ち(時にはその場であろう地に立ち)、同じアングルで自らも撮影し、双方の写真を掲載しエッセイを書いていた。
月によっては、まったく半世紀以上昔といまと変わらぬ光景を垣間見ることもあり、へぇと思うこともあった。

本書はその連載を本にしたのではなく、そのキャパの足跡を追った連載とは別に、2013年1月号に特別に書き下ろしたエッセイ(キャパの十字架 309枚)に加筆をして一冊の単行本にしたようである。

変な譬えになるかもしれないが、昔読んだホームズもののように、徐々に「真相」「真実」が明らかにされていく過程は、上質のミステリ小説を味読するかのようでもあった。

「崩れ落ちる兵士」が、撃たれていない、死んでもいない。だが、やらせでもない、誰が撮影したのか…といった「真相」「真実」を解明するまでの「長い旅」が淡々と綴られている。

ライカで撮影したのか、ローライフレックスで撮ったのか云々の技術論争に関しては、いわゆる「インスタントカメラ」の類しかほとんど使ったことがないので、よくは分からないが、それはともあれ、面白い。

数年前、スペインを旅行したことがある。パルセロナやウェスカやマドリードにも行き、ブラド美術館やソフィア王妃芸術センターも見た。ピカソの「ゲルニカ」も拝見したが、キャパの写真展もやっていて、記憶は薄れているが、この「崩れ落ちる兵士」もそこにあったであろう。今度、この写真を改めて見ることがあれば、当時とは違った感慨が浮かぶに違いない。

それにしても、戦争写真はキャプションをひとつ変えるだけで、真実を歪めることがある。『キャパの十字架』でも、スペインの学者が己自身のフランスに逃げていく時の家族の写真が、いつのまにか「ゲルニカ」の空爆の被害者の写真に捏造されていくことへの義憤もあってか、「崩れ落ちる兵士」の真贋を研究することになった例が紹介もされている。

「慰安婦」がらみで、岩波新書(笠原十九司氏『南京事件』 )などがそういうミスを犯したこともある(秦郁彦氏『現代史の争点』文春文庫--「偽造された「南京虐殺」の”証拠写真”」参照)。そのほかにも松尾一郎氏の『プロパガンダ戦「南京事件」 秘録写真で見る「南京大虐殺」の真実』 (光人社)が極めて詳細にそうした「写真」の真贋を検証している。一読の価値がある。
東中野修道氏ほかの『南京事件「証拠写真」を検証する』 (草思社)、藤岡信勝氏&東中野修道氏の 『「ザ・レイプ・オブ・南京」の研究 中国における「情報戦」の手口と戦略』 (祥伝社)も参考になる。

スペイン内戦は、様々な形で見直しが行なわれている。単に、民主主義対ファシズムという戦争というわけでもなく、共和国政府内部のソ連の「傀儡」や無政府主義者たちとの対立など、ジョージ・オーウェルが『カタロニア讃歌』 (岩波文庫ほか)でいち早く指摘していた「真実」のテーマが今もなお追求もされている。コミンテルンの「罠」もあった。

そういえば、沢木氏がスペインの内戦関連の地で銃弾、薬莢を拾ったシーンがあるが、僕もどこだったか、アンゴラだったかで拾い持ち帰ったものだった。半世紀以上前の「内戦」の傷跡は、スペイン人の心の中にも大地にもまだ残っているのだろう。
キャパの十字架Amazon書評・レビュー:キャパの十字架より
4163760709
No.52:
(4pt)

沢木耕太郎の執念深さに思わず唸る

ロバート・キャパといえば有名な戦争写真家である、と思っていたが、妻に聞いたら知らないという。それなら、この写真くらいは見たことがあるだろうと「崩れ落ちる兵士」の写真を提示してみたが、やはり初めてのようだ。おお、世代の差か……、性別の違いか……。

崩れ落ちる兵士
http://100photos.time.com/photos/robert-capa-falling-soldier

この写真は1936年、スペイン戦争において撃たれた瞬間の兵士の姿を捉えている、という。ずいぶん前に初めて見たときには、「え!? 本当かなぁ!?」と思った。でも表情も姿勢もやたらリアルだし……。昔から同じ疑問を持った人は多かったようで、沢木耕太郎もその一人だった。

そこで沢木は、この写真を含めたキャパの写真をかなり時間かけて眺めては検証し、スペインには3回も足を運び、誰が、どういう状況で撮ったものなのかを明らかにしようと奮闘する。ネチネチネチネチと、微に入り細をうがって徹底的に考え、調べ上げ、得られた情報をもとにして、さらなる考察を重ねていく。その執念深い姿勢には、畏敬の念すら抱いてしまった。

キャパを盲信せず、しかし否定もしない。沢木耕太郎の絶妙なバランス感覚、さすが一流のノンフィクション作家である。
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No.51:
(5pt)

一切の妥協を許さない力作

久しぶり再読しました。確か購入したのが2年前。沢木氏の作品はかなり読んだと思いますが、この作品ほどエキサイティングで、先へ読ませる文体は素晴らしいものがあります。それは氏が足蹴無く何度も現地へ赴き、様々なひとの助けを借りながら緻密な取材を敢行した結果だと思います。他の下らないミィステリー小説を遥かに凌駕するほどの文体は読むほどに鳥肌が立ちました。又時が経ち再び読むことでしょう。
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No.50:
(5pt)

キャパの人生

まだ少ししか読んでませんが、キャパの人生、壮絶ですね。読みがいあります。
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No.49:
(5pt)

ロバート・キャパを知らずとも超傑作。興奮冷めやまず

本書を手に取る前、私がロバート・キャパについて知っていたことは、
戦争写真家のカリスマというイメージくらい。出身国も知らないくらいだった。
それでも、ページをめくるごとにハラハラ、ドキドキが高まっていく。
これははたしてノンフィクションか?と見紛うほどに、文章に引き込まれていった。

本書は、戦争写真家ロバート・キャパが残した一枚の写真「崩れ落ちる兵士」の真相を追究していく。

本当に銃で撃たれた瞬間をとらえたものなのか?
やらせではないのか?
それともほかに・・・?

たった一枚の写真の真実を追うためだけなのに、
著者は、まさに写真に穴があくほど観察を続け、
舞台スペインや関係国を何度も訪問し、専門家を訪ね、自ら検証していく。
その熱量たるや半端じゃない。

仮説を立てては、あらゆる角度から検証し、説得力ある結論を導いていく。
その過程を、読者はハラハラ、ドキドキしながら追体験していく。
あきらめず、純真な好奇心で、たった一枚の写真の真実を深堀していくさまは、
探偵であり、冒険家のようでもある。

さらに本書は10章を迎えて、勢いを加速していく。
著者がタイトルに込めた想いに、鳥肌が立つ。
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No.48:
(4pt)

満足です

主人に頼まれて注文したのですが、とても中古品とは思えないきれいな状態でした。
もう書店では本が買えなくなってしまいます。
キャパの十字架Amazon書評・レビュー:キャパの十字架より
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No.47:
(5pt)

稀代のノンフィクション作家・沢木氏の力作

沢木耕太郎が、20年以上に亘り「心のどこかに引っ掛かりつづけていた」と語る、ロバート・キャパがスペイン内戦時に撮ったとされる、史上最も高名な報道写真「崩れ落ちる兵士」について、「いつ、誰が、どのようにして」撮ったのかを追ったノンフィクション作品。2013年出版、2015年文庫化。
沢木氏は、これまでにもR.ウィーランによる伝記『キャパ』(全3冊、1988年)、『ロバート・キャパ写真集』(1988年)の翻訳などを手掛けている。
沢木氏は、過去に様々な媒体に掲載された「崩れ落ちる兵士」及び同じ時に撮られたとされる多数の写真を集めるために世界各地に赴き、過去に「崩れ落ちる兵士」について研究をした人々やその兵士といわれる人の遺族に取材を行い、写真が撮られた場所と言われるスペイン・コルドバ近郊を何度も訪れ、写真の専門家の協力を得て当時キャパが使っていたと言われるものと同じカメラで実際に写真を撮り、それに、長年ルポルタージュ物を手掛けてきた沢木氏自身のひらめきと分析を加えて、ひとつの有力な仮説を導き出している。
そして、沢木氏は、過去には提示されることのなかったその事実が、「崩れ落ちる兵士」を撮った1年後に恋人・ゲルダを戦場で失った後のキャパの人生を運命付け、現在において我々がその人生を説明しうる答えなのではないかとも言うのである。
確かに、本書のメインテーマは「崩れ落ちる兵士」にまつわる謎に答えを出すというものであり、その答えを得るだけでも十分に読む価値のある作品だが、加えて、答えに至るまでの沢木氏ならではの“過程=旅”と、何より、随所から読み取れる、「伝記的事実から受けるキャパの印象が、どこか私に似ているように思える」と語るキャパへの親愛の思いが、本書を格段に魅力ある作品にしている。間違いなく、沢木氏にして書き得た傑作と思う。
(2016年2月了)
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No.46:
(1pt)

理屈っぽくてつまらない文章

この本は 興味あっても買うほどのものではない。図書館で借りて読めば十分な内容。
沢木耕太郎の文章は理屈っぽく読んでいて肩が凝る。
「斃れゆく兵士」の撮影場所の特定と実際に撃たれたのかどうかの検証は評価できる反面
「キャパはライカ ゲルタはローライ」だとしつこい位(読者を洗脳するかのように)何度も述べている。
その場にいたカメラマンは2人だけで 同行した共和国軍兵士たちの証言もないのに決めつけている。 
ローライを首にかけたキャパの写真がいくつか残っているのだから 普段キャパはライカだけに拘ってはいないと思います。
キャパが残した文章は「法螺」や「大げさ」があるのは確かだけど では他の人の文章記録やインタビューは100%真実なのだろうか?
あまりにもキャパという人物を固定して考えているように思えました。 検証が不十分です。

なぜ演習中を撮ったのか? 想像の域ですが実際戦闘状態になったときにどういう撮り方をすべきかイメージトレーニングをしたのだと
思います。 いかに迫力のある写真が撮れるか研究したのであってふざけていたわけではないはずです。

当時 現地では現像プリントを出来る環境になく 撮影済みフイルムを未現像のまま出版社にまとめて空輸するシステムだったはずです。
撮影した本人がうまく写っているのかわからないまま プリントを見た編集者の勘違い(意図的か?)によってスクープ写真に
仕立てあげられたのだと思います。 この1枚でメジャーな写真家になってしまったので「演習中」の写真だと訂正する機会を失ったの
が一生引きずる悩みだったのでは。 これを「やらせをした」と言うのは酷な話だと思います。

「ゲルタは写真が未熟だった」とも何度もしつこい位述べています。 田中長徳氏から借りた古いライカの使い方すらマスター出来ていない
人が何を言っているのかと思いました。 沢木氏の取材先でのうっかりミスなど 読者にはどうでもいい話で文字数を埋めているような
文章に嫌悪感をいだきました。 とにかく文章がくどくてつまらないのです。
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No.45:
(5pt)

編集者は著者に恥をかかせてはいけない

冒頭の「ちょっとピンボケ」への言及が不正確というか、書いてないことを書いている。文春文庫版と原著(kindle)とで確かめた。
「胴体着陸」した爆撃機からパイロットが「タラップ」で降りてくるわけがない(「タラップ」が和製英語だということは措く)。
米陸軍航空隊の爆撃行の目的は「フランスのドイツ軍をたたく」(戦術支援)ことではなく、兵站や軍需工業や都市機能の破壊(戦略爆撃)である。
本著の目的は「爆撃隊の運用の知識を読者に与えることではない」ことは、百も承知だが、上記2件のように、原著にないことを付け加えたその内容がいい加減では、何のための言及か。(「キャパへの追走」でも、ノルマンディ上陸作戦を「ドーバー海峡をわたって」と微妙な注釈)
そういうことの無いように、調査・調整するのが担当編集者の仕事ではないのか。ましてや、おなじ「文春文庫」目を通さなかったのか。
文庫化まで、その時間はあった筈。
著者の責任ではなく、編集者の責任である。
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No.44:
(4pt)

キャパが背負った十字架とは

沢木耕太郎のライフワークの一つであるロバートキャパの崩れる兵士の写真について キャパが何を背負って生きて最後はベトナムで死ななければならなかったのかまでを考えさせる素晴らしい一冊 ライフワークの一つとなっているので、知識も語り口も半端でない本物を感じますが 検証の方法については、研究者では無く、ジャーナリストだなあと思って少し物足りないので4星 現在の技術ならば DEM(標高モデル)の活用やgoogle earthをはじめとするすざまじいデジタルライブラリーを 活用しないでどうする って思いました
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No.43:
(1pt)

つまらんし、タイトルがひどい

どうでもいいことを延々調べる。
ほかの筆者なら本にさえならないだろう。

本人が死んでいるのから真実などわかりようがない。
なんで「十字架」なんだ。
大げさすぎる。

いい写真なんだからそれでよかろう。
現代の、自分の倫理観で、勝手気儘にものを書くのはヘドがでる。

沢木耕太郎ともあろう人が何を書いているのだ。
老醜に近いと疑いたくなる。
それでも私は最後まで読んだ。
だから悔しいのだ。
沢木ファンを裏切っている。
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No.42:
(4pt)

こんなに安く買えるのですね

初めて、中古本を購入しました。 汚れも気にならず、これから、どんどん利用しようと思っています
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4163760709
No.41:
(5pt)

数奇な運命

最後の掲載写真、運命の重さを感じざるを得ません。キャパの十字架というタイトルが胸に迫ってきます。
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No.40:
(5pt)

沢木耕太郎のキャパへの強い愛と執念

久々に震える作品に会いました。NHKでも見て大きな衝撃を受けたのです。

私はキャパの青春と作品に強く影響を受けた一人です。
ちょっとピンぼけは愛読書のひとつで長年疑いもせずにキャパは自分の中でスーパーヒーローとして輝いていました。

写真に写っているものをごく単純にそのまま受け入れることの危険、そのメッセージは撮る人ではなく
伝えたい人によってどうとでもなるということ。
という今の自分であれば十分理解できることにキャパの写真もそうであることの当たり前さにまずは衝撃を受けました。

沢木さんのジャーナリストとしての責任感、謎を解明するための論理的な根拠の追及、その粘り強さ、キャパを
愛しているからこそ追いかけた謎。

すごすぎるというしかありません。

今思えば22歳のキャパはスーパーヒーローではなく、成功を求めている若者でした。
自分で作り出したわけではない状況を変更する必要なんてなかったのです。

本書にもあるとおり
チャンスを得られる人間的な魅力、なにものにも怯まない有機、よりよい写真を撮ろうとする情熱、
危険を生き延びさせる経験、この力量が強運をもたらせている。

キャパの人間力、その弱さも含め改めてキャパが好きになりました。
もし、老年まで健在であれば、彼が告白することもあったのかもしれない。
なんてことまで考えてみたりして。
生誕100年である2013年にもこんなことを語られているキャパはやっぱり伝説。
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No.39:
(5pt)

新たな視点

キャパはずいぶん前から知っていましたが、こういう視点を初めてしって
おどろきとそして納得できました。久々に一気に読みました。友人にも
勧めています。
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No.38:
(5pt)

捏造と盗作から出発した写真家の生涯

手垢にまみれた「ネタ」に思えた。もう何度も何度も聞いたから。22歳のキャパによるスペイン内戦写真「崩れ落ちる兵士」のヤラセ疑惑のことである。
撮影の翌年である1937年「LIFE」7月12日号に掲載され、一躍反ファシズムのシンボルとなった写真そのものよりも、ともすれば疑惑のほうがより有名に思える。敵(反乱軍)の銃弾を背中に受ける覚悟をしなければ戦場であんなショットは撮影できない。だが当時のキャパは遥か彼方の爆音にですら大便をチビってしまうチキンハート。そんなカメラポジションを取れるワケがない。
ヤラセじゃない、とする声の方が小さかった。伝説の保持に必死のキャパの弟コーネル(ICP=国際写真センター理事長)を後ろ盾とするリチャード・ウィーランが「疑惑は晴れた、疑惑写真以外の一連のプリントが見つかった」と胸を張るが、まさにその別ショットこそがどうもおかしい。ウィーランの著書の日本版翻訳者であった沢木は、従軍経験のある大岡昇平に当時相談したという。すると大岡は一目で「演習の写真だろ」と喝破したそうだ。演習……つまり、はるばるアメリカからやってきたカメラマンにサービスして、共和国軍の兵士たちが「戦うポーズ」をとってくれたのだ。第一、写真の初出であるフランスの「VU」誌が刊行された1936年9月23日以前に当該の丘陵エスペホでは戦斗など起きていない。兵士は銃弾に崩れ落ちたのではなく、突撃シーンの撮影途中でコケたのである。
つまり、蓋然性高くヤラセであるということを前提に本書は出発している。だが、探究の果てに新しい「ネタ」がその延長線上に生じた。ヤラセからスタートして、さらに判明したこととは何か。考えようによってはもっとひどいことであった。盗作である。
報道ではなく商売が目的の捏造写真を撮ったのはキャパということになっている。だが、その「キャパ」という名前そのものがそもそも捏造であった。ハンガリー人フリードマン・アンドレ名義では売れないため、架空のアメリカ人カメラマン「ロバート・キャパ」が撮影した、と偽って写真を売ったのである。当該の架空名義を使っていたのがフリードマンと年上のポーランド人の恋人ゲルダ・タロー(岡本太郎にちなんだ名で、本名はゲルタ・ポホリレ)であった。おもに、横長の画面となるライカ担当がフリードマン、正方形の画面となるローライフレックスの担当がゲルダであったという。
沢木耕太郎は「崩れ落ちる兵士」初出「VU」誌掲載写真を求めてパリの図書館や古書店を走り回る。その結果、兵士がコケる瞬間の別角度からの写真を発見。同一ショットを二人の写真家が同時に撮影したことを確認する。要するに捏造された戦斗を撮影したのは「キャパ」一人ではなく、フリードマンとゲルダの二人であった。そして画面の縦横比率からいうと別角度からの写真はライカで、「崩れ落ちる兵士」の写真はローライフレックスであった。つまり「崩れ落ちる兵士」はゲルダの写真なのである。それをフリードマンは「キャパ」の写真だと言い張った。インドシナ戦争で地雷を踏んで死ぬまで、まさに棺桶に真実を持って行ってしまった。手柄を恋人に盗まれたゲルダはなぜ黙っていたか。死人に口なし。「LIFE」掲載写真で「キャパ」が名声を得た同じ7月、ゲルダは帯同し取材していた共和国軍、いわば味方の暴走した戦車のキャタピラーの下敷きとなって死んでいたのである。
沢木は、キャパはこのゲルダの死によって十字架を背負ったという。戦場を知らない臆病な男が捏造と盗作を抱えて有名になった。秘密を知っていた恋人も死んだ。自らの中に重い何かを抱えながらキャパは生きていた、と。
本書の巻末近くにキャパの撮ったノルマンディー上陸作戦の写真が掲載されている。「ブラッディ・オマハ」と呼ばれ、地獄絵図と化したオマハ・ビーチにキャパは上陸したのである。大便をチビった男は、自ら死地を求める男へと変貌していたのである。
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4163760709
No.37:
(5pt)

スクープ

キャパの有名なスペイン内戦の写真が、実は虚構であったという論証への執念は素晴らしい。
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4163760709
No.36:
(4pt)

ここまで調べるのか

もともと沢木耕太郎は好きなのですが、新聞に書評が載っていたため購入しました。

一つの写真の真実を求めてここまで調べつくして本を書く、
という作家の姿勢に感動しました。
キャパのことは何も知らなかったのですが
それでも十分楽しめました。
キャパの十字架Amazon書評・レビュー:キャパの十字架より
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No.35:
(4pt)

このこだわり抜いた思考

沢木耕太郎の取材、思考の有り様に驚愕しながらも引き込まれる。
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4163760709

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