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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



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【この小説が収録されている参考書籍】
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価: 3.41/5点 レビュー 1022件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全177件 121~140 7/9ページ
No.57:
(3pt)

多崎つくるの女々しさ

村上春樹さんの本はノルウェイの森ぐらいしか読んだことがなく、ファンではないのですが、楽しく読めました。たくさん謎がちりばめられていて早く読みたい!と凄く引き込まれ、さーっと読めました。ただ、謎が謎のままで終わっているところは本当にモヤモヤしました。

表現が美しく、惚れ惚れした一方で、登場人物の理屈っぽい言い回しや小難しい話し方はイライラしました(笑)。また、多崎つくるの魅力がよくわからず、女々しい男性だな、と思ってしまいました。特に、最後の電話のシーンや、自殺を考えた理由、問題を直視しないところなど。

灰田や緑川のこと、シロの事件、多崎つくるの恋の行方など、もっと書いてほしいところがたくさんあったので、★は3つにしました。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年Amazon書評・レビュー:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年より
4163821104
No.56:
(3pt)

現代的な生死のはざま

結末は書かれず「あれ、ここで終わっちゃうの?」という感じでしたが、
生と死の境界での内面を描いていて最後はスリリングでした。
自分も近い感覚を持った経験があるけれど、こういう現代的な生死のはざまを書きたかったのかもしれないですね。
(でも、どうあっても自分の場合は死はないなあ。愛されて救われるという望みは捨てないでしょうね。)
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No.55:
(3pt)

凡庸。

最後の方で、長々と説教臭い感じがした。
それは、メッセージ性、あるいは、物語がもつ力や意義といったものとは
違い、単調でつまらない種類のもの。
作品としては、心が震えるようなこともなく、私の中でNo.1にはなり得ない。
しかし、著者の素晴らしい点、また愛読し続ける理由は、ある日突然、何かの
拍子に、作品の一場面が、鮮明に脳裏に浮かび上がり、はっとさせられるから。
本作の中にも、個人的にとても印象的な文章がある。
どこかに必ず読者の心に爪痕を残す・・・やっぱり一番好きな作家に変わりは
ない。
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No.54:
(3pt)

これしかないでしょ!

君がアウトキャストでないのならば

「もっと自信と勇気を持つべきだよ」(323頁)
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No.53:
(3pt)

村上春樹の小説はミステリーなのだろうか

何故つくる(主人公)は仲良し五人組から突然仲間はずれにされたのか。物語はこの謎を解くミステリーだと言えなくもない。ただし、ミステリーにしてはその解が謎というほど深みのあるものでもないし、謎がすっきり解かれるわけでもない。派手なアクションがあるわけでも当然ない。主人公は最終的に恋人をものにできたかどうかもわからない。ミステリー風だけどエンテーテインメントではない。だけど何故か読んでしまう。それが村上春樹の不思議である。何故これほど売れるのかわからないが、ひとつだけ言えることは、最初から最後まで、つくるは現在の自分のことなのではないかと共感を持って読み進めることができた。他の読者もそう思いながら読んでいるかどうかはわからない。でもそうでないと、ここまで人気がでるものではないと思うのだが、どうなのだろう。
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No.52:
(3pt)

題名はフィンランドの森の方がヨクネ?

1おい春樹どうしたんだよ?と言う言葉が当てはまりそうな小説です。長編ではなく中編ですね。
 処女作の「風の歌を聴け」の時のレベル程度の小説になっています。中編ではあまり評判が良くなかった、「アフターダーク」より面白く無かったです。
2とは言ってもつくるが他の仲間から疎外された、あたりまではまずまず良かったと思います。
3春樹さんは日本国内ではGReeeeNみたいにメディアに出ないのにノルウェーなどでは講演、読書会なんかしてノーベル賞が欲しいのがミエミエですね。
3国外の題名は「フィンランドの森」にしたら10月に吉報が来るかも知れませんね。
4灰田くんがつくるの精液を飲んでやさしく綺麗にする、なんてあるのにはビックリ仰天で食欲が無くなりました。
5「巡礼の年」って偏差値が低い私は四国八十八ヶ所巡りだと思ってました。クラシックの題名なんですね。ほんとに私は馬鹿でした。
  でもマイナーなクラシック音楽なんかばっかり書く事は俺はクラシックとジャズや酒の名前はお前たち読者より知ってるぞ、と言う優越感なのでしょうか?
6春樹氏の小説では必ずと言っても良いくらい忽然と消える人がいますが、灰田君はどうなったのしょう?まあ灰田君は
 どうなっても良いけど1Q84の天吾君の不倫相手の人妻はどうなったのか知りたいです。
7前半面白くて後半の閉めを失敗してるので今回は★3としました。
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No.51:
(3pt)

不充足感と徒労感、そして「疑念」。

本書の読後感は、決して良好なものではなかった。
はっきり言ってしまえば、むしろ、その真逆であり、
本書を読み終えた後に身体に残ったのは、不快な「徒労感」のような気分だった。

自分にとって印象的であった事柄を、幾つか書き留めておきたい。

まず、本書のある部分において、人物造形の掘り下げの甘さのようなものを
感じないわけにはいかなかった。
一例を挙げる。灰田が、主人公の前から姿を消した理由が明らかにされていない。
こうした、「尻切れトンボ」のような処理が、この作品の、小説としての質を
高めているとは私には思えない。
むしろ私はこのことに対して、否定的な印象しか持つことができなかった。

「徒労感」といってしまってもいいような不毛な印象を本作品から受けた
最大の原因は、この物語が「死者」を中心に回っているという、
本作品の構造そのものにあるように思う。

この物語の発端は、主人公の「親友」たちの裏切り行為だった。
長い時間が経過したあとに、本書の主人公は、真相を得るために、
かつての「親友たち」を訪ねる決心をする。
だが、裏切りの張本人が既にこの世にいないため、主人公が得た情報は、
真相の「アウトライン」だけだった。
かつての「親友」たちの弁明からは、
死者の周りをむなしく空転し続けているような印象しか受けることができなかった。

しかも、「向こう側」にいってしまった死者(主人公のかつての「親友」の中の一人だ)
は、これまでの氏の作品によく見られたように、彼岸から、饒舌なメッセージを
読み手に投げ与えてくれるわけではない。
その人物像はおぼろで、読者として、彼女の明確な像を心の中に浮かべることに
困難を覚えた。
また、彼女が、犯人のわからない誰かによって命を奪われていたという設定からは、
「作為」すら感じられ、違った意味での虚しさを感じないわけにはいかなかった。

死者(あるいは死にゆく者)を土台に物語が組み立てられる構成は、これまでの
氏の作品には繰り返し採用されたものであり、目新しいものではない。
だが、互いが親友同士であると信じていた五人の若者たちの「背信劇」
の張本人が、既に死んでいて、この世にいない、という今回の設定は、
この死者の存在感が薄いことも相まって、
読者としては、かなりキツい思考の操作を強いられることになった。

今回の「死者」の「起用方法」は、「瑕」というよりは、
「作品として根本的に駄目な部分」と言ったほうがよいのかもしれない。
それを修正するには、小説そのものを、土台から、
根本的に直さなければいけないような類の。

ボリュームがあるとは言えないこの物語の中で、
(人物造形の細部に関しては幾つかの疑問が残ったものの)
印象的で興味深いキャラクターを次々に繰り出してくる作者の手腕には、
いつもながら、舌を巻かざるを得なかった。

だが、すべてを読み終えた後に私が感じたのは、
作者の企みを捕まえることができなかったという、「不充足感」と「徒労感」だった。

「不充足感」の中には、本作の、作品としての出来栄えに対する「疑念」も含まれている。
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No.50:
(3pt)

「つくる」とは「生きる」ということ?

他の方が既に書かれているように「国境の南〜」などに似ている
テーマかも知れませんが・・・

愛する家族や友人を事件・事故・いじめ・地震・テロなどで失い
苦しんでいる残された人たちへ、助けてあげられなかったと苦しんで
いる人たちへのメッセージだったのではないかと思いました。

「つくる」とは「生きる」ということなのではないかと・・・

ホームで電車を眺める行為は、坦々と生きることの難しさを表現して
いるのではないでしょうか。

自信がなくて、自分を過小評価して苦しんでいる人たちへ、様々な
トラウマに苦しんでいる人たちへ、河合先生との会話を思い起こしながら、
書き上げた作品なのではないかと思います。
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No.49:
(3pt)

メタファー、メタファー、またメタファー

村上春樹は有名どころだいたい読んでますが、私の好みは
「海辺のカフカ」
「ノルウェイの森」
「1Q84」
そして本作、という順序でしょうか。 その辺お含みください。

本作も例にもれずメタファーがあちこちにちりばめられ、いくつかの謎は未解決のまま終わってしまいます。
1Q84は大衆にウケるように配慮されて構成された壮大な大河ドラマ的な感じがしましたが、本作は大作を作った後少し休養をとり、リハビリ的に書き始めました、という肩の力の少し抜けた感じがします。
登場人物の色彩と文中に現れる様々な色彩や、ものの形、社会に起こった出来事などがあちこちで少しずつメタファーの形でリンクされています。 それを読み解くのもこの人の小説のおもしろさではありますが、本作はメタファーがわざとらしくて鼻につくような印象です。

家族の絆、恋人の絆、友人の絆、そしてその喪失と痛み。 再生。 こういったテーマが彼の小説では一貫して取り上げられています。 本作は時代背景の作りこみ、キャラクターの設定、メタファーのつながり。 どれもつめが甘いように感じるのは私だけではないはずだ。 それは彼の作品に対する期待値が高いことの裏返しなのかもしれません。

やや残念な読後感です。 ★3つ。
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No.48:
(3pt)

ハルキストではありませんが

話題になっていたので読んでみました。
どちらかと言えば、本は沢山読むほうではないし、音楽を聴くことの方が量としては多いと思うので、あくまでも個人的に感じた感想です。
まだ読まれてない方はネタバレになるのと悪いのでレビューをよまないでほしいのですがまず、主人公である多崎つくるは自らネガティヴを作り出してしまう感じがあってあまり感情移入はできませんでした。
常に冷静。あとシロが一体誰に殺されたのか?灰田のその後は?沙羅の出した答えは?色々なことが謎のまま終わってしまうというのが個人的にはどうも不完全燃焼でだめでした。
あと回想シーンがたくさん出てきますが、その回想シーンよりも、もっとアカ、アオ、シロ、クロ(エリ)の16年の空白を描写してほしかった。続きも知りたいけど続編を描くほどのエッセンスが残されてない。

ただこの煮え切らなさというか読み終わったあとのモヤモヤ感は不思議です。

多崎つくるのように割り切れない感情と近いものがあるかのように。
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No.47:
(3pt)

らしい作品ではあるが

いくつかの違和感を持った。 年齢相応、つまり30代の主人公なら30代なりの友情の話は出てこない。20代で止まっている。1Q84でもそうだったが。 恋愛以外のことは書かないのか。 身を焼くような感情の書き方がどんどん精彩を欠いてきている。たとえば沈黙のような孤独の手触りはここにはない。 心理学の教科書を読みたいわけではないので、物語でしか語り得ないことを語って欲しい。感情と現実の伸展のバランスが悪い。 すぐに読めるから良いのだが、読むべき本に挙げるかと言われると否、他に良書は沢山あると答える。
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No.46:
(3pt)

思考することの恥、人間であることのおぞましさ

村上春樹氏の小説をいくつか読んでいて、いつも思い当たる言葉が2つあります。
思考することの恥、人間であることのおぞましさ。
(マラルメ)
世界なんか破滅したって、ぼくがいつも茶を飲めれば、それでいいのさ。
(ドストエフスキー)
世界の出来事に背を向けて、孤独感や喪失感に心地よく浸り、恥やおぞましさを密かに楽しむことが出来る人。そんな読者が、世界には数多くいる。善いか悪いかではなく、それが人間の一面であり、文学の王道である。私は、そんな風に思います。素朴に世界平和を願う宮沢賢治とは正反対の在り方でしょう。人生はファッション。世界の苦悩なんて糞食らえ。どうも、そういう村上春樹氏の世界は好きにはなれませんが、相変わらず文章力は確かだと感心します。ただ、我々は、そろそろ村上春樹氏を卒業して、人類の進化や向上について、もう少し考えてもいい時期を迎えているように思います。いつまでもぬるま湯のような時代は続きませんから。
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No.45:
(3pt)

いつものです

私にはこれが素晴らしいというふうには思えませんでした。
いつもの、村上さんですね、、っていう感じで。
パターンというか、手法というか。
それでもいつか、何かを期待して、今後も彼の本を買い続けるとは思うのですが、、。
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No.44:
(3pt)

認知症作家?による真骨頂の新作

この小説のあらすじを簡単に述べれば、主人公の多崎つくるは、大学になって高校で仲良しだった四人から突然の絶交を言い渡され、そのショックに理由も訊けず、死ぬことを考え悩み、十六年が経過した三十六歳の今になって、二歳年上の恋人にその絶交の理由を四人に訪ねて、「もうとうの昔に、失われてしまった(友人関係)の、その真実を求める」というストーリーである。

そのひとりはフィンランドに在住し、わざわざその真実の追求のためにつくるは、フィンランドまで訪ねて行くのだから、まあ、ご苦労さんなことである。

多崎つくるのいる場所は、P115より「どこまでが現実なのだろう、とつくるは思った。これは夢ではない。幻影でもない。現実であるに違いない。しかしそこには現実の持つべき重みがない。」
また、P119より「そこにあるのは、すべての夢の特質を具えた現実だった。それは特殊な時刻に、特殊な場所に解き放たれた想像力だけが立ち上げることのできる、異なった現実の相だった。」
そして、P229では世界を部屋にたとえて「ひとつの真実の相にあっては、彼はシロに手を触れていない。しかしもうひとつの真実の中では、彼は卑劣に彼女を犯している。自分が今いったいどちらの相に入り込んでいるのか、考えれば考えるほど、つくるにはわからなくなってくる。」とあり、もうお馴染みの読者には、これが『1Q84』と同様の異次元世界を扱っているようにも思えるだろう。

私が読んでいて思わず笑ったのは、P233の「灰田の足の裏にうり二つ」とプールで泳いでいたつくるが人の足の裏を見て、灰田と思うのだが実際は人違いだったという、しょうもない場面で、どんな足の裏なんだよ? とツッコミたくなった。

フィンランドで、自己嫌悪に陥るつくるに、エリは「君に欠けているものは何もない。自信と勇気を持ちなさい。君に必要なのはそれだけだよ」P343と励ます感動的な友情場面と、つくるが恋人に告白した後に電話でいう彼女の「安心してゆっくり眠りなさい」に、私は、つくるの未来への希望とハッピーエンドを想像したのだが、それも最後のつくるの「沙羅がおれを選ばなかったら、おれは本当に死んでしまうだろう、確実に息を引き取るだろう、この世界から密やかに退場していくだろう」P368には、女々しくて女々しくて女々しくて、すべてがぶち壊しになったように感じた。

「しかし」や「そして」を多用し、文章は、あまり上手い作家とは思えず、暇な読者はその回数を数えてみるといいだろう。

六本指やレイプ、殺人事件、悪霊などのキーワードで物語を興味深くしようとしているが、どれも謎解きは中途半端で意味不明、また最初はAといいあとでAではない(シロで射精あとで灰田の口で)という、この作家をいままで知らなかった読者は、まるでこの作家は認知症を患っているのではないか? とさえ思えてくるが、これがこの作家お得意のとぼけた作風でもあり、この作品はこの作家のこれまでのエッセンスを凝縮させた真骨頂ともいえるものかもしれない。
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No.43:
(3pt)

村上春樹の魅力の詰まった小説。でも停滞感はある。

村上作品の中でもっとも近いのは、「国境の南、太陽の西」だと思います。未解決の過去を辿ることによる償いと巡礼の物語であり、とてもパーソナルで静かな小説です。

本来は、一週間で100万部も売れるようなタイプの小説ではありません。時代的なタイミングやプロモーションの成果によって爆発的に売れていますが、そういう瞬発力とはまったく無縁の内容です。

本書で初めて村上作品を読んで抵抗を感じたかたもいるでしょうが、村上氏の著作は、個人の内省に深く踏み込むためにそのモノローグがナルシズムに映ったり、登場人物やプロット自体が暗喩的に使われるためにそのとらえどころのなさが小賢しく感じられる部分があると思います。著者のファンである自分でさえ時々そう感じますし、そのスタイルは本作でも変わらず繰り返されているので、過去に村上作品に幻滅したかたには合わないでしょう。非常に人を選ぶ小説です。

村上作品は、内省に踏み込むのが気恥ずかしいかたには全く合わないだろうし、優れたミステリーのようなプロットの整合性や解決を期待するかたには応えられないと思います。緻密かつボリュームのある人物描写がなされないとリアリティを感じないという人、非科学的・ファンタジックなプロットを許せない人にもおすすめできません。

にもかかわらず、村上氏の著作が多くの人に愛されているのは、客観的な事実や解釈をダイレクトに読み手に提供するのではなく、一見は漠とした暗喩の積み重ねによって、孤独や哀しみの輪郭を「読み手それぞれの経験と解釈の中に」浮かび上がらせることができるからでしょう。それはダイレクトに核心を突いた表現と同等に(あるいはそれ以上に)困難かつ高度な表現のはずです。それが村上作品を村上作品たらしめている類いまれな特徴であり、また最大の弱点にもなっている気がします。

「薄っぺらな著作にコアなファンが群がってそれぞれが勝手な解釈で過大評価している」と断じるか、「読み手それぞれが持つ孤独(読み手の経験)に形を変えて寄り添うことができるために世界中で幅広く愛されている作家」と見るか、村上氏の評価はそこで大きく二分されると思います。暗喩に共鳴する部分がなければ前者になり、あれば後者になるでしょう。

もし後者であったなら、その共鳴は読み手の成長や経験によって変化し、将来まったく違う輪郭や解釈を与えてくれます。時を経て再読するたびに読み手と村上作品との絆が深まるのは、そうやって小説が読み手の人生に寄り添い続ける力を持っているからです。そういう村上作品の素晴らしさを自分はずっと実感してきましたし、本作でもそれは失われていないと思いました。

今回はユーモアが控えめであり、登場人物たちの台詞や比喩がみずみずしく、三人称表現であることも相まって、透明感のある独特の作風になっています。特に、巡礼の最後にクロと再会した場面は情感深く、胸を打たれました。ただ、以前の著作と似ているプロットの頻出や、全体的にやや冗長で荒削りな印象(特に最終章が…)があることから、世界的に評価されている過去の著作には大きく及ばなかったと感じます。

また、1Q84で総合小説的なアプローチを見せたあと、小説を通じて次に何を語ってくれるのかを期待していたら、初期の著作に類するような非常にパーソナルな作品が出てきたことには、かなり残念に思う部分がありました(自分は震災後の日本社会に対するコミットメントをもう少し期待していたので)。村上氏の翻訳による海外の小説「極北」はちょうどそれに応えるような作品だったので、本作が不満だった村上ファンのかたにはそちらををおすすめしたいです。
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No.42:
(3pt)

期待しすぎたのかな

村上春樹作品はほぼ全て読んでいます。
なので今回も期待して購入したのですが、正直ガッカリ。。
かつての作品に見たことのあるモチーフがいくつか出てきていて、
それは春樹作品ではよくあることなのでまあ良いとしても、
「なんか似てる…」という思いの方が強く、それを上回る感動がありませんでした。

個人的には「世界の終り…」「ねじまき鳥」のような非日常の世界観を描く作品がとても好きなのですが、
今回の作品は「ダンス・ダンス・ダンス」「1973年のピンボール」に傾向が似ている感じ。
日常の中で葛藤する青年を描くスタイルが、私には共感できない点が多く…

時代背景とか(いまどき一人暮らしの恋人に連絡するのに固定電話へかける人はいるのだろうか)ちょっとハテナなところもモヤモヤです。
できるならぶっとんだ設定にしてほしかった!!!

ただ、村上ファンだからこその辛口です。これが村上春樹作品でなければ、もっと高い評価。
そのくらい、読ませる力はあると思う。
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No.41:
(3pt)

ときめきとドキドキの濃度がとても薄い。

とても大好きな村上氏の作品の中では残念な低評価ですが、小説としてはスラリと読み終えたので☆は3つにしました。

何が残念だったかと申しますと、心を鷲掴みされるような魅力的な登場人物や、つい笑ってしまうような会話のやりとり、鼓動が高まるような場面や、驚きと衝撃を感じるような不思議さが無かったからです。

リアリズムよりも上手い嘘を。完結した物語性よりも受け手に託すことを。そのような今までの作風が好きだから残念に感じたのかもしれません。

逆に言えば今までと違った作風を楽しみきれなかっただけの、勝手な村上像を拵えてしまった自分にも原因はありますが。

良い点で言えば、一貫したストーリーラインに乗せて多様性をシンプルに描写しており、”ぼくの物語”ではなく誰にでも起こりうるそしてそれは幾重にも時間とヒトを紡いだ結果”かれらの物語”という、「孤独と喪失」を命題にしながらも社会を大きく土台に敷いてあることが多くの気づきを育む要因になっていることかなと。

氏の目標のような言い方を何度かしているるつぼのような総合小説へ向けたひとつの作品として、今回のようなリアリズム性や3人称の追求は必要な過程であるとも感じた。
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No.40:
(3pt)

回復への道は半ばなんだよ。

村上春樹氏の作品をすべて読んでおり、今回の作品も発売されてすぐ買い一週間程度の
時間をかけてゆっくり読みましたが「中途半端でなんだかなあ」というのが正直な感想
です。(以下ネタばれを含む)
仲良しだったグループからの一方的な追放とそれを契機とした死への憧れ、別人に変わっ
てしまいもう戻れない自分、それらは多かれ少なかれ多くの人に訪れることであり、そ
の苛烈な経験は非常に共感できた。そして、それらはおそらくはバブル経済以後の長期
経済低迷や阪神大震災、東北大震災および福島原発等の未曾有の災害の経験を抱えていか
ねばならない、もう戻れない日本の我々の苦しみを暗示しているのだろう。
しかしながら、死を深刻に考えた多崎氏がなぜかかつての友人と会うと大人でクールな
ヤレヤレ的な態度に終始しまるで他人事のように簡単に許してしまうことはリアリティー
がないように感じた。昔の友人との再会についての描写が淡白で中途半端に感じてしま
う。ましてや濡れ衣を着されているのにもかかわらず、自分にも本当にそのよう
な行為に及んでしまう可能性があった等、繰り返し村上作品で登場するおなじみのモチ
ーフ等の登場により素直に納得してしまう事など、本当に自殺を考えるくらい悩んだ
のかと疑いたくなる。
また、多くのレビューが指摘しているように内容に中途半端なものが多すぎる。
灰田とその父親の部分(灰田はどこへ消えたのか?)、洗脳的なビジネスをするように
なってしまった友人について、ガールフレンドとの結末等、そのどれもが結論を見ず
放置されてそれを読まされるほうは困惑を禁じえない。結局なんなの、どうなったの?と。
せめて最後のガールフレンドとの結末については、キチンと書いてほしかった。
私自身も、はるか昔の学生時代におなじような経験がある。心が殺されるような経験が
あり、それは自らを別人に変えてしまったしその後の人生を大きく変えた。
個人的な苦しみと和解することはありえないだろうし、多くの災害の被害者の苦しみも
今なお続き、回復への道はまだまだ遠いだろう。多崎氏とは異なりそんなに簡単に和解
できないだろう。
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No.39:
(3pt)

先が気になって一気に読むことは出来たが微妙。

かなり、上等なお家の坊ちゃんが、何自由なく、まっすぐ文武両道、バランスよく育っていて羨ましいくらい。環境かつ、知識の豊富さにも妬ましいを感じてしまうくらい。それでも悩みは色いろあるわけで、共感出来る部分もあった。しかし。いまの就職難に苦しむ若者は、どう感じるだろうか。「巡礼の年」とのかかわりは分からないではないが、結末にたどり着くと結局つまらなかったというのが正直な感想。
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No.38:
(3pt)

技法と映像は良いが、村上春樹の小説としては色々物足りない。

最初の2行で物語に引き込む力といい、透徹した透明感といい、作家としての力量は疑いようないものの、

村上春樹さんに期待したい、小説ならではの味わいがもの足りません。

ノーベル賞候補作家の作品としては、不満です。

ストーリーを一言で言えば、

20歳前後の出来事がきっかけで生きている感触が希薄な36歳青年が、トラウマの原点となる人々を訪ね、改めて他人を求める心の動きを取り戻す話。

文学技術的な精神の軌跡の描写は申し分ないです。

途中の東京駅の無機質な描写に比べて、最後の新宿駅の人間の温かみがあるドラマティカルな描写には、心を動かされます。

テンポ良い進行、象徴的な色彩の話。映像的なイメージがとても心地よいです。

ただこれが今という現代に書かれる物語、また本来技量のある村上春樹が描く物語として、何かテーマが物足りないのです。

別の角度から見れば、

彼女のお膳立てで過去の友人に会い、過去に自分を好いていたという女友達に嗾けられて彼女に告白する現在の草食系36歳男の物語。

そのせいか、「巡礼」と語るにもあまりにもお手軽です。
彼女がインターネットで検索をすれば、16年ぶりの友人の消息が直ぐにつかめる。
ノーアポで訪れて直ぐに会うことが出来る。会えば皆率直に話をする。
つくるくんも短い会話で納得をして帰っていく。

また最後まで成長を見ないこともあり、未解決な課題も沢山あります。父親との関係や灰田くんのエピソード等。

フィンランドからの帰国後、自分の意思でシロの姉を尋ねるかシロのお墓参りをして欲しかったと思います。
そこまでして初めて、つくるくんの自身の内部から生まれ出た「動き」を読者も信じられるのですが・・。

読後に、彼が彼女から良い返事を聞けるよう彼を応援したい気持ちにはなりましたが、

彼女に選んでもらえなければ、一時的なTurbulenceとして、また色彩の乏しい世界に戻る感じも残ります。

村上春樹が描く特有の(ぼんやりした内向的な・・それだけ恵まれた)青年像の心象風景は、
80年代バブル後の喪失の時代には共感を持ったものですが、
近年日本だけでも深刻ないじめ問題や、引きこもり、派遣問題に象徴される社会の二極化、高齢者問題のニュースにさらされ、
世界でも貧困や紛争のニュースが耐えない現実に生きる人間として、共感を寄せたい気持ちがなくなった気がします。

社会的な今という時代感の希薄さ・・けれど固有世界像があるわけでもない・・・
ではどう贔屓目に見ても物足りない気がするのです。
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