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地層捜査



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【この小説が収録されている参考書籍】
地層捜査
地層捜査 (文春文庫)

地層捜査の評価: 4.16/5点 レビュー 25件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.16pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全25件 21~25 2/2ページ
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No.5:
(5pt)

荒木町の魅力と特性を再発見させる

自分はおもしろく読みました。
本作が一見「地味」であることをもって佐々木作品として評価がやや低目なのは、過去の
秀作への感銘に基づく著者への期待度の高さからやむをえない面もあるかなと思います。
ただ本作の舞台となった荒木町同様「地味」さイコール「単調」「浅薄」ではありません。

15年前に殺された被害者女性が、元は荒木町の芸妓。
浅草でも向島でも柳橋でも新橋でも赤坂でもなく、荒木町という、東京23区の住民だって、
今やここが元「花街」だったことを忘れつつある(一方で、いわゆる「隠れ家」的な心ニクイ
飲食店はいまも点在する)エリアに注目した著者はすばらしい。

そもそも、荒木町を選んだ瞬間に、物語の陰影は、物理的にも心理的にも短い振幅の中でうごめく
ものになることは、あの町の昼夜を少し歩き回った経験のある人には得心できるはず。要するに、
派手なドラマや強烈な個性のコントラストは似合わない。傑作長編『警官の血』で照射された
谷中といい、この荒木町といい、著者の着眼(と、もちろんプロット)には共感できます。

もし本作が地味ゆえに評価がいまいちなら、荒木町の魅力までもを否定されるようで、残念。
新宿区の他地域のような猥雑さや淫靡さ、あるいは落魄感は皆無ながら、狭い地域に路地が入りくみ、
家々の間に突如、小さな神社と池がひっそりと現われて、“何かの跡”が幾層にも重なっていることを
今もって予感させ、夜はまた魅力的な表情を見せる街というのは、都内の旧花街と比較しても珍しい。

今回、著者は地形的特性を巧みに取り入れている。新宿通り側から靖国通り側に傾斜していること、
北のはずれで崖となり、初めて歩いた人には唐突な断絶感をもたらすこと等々。それらが、被疑者の
逃走経路など事件の要点だけでなく、関係者たちの文字通り“境涯”とも、象徴的に響き合っている。

本作初登場の主人公、水戸部裕警部補の描き込み方も、過不足ない。1995年事件発生時は仙台の
高校生で、当時の東京も、それ以前のバブル時代の狂奔も知らない、30代既婚男性である
警視庁捜査一課刑事(にもかかわらず、ある事情で特命を受け昔の事件の再捜査を担当)。
1995年が阪神大震災と地下鉄サリン事件の年であり、連載開始時の2010年が刑事訴訟法改正で
殺人事件の公訴時効が廃止された年だったこと。以上の“事実”と、本作の構想の関係も興味深い。

東北出身の水戸部警部補の視点で、首都東京の“地層”から意外な“遺物”が発見されてゆく、という
本作の魅力的な設定は、2012年8月現在「週刊文春」に連載中の続編『代官山コールドケース』でも
活かされており、ぜひ以降のシリーズ化を(本作への低い評価を挽回する意味でも)期待したい。
地層捜査Amazon書評・レビュー:地層捜査より
4163811508
No.4:
(5pt)

荒木町の特色と魅力を再認識させる

自分は、おもしろく読みました。
本作は確かに「地味」。出身の北海道を舞台とした数々の秀作や、
東京谷中にフォーカスしつつ、半世紀に及ぶ警官三代の軌跡を描いた
傑作『警官の血』などに比して、評価がやや低目なのは、むしろ作者への
期待度が高いことの証明でしょう。ただ、本作の舞台となった荒木町同様、
「地味」イコール「単調」「浅薄」ではないと思います、決して。

15年前に殺された被害者女性が、荒木町の元・芸妓。浅草でも向島でも
柳橋でも新橋でも赤坂でもなく、東京23区の住民だって今やここが
元「花街」だったことを忘れつつある(一方で、いわゆる「隠れ家」的な
心ニクイ飲食店はいまも点在する)土地に着目した著者はすばらしい。

そもそも、舞台を荒木町を選んだことで、物理的にも心理的にも、物語の
陰影が短い振幅の中でうごめくことになるのは、当然。そういう土地。
要するに、派手なドラマや強烈な個性のコントラストは似合わないのです。
他の新宿区の某地域のような猥雑さや淫靡さ、あるいは落魄感は皆無ながら、
狭い地域に路地が入りくみ、家々の間に突如、小さな神社と池がひっそりと
現われて、“何かの跡”が幾層にも重なっていることを今もって予感させ、
夜はまた魅力的な表情を見せるこんな街は、他の都内旧花街と比べても珍しい。

その荒木町の、地形的特性を巧みに取り入れていることも気に入りました。
新宿通り側から靖国通り側に傾斜していること、北のはずれで崖となり、
初めて歩いた人には唐突な断絶感をもたらすこと……等々。それらが、
被疑者の逃走経路など事件の要点だけでなく、関係者たちの文字通り
“境涯”とも、象徴的に響き合っている。

本作初登場の主人公、水戸部裕警部補の描き込み方も、過不足なし。
1995年事件発生時は仙台の高校生で、当時の東京も、それ以前の
バブル時代の狂奔も知らない、30代既婚男性である捜査一課刑事
(にもかかわらず、ある事情で特命を受け昔の事件の再捜査を担当)。
1995年が阪神大震災と地下鉄サリン事件の年であり、連載開始時の
2010年が法改正で殺人事件の公訴時効が廃止された年だったこと。
以上の“事実”と、本作の構想の関係も興味深い。

東北出身の水戸部警部補の視点で、首都東京の“地層”から
意外な“遺物”が発見されてゆく、という本作の魅力的な設定は、
続編『代官山コールドケース』でも活かされており、
シリーズ化を期待したいところ。
地層捜査Amazon書評・レビュー:地層捜査より
4163811508
No.3:
(3pt)

地味・・・・

とても地味な小説。登場人物のキャラもあまり濃くないし、ほんとに地味〜に、地味〜に、3分の2位までは、展開する。最後にいろんなパズルがひとつに落ちて、面白くなるが、やっぱり、ひと言でいえば「地味」な小説。今までのアマゾンでの評価も5点中3点というのはわかる。
地層捜査Amazon書評・レビュー:地層捜査より
4163811508
No.2:
(3pt)

見えていなかったことが見えてくる

とっても地味な小説。
すでに迷宮入りした15年前の殺人事件。地元の実力者から「過去に疑われた汚名を晴らしたい」と再捜査の要請があり、たった2名で地道な再捜査が始まるという話。

事件の起きた時には、その時代背景から「きっと、こういう理由で起きた事件に違いない」と思っていたことが、時を経て別角度から覗いてみれば、違う景色が見えてくるというあたりが面白い。
時間が経過すればするほど、真相に辿り着くことは難しくなるものだが、場合によっては見えていなかったことが見えてくる可能性を示唆している。
地層捜査Amazon書評・レビュー:地層捜査より
4163811508
No.1:
(3pt)

埋もれたものを掘り起こす

北海道ではなく、東京を舞台にした警察小説。
新宿区荒木町(むかしの花街)で起きた15年前の老女殺人事件。真相に迫るためにそこからさらにさかのぼって深層を掘り起こす。それに挑む若手刑事の物語。最後は、歴史に埋もれた人の感情をも掘り起こしてしまう。
おもしろい警察小説だと思いますが、短い期間の中で解き明かしていく物語なので、関係者の多さと情報の多さが、読者には少し消化不良をもたらすかもしれません。シリーズ化されて、次を読んでみたいですね。
地層捜査Amazon書評・レビュー:地層捜査より
4163811508

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