博士の愛した数式

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評判

博士の愛した数式の評価:

4.32/5点 レビュー 849件。 A ランク

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平均点4.32pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1,769件 681〜700 35/89ページ
No.1089
(2pt)

野球をやっていた人は白けるかも

一番感動すべきところで、吹いた。野球経験者には厳しい。2度と再び「本屋大賞」は買うまいと決意した1冊。これが私の全く知らないアイスホッケーなら星3つだったかも。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1088
(2pt)

野球をやっていた人は白けるかも

一番感動すべきところで、吹いた。野球経験者には厳しい。2度と再び「本屋大賞」は買うまいと決意した1冊。これが私の全く知らないアイスホッケーなら星3つだったかも。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1087
(5pt)

ゆっくりと展開される、温かいストーリー

芥川賞受賞作家である著者がえがきだす本書は、第55回讀賣文学賞小説
賞を受賞し、第1回本屋大賞も受賞した作品で、映画化もされ、今なお
版を重ね続けている人気小説です。

家政婦として働く主人公の「私」は、1992年の春、年老いた元大学教授
の数学者の家で働くことになった。ケンブリッジ大学で学を修め、才能
溢れる数学者として将来を嘱望されていた「博士」は、17年前に不慮の
事故に遭い、それ以来、記憶は80分しか続かず、新しい記憶もできない
状態になってしまった。

いまだに数学に対して並々ならぬ情熱を注ぐ博士だったが、自分の生活
については無頓着で家政婦に対しても無愛想。今まで多くの家政婦が辞
めていった博士とは、やはり「私」もなかなかコミュニケーションが取れ
るものではなかった。

しかし、そんな関係もふとしたことから「私」が息子の話をしたことから
変化をし始める。子どもに対して無尽の愛情を持つ博士は、「私」が仕事
をしている時には息子を家に呼び寄せるよう伝える。初めて息子が博士
の家に来ると、「ルート」と名付け、めいいっぱいの愛情を注ぐのだった。

そして、3人の穏やかで幸せな生活が始まった様子が中心にえがかれな
がら、ルートと博士が愛する阪神タイガースの試合や往年の江夏豊の活躍
やプロ野球カード、博士の義姉との関係、そして次第に影を落とす博士
の記憶などが練りこまれながら、人間の愛情を豊かにえがき、ゆっくり
と、温かく、物語が進行していきます。そして、何といっても、数学の
美しさが実に効果的にえがかれ、博士の人柄に色を添えています。

本が描き出す世界に入り込んで、温かい読了感を味わえる、小説の醍醐
味を感じさせてくれる本です。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1086
(5pt)

ゆっくりと展開される、温かいストーリー

芥川賞受賞作家である著者がえがきだす本書は、第55回讀賣文学賞小説
賞を受賞し、第1回本屋大賞も受賞した作品で、映画化もされ、今なお
版を重ね続けている人気小説です。

家政婦として働く主人公の「私」は、1992年の春、年老いた元大学教授
の数学者の家で働くことになった。ケンブリッジ大学で学を修め、才能
溢れる数学者として将来を嘱望されていた「博士」は、17年前に不慮の
事故に遭い、それ以来、記憶は80分しか続かず、新しい記憶もできない
状態になってしまった。

いまだに数学に対して並々ならぬ情熱を注ぐ博士だったが、自分の生活
については無頓着で家政婦に対しても無愛想。今まで多くの家政婦が辞
めていった博士とは、やはり「私」もなかなかコミュニケーションが取れ
るものではなかった。

しかし、そんな関係もふとしたことから「私」が息子の話をしたことから
変化をし始める。子どもに対して無尽の愛情を持つ博士は、「私」が仕事
をしている時には息子を家に呼び寄せるよう伝える。初めて息子が博士
の家に来ると、「ルート」と名付け、めいいっぱいの愛情を注ぐのだった。

そして、3人の穏やかで幸せな生活が始まった様子が中心にえがかれな
がら、ルートと博士が愛する阪神タイガースの試合や往年の江夏豊の活躍
やプロ野球カード、博士の義姉との関係、そして次第に影を落とす博士
の記憶などが練りこまれながら、人間の愛情を豊かにえがき、ゆっくり
と、温かく、物語が進行していきます。そして、何といっても、数学の
美しさが実に効果的にえがかれ、博士の人柄に色を添えています。

本が描き出す世界に入り込んで、温かい読了感を味わえる、小説の醍醐
味を感じさせてくれる本です。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1085
(4pt)

冷静さのなかで、寂しさや幸せがバランスする不思議な作品

80分しか記憶が持たない博士と家政婦さんとその息子、そして博士の義姉が過ごす日常を、家政婦さん視点で描いた作品。

複雑で寂しいシチュエーションのなかで、それぞれの当事者の心模様に、暖かさや優しさや繊細さを感じ取ることができます。
状況を悲しむでなく、過ごせる一時一時を大切に過ごしている三人(四人)の姿に、私は毎日を幸福のために使っているのだろうかと、立ち止まるきっかけにもなりました。現実は変わらず、それをどう消化するか次第で、辛い現実のなかでも楽しさや幸せを感じることができる、博士や家政婦さんや息子さんの感性にとても惹かれます。

「数学」というロジカルなツールでのコミュニケーションが、感情と現実をバランスして、良いコミュニケーションの一役をかっているのかもしれないです。登場人物は、どこかで冷静で、現実を静かに受け入れ、不安を抱えながらも、安定して生きており、それができるのはやはり「数学」というアプローチのおかげな気がします。実際、本書では感情的などろどろした部分がほとんど書かれておらず、そのことが彼らを優しくさせているように思いました。

読了後は寂しい気持ちになりましたが、そんな読者である私をよそに、おそらく作中の全員が、幸せを感じていたことがひしひしと感じられます。不思議な作品でした。
見習う部分がたくさんあります。良い本です。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1084
(4pt)

抑制のきいた見事な小説

うまい小説だと思います。

泣ける小説という前触れであった。最後の数ページこそ
目頭は熱くなったが、それ以外は、泣くほどの場面はなかった。

数学に関する知識、阪神タイガース、博士の病気、どれも
よく調べられ、見事に小説世界を構成している。

タイガースの戦績が事実に沿っているため、
まるでノンフィクションを読んでいる錯覚さえする。

以前、映画を観てしまったこともあるが、読みながら
映像が浮かびあがってくる。

技術的に素晴らしい小説であり、抑制の効いた文章も
好ましい。しかし、アフォリズム好きの私にとっては、
ここの1節を抜き書きしたい、胸に焼き付けたい、という
箇所、あるいは、キラキラっと光る情景描写や心理描写が
なかったのは残念だ。おそらく、小川洋子は、そういう作家
ではないのだろうが。

第1回本屋大賞受賞作品である。書店員の皆さま、お目が高い。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1083
(4pt)

冷静さのなかで、寂しさや幸せがバランスする不思議な作品

80分しか記憶が持たない博士と家政婦さんとその息子、そして博士の義姉が過ごす日常を、家政婦さん視点で描いた作品。

複雑で寂しいシチュエーションのなかで、それぞれの当事者の心模様に、暖かさや優しさや繊細さを感じ取ることができます。
状況を悲しむでなく、過ごせる一時一時を大切に過ごしている三人(四人)の姿に、私は毎日を幸福のために使っているのだろうかと、立ち止まるきっかけにもなりました。現実は変わらず、それをどう消化するか次第で、辛い現実のなかでも楽しさや幸せを感じることができる、博士や家政婦さんや息子さんの感性にとても惹かれます。

「数学」というロジカルなツールでのコミュニケーションが、感情と現実をバランスして、良いコミュニケーションの一役をかっているのかもしれないです。登場人物は、どこかで冷静で、現実を静かに受け入れ、不安を抱えながらも、安定して生きており、それができるのはやはり「数学」というアプローチのおかげな気がします。実際、本書では感情的などろどろした部分がほとんど書かれておらず、そのことが彼らを優しくさせているように思いました。

読了後は寂しい気持ちになりましたが、そんな読者である私をよそに、おそらく作中の全員が、幸せを感じていたことがひしひしと感じられます。不思議な作品でした。
見習う部分がたくさんあります。良い本です。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1082
(4pt)

抑制のきいた見事な小説

うまい小説だと思います。

泣ける小説という前触れであった。最後の数ページこそ
目頭は熱くなったが、それ以外は、泣くほどの場面はなかった。

数学に関する知識、阪神タイガース、博士の病気、どれも
よく調べられ、見事に小説世界を構成している。

タイガースの戦績が事実に沿っているため、
まるでノンフィクションを読んでいる錯覚さえする。

以前、映画を観てしまったこともあるが、読みながら
映像が浮かびあがってくる。

技術的に素晴らしい小説であり、抑制の効いた文章も
好ましい。しかし、アフォリズム好きの私にとっては、
ここの1節を抜き書きしたい、胸に焼き付けたい、という
箇所、あるいは、キラキラっと光る情景描写や心理描写が
なかったのは残念だ。おそらく、小川洋子は、そういう作家
ではないのだろうが。

第1回本屋大賞受賞作品である。書店員の皆さま、お目が高い。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1081
(4pt)

著者の執筆動機を考えながら・・・

著者はどんな動機でこの小説を書いたのだろう?
ドラマティックではないが,最後までストーリーに引っ張られた。
博士の家政婦となった私(主人公)。64才の博士は1975年の自動車事故で記憶が自由でない(記憶が80分しか続かない)。数学の証明問題に日々を費やし,私には数学の美的な世界,素数の魅力を語る。私には息子ルートがいる。タイガースファン。実は博士も,江夏のいたターガースが好きだった。
私はしだいに素数の世界にはまる。博士は実生活に無頓着。身奇麗でないし、食べ方には品がないが,息子のルートにも私にもいたって優しい。3人は仲良くなる。
私が義姉の告口によって解雇されるが,博士の家政婦は誰も出来ないので復帰。球場でのタイガースの応援とその後の博士の発熱と発病,博士の野球カード・コレクションと数学論文,オイラーの公式の不可思議,話題が続く。
ついに記憶が壊れ,専門の医療施設に入った博士。私とルートは,定期的に彼を見舞う。ルートは教員試験に合格,中学の数学教員になる。数学・野球・人間の愛。
著者は何がきっかけでこんなに面白い小説を構想したのだろう?
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1080
(4pt)

著者の執筆動機を考えながら・・・

著者はどんな動機でこの小説を書いたのだろう?
ドラマティックではないが,最後までストーリーに引っ張られた。
博士の家政婦となった私(主人公)。64才の博士は1975年の自動車事故で記憶が自由でない(記憶が80分しか続かない)。数学の証明問題に日々を費やし,私には数学の美的な世界,素数の魅力を語る。私には息子ルートがいる。タイガースファン。実は博士も,江夏のいたターガースが好きだった。
私はしだいに素数の世界にはまる。博士は実生活に無頓着。身奇麗でないし、食べ方には品がないが,息子のルートにも私にもいたって優しい。3人は仲良くなる。
私が義姉の告口によって解雇されるが,博士の家政婦は誰も出来ないので復帰。球場でのタイガースの応援とその後の博士の発熱と発病,博士の野球カード・コレクションと数学論文,オイラーの公式の不可思議,話題が続く。
ついに記憶が壊れ,専門の医療施設に入った博士。私とルートは,定期的に彼を見舞う。ルートは教員試験に合格,中学の数学教員になる。数学・野球・人間の愛。
著者は何がきっかけでこんなに面白い小説を構想したのだろう?
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1079
(5pt)

童話?

読みやすい訳でもない、面白い訳でもない。でもほんわかした気持ちにさせてくれる本です。
切なさが漂う本でした。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1078
(5pt)

童話?

読みやすい訳でもない、面白い訳でもない。でもほんわかした気持ちにさせてくれる本です。
切なさが漂う本でした。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1077
(5pt)

温かみのある作品でした。

映画化もされているとても有名な作品ですね。

小難しそうな印象があったので読むつもりはなかったのですが、
数学が苦手な人向けに書かれている本の中で紹介されていたので読むことにしました。

80分しか記憶のもたない元数学者の老人と、
その家で働くことになった家政婦、
そしてその子どもとの交流を描いた作品で、
実際に読んでみると小難しいものではなく、
あっさりとした文章でとても読みやすいものでした。

ものすごく盛り上がるというわけではありませんが、
全体を通して温かみを感じることのできる作品でした。

数字(数学)の不思議にも出会えますし、
場合によっては数学に苦手意識のある人へ
興味を持たせることができるかもしれません。

数学や野球についての話が出てきたりしますが、
読んでいても興味を持てない場合は、
深く考えずに何となく受け止めればいよいと思います。

個人的には「読んでよかった」と思える作品でした。


博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1076
(5pt)

温かみのある作品でした。

映画化もされているとても有名な作品ですね。

小難しそうな印象があったので読むつもりはなかったのですが、
数学が苦手な人向けに書かれている本の中で紹介されていたので読むことにしました。

80分しか記憶のもたない元数学者の老人と、
その家で働くことになった家政婦、
そしてその子どもとの交流を描いた作品で、
実際に読んでみると小難しいものではなく、
あっさりとした文章でとても読みやすいものでした。

ものすごく盛り上がるというわけではありませんが、
全体を通して温かみを感じることのできる作品でした。

数字(数学)の不思議にも出会えますし、
場合によっては数学に苦手意識のある人へ
興味を持たせることができるかもしれません。

数学や野球についての話が出てきたりしますが、
読んでいても興味を持てない場合は、
深く考えずに何となく受け止めればいよいと思います。

個人的には「読んでよかった」と思える作品でした。


博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1075
(3pt)

プロ野球に興味がないと読むのが辛そう

阪神タイガース、江夏のどちらにも全く興味がなかったら読むのが辛そうだ。記憶に制限を付けた前提なのでいろいろつじつまが合わないのは承知の上で読むもの。
博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1074
(3pt)

プロ野球に興味がないと読むのが辛そう

阪神タイガース、江夏のどちらにも全く興味がなかったら読むのが辛そうだ。記憶に制限を付けた前提なのでいろいろつじつまが合わないのは承知の上で読むもの。
博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1073
(5pt)

美談を超えて

このところ少しずつだが小川洋子を読み続けていて、今更のようにようやく代表作である本書にたどり着いた。しかし初期の短編集を読んできた立場としては、読む前には期待と共に不安もあった。評判からすると本書はほのぼの感動系らしい。だが今までの作品から読み取れたのは、そういう要素を持ちながらも、意外にしたたかで、仕掛けが多く、一筋縄ではいかない作家の姿だった。言ってみればあまりにも世間受けしてしまった本書は、ほのぼのを強調するあまり、持ち前の毒のようなものを失って、したがって私のようなある意味ひねくれた読者には魅力を損なってしまっている恐れはないのか?
 読んでみて、たしかにこれは素直な本だろうと思った。これまで感じてきた、かすかに毒気をはらんだ謎めいた雰囲気、曖昧さが開いてみせるかもしれない可能性、という感じは、わずかに見受けられるとはいえ希薄である。
 だがこの小説は小説で、小川洋子の一つの達成であるのはたしかだろう。それははっきり感じられた。旺盛な創作活動をずっと続けているわけだし、私がまだ知らないだけで、ネットの作品紹介など見てみても、いわば謎や毒の路線の本もいろいろありそうで、それはまたそれで別の機会に楽しむこととして、今はより素直なこの小説を楽しめばいいということだろう。『博士』は、素材自体はいわゆる美談に近い、見ようによってはあからさまなまでに感動的な内容には違いないのだが、そうとしても出来が半端ではないのである。
 小川洋子は緻密な作家である。文章は隅々まで磨き抜かれている。いや、磨くというとニュアンスが違う。細やかに心配りがなされているとでもいおうか。プロットもよく工夫されて洗練されたものである。結果的に小川洋子の小説は品がよく柔らかで、かつある種の堅固さに支えられた安心感をもたらすものになる。題材自体は、しばしば困難な、問題意識の強いものだが、それでもどうしようもない不安の中に放り出されるようなことはない。これは大きな特徴ではないかと思う。
 ここでもそれはよくわかる。この小説も、優れた数学者でありながら記憶がわずかしかもたないという障がいを抱えた「博士」と、決して恵まれているとはいえない生い立ちの語り手の家政婦とその息子を描いて、設定は重い。だが、それが苦しさよりも明るい希望を展望させることになる。
 家政婦という設定にもちゃんと意味がある。変人扱いされる博士に寄り添えるだけの、いわばその資格というべき傷を抱えているということなのだ。
 博士の記憶力が衰えていくのは、たとえば『アルジャーノンに花束を』を連想する痛ましさがあって心を打つが、そうした不安要素や、また秘められた人間関係や発見の秘密をめぐって、ミステリーの要素も巧みに作者は使いこなしていて、真実が浮かび上がったときの感動は深い。
 独創的なのは、なんといっても数学と、そして、作者自身が熱烈なファンであるタイガースの、とくに江夏豊にまつわるモチーフである。それらによって三人の絆が見事に結ばれてゆく。数学の担う役割は、すでに初期短編にも現れていたが、ここでも同じだろう。要するに数学というのは、その内包する美しいまでの秩序のゆえに、決してやさしくはない生きるという営みの中での、祈りのようなものなのである。そしてその数学とタイガースとが結び合うという、一見突飛な工夫もこの作者ならではの独創であり、これまた数式のように美しい一つのハーモニーを生み出している。
 さて、設定の上で最大の問題は、なぜこのように記憶の続かない人物を描くか、ということではないかと思う。むろん答えなどどこにも書いてはいないし、ネタばれというようなことではないから、ここで私が一つの考えを述べても許されると思う。博士の記憶が保たれる80分という時間の枠は、私にはまず、小川洋子がずっと描き続けているともいえる生の不安、その不確かさのようなものを象徴する表現のように思われた。しかしそれは、物語の進行とともに、限られているからこそ、消えゆくからこそかけがえのない、すばらしい時間を意味するものにも見えてくるのである。こうして光と影とを混ぜ合わせる離れ業。その才能にあらためて脱帽である。

博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1072
(5pt)

美談を超えて

このところ少しずつだが小川洋子を読み続けていて、今更のようにようやく代表作である本書にたどり着いた。しかし初期の短編集を読んできた立場としては、読む前には期待と共に不安もあった。評判からすると本書はほのぼの感動系らしい。だが今までの作品から読み取れたのは、そういう要素を持ちながらも、意外にしたたかで、仕掛けが多く、一筋縄ではいかない作家の姿だった。言ってみればあまりにも世間受けしてしまった本書は、ほのぼのを強調するあまり、持ち前の毒のようなものを失って、したがって私のようなある意味ひねくれた読者には魅力を損なってしまっている恐れはないのか?
 読んでみて、たしかにこれは素直な本だろうと思った。これまで感じてきた、かすかに毒気をはらんだ謎めいた雰囲気、曖昧さが開いてみせるかもしれない可能性、という感じは、わずかに見受けられるとはいえ希薄である。
 だがこの小説は小説で、小川洋子の一つの達成であるのはたしかだろう。それははっきり感じられた。旺盛な創作活動をずっと続けているわけだし、私がまだ知らないだけで、ネットの作品紹介など見てみても、いわば謎や毒の路線の本もいろいろありそうで、それはまたそれで別の機会に楽しむこととして、今はより素直なこの小説を楽しめばいいということだろう。『博士』は、素材自体はいわゆる美談に近い、見ようによってはあからさまなまでに感動的な内容には違いないのだが、そうとしても出来が半端ではないのである。
 小川洋子は緻密な作家である。文章は隅々まで磨き抜かれている。いや、磨くというとニュアンスが違う。細やかに心配りがなされているとでもいおうか。プロットもよく工夫されて洗練されたものである。結果的に小川洋子の小説は品がよく柔らかで、かつある種の堅固さに支えられた安心感をもたらすものになる。題材自体は、しばしば困難な、問題意識の強いものだが、それでもどうしようもない不安の中に放り出されるようなことはない。これは大きな特徴ではないかと思う。
 ここでもそれはよくわかる。この小説も、優れた数学者でありながら記憶がわずかしかもたないという障がいを抱えた「博士」と、決して恵まれているとはいえない生い立ちの語り手の家政婦とその息子を描いて、設定は重い。だが、それが苦しさよりも明るい希望を展望させることになる。
 家政婦という設定にもちゃんと意味がある。変人扱いされる博士に寄り添えるだけの、いわばその資格というべき傷を抱えているということなのだ。
 博士の記憶力が衰えていくのは、たとえば『アルジャーノンに花束を』を連想する痛ましさがあって心を打つが、そうした不安要素や、また秘められた人間関係や発見の秘密をめぐって、ミステリーの要素も巧みに作者は使いこなしていて、真実が浮かび上がったときの感動は深い。
 独創的なのは、なんといっても数学と、そして、作者自身が熱烈なファンであるタイガースの、とくに江夏豊にまつわるモチーフである。それらによって三人の絆が見事に結ばれてゆく。数学の担う役割は、すでに初期短編にも現れていたが、ここでも同じだろう。要するに数学というのは、その内包する美しいまでの秩序のゆえに、決してやさしくはない生きるという営みの中での、祈りのようなものなのである。そしてその数学とタイガースとが結び合うという、一見突飛な工夫もこの作者ならではの独創であり、これまた数式のように美しい一つのハーモニーを生み出している。
 さて、設定の上で最大の問題は、なぜこのように記憶の続かない人物を描くか、ということではないかと思う。むろん答えなどどこにも書いてはいないし、ネタばれというようなことではないから、ここで私が一つの考えを述べても許されると思う。博士の記憶が保たれる80分という時間の枠は、私にはまず、小川洋子がずっと描き続けているともいえる生の不安、その不確かさのようなものを象徴する表現のように思われた。しかしそれは、物語の進行とともに、限られているからこそ、消えゆくからこそかけがえのない、すばらしい時間を意味するものにも見えてくるのである。こうして光と影とを混ぜ合わせる離れ業。その才能にあらためて脱帽である。

博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235
No.1071
(5pt)

読み終わってから思い出し泣きする作品

80分しか記憶を持たない博士と、そこに勤める家政婦とその息子ルートの交流を描いたお話。
小川洋子の物語は、閉鎖的な空間、情景をを描くことが多いように思います。この話は数学の教授であった博士のため、数学に関する話が多く出てきますが、数学に精通していない私にも、数学の魅力を感じさせてくれました。数学というと難しいイメージを感じられるかもしれませんが、博士の語る数学は音楽のように美しい。小川洋子さんの文章がとても優しく静かだからでしょうか。
また、博士は、毎日自分は80分しか記憶が持たないことに毎朝気づき、絶望から始まりますが、ルートとの交流が博士の幸せにつながっていく様子が心をうたれます。
愛する数字のように、毎日初対面のルートと接する博士。相手の良いところを引き出し、相手の考えがいかに素晴らしいかを語り尊重していく博士の優しさや、記憶が80分しかもたない博士を傷つけまいとする家政婦とその息子の優しい心遣いがやがて絆として結ばれていく過程が、淡々としたストーリー展開にも関わらず、読者を引き込んでいきます。

博士は幸せな人生だったのだなと改めて思い返し涙が出てきます。何が幸せで何が不幸せなのか改めて考えさせてくれる作品です。

ルートが博士にプレゼントを贈るシーンは神々しいとすら感じます。

詳しくは語られませんが、義姉の切ない思いも伝わってきます。

ルートが選んだ就職先を知った時も最後にに家政婦とルートが博士とあった日の様子を思い出すと涙が止まりませんでした。

心が温かく、優しくなれる名作だと思います。


博士の愛した数式 Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式より
410401303X
No.1070
(5pt)

読み終わってから思い出し泣きする作品

80分しか記憶を持たない博士と、そこに勤める家政婦とその息子ルートの交流を描いたお話。
小川洋子の物語は、閉鎖的な空間、情景をを描くことが多いように思います。この話は数学の教授であった博士のため、数学に関する話が多く出てきますが、数学に精通していない私にも、数学の魅力を感じさせてくれました。数学というと難しいイメージを感じられるかもしれませんが、博士の語る数学は音楽のように美しい。小川洋子さんの文章がとても優しく静かだからでしょうか。
また、博士は、毎日自分は80分しか記憶が持たないことに毎朝気づき、絶望から始まりますが、ルートとの交流が博士の幸せにつながっていく様子が心をうたれます。
愛する数字のように、毎日初対面のルートと接する博士。相手の良いところを引き出し、相手の考えがいかに素晴らしいかを語り尊重していく博士の優しさや、記憶が80分しかもたない博士を傷つけまいとする家政婦とその息子の優しい心遣いがやがて絆として結ばれていく過程が、淡々としたストーリー展開にも関わらず、読者を引き込んでいきます。

博士は幸せな人生だったのだなと改めて思い返し涙が出てきます。何が幸せで何が不幸せなのか改めて考えさせてくれる作品です。

ルートが博士にプレゼントを贈るシーンは神々しいとすら感じます。

詳しくは語られませんが、義姉の切ない思いも伝わってきます。

ルートが選んだ就職先を知った時も最後にに家政婦とルートが博士とあった日の様子を思い出すと涙が止まりませんでした。

心が温かく、優しくなれる名作だと思います。


博士の愛した数式 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 博士の愛した数式 (新潮文庫)より
4101215235