悪人

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評判

悪人の評価:

4.01/5点 レビュー 407件。 B ランク

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平均点4.01pt

Amazonレビュー一覧

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全435件 381〜400 20/22ページ
No.55
(5pt)

実は・・・

儚げでありながら、実は一番強かったのは祐一であったのではないかと、最後に感じました。いや光代によって祐一が強くなったんだなあ。映像化されるなら、最後モノクロシーンにオレンジのスカーフだけが鮮やかに風に揺れるのだろうなあと、勝手に想像してしまいました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.54
(5pt)

この作者は相当悪い人だ…いや、人が悪い

帯で浅田彰が指摘してるように、作者は「したたかな悪人」である。その分(タイトルに反して)この話には決定的な悪人は出てこない。いいや、出てきとーやん(博多弁、久留米なら"でてきとーばいやん"、長崎なら…)という反論もあるだろうが、僕にはそうは思えない。なぜなら、この話に出てくる人間の言葉をそのまま信じてはいけないからだ。冒頭から登場人物の多くがそれぞれ嘘をつくことで物語は展開していく。そして、その数々の嘘がある時はばりばり見え透いたもんだったり、ある時はそれなりに巧妙だったりするのだが、その中で思いっきり見え透いた嘘をついてるのが誰あろう作者なのだ。いや、ほんと。嘘だと思うなら179頁の8行目と226頁の1行目を並べてみればいい。このことはお約束として真実を語る場所としてのモノローグにさえ嘘が混じってる可能性をほのめかして、犯人が自分のことを語るその言葉さえもが、どこまで真に受けていいもかどうかと読者を悩ますことになる。だから読後しばらくどよーんしたまんま、で、ちっともすっきりしない時間続く。なにいってるんだ。人一人の命が奪われてるんだぞ。そう簡単にすっきりなんかしちゃいけないに決まってるじゃないか、すっきりなんかさせてやるもんか、といった声が聞こえる。ホント吉田修一は人が悪い。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.53
(5pt)

ここに「人間」あり

ひとつの殺人事件の加害者、被害者、そしてそれぞれの家族、友人、恋人など、関わるさまざまな人々の想い。小説は、紋切り型にキャラクターを設定するでもなく、それぞれの登場人物の心情をありのまま、丁寧に綴っていきます。殺人を起こした加害者は果たして悪人だったのか? 人間にとって善悪とは何なのか? 人間に人間は裁けるのか?加害者の男性は、とある女性との逃亡を通して、純真さと純真であるがゆえの狂気を見せていきます。彼が最後にとった行動は、果たしてどんな想いからなのか…。奇をてらった展開はないかもしれませんが、全編を通して、とても静かな、感情が殻を破ることができずに燻った様子は、今という時代を反映しながらも、普遍性を感じさせます。それを小難しくなく、平易な文章で表現しています。おすすめです。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.52
(4pt)

期待したんだけど

少なくとも一冊の本として上梓され、しかもいくつかの有力な賞を受賞している以上、それなりの感興を得ることを期待するのは当然じゃないか。どこか間違っているんだろうか?でも違った。最後まで読むのが辛かった。いつかぐっとくるのではないかと思っていたのに。なんでだろう?こんなとこがあった。主人公の自転車に雪が積もって消える場面。とてもいいとこだ。でも「その直後だった」という言葉が雪が積もり消える場面の前に配置されている。確かに事実は「その直後」なんだろう。でも語感がいけない。「チョクゴ」ってぐちゃっとした音感の後に、雪がすっと消えていく感覚はどうしても生まれてこない。無理だ。勿論誤解のないように付け加えたいんだけど、ぐっとくる場面もあった。台所で、魚の頭がにゅっと浮き出るとこだ。とてもシュールでいい。これがあるから芥川賞なんだろうと思った。でも、これくらいだ。最後にやたら「?」がでる。確かにそうだ。「?」。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.51
(5pt)

2007年の群像絵巻

一人の被害者の周りに沢山の人々が現れ、交差していく。それぞれが生々しい。地方の町に現実に存在しているような。現在の格差社会を象徴するような、言わば彼らは下流の存在。その生活臭を生臭いほど発散している。一見して分かりやすい、魅力的な人物は一人もいない。全ての人が、それぞれの歪みや弱さ、凡庸さに浸っていて、それを克服するような意思も無い。しかし読み進むうちに、そこに自らを見つけてしまう。ヒリヒリするような切実さが浮かび上がる。いつの間にか、ストーリーへ埋没し、共感していってしまう。遠い町の他人事ではない気がしてくる。これが作者の筆力だと思う。感傷的なしゃれた会話のやり取りも、一切無い。情景と心理の描写がメインの文体である。だがそのおかげで、歯の浮きそうな無駄なせりふで興ざめすることも無い。この文体が、物語とドライな情感をグイグイドライブさせていく。そして最終章。静かな結末。ゆっくり熱い気持ちがこみ上げた。作者は、彼らに愛情を注いだと思う。少し距離を置きながら。しかし同じ目線の高さで。その情の距離感が、抜群であったと思う。普通の人々、いやむしろ、卑しく弱い人々。照らされることの無い、その内面と生活に、一瞬の光を与え、描ききったと思う。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.50
(4pt)

主人公に対する『解釈』

主人公の描き方がとてもうまいと思う。「陰気で不気味な男」というとっつきが悪い印象と、「実は繊細で傷つきやすい男」という同情や共感を呼ぶ面が両方同じ位描かれている。それによって読者は、この人はどうも信用出来ない、いや、そうでもなさそうだ、と彼への評価がそのつど揺れる。そして読者の最終的な彼への印象が、逃避行の最後に行った彼の行為をどう解釈するかにつながっていくと思う。私個人としては、最後の彼の行為は、良くも悪くも『納得』した。このままただの純愛物語で終わるのだろうか、彼は一体どういう人なのだろうかと思いながら読み進んだ末のラストであった。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.49
(5pt)

読むものの魂を揺さぶる、吉田修一の会心作

’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第8位、「このミステリーがすごい!」国内編第17位にランクインした芥川賞作家・吉田修一の問題作。2002年1月6日、長崎市郊外に住む若い土木作業員の清水祐一が、福岡市内に暮らす短大卒21才の保険外交員の石橋佳乃を絞殺し、その死体を遺棄した容疑で長崎県警に逮捕された。この記述からこの小説は始まる。いったいふたりの間に何があったのか、何が問題だったのか。物語は時間をさかのぼり、鳥瞰的な視点で始まる。被害者と加害者、それぞれの家族や友人、会社の同僚や出会い系サイトとで知り合った男たちや風俗店の女と、さまざまな人物に次々とズームインし、彼らの口を借りてドキュメンタリーのように、重層的に事件の背景が語られ、全体像を立体的に見せてゆく。不器用で己れの感情すらうまく人に伝えられない男がなぜ殺人を犯す<悪人>になったのか。嘘で糊塗することで己れを繕ってきた女はなぜ殺されなければならなかったのか。さまざまな登場人物の肉声の中に、その答えがあるのだろうか。私は物語の後半で祐一と一緒に逃避行する馬込光代の姿に素直に感動した。<幸せ>とは何か。<悪人>とは何か。本書は、吉田修一が抜群のストーリーテラーぶりを発揮した、読むものの魂を揺さぶる会心作である。
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402250272X
No.48
(4pt)

「私を、愛して。」

ページをめくるごとに、登場人物たちの悲鳴にも似た叫びが聞こえてくるようで、苦しかったです。
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402250272X
No.47
(5pt)

面白い小説に出会いたい人は、ぜひ

著者の作品を読むのは、芥川賞受賞作である「パークライフ」以来である。パークライフはそれなりに面白かったのだが、本書は本当に面白い。年末の書評欄で複数の選者が本書を推していたので購入してみたのだが、書評に偽り無し、と言ったところか。  推理小説を読むようにページを思わず繰ってしまう展開。それでいて単なる推理小説ではもちろんない。世間を騒がせる凶悪犯罪の背後にも私たちが知らない真実が潜んでいるのでは、とふと考えさせられてしまう。 世間で言われているとおり、殺人を犯すような人は本当に`悪人'なんですよね?
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.46
(5pt)

とめられないおもしろさ

このおもしろさは何だろう、と思った。特に中盤以降はグッと引きずり込まれる。心理描写が丁寧で、人の心・立場を多面的に捉えていて、いい人はいい人・悪人は悪人みたいなステレオタイプなシナリオとは一線を画す。でもそれが人間だと思うし、相当のリアリティを持って登場人物の心理を描写してるから読むのがとまらない。どの人間にも共感するべき部分が感じられる。うまい。惜しむらくは、最後にかけて犯人にややありきたりな思いやり(?)みたいなものが見えてしまい、それまでのリアリティから見るとやや違和感を感じた点。ただそれも読む人によって評価は分かれるかもしれない。いずれにしろ、このおもしろさは買い。費用対効果は非常に高い一冊だと思う。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.45
(5pt)

出会うタイミング

もし自分だったらどうしただろう・・・登場人物を自分に置き換えて、いろいろ考えさせられました。衝動的な殺人を犯してしまうことで、それによって変わっていく自分と周囲の人生。出会うタイミングがもう少し早ければ。もう少し遅ければ。じぶんがもし渦中にまきこまれたならきっと、冷静ではいられないのだろう、そう考えさせられました。そして、育った環境や人生は、年を経ても変わらないものなんだろうと。格差社会におけるやりきれなさも感じました。この作者の小説ははじめて読みましたが、読み応えあり、引き込まれました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.44
(5pt)

新聞連載小説の力

間違いなく昨年のNo.1小説。二つ賞を取りましたが、「谷崎潤一郎賞」を取って欲しかった。感想は「モワノンプリュ」さんのが秀逸だと思いました。「類型と対比が全てを駆動している」、「鶴田が作品世界と作者自身との蝶番になっていると思う 」全く同感です。私なりの感想を言わせて頂くなら、祐一は人を殺して「しまった」、そして光代は祐一と逃避行をして「しまった」。偶然のような必然、必然のような偶然、作者はこの二つの「出来事」をありきたりの解釈に挑戦するかのように小説の中心に据えているように思いました。ページを捲るごとにめまぐるしく転調する物語に何時しか魅せられ、気がついたら読み終わっていた、そんな感じでした。最後の章で祖母の房枝が全ての事実をあるがままに受け入れ、行動する描写には底知れぬリアリティーと共に切なさを感じ、読み進めるのが辛くなりました。作者はこの祖母のあまりに「まっとう」な姿を描くことで、上下左右に揺れる「類型と対比」の物語を相対化し、太い芯棒を入れた気がしました。佳男の言葉、行動にいつの間にか共鳴し、自省している鶴田の描写と共に。そして、最後に半ば無理に自分に納得させようと述懐する光代の心を描き、?で終わる場面で問いと答えを読者に委ねる。新聞連載小説という一見断片の集積のように思われるこの小説は、極めて綿密に作られる一方で、ありきたりの「物語」への収束と終焉を、すんでの所で回避している。およそ一世紀前に、同じ朝日新聞に連載された漱石の小説がそうであったように。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.43
(5pt)

淡々とした文体の、日常感あふれる犯罪物語

まず、舞台がいい。東京や大阪じゃなく、長崎と佐賀で暮らす若者だからこそ、生々しい。出会い系サイトででも誰かと知り合いたいという、切実な孤独感がわかります。九州の方言がいい。地方の空気感があります。都会にあこがれ、反発もし、コンプレックスもある。 それから、吉田修一のふっきれ方がいい。だって幽霊なんて絶対に描きそうもない作家だったし。被害者と加害者が、幼少時に偶然遭遇していたという、ヘタをするとご都合主義になっちゃう場面にもビックリ。本作ではエンターテイメント作家として腹をくくってたんだなあ、と思いました。 無口な祐一は、最後まで不器用でした。悲しいまでに自分をおとしめる、いじらしい若者でした。せめて読者の私達が、愛してあげなくてはならないという気になりました。 オレンジのスカーフは、映画になったらラストシーン指定の小道具です。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.42
(5pt)

「悪人」は誰?

反語みたいなタイトルのこの作品。悪人か?いや、悪人ではないという風に。物語はミステリーと恋愛が絡まって進行していく。誰が「悪人」なのか?主人公は果たして「悪人」なのか?今までの吉田修一の作風とは異なるものの、面白く読めました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.41
(5pt)

悪人と善人の境なんてはっきりしないものです

雑誌で取り上げられていたり、なにがしの賞をとったりする本は期待はずれであることが多いですがこの本に限っては私の予想の斜め上をいった出来でした。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.40
(5pt)

寂しさ

この小説の中で一番の『悪人』っていったい誰だろう?罪を犯した裕一?想う気持ちが勝って逃亡幇助をした光代?彼らを育てた親?祖母?法に触れなければそれだけで善人?被害者の父の『今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でも出来ると思い込む。自分に失うもんがなかっちっ、それで自分が強うなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。本当はそれじゃ駄目とよ。』が胸に残り、人生に「もしも」はないというけれど、もしも、もっと違う出会いがあったなら、もしも、もっと早く出会っていたなら・・・もしも、もしもと思ってしまいます。最後、裕一が光代の首に手を掛けたのは決して殺意からではないと思うのは私だけでしょうか?
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.39
(4pt)

誰にとっての悪人か

「あの人は悪人やったんですよね?ねぇ?そうなんですよね?」出会い系で知り合った二人。男はやはり出会い系で知り合った別の女性を殺した犯人だった。出会ったばかりの二人の逃避行が始まる。非常に生生しい雰囲気を感じさせる小説。舞台が北九州で、登場人物もすべて方言で語っているため、よそ行きでない日常感が漂っている。殺される佳乃も、光代も、僕たちの周りにいそうな人物ばかりだ。そんな普通の人たちが、殺され、また、殺人者との逃避行を行うことになる。一見、突飛な設定であるが、違和感なく描かれているのはさすがだ。一方で殺人犯の祐一については、あえてその心情描写は行わず、「何を考えているのか分からない」人物として客観視点で描かれている。これがラストで非常な効果を挙げている。ラストの一言は、見事に作品全体を貫いている。人間には誰でも「善人」の部分と「悪人」の部分がある。マスコミが報じる事件では、「悪人は悪人」として一方的に報じられることが多いため、そのように信じてしまいがちであるが、世間では悪人でも、ある人にとってはかけがえの無い人であったりする。そんな当たり前のことを思い出させてくれる。420ページの大作なのに一気に読ませる本。おすすめ。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.38
(5pt)

善と悪の境界線

自分が悪人(または加害者)になることで、相手を罪の意識から救ってやる、そんな愛しかたがある。人間社会の規範に従えば悪人に違いない。が、そんな献身的な行為を行える人物でもある。日常的にワイドショーが犯罪者を描くときの薄っぺらな社会規範と、この小説で描かれているような、善と悪の境界線を生きる人間の深遠な感情のなんともいえない対照。今後犯罪報道を見る度に、この物語が思い浮かびそうだ。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.37
(5pt)

間違いなくオススメ本です!

新聞の連載小説ってあまり好きじゃなかったんです。どうも間延びしたというか、最後はなんとなく数あわせっぽいような、そんな作品が多い気がします。私の先入観かもしれませんが。でもこの作品は違います。私は朝日新聞をとっていませんが、もしとっていたら次が知りたくて朝からうずうずしたに違いありません。最初から犯人が分かっていて、そこまでの何故?を調べていくことと、犯人のその後を中心に、この事件にかかわったすべての人たちを丁寧に描いています。ささいなエピソードから、核心に触れるまでを過不足無く伝えてくれます。被害者の両親にとってはかけがえのない娘でも、飲み屋で知り合った程度の男には、まるでゴミのように扱う対象なのですね。それが切ないやら悲しいやら。とても複雑な気持ちでした。何となく成り行きで殺人犯になってしまった清水祐一という、メインの登場人物ですが、私は最初好きではありませんでした。自分の意見もはっきり発言しないし、ただ何となく生きているような気がして、最低!と思っていました。それが後半に行くに従って、私の中で全く違った人物像になってしまっていたのです。これには自分でも驚きでした。読んだみなさんも、きっとそう思われるのではないでしょうか。私はこの本で三度涙しました。途中から、これが物語ではなく、実際に身近で起こった事件のように感じられたからだと思います。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.36
(5pt)

誰が「悪人」か、混乱してくる危険で魅力的な小説。

その「事件」が起こったのは、福岡と佐賀の県境の三瀬峠。見栄っ張りで少しだらしないところもあるけれどどこにでもいそうな若い女が、携帯サイトで知り合った男と福岡市内で待ち合わせ、そのまま姿を消した…彼女の身にその夜起こったのは? そして孤独だった携帯サイトの男に待ち受けていた極限状態の愛のゆくえは?どこまでネタバレしていいのか判断が難しいので、曖昧なあらすじになってしまったが、そういう話である。普通、ミステリー小説やドラマ、そして実社会においてもいろいろな悪事が出てきても、殺人は取り返しのつかなさ、凶悪さによって最悪の犯罪なのは当然だし、タイトルの「悪人」=殺人犯、と考えるのが妥当だと皆思うだろう。多少の同情の余地の有無があったとしても、基本的には、加害者が悪で被害者が善(あるいは罪の無い存在)、というのはたいていの殺人事件において常識なはずなのに・・・加害者にもひとりの人間だから当然いいところもあって、被害者にもひとりの人間だから当然イヤなところもあった。その当たり前なことを丁寧に描きこんでいるので「あれ?こっちの殺した人は黒で、この殺された人は白だよね?」と自分で確かめながら必死で読む感じ。殺人犯が一瞬好青年かも、と思っちゃったり、被害者がイヤな人〜!っていうシーンがあったりして、自分の中の倫理観をしっかり固定してるつもりでも、ちょっと混乱気味。そんな風に、犯人を悪い人、被害者を哀れな人、とすっきり決め付けることができぬまま、物語を読み終えてしまい、登場する多くの人たちの中でだれが一番悪人か?と聞かれたら。と考える。そうすると、殺人を犯した人物ではなく、他のキャラクターの顔がふと浮かぶ。殺人より罪深いことなんてあるはずないのに。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X