悪人

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評判

悪人の評価:

4.01/5点 レビュー 407件。 B ランク

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平均点4.01pt

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未読の方はご注意ください

全435件 141〜160 8/22ページ
No.295
(4pt)

ラストは涙が止まりませんでした

主人公の不器用な生き方、人には見えない優しさに心が揺さぶられました。

母の心に「憎しみ」を刻ませることで、彼女を救おうとする姿、
光代を救うために、自ら「悪」を演じる姿、

彼の献身とも言えるその愛情に、涙が止まりませんでした。

彼は本当に『悪』なのか?
正義とはなんなのだろうか?

主人公の悲しく、切ない生き方に心が締め付けられる、けれど読んだあと不思議な余韻を残す、そんな作品だと思います。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.294
(3pt)

熱が覚めると・・・

映画を観た後、夢中になって原作を読みました。読み終わった直後はとても興奮しましたが、光代が最後に自問自答するところが、違和感を感じます。多分、祐一と引き離されてからの経緯が何も書かれていないからだとおもいます。三浦綾子の氷点や、宮部みゆきの模倣犯のような、加害者・被害者の心の葛藤の描写が少なく、とてもドライな印象を受けました。現代人の愚かさは、表現されていたと思うのですが、加害者の関係者と被害者の関係者の"愛する者が、事件に関わってしまったがための無念さ。"光代の無念さ。(利用されていたと感じるなら同時に怒りがを感じるのが普通なのに魂を抜かれたように、自己主張しなくなって、佳乃の月命日云々と話しているのが、なんだか、折角の今までの物語を非現実的なエンターテイメントにまで落としてしまった様に感じます。)もっと掘り下げて完結して欲しかったです。ページ数が少なくて残念です。寂しさ・愚かさだけではなく苦悩を丁寧に描写して欲しかったです。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.293
(4pt)

なかなかでした。

好みの作品でした。

ネタバレになると良くないので詳しくは書けませんが、人を愛するだけでなく、人からの愛に気付ける人になりたいと思いました。
終わりは切なかったけれど、切ないからこそ余韻が残ります。

ただ、出会い系に嫌悪感を持っている方は感情移入しにくいと思います。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.292
(3pt)

メッセージ

何をもって、悪とするかは時代や国によっても異なり。
人は多面的で、どの面でその人を判断するかについて、一概には言えないが・・判断するには、客観的に事実を見つめる必要があると思う。
主人公、祐一には純粋な、優しい一面と・・佳乃の嘘に動揺し、保身の為、殺してしまう身勝手さ、そして、佳乃の遺体が発見された後も、すぐに自首をしなかった狡さ、弱さも持ちあわせていた。
祐一が未成年者でこの事件を起こしていたなら・・母に捨てられた生い立ち等も今回の事件の遠因と考えられなくもないが・・27歳である。
分別があって当然の年齢であり、祐一には祐一を引きとり、育て上げた祖母の房枝や憲夫もいる。
一人ぼっちだったのだろうか?
悲しい過去や閉塞感等は、それを乗り越えるか、否か・・・自分次第ではないか?
結局は、佳乃殺害後に逃げたように、それまでも現実から逃げていたのではないか?
そんな祐一が愛する人、光代と出会い、共に時間を過ごす。逃避行を始める。
「祐一、逃げたら駄目よ。怖かやろうけど、逃げたら駄目よ。逃げたってなんも変わらん。逃げたって誰も助けてくれんとよ」房枝の言葉が届いたのではないか?
祐一は、最後逃げなかった。自分に出来ることを躊躇なく行動に移し、光代を守り抜いた。
強さを身に付けていた。

「あんた、大切な人はおるね?」

筆者が読者に問いかけたい一言は、やはりこの一言なのだと思う。



悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.291
(2pt)

佳乃という犠牲の上の浄化

石橋佳乃や増尾が悪人だとは思えなかった。
これくらいの愚かな人間はいくらだっている
だからってそう簡単に善人は殺人者にはならない。

罰せられない罪をテーマにした作品だろうとは思うが、
世の中にはもっと究極の悪が存在するはずだ、と100万部大ベストセラーの
煽りに「もっと」の要求が高くなってしまった

馬鹿で愚かな女・佳乃が悲しい。
桐野夏生ならこの哀れなバカ女を聖女まで昇天させられるだろうが、
それは「グロテスク」で読んだな、とどこまでも「物足りなさ」を感じながらの読書だった。
「これはどこかで読んだ」の積み重ねなのだ。
佳乃という犠牲の上でヒロインと主人公は浄化されパズーとシータのように
短い青春を謳歌しているが、
それは許されない。当然だと思う。

事件に巻き込まれる平凡なOL
環境故に朴訥で哀れな主人公
孤独なバカ娘、怒る父親、薄情な金持ち大学生も、もう見飽きた素材
「もっと」が足りない小説だった。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.290
(4pt)

真の悪人は,殺人者である。

本当の悪人とは,誰なのか,という問いが本書のテーマである。
 読み終わったとき,清水以上に,石橋,増尾や悪徳商法の堤下が悪人だと思うだろう。
 しかし,この小説の構造から離れて冷静に考えれば,真の悪人は,殺人を犯した清水であることに間違いはないだろう。著者は,殺人を犯した人間には,時には同情すべき点があって,その殺人者以上に,悪人がいると主張したいのだろうか。もしも,この小説の読後に,殺人犯清水は,本当の悪人ではなく,他に「真の悪人」がいると思ってしまうのは,それだけ殺人というものが,我々の世界からかけ離れたところにあるからだ。殺された石橋佳乃は,確かに憎たらしい女性だったのかもしれない。けれども,彼女には,家族がいたはずだ。そして,殺人犯清水にも家族がいる。清水は,自分の思い通りにならない世界になんらかの抵抗をしたかったかもしれない。ただし,それは,矮小な人間の自分勝手の考えと行動にすぎなかった。その殺人によって,家族は崩壊してしまった。それこそ,清水の犯した殺人がもたらした「悪」ではないのだろうか。
 けれども,本書は,純粋に小説と読めば,おもしろい作品だと思う。救いがない物語といえば,そうかもしれないが,一度,「悪」というものを考える良いきっかけになる小説だと思う。

悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.289
(5pt)

タイトルに裏切られた、心に響く傑作。

果たしてどんな「悪」が描かれているのか?
隷書体で書かれたタイトル名が強烈さを暗示。
先入観を逆手にとって、読者を引き込む。

しかし、・・・読前イメージとは全く違う内容が
明らかになる。

地方都市の閉塞感から生まれる孤独と絶望。

どうにもならない境遇と鎖に繋がれた現実。

真面目に生き続けることの美徳と背反。

対岸の火事だと考える人間の身勝手さ。

現代の恋愛市場における病巣。

不器用で普遍的な血縁愛と皮肉。

素朴で素直でありながら、それ故生まれる
優しすぎる登場人物の犯罪。

現代の地方都市の現実や若者が抱える恋愛事情、幸福感に
ついて、なんとなくイメージは湧いてはいたけど、
それを的確に、凄みある人物描写で書きあげた秀作。

すべての登場人物のキャラが立っていて、重く切ない
心情が強烈にスパークし、科白の重厚感も白眉だ。

「生まれて初めて人の匂いがした」
「欲しゅうもない金、せびるの、つらかぁ」
「ばあさんが悪かわけじゃなか」
「そうやってずっと、人のこと、笑って生きていけばよか」
「これまで必死に生きてきたとぞ」
「どっちも被害者にはなれんたい」
「どんなに俺が言い張っても、誰も信じてくれんような気がしました」

表面的で非現実的な設定で、ムリヤリ盛り上げようとする、
最近の似非ベストセラーに対するアンチテーゼか?

善悪と合法・違法の狭間で、読者に「悪」というモノの
指標を考えさせる命題提示も素晴らしい。

「心の裕福さ」の価値と、それだけで生きていけるのか
を考えさせられる。

概して、フィクションでありながら、現実世界の
心闇ともがきながら葛藤する人物の機微を
うまく表現した至高作品であった。

映画をご覧になって、光代と祐一の心の繋がり方に
疑問を持った方は、ぜひ小説を読んでください。

映画では時間的制約で感じられなかった、二人の
孤独と、かけがえのない存在としての宿命に、
納得できると思います。

祐一が出所した際、光代が迎えに行く場面を想像すると、
今作の切なさ、人間の業といったモノが味わえると思います。


悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.288
(3pt)

すこし散漫な印象

吉田修一の最高傑作との呼び声が高いらしいですが、個人的には、『パレード』の方がずっとよかったように思います。ちょっと登場人物が多すぎて散漫な印象がしたのと、吉田修一らしい「ひねくれた毒」が今イチ感じられませんでした。

ただ、逆にものすごくストレートな物語なので、社会派小説として読み応えは十分ですし、考えさせられる点も多いです。それぞれがラストシーンに見せる生き様には、胸が熱くなると思います。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.287
(4pt)

被害者と加害者の入れ替わる瞬間

本当の悪とは何だろうかと深く考えさせられました。

人は誰でも「幸せになりたい」と思って生きている。

そのために誰もが見栄をはったり、日々、小さな嘘や小さな裏切りを重ねている。

ただそれが殺人事件へと変わった時に物語は大きく入れ替わる。

いわゆる一線を超えてしまうってことですが・・・。

ちょっとむしゃくしゃしてたり、つい、カッとなってしまったり、きっかけは些細な事かもしれない。

一つ言えるのは、すべてが「さみしさ」がもたらしたものの一つだという事。

さみしい気持ちにはつけいるすきがある。

読み進んでいくうちに殺人を犯した主人公祐一と殺された被害者である佳乃との立場が入れ替わる瞬間がある。
被害者が実は加害者で加害者こそが被害者なのではないかと・・・・。

「悪人」とははたして誰の事を指すのか?

見栄っ張りでひたすらどん欲な被害者佳乃、
そんな娘を信じて真面目一筋で生きて来た父、
裕福な家庭に生まれ育ち、やりたい放題生きて来た第一容疑者の増尾、
対照的に両親の愛情にも、めぐまれた環境にも容姿以外「持たなすぎた」主人公祐一、
ひいては、貧しいなかで贅沢もせず、祐一を育て上げた祖母の房枝、
その祐一が起こした事件によりマスコミや周囲に苦しめられる事になり二次的被害者とも言える
その祖母を食い物にする悪徳業者。

同情しながらも今一つ腑に落ちなかった心を閉ざしたままの祐一の性格や行動・・・。

祐一が光代に出会う事で一気に共感へと変わる。

もっと早く二人が出会っていればこんな事にはならなかったのにと誰もが思うだろう。

誰もが幸せになりたいと願う。
誰しもが幸せになる権利がある。

特に真面目に日々生きている素朴な人々の明日を私達は願わずにいられない。

最愛の娘を失っての夫婦の再出発や

無愛想なバスの運転手が追いつめられた主人公の祖母房江に投げかけるエールの言葉、

その祖母を元気にするたった一枚のスカーフ。

この物語はそんな人々の小さな希望をうまく書き出していたと思います。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.286
(4pt)

そんなに悪人とは思えない

映画化よりかなり前に読みました。映画はまだ見てません。

殺人を犯した青年は恵まれない境遇で育ち、衝動的に女性を殺しますが、
悪人というイメージは全くありませんでした。
どちらかというと殺された女性を含め、周りの人間の方が悪いような・・・

作品としては映画化されるだけあって、良い小説です。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.285
(5pt)

ノンフィクションの味わい

以前に読んだ2つの作品で、この作家さんはメロドラマの人だと決めつけて、
「悪人」も気になりつつ避けていましたが、勧めてくれる人がいて読んでみました。
想像とはまったく違って、読みはじめはノンフィクション小説の雰囲気ですね。
たんたんと事実が語られていき、登場人物の一人一人がくっきりと浮かび上がっていく。
作品世界にぐいぐい引き寄せられました。
なぜその人がそんなことをしたか、という背景をきちん、きちんと描いていっているので、
ものすごく納得して読めました。なんだ、こいつ、みたいな人物がいない。
最後はすべてをここまできれいにまとめなくてもいいんじゃないかなと思いましたが、
とにかく読み応えは充分でした。
なんといっても、登場人物たちの使う方言や、地方の情景の描写が作品世界にあっていて、
そこが味わい深く、素晴らしくよかったです。
ボリューム的に上下巻にしなくてもいいかなとは思いましたがw
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.284
(4pt)

悪人とはいったい誰?

悪人とはいったい誰なのでしょうか。
悪事を働く人でしょうか。心のよくない人でしょうか。悪人はずっと悪人でしょうか。誰にとっても悪人でしょうか。何で量るのでしょうか。誰が決めるのでしょうか。主観でしょうか。
私は悪人でしょうか。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.283
(3pt)

悪人とは

「悪人」とはもっと知的で計画的で残忍な人のことを言うのではないか。
登場人物の中に悪人は見当たらなかった。
殺人犯は最終的に「悪人」というレッテルを貼られた、ということだろうか。

佳乃に手を下したのは祐一だが、殺意を抱かせたのは佳乃の発言であり、佳乃を夜中に置き去りにしたのは増尾である。そして佳乃の恐喝まがいの"その発言"を信じた祐一は未熟だったと思う。
更に言うなら、佳乃の警戒心の弱さが原因とも言え(出会い系サイトで躊躇なく男と会うことや、自分の言葉が相手にどう響くか予想できない事など)、そんな子供に育てたのは佳乃の親である。
けれども、佳乃が見栄っ張りで警戒心が弱く尻軽でKY気味(空気が読めない)だからといって彼女が死に値するとは思わない。

自分の係わった人間が死んだにも係わらず、あざ笑って話す増尾は残酷で罪深い。増尾に同調している人々も同じである。この小説で吉田修一の気持ちを代弁しているのは鶴田だろう。

人が一人殺されことによって加害者側、被害者側の家族は多大なダメージを受ける。
我々はメディアの伝える一部の情報により「誰が悪い」と決め付ける傾向があるが、全容と真実を知ったなら「誰が悪い」と安易には言えなくなるだろう。

読みやすい作品だったが、読み応えとしては少々インパクトに欠けた。
もう少し個人を掘り下げるなりテーマを絞っても良いのではないだろうか。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.282
(4pt)

無題

結局「悪人」とは一体全体何なのか…
というのがテーマなんだろうか。みんな誰しもが悪人になりえるだろうというのが伝わってくる。結局その時の状況々でついてくるものは変わってくるし、その行動がいい方に転ぶか、悪い方に転ぶかも十人十色で考えさせるものがある。結局、この人にとって「悪人」と、この人にとっては「いいひと」でほんとのとこわからない。
結局は運なんじゃないでしょうかね。「もし」、とか「たら」とか使えばキリないでしょうけど、もしあそこで佳乃がベラベラ喋らなくてとか、もしあそこで運悪くバンパーに手を挟まなかったらとか。
最悪の真相心理と状況で人ってどう転ぶかわからないですね。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.281
(3pt)

この結末は心中が封じられた現代の悲恋物のニュースタンダードになれるかも?

登場人物の誰にも自己投影しにくい小説です。悪く言うと他人事というか、、、。
でもだからこそ、この小説で大泣きできる人がいるのかもしれません。詳しくはありませんが例えば落語の人情話の悲恋物や歌舞伎の心中物に近い気がします。

あいにく私は泣きませんでしたが、日本の古典的な「泣き」の物語に自己犠牲愛というスパイスを振りかけた、なかなか普遍的に良い小説だと思います。主人公が行った自己犠牲的な愛情表現によるこの結末は、心中が封じられた現代の悲恋物のニュースタンダードになりうるかもしれません。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.280
(5pt)

「悪人」とは誰か?

言い方は非常に悪くなりますが、殺害された人が一人とその後の犯人の逃亡劇ですから、ドラマ的な要素は少ないのですね。これが、地域や季節などの状況の描写、例えば、冒頭の事件現場の描写、人や車の往来のない山の峠道の描写の1,600字程度を費やすことで、映像が立ち上がるような感覚をもつことができます。

 人の心情はモノに色濃くでます。それは、お正月のおせちの重箱のなかの真っ赤なエビに、また、洋服を何年も買った覚えがないおばあさんの久しぶりに買ったセールで3,800円のオレンジ色の明るいスカーフに現れます。

 また、被害者の心情と、状況が絶妙だなぁ、と思います。若い女性の同年代の仲の良い女性に対する相手への考え方、本人はそれほど派手ではないが、生活の状況を飾り立てるような自分の見せ方、地方都市の若さを閉じ込めるような息苦しさが伝わってきます。

 少し本文の引用を。被害者の父親が、事件現場に被害者を導いた男に接触する場面での言葉

 「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、何でもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。失うものもなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」

 これがでてきたときに、すべてがハラハラと解けるように判った気がするんですね。つまり、人を3つに分類すると、誠実に生き大切なものを持つ人間と、誠実に生きているがまだ大切なものを持ったことがない人間と、大切なものを持たない人間。

 事件は、大切なものをまだ持たない人間が起こしたもので、周りの大切なものを持った人間は、大切なものを持たない人間の持たないが故の言動に心を痛め、大切なものをまだ持たない人間が大切なものを見つける過程である、と集約できるのではないかということです。

 そうすると、大切なものがない人間の言動が、それが本人が誠実に生きていたとしても、例えば、テレビのコメンテータの全く当事者たり得ないが故の言葉、ネットでの無名性に守られた中傷のような言葉、近所や周りの人間の当事者でありえるにもかかわらずただの迷惑であるとするような言葉や視線に「悪人」が宿るのではないか、と思えてきます。つまり、加害者や、軽薄であるため嫌悪感を感じる人間から、相対する人間に「悪人」を反転させている感覚をもたせる、その感覚に心を痛めるわけです。

 ただし、実際には、もうすでに「悪人」たり得る、もしくは、既に「悪人」であるのにもかかわらず、そのときには、心を痛めない現実を認識することができるのです。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.279
(4pt)

甘くて苦い

女性2人のキャラクターに、救われていると思います。
佳乃は、裕福で誰もが羨む圭吾と交際していると同僚たちに話しますが、実際につきあっているのは、出会い系サイトで知りあった無骨で面白くない土木作業員の祐一です。同僚たちに見栄を張り、ついてしまった嘘をとりつくろうために、嘘を重ねていきますが、なぜか憎めません。
私は映画は見ていないのですが、満島ひかりさんが佳乃を演じています。そういえば、NHKの連続テレビ小説「おひさま」で彼女が演じている筒井育子と、イメージが少しダブるような気もします。

光代は紳士服量販店の店員で、お客の男たちの中に未来の夫がいるのかもしれないと思ったこともありましたが、「いくら裾上げしながら見上げたところで、そこに未来の夫の顔などなかった」
彼女は、やはり出会い系サイトで祐一と知りあい、3カ月ぶりにメールを送ります。そのときには、祐一は殺人を犯してしまっていたのですが。
躊躇しつつも、本気で誰かと出会うほかない、そうしなければ空漠とした孤独がつづくだけ。光代の思いには、現代社会における人間関係の困難さの何ほどかが表わされているのでしょう。
彼と逃げるほかない、その後に何が待っているとしても…光代の一途さが胸を打ちます。

登場人物たちの内面が反響しあい、重畳な影を落としながら終局へと突き進んでいく描写はみごとです。
ただ、題名から哲学的、宗教的なものをあまり期待すると、当てがはずれるかもしれません。
甘くて辛い現世を生きるほかない男女の、せつなく苦い物語です。


悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.278
(5pt)

切なく悲しい逃避行

映画化され、日本アカデミー賞もほぼ独占状態だっただけに、興味を持ち、まずは原作から、と思い、読んでみました。
正直、期待以上の作品でよかったです。

内容は非常に重く、辛い物語なのですが、これだけ人間を描いた小説は無いんじゃないでしょうか?
登場する全ての人物が、窓を開ければすぐそこを歩いていそうな、普通の人ばかりです。
今作では、そんな普通な人間である祐一が、殺人を犯してしまいます。

本の帯にも書かれていましたが、
「誰が悪人か?」
これが大きなテーマになっています。
僕は正直、祐一が一番かわいそうでした。
一見普通に見えていた人たちが、実は内ではこんなことを思っていたんだと、解き明かされていくたび、言い知れぬ恐さを感じました。
世の中こんなに悪人だらけだろうか?と疑問に思うけど、違うとも言い切れないのがまた辛いです。

いずれ捕まってしまうことを覚悟しての光代と祐一の逃避行は、切なすぎて涙が出てきたほどです。
最後の祐一の行動も、考えれば考えるほど切ないです。

読んだ後は、誰が悪人だとしても、登場人物全員が報われることを祈ってしまいました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.277
(5pt)

愛する人のためにできること

映画を見たあと、
祐一という人物をもう少し知りたくて小説を手に取りました。

読んでみて感じたのは、
祐一という人物の、悲しくなるくらいに優しい部分や純粋な部分でした。

「どちらも被害者になれない」
そのつらさを知る祐一は、
自分を捨てたことを泣いてわびる母には金をせびり酷い息子を演じ。
殺人犯である自分を愛してしまった光代には、本当の殺人者になってみせました。

そうして愛する人に憎まれてでも、
愛する人に泣いてしまうほどつらい思いはさせたくないと
祐一は思うのだろうと思いました。

その優しさが、悲しかったです。

ただ・・・そんな祐一も
光代が警察から逃れ灯台に戻ってきたとき
母親に置き去りにされた、幼いころの孤独な心が救わたように思います。
だから、自分とのことを忘れて生きる光代の幸せを心から願えたようにも思います。

祐一は、光代を守れて幸せだったと信じたいです。




ただ映画に登場しない女性が
最後光代に会いたがっている場面で
光代が、祐一の心をいつか知るのかもしれない
淡い可能性を感じたりもしました。

もし光代が、祐一の不器用な優しさに気がついたら・・・
日常に戻った光代は再び祐一を愛し求めるのか?

そこが気になりもしました。

悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.276
(4pt)

本当に面白かったけど…

読みながら本当に引き込まれ、読み止めるのが難しかった。
だけど…
どこかで読んだことがある、と思ってしまった。
宮部みゆきの「模倣犯」とか?
読み比べたら全然違うと思うんだけど…。
題名は出てこないんだけど、なんかこう、もどかしい感じ。
本当に面白かったんだけど、それがどうにも引っかかってしまった。

悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X