悪人

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評判

悪人の評価:

4.01/5点 レビュー 407件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.01pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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全435件 321〜340 17/22ページ
No.115
(5pt)

とにかく面白い!

内容紹介からの一文。なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう。この小説の登場人物、祐一は光代に。僕はこの小説に。ドエライ本を読んだ感がある。ミステリー要素があるのに、犯人当てを、ハナから放棄したのも事実だ。もっと根強いものを読みたかったからである。舞台は九州、殆ど知らない土地の名前が出てくる。会話文の方言も、馴染がない。バラバラに描かれている人物造詣が、直径数キロ範囲にいそうな人物ばかりである。退屈な印象を受けた。これでもかと言わんばかりの視点移動もあり、感情移入できんのかいなと心配にもなった。衝撃を受けたのは、保険外交官の女が殺害されてからだった。それを取り巻く関係者たちの、うっ屈した日常に暗雲がたちこめてくる。殺害されてから日、デートの約束をしていた金持ち大学生は失踪する。明らかになっていく捜査、揺れ動く心達。時間を忘れて読んだ。前半部分で感じた退屈な印象、心配は跡形もなくなった。それに陰影に富んだ文章が際立ってくる。著者の作品を読んだ中、トータル的に式で表すとこんな感じ。『悪人』>『パレード』>『パークライフ』で、間違いなく、今年読んだ中で一番の小説です。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.114
(5pt)

「正しかことばしなさいよ」

どちらかというと本はゆったり読み進める私が2日で読み終えた本です。高校で教師に「これは良いよ」と勧められ、最近になり文庫化もしたので購入しました。これはあまり物語の核心ではないのですが、序盤の女友達同士ならではの陰湿な距離感のリアルさに驚きました。被害者の石橋佳乃は、どこにでもいるような、出会い好きで見栄っ張りの田舎娘に描かれています。それ故殺されたあと、「ふしだら」「売女」などと言われ世間では同情もされず、私も最後まで被害者にあまり心が傾きませんでした。ですがかえってそれが、被害者が清純な娘でなかったことが、この物語の独特な暗さをより演出しているように思います。清水祐一は幼いころ母親に置き去りにされ祖父母と暮らしている、不器用で物静かな車好きの青年。いい人だな、と思えばそうでなかったりもして、掴みどころのない普通の若者です。出会い系サイト、古びた理容店、土木作業員、病気の祖父、ヘルス、健康食品詐欺‥この小説に華やかな世界は一切なく(金持ちな大学生の増尾さえ)、代わりに現代人のじめじめした人間臭さや卑しさ、そして愛が押し寄せるように感じられました。物語のなかでも、とりわけ祖母・房江の言葉はずしりと来ました。祐一が主人公の珠代を守るためについた優しい嘘に、胸が熱くなりました。祐一との逃亡生活を終えた珠代の虚無感も、全てが終わった瞬間の儚さを表現していて良いです。一瞬も気休めのない、ずっしりとした小説です。読んでみてください。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.113
(5pt)

「悪人」とは・・・

「悪人」とは、「悪」をなした人。犯罪者。 では、「悪」とは何か? 保険外交員の女性の殺人及び死体遺棄事件が、この本の舞台です。 そこに登場するのは、被害者である石橋佳乃、殺人を犯した清水祐一、その前に佳乃を車から蹴落とし峠に置き去りにした増尾圭吾、逃亡する祐一に最後までついてゆく馬込光代、その他それぞれの親族、友人はじめ多くの関係者がいます。 そして、彼らのそれぞれの視点から様々な意見が語られます。 祐一は、本当に「悪人」だったのか? 彼には、人々から「優しい」と言う評価が聞こえてきます。 そして、作者はその生い立ちから、「寂しさ」を抱えた人間として描き出します。 同様の「寂しさ」を持って描かれるのが光代です。 では、「寂しさ」だけでこの事件は説明つくのでしょうか。 もっと言えば、「寂しさ」が「悪」を生み出したのかと言うことです。 これも違うでしょう。 それぞれの登場人物が、「善」「悪」両面を持っており、それぞれがこの犯人に影響を及ぼしています。 いろんな要素が相俟って、「悪」が生まれ、事件は起きます。 この本で語られるのは、法的な「悪人」と倫理的な「悪人」の両方です。 それほど「悪」と言う言葉の意味は難しいと言うことでしょう。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.112
(5pt)

吉田修一恐るべし!

保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか?幸せになりたかった。ただ、それだけを願っていた。                                                             この作品はどんなジャンルにもおさまりきらないものすごい作品だと思います。登場人物すべての心情描写がみごとなくらい丁寧に描かれていて本当にすばらしい。ぜひともおすすめの作品です!  
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.111
(5pt)

時代の閉塞感を描ききった見事な名作

地方都市を舞台とし、どこにでもいそうな平凡な人々を主人公にインタビュー形式で物語りは進行する。「悪人」という題名からは、ややはずれてしまう気がするが、時代の閉塞感を見事に描ききっている。昭和という高度成長時代やバブル期には決して成立し得ない、平成の10年以降に初めて成立しえる物語である。すべてを時代のせいにするわけではないが、まったく明かりの見えない時代だからこそ、この作品は、より大きなリアリティを読み手に感じさせるのではないか。奥田英朗の「最悪」や桐野夏生の「OUT」とちょっと似た感じがしないではないが、非常にいい小説である。『悪人』という題名には、いろんな意見があるだろうし、誰が一番の悪人なのかは諸説あるだろう。ただ、小泉政権以降の時代の閉塞感を見事に描いた小説として、後世に残る作品である。映画化されるようだが、「時代の閉塞感」だけはきっちりと描いてもらいたい。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.110
(5pt)

これがあの『パークライフ』の?

いやー、信じられない。これがあの「パークライフ」という薄っぺらな小説を書いた吉田修一?「悪人」の評判は知っていたが、あの「パークライフ」を書いた奴だろと放っていたのだが、文庫化されたのを機に購入。まるで別人が書いた小説。「パークライフ」を読んで、どうせすぐ消える作家と思った不明を恥じるほかない。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.109
(4pt)

4人、みんな悪人!

誰が一番悪い、こいつが一番悪人だって決めつめられないもどかしさに悶え苦しむミステリー。当初は、圭吾と裕一を巻き込んだ佳乃の独りよがりな三角関係演出劇と思いきや、光代が出てくる辺りから俄然、ドラマは変な方向に進んでしまう。エセ三角関係の段階では、これまた独りよがりなお坊ちゃま、西南学院大学生・圭吾の理不尽な行動に「人間としてあかんやろ」「そりゃ、ないで」と非難することができよう。彼の非常識な行動に憤慨することには、誰しもが抵抗がないはずだ。なぜ、釈放されてしまうのか、傷害罪がつくんじゃないか、裁判ではどうなるんだ? 作者は、実母の愛情が受けられなかった裕一の歪んだ性格にこの殺人事件の原因を求めているような気がしないでもない。実際最終章では、そう読める・・・・・。 被害者の両親の心情、加害者の祖母の心情、その他脇役陣の個性溢れる描き方が秀逸で、こりゃ映画化されても面白いものになりそう。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.108
(4pt)

構成は素晴らしい

少々、演劇的なところがあって、場面展開がめまぐるしく変わるので、そういうのを嫌いな人には合わないかもしれません。ただ読み慣れてくると、次はあの場面が来るといいと思うと、そのシーンに移ります。悪人というタイトルから、悪人は誰なんだと考えながら読んで、いざ読み終わると、いったい誰が真の悪人なのか判らなくなります。『こいつが悪人だ』と思っても、冷静になって考えれば、誰しもの中に潜在的に潜んでる部分がたまたま出ただけだとも思いますしね。誰もが悪いと思う反面、それは因果応報だしなと。個人的には、クライマックスには釈然としない部分があり、この星数になりました。クライマックスより前の部分は、どんでん返しの連続した物語で次から次へとページをだったんですが、最後は文章の裏を読者に想像させる…読者に委ね過ぎると感じたので終わり方は釈然としませんでした。誤解を招くといけないので付け加えますが、物語の展開、人間の心理描写は素晴らしいと思いました。他の方も仰ってるように、私も2日間で読み終えました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.107
(5pt)

本心と時間差

この本の評価が低い人は、ラスト10ページの重要性を全く認識していない人ということになるだろう。人間が「悪」になることは、実はとても簡単なことであるし、それが倫理や道徳と反するにしろ、真にそいつが「自由」であるというところに「悪」に対する甘美な憧れの現れがある。そして、「自由」とは時間に対しても自由ということである。ただ今を生きるしかない我々にとって、「自由」でありさえすれば、もしかしたら、人は、何をしてもかまわないのかもしれない。人は未来を見据えたときに、はじめて自由ではなくなるのかもしれない。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.106
(5pt)

読むものの魂を揺さぶる、吉田修一の会心作

’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第8位、「このミステリーがすごい!」国内編第17位にランクインした芥川賞作家・吉田修一の問題作。 2002年1月6日、長崎市郊外に住む若い土木作業員の清水祐一が、福岡市内に暮らす短大卒21才の保険外交員の石橋佳乃を絞殺し、その死体を遺棄した容疑で長崎県警に逮捕された。この記述からこの小説は始まる。いったいふたりの間に何があったのか、何が問題だったのか。 物語は時間をさかのぼり、鳥瞰的な視点で始まる。被害者と加害者、それぞれの家族や友人、会社の同僚や出会い系サイトとで知り合った男たちや風俗店の女と、さまざまな人物に次々とズームインし、彼らの口を借りてドキュメンタリーのように、重層的に事件の背景が語られ、全体像を立体的に見せてゆく。 不器用で己れの感情すらうまく人に伝えられない男がなぜ殺人を犯す<悪人>になったのか。嘘で糊塗することで己れを繕ってきた女はなぜ殺されなければならなかったのか。さまざまな登場人物の肉声の中に、その答えがあるのだろうか。私は物語の後半で祐一と一緒に逃避行する馬込光代の姿に素直に感動した。<幸せ>とは何か。<悪人>とは何か。 本書は、吉田修一が抜群のストーリーテラーぶりを発揮した、読むものの魂を揺さぶる会心作である。
悪人(下) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(下) (朝日文庫)より
4022645245
No.105
(5pt)

読むものの魂を揺さぶる、吉田修一の会心作

’07年、「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門第8位、「このミステリーがすごい!」国内編第17位にランクインした芥川賞作家・吉田修一の問題作。 2002年1月6日、長崎市郊外に住む若い土木作業員の清水祐一が、福岡市内に暮らす短大卒21才の保険外交員の石橋佳乃を絞殺し、その死体を遺棄した容疑で長崎県警に逮捕された。この記述からこの小説は始まる。いったいふたりの間に何があったのか、何が問題だったのか。 物語は時間をさかのぼり、鳥瞰的な視点で始まる。被害者と加害者、それぞれの家族や友人、会社の同僚や出会い系サイトとで知り合った男たちや風俗店の女と、さまざまな人物に次々とズームインし、彼らの口を借りてドキュメンタリーのように、重層的に事件の背景が語られ、全体像を立体的に見せてゆく。 不器用で己れの感情すらうまく人に伝えられない男がなぜ殺人を犯す<悪人>になったのか。嘘で糊塗することで己れを繕ってきた女はなぜ殺されなければならなかったのか。さまざまな登場人物の肉声の中に、その答えがあるのだろうか。私は物語の後半で祐一と一緒に逃避行する馬込光代の姿に素直に感動した。<幸せ>とは何か。<悪人>とは何か。 本書は、吉田修一が抜群のストーリーテラーぶりを発揮した、読むものの魂を揺さぶる会心作である。
悪人(上) (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: 悪人(上) (朝日文庫)より
4022645237
No.104
(1pt)

高評価さっぱり分からない・・・

AMAZONだけでなく他の所でも非常に高い評価が出ていたので思わず読んでみましたが、なぜ高い評価が付くのかさっぱり???手短に言えば、ありふれた若者の鬱屈した心理が渦巻く中での出会いが産んだ悲劇…?? 人物描写が薄っぺらく各々が抱える背景もありふれすぎています。またこれが技術なのかどうなのか分かりませんが、読みながらなんとか登場人物に入り込もうと努力してるのに、次々と意味不明な場面切り替えのせいでただでさえ薄っぺらい登場人物の描写が更に薄っぺらく感じます。でも、例え文章構成を手直ししたとしても恐らく、題名負け・受賞歴負けです。ほんとうに不思議です…
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.103
(4pt)

面白いが、少々タイトル負けのような・・・

現代の若者の心の闇をとても上手く描き出した群像劇。携帯の出会い系サイトで出会った女を殺してしまった男、その男に本気で惚れて一緒に逃走する女。そして被害女性が惚れていたろくでもない男。それぞれの関わり合いから起きる悲劇、そして彼らのリアルな心情にどんどん引き込まれてあっという間に読破してしまった。殺される女性の浅はかさも手に取るように分かるし、殺す男の不甲斐なさや弱さにも読み進むうちにどんどん引き込まれる。人は誰でも心に弱い部分を持っているのだろうけど、そこを互いに触発し合う相手と出会った時、それは大きな負のエネルギーに変わり、一気に誤った方向へと転がり落ちてゆくんだな・・・といいう怖さを感じた。しかし、この犯人の男が、私にはどうしても「悪人」とは感じられず、どこでその「悪」の部分が出てくるんだろう?と期待して読み進んだので、最後には正直「なぁんだぁ・・・」とちょっとガッカリしてしまった。悪い部分よりも弱い部分のほうが際立っていたように思う。面白いけど何かちょっと足りないような、タイトル負けしてるような、そんな印象が残った。あと、九州の田舎が舞台になっているので、方言が沢山出て来ます。大分生まれの私にとっては馴染みのあるもので懐かしささえ感じるが、知らない方にとってはちょっと読みにくいと思う。が、吉田さんの文章は読み手をぐいぐい引き込んでゆく巧みなテクニックで、読み始めたらすぐに物語の世界へ入っていくことが出来る。個人的には「パレード」の方が後に残るものがあるので好みだが、しかし「今夜、何か面白いものが読みたい」という時、一晩のお供にお勧めの作品。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.102
(2pt)

なぜ評価が高いのでしょうか?

売女が殺されるべくして殺された話で、薄っぺらいことをダラダラと引き延ばしただけの内容です。場面もコロコロと変わり読みづらく、そのしつこいまでの場面変化も話に何の効果も及ぼしません。皆さんはこの本のどこが面白いのでしょうか?読みながら、ただただ首を傾げるばかりでした。相対的な評価になりますが、この程度の内容の話は、横山秀夫ならば50ページほどでもっと面白く書けるでしょう。無駄な描写が多くとも面白ければ良いのですが、何の面白みもありませんでした。方言も読みづらかったですね。普段本を読まない人が高い評価をつけているのでしょうね。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.101
(5pt)

結局誰が悪人か

切ないですねー。事件の真相が明らかになるに連れて主人公は悪人とは程遠い人物に思えてなりません。例のあの人が真の悪人に他ならないのに・・・。終始博多弁で話す主人公はお年寄り思いで朴訥としていてとても憎むべき悪人ではないので結末はとってもやりきれないです。小説とはいえ最後は心が痛くなりました。かなり厚い本ですがなんなく読めました。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.100
(5pt)

そもそも、悪人とはなんぞや

本の厚さは読むうちに忘れた。見知った地名、見知った景色。そして、人々の姿は等身大。女が男に殺された。よくある事件のひとつとして小さく報道されて終わりになるかもしれない。男女それぞれの家庭や職場の生活、周囲の人々を描くことで、小さな事件の当事者にとっての大きさを思い知らされる。これが新聞に掲載されていたのか。読み終えて、その意義を考えさせられた。法で裁く悪は、法で規定されているものに過ぎない。その意味では悪人とは犯罪者であるが、心情を踏まえた上で語られる悪を規定するのは倫理である。裁判官制度が導入された今、もしもこの事件を裁く側に回るとしたら。自分の基準を問われている気がした。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.99
(5pt)

誰が悪人で誰が悪人じゃないか

久々に真ん中ストレートに刺さった本。 まだまだ進化する作家さんだと期待してるけど、現時点では 最高傑作だと思う。 被害者の父と、加害者の祖母(母代わり)、立場は真逆なのに 2人の辛さや悲しみがリンクしていました。 描写が秀逸で、登場人物や舞台となった地方都市が自分の中で リアルに浮かび上がってくる。 追い詰められ、切羽詰った2人の逃避行はせつな過ぎて痛い。 わたしにとって特別な映画「モンスター」と通じるものがあります。 両作品とも、誰が「モンスター」で「悪人」なのか分からない、 もしかしたら誰もが「モンスター」であり「悪人」なのかも知れない・・・ と思わせるタイトルも含めて。 心をえぐられる本です。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.98
(3pt)

よくできている。よくできているからこそ・・・・ あと一歩の足りなさが気になる

確かに大変よくできた作品である。ぐいぐい引き込まれ一気に読めてしまった。寝食忘れて読み進めた小説は久しぶり。構成力・表現力・人物像の作り方・その他もろもろのテクニック・・・素晴らしい出来だと思う。でも何かひとつ、あとひとつ、決定的なものが足りない気がするのは何故だろう。外側の表現力的なことではない。読み終わった瞬間、自分の中に残ったものが・・・・・・なかった。バンバン読み進めているときのあの期待していたものが・・・なかった。確かによくできた小説だった。テクニック的には素晴らしかったし、終わり方も悪くはない、と思う。悪くはない。でもその終わり方は・・・その残し方は・・・既にどこかの誰かが使ってきたものだし、私達の心の中で、既に経験済みのものだった。この路線が好きな人が、「くーーーーーっこれだよね、これ。このツボなんすよ」という気持ちを強化したいならよい。ただ、今の私達はもう、この感覚に飽きているのではないか?この手の悲しさにも、この手の矛盾にも、この手の人間「らしさ」にも、飽きているのではないか? この手の「ゆだねられかた」にも。この題名、この題材、そして人間の業みたいなものを今の時代に表現したかったのならばもう一歩、オリジナルな「哲学」が必要だったはずだ。ゆだねるのもよい、ただ、ゆだねられた哲学に、もう一歩新しさがほしい。一定レベル以上のテクニックを持った作家だからこそ書ける、何か・・・新しい「救い」の形が、ほしい。(ああ「救い」なんて陳腐な言葉をつかってしまうような私に言われたくないとは思うが・・・)よくできた小説だからこそ内実のひと味の足りなさが際立ちすぎて残念さが残った。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.97
(4pt)

悪人は感じぬ“人の匂い”

「雪の中、増尾の足にしがみついとったお父さんの姿を見て、うまく言葉にはできんとですけど、生まれて初めて人の匂いがしたっていうか、それまで人の匂いなんて気にしたこともなかったけど、あのとき、なぜかはっきりと佳乃さんのお父さんの匂いがして」(P388)主要人物の一人である増尾の友人・鶴田がそう述懐する場面がある。鶴田は将来映画監督を目指すほどの映画好きで、「人間が泣いたり、悲しんだり、怒ったり、憎んだりする姿は、腐るほど」見てきた。だが、現代の若者らしく、生々しくリアルな関係性の中に身を置いた経験は皆無と見える。そんな彼が、佳乃の父の姿を見て「生まれて初めて人の匂いがした」。この発見は鶴田にとって、そして小説にとっても重要だと思った。人の匂いがするかどうか、人の匂いを嗅ぎ取れるかどうかが、“悪人”かどうかを測るひとつの指標とはいえないか。それは重大な事件を起こしたかどうかという物理的な問題よりもはるかに重要で本質的な問題のように思われる。増尾は無論、悪人だろう。祐一はどうか。僕はぎりぎり踏み止まっていると考えるが、果たしてどうか。ここが小説の勘所ではないか。うん、面白かった。
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X
No.96
(5pt)

戦後、自由になった日本人の「業」

著者の小説ははじめて読みましたが、その読みやすさと五感を感じる確かな文章力に、まず、驚かされました。420頁の長編にもかかわらず、登場人物から出来事まで、ほとんど無駄がない構成もすばらしい、としか表現できません。おかげで三晩連続、夜更かししてしまいました。(昼間は読書できないため。) 今日の日本を地方(九州)から切り取って見せたような内容でありながら、高齢者のフラッシュバックなどからも感じられるのは戦後、日本が豊かになり、戦争によって「命」の心配をしなくてもよくなった日本人が得た【自由】が、世代を重ねるごとに【業】となり、結果的には殺人犯となる話が自分には戦後に始まった自由であるがための【業】と歪んだ豊かさによる【業】を感じました。被爆地でもある長崎、そして、終戦後、朝鮮半島などからの引き揚げ船が多く入港した福岡市(博多)、その間にある峠が舞台となっていることに偶然性はないのかもしれないけれど、読み終わると関連性が浮かんでくるような気がします。殺人という普通ではない出来事の話でもあるのに、最後までフツーな展開が著者の非凡さと、読み手を広く想定した創作能力の高さなのでしょう。私はこの小説に、自由になりすぎた日本人の不自由な息苦しさを感じました。 ひとつだけ勘弁して欲しかったのは、登場人物の一人が某映画字幕翻訳家と同姓同名だったこと。これから著者による他の本も読みたいと考えていますが、清水俊二、高瀬鎮夫、岡枝慎二、野中重雄といった登場人物が出てきませんように。(笑)
悪人 Amazon書評・レビュー: 悪人より
402250272X