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ストックホルムの密使



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ストックホルムの密使の評価: 8.00/10点 レビュー 2件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(9pt)

二度美味しい!

太平洋戦争三部作の完結編。前二作が開戦前の物語なのに対し、本作は日本の終戦工作を巡る話である。三部作の完結編だけあって、作家の視点がさらに明確に伝わるし、筆の滑りもよく、前作からの登場人物のキャラクターが深みを増したこともあり、三本の中では一番面白かった。
前半は歴史インテリジェンス戦争話として、後半は敵中横断の冒険小説として、二冊分の楽しみを味わった。
日本の運命を決める重大な情報(米国の原爆の完成、ソ連の対日参戦)をつかんだスウェーデン駐在武官が、電文を打つだけでは途中で握り潰されることを恐れて、日本を救うため二人の密使を派遣するというのが、ストーリーの本線。当然のことながら、原爆投下、ソ連の参戦は史実として誰でも知っているのだが、それでも最後まで緊張感を持って読み通すことが出来た。これは、史実と虚構を巧みに絡ませたストーリー構成の上手さに負うところが大きく、作者の力量に感嘆するばかりである。
ストーリーの面白さ以上に心に残ったのは、文庫本巻末の解説者を始め多くの方が言及しているが、「祖国とは何か」、「国を愛するとはどういうことか」という、重い問い掛けだった。密使の二人が、国を捨てた日本人でボヘミアンのバクチ打ちと、祖国に裏切られた亡命ポーランド人情報将校という設定になっているところに、作者の視点の鋭さを感じた。
「絆」や「日本の美徳」、「頑張れ日本」が安易に絶叫されている現状を考えるとき、今こそ広く読まれるべき作品といえる。

iisan
927253Y1

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