オッド・トーマスの霊感

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種別
長編
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あらすじ

2009年03月31日 オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)

オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。彼には特異な能力があった。死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。ある日、オッドは勤務先のレストランで悪霊の取り憑いた男を見て、不吉な予感を覚える。彼は男の家を探し出して中に入るが、そこで数多の悪霊を目撃した。そして翌日に何か恐ろしいことが起きるのを知るが…巨匠が満を持して放つ最高傑作シリーズ、ついに登場。(「BOOK」データベースより)

評判

オッド・トーマスの霊感の評価:

8.00/10点 レビュー 2件。 B ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点8.00pt

オッド・トーマスの霊感の総合評価:

7.50/10点 レビュー 20件。

感想一覧

サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

全1件 1〜1 1/1ページ
No.1
(10pt)

オッド・トーマス、君に幸あれ

死者が見えるという特殊能力を持った青年オッド・トーマスの物語。

オッドは死人が訴えるメッセージを読み取り、彼らの無念の死の元凶となった犯罪者を捕まえる事を厭わない。しかし彼はそれには決して銃を使わない。
オッドは朝起きると、まず今日も生きていた事に感謝し、その日一日奉仕して今日も生き延びられる事を祈る。
これらのオッドの性格付けと見なされていた設定が後半、彼のそれまでの人生に与えた影響によるものだというのが解る。

彼の両親は離婚しており、プレイボーイの父親と美しい母親は今でも健在だ。しかし彼らは社会的常識の欠落者、というよりも利己中心で自己保身の性格が突出した人物、つまり結婚生活に全く適していない人物なのだ。
特に凄絶なのはオッドの母親だ。彼女の場合は精神的不均衡に由来するものだが、自分を守るが故に他者との係わり合いを徹底的に嫌うその性格、そしてそれにより被ったオッドのトラウマを想像すると背筋が寒くなる。子供が風邪や病気で苦しんでいるのに、その世話に関わる事で“要求される事”を嫌い、それに対応する事で自分の何かが奪われていく負担を感じる母親が、オッドの咳を止めさせるために隣りに添い寝し、一晩中銃口を彼の眼に突き付けていたというエピソードは凄まじい。
この一種作り物めいている人物設定だが、実際にいるのではないか。モンスター・ペアレンツと揶揄される自分勝手な親が蔓延る世の中、全くおかしな話ではないと思えるのがなんとも痛ましいところだが。これを筆頭に狂気の90年代と作者が常々訴えている人間の利己主義の暴走が本書でも幾度となく語られる。

このような虐げられた幼少時代を過ごしたオッドがサイコパスにもならず、ダイナーのコックとしてつつましいながら恵まれた生活を送っているのは彼を取り巻く人々の慈愛と、彼の運命の恋人ストーミー・ルウェリンの存在。
特にストーミーはオッドの精神の拠り所であり、彼のこの上もない宝物だ。このキャラクターは白眉であり、理屈っぽいところは数あるクーンツ作品で見られるヒロインの典型なのだが、彼女に対するオッドの深い愛情がそこここに配されていることで、なんとも愛らしい人物になっている。

そして開巻一番驚いたのは今まで作品に挿入されていたクーンツ自作の詩が『哀しみの書』から『歓喜の書』に変わっていたことだ。世界は哀しみに溢れ、彼の描く世界・物語は恐怖の連続であり、登場人物たちはまともに見えて実は狂気と正気の淵でギリギリの均衡を保っている。終わってみればハッピー・エンドだが、物語はほとんど救いが見られない様相を呈しており、クーンツはその絶望を悲しむ、それこそ彼の作品自体が『哀しみの書』となっているように感じられる。
それがしかし本書では『歓喜の書』となっている。この答えは最後になってようやく解ったような気がする。それについては後述しよう。

さて本書を読んで連想するのはハーレイ・オスメント演じる死者が見える少年コール・シアーが登場するM・ナイト・シャマラン監督の映画『シックス・センス』。主人公オッド・トーマスはその少年が成長した姿のようだ。死者が見えるだけでなく、その能力を使って死者の悔いを晴らす、起こりうる惨劇を防止するために行動する彼の信条はあの映画の後の少年だとしても違和感がないだろう。
ちなみに映画は99年の作品で本書は2003年の作品だから、恐らくクーンツはあの映画を念頭に置いていたのではないかと思われる。そしてそれは最後の最後で明かされる、ある事実からもその影響が強く表れている事が解る。

そしてこの2003年という年に注目したい。この頃のアメリカは哀しみが国中を覆い、死の影が誰も彼もに付き纏っていた。それは本書でも語られている2001年の同時多発テロという空前絶後の悲劇によるところが大きい。
そして本書でもショッピングモール内での銃乱射事件というテロが物語のクライマックスになっている。これが本書におけるオッドの使命なのだが、この事件でオッドは最大の不幸を経験する。
物語半ばでもしやと想像していたことであり、でもハッピー・エンドで終わるクーンツだからそれはないだろうと思っていたが、作者は敢えてそれを用意した。
ここでクーンツが本書の冒頭に『哀しみの書』ではなく『歓喜の書』を挿入したのかが私には解った。哀しみを乗越えた後に歓びが訪れる、人はその困難に打ち勝たなければならない。そしてこれこそで哀しみに打ちのめされた人々に対するクーンツからのメッセージだったのだろう。オッドはそれの具現者だというのが最後に解るのである。

しかしなんとも遣り切れない思いが募る。クーンツがこの物語に込めたメッセージは解るがやはりこの結末だけは避けて欲しかったというのが本音だ。
しかしそれが故になぜ本書がオッドによる一人称小説になっているのかもまた読後に解るのだ。それは小説的技巧のみならず、なぜ彼がこの物語を紡ぐ事を友人の作家リトル・オジーに勧められたのか、それが実にストンと心に落ちてくる。そんな多重的な構造を含め、本書は最近のクーンツ作品でも群を抜いて素晴らしく感じるのだから全く皮肉な物である。

オッド・トーマス、君に幸あれ。思わず読後、こう声を掛けたくなる作品だ。


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Amazonレビュー

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No.18
(5pt)

無事届きました

迅速な対応ありがとうございました。
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7) Amazon書評・レビュー: オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)より
4150411956
No.17
(5pt)

不思議で、なにやら爽やかな感動

登場人物達や描かれる物語環境がとても魅力的で、生き生きしてます。
思わず引き込まれて一気に読了しました。
で、激しく感動してしまいましたわ。
小説読んで、読後に感動で茫然としたのなんて久しぶりですよ、まったく。

また、訳に恵まれなかったころもあったクーンツ作品ですが、本書の訳は素晴らしい出来だと思います。
シリーズ続編も同じ訳者に担当していただきたいものです。
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7) Amazon書評・レビュー: オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)より
4150411956
No.16
(3pt)

解説は読まない方が...。

瑣末なディティールやストーリーの一部とはいえ、シリーズの他作品に対する言及がちょっと...。
完結巻なら許されるかもしれないが、
最初の巻にはそぐわない内容がある。

そんな訳で解説は読まない方がいいというか、解説部分に関しては☆ゼロ評価で。

先を行く読者として、少しでも後の読者の楽しみを奪う行為は許されるものではなく、瀬名氏と早川書房の姿勢に疑問を感じた。

作品自体はやっぱり実にクーンツらしいなぁ、という感じ。今の所普通。
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7) Amazon書評・レビュー: オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)より
4150411956
No.15
(4pt)

変な話!でも面白いから許す。

ミスター・ベストセラーことディーン・クーンツの連作シリーズの第一作。
500ページを軽く超す「長編」です。
しかしそこは老練の語り手、相変わらずのリーダビリティで気がつくとスルスルと読み終わってしまいました。
左様に読みやすい作品になってはおりますが、かと言って決して「薄い」お話にはなっていない辺りは、さすがです。

それにしても不思議なお話である。
死者との交流能力を持つ主人公、オッド・トーマスが察知した災厄の予感。
オッド自身、自分がどこへ向かうのか確信を持てぬままに近づく惨劇を防ぐためピコ・ムンドの街を駆け廻るのだが・・・。
これほどボリュームのある長編ですが舞台は南カリフォルニアの小さな街、ピコ・ムンドから一歩も外へ出ることはなく、
クライマックス以外に派手な見せ場も用意されてはおりません。
にもかかわらずきっちりと「読ませる」のだ。
多彩な登場人物に対してきちんとした色づけがなされていて、オッドとの交流を通じてそれぞれが確かな存在感を発揮しております。
それが結果的に主人公の陰影を際立たせており、これまでの作品になかったほどのリアリティと親近感を生むことに成功していると思います。
エルビス・プレスリーの幽霊と一緒にドライブをする主人公の姿にはユーモアを感じずにはいられませんがトラウマに満ちた生い立ちと
苦難に満ちた彼のこれから先を考えると同情せずにはいられません。
読者の共感を呼ぶキャラクターの創造という、簡単そうでとても難しいハードルを越えた本作のシリーズ化は当然という気もしますね。

心霊能力や幽霊も出てまいりますが「ホラー」と言うよりは不思議な運命(宿命?)を背負ったある若者の青春ストーリーとしても読むことができそうです。
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7) Amazon書評・レビュー: オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)より
4150411956
No.14
(5pt)

ヒーローとは思いませんが・・・

霊媒能力を持つ20才の青年オッド・トーマスが自分の体験を語る。
序盤は少しくどく、徐々にテンポの上がる語り口。オッドの目を通して語られる事件は、哀しいラストへ突き進む。
与えられた力に応えつつ、平凡で善良で在ろうとする青年が愛おしい。
人生は公平では無いし善人が幸せになれる訳でも無いが、それでもラスト近くの理不尽さに涙が出た。
哀しい話なのに、何故か読了感は悪くない。
ODDな物語。
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7) Amazon書評・レビュー: オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV ク 6-7)より
4150411956

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