ドラゴン・ティアーズ



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    初公開日(参考)1998年06月
    分類

    長編小説

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    ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)

    1998年06月30日 ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)

    タフでクールな女コニーと、まじめで理性的な男ハリーは、カリフォルニア警察の特別プロジェクトに携わる警官。ある日彼らが昼食をとっていた店で、突然ひとりの男が銃を乱射しはじめた。ふたりは協力して犯人を射殺、事件は終わったかのように見えた。しかし、それは悪夢の始まりだった。同じ頃、その周辺では人間離れした巨体の不気味な怪物が出没していた。その正体とは…。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

    ドラゴン・ティアーズの総合評価:7.00/10点レビュー 4件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (8pt)

    90年代の狂気は今なお続いている

    カリフォルニアの法執行機関共同特別プロジェクトに勤める警官ハリー・ライオンとコニー・ガリヴァーの二人は巡回中に立ち寄ったハンバーガー・ショップで銃を乱射する無差別殺人犯と遭遇し、混戦の末、射殺する。
    サミー・シャムローはかつてロサンジェルスの広告代理店に勤務していたが、今は無一文の浮浪者に身を落としていた。サミーは夜毎訪れる怪物“ラットマン”に怯えていた。巨躯の浮浪者の身なりをしたそいつは人智を超えた力でサミーをいたぶり、またそれに喜びを覚えていたのだ。
    ジャネット・マーコは暴力を振るう夫を殺害し、アリゾナの砂漠へ葬った後、ラグナ・ビーチで息子のダニーと野良犬ウーファーの2人と1匹で1台のダッジを塒にしたその日暮らしの浮浪生活を送っていた。そしてその家族も巨躯の警官に夜毎悩まされていた。その警官はいつも親しげに近づくが、いつもジャネットたちをいたぶろうと怪物に変形するのだった。
    一方、養護施設で暮らすジェニファーには、恐れる存在があった。それは彼女の息子だった。周りの看護婦は立派な人物だと褒め称えるが、彼女にはおぞましい存在でしかなかった。ジェニファーが両目を無くしたのも彼が原因だった。
    そしてハリーの前に1人の浮浪者が現れる。「夜明けまでにお前は死ぬ」と云い残し、爆発を起こして消えてしまう。そしてそれはハリー、そしてコニーにとって悪夢の始まりだった。

    なんともまあ、クーンツはとんでもない恐怖を考え出したものだ。
    最初は身長2メートルを超える巨大な浮浪者。そいつが忽然と現れ、抗いようの無い膂力で獲物を嬲り殺す。もちろん銃も効かない。
    その後は無数の蛇の大群。どさどさっと部屋中を埋め尽くすその有様は、想像するだに恐ろしい。
    そして手に汗握る<一時停止>のゲーム。時間の流れをものすごく緩慢にし、ハリーとコニーだけを獲物に命を賭けた鬼ごっこが始まるのである。

    今回のクーンツは怖かった。時間も停められるとあってはもうどうしようもないでしょう!!こういったアイデアはホントよく思いつくなあと感心する。
    そして90年代以降のクーンツの作品に特徴的に見られるのがこの“時間”を使った能力者が出てくること。それは今回のように実際に時間を停めるだけでなく、催眠術を使って、時間を忘れさせる恐怖、次元の歪みに入り込んで、実世界の時間軸とは違う世界を出入りする能力など、ヴァリエーションは様々だ。クーンツは時間を操る事こそが一番の恐怖であるという結論に行き着いたのかもしれない。
    あと演出の上手さも光る。いろいろあるが、今回は特に冒頭の無差別殺人鬼を捕らえるシーンでのエルヴィス・プレスリーの題名で犯人との交渉を行うシーンが面白かった。こういう遊び心が小説を彩る事をよく解っているなぁ。

    題名の“ドラゴン・ティアーズ”は中国の格言から来ている。
    「ときに人生はドラゴンの涙のように苦きもの。しかしドラゴンの涙が苦いか甘いか、それはその人の舌しだい」
    本当にこういう格言があるのかどうか寡聞にして知らないが、“ドラゴンの涙”=“人生の試練”という暗喩である。しかし“人生の試練”にしては今回はとてつもなくばかでかい試練だし、意味合いとしては苦難か。ちょっと内容とマッチしていないような気がするが。

    そして本作の影の主役が犬のウーファー。犬好きのクーンツがまさに犬の気持ちになって第一人称で語るそれは、なかなか面白い。一種、着地不可能と思われた本作がどうにか無事に着陸できたのも、このウーファーの御蔭だ。物語の設定としてはギリギリOKとしよう。

    今回の作品の底流を流れるのが“狂気の90年代”というテーマ。それはかつて悪とされていた事が今では正義ともなってしまう理不尽さのことである。恐らく訴訟大国アメリカの、「裁判は正しい者が勝つのではなく、勝った者が正しいのだ」という風潮、そして価値観が多様化した現在、誰もが自分を可愛く思い、妻、恋人、我が子や両親も自分の幸せのためには犠牲するという考えに警鐘を鳴らしている。
    本作にはコニーの口を通して信じられない犯罪―ベビーシッターの不都合で自分の誕生日パーティに行けなくなりそうな主婦が自らの子供を殺して嬉々として出かける、船乗りの妻が夫の出航を遅らせるためにわざと娘に怪我をさせる、etc―が語られるが、巻末の筆者の言葉によると全て実話だそうである。2006年の今、“狂気の90年代”はもう彼方にあるが、その狂気はまだ続いている。


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    Tetchy
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    No.3:
    (3pt)

    クーンツの定番

    「チクタク、チクタク、おまえを夜明けまでに殺す」。ハリー刑事の前に出現した”チクタクマン”は、そう言い残して土くれと化した。”チクタクマン”に友人を殺害されたハリーは、相棒のコニーとともに”チクタクマン”の追跡を開始する ・・・

    殺戮の限りをつくす不死身の”チクタクマン”に魅入られたハリーが、危機に瀕しながらも死力を尽くして立ち向かうというスーパーナチュラルなストーリー。夜明けまでの12時間というタイムリミットで、正体不明の異能者を突き止めるという怒涛のジェットコースター的展開をみせる。

    クーンツのいつものお約束の登場人物としては、個性的な美人女性刑事コニーそして、犬のウーファー。”チクタクマン”に追われる浮浪者のサミーと、ホームレスのジャネットとダニー親子が、ハリーの仲間となっていく。

    ”チクタクマン”を創造する異能者が”愛”を知らない男という設定になっていて、クーンツ定番の必ず愛が勝つは本書でも明快だ。土くれから怪人を創り出すだけでなく、時を止めることができるという究極の異能者をどのように倒すのかが見どころになっている。時が止まった世界で繰り広げられる緊迫の攻防シーンもよい。

    ハラハラドキドキや、取ってつけたようなグロテスクなシーンがあって、まさにB級SF映画の趣だ。登場人物たちが人生の意味を問い直すという横軸を、きっちり組み込んでいるのがクーンツらしい。

    「ときに人生はドラゴンの涙のごとき苦きもの、しかしドラゴンの涙が苦いか甘いか、それはその人の舌しだい」

    これがタイトルに込められた本書のテーマということだろう。破たんをみせずに荒唐無稽な話を組み立てていく技は、さすがにベストセラー作家ならではである。

    ただ、サミーと、ジャネット親子が”チクタクマン”に追われる理由が判然としなかったり、彼らが何ら活躍せずにラストを迎えるのには不満が残る。ハリーがコニーを超常現象的事件に巻き込むための物言いも説得力を欠いていて、読んでいる方が恥ずかしさすら感じてしまうし。まぁ、多少の事は目をつぶるというのが、クーンツを楽しむコツかもしれないなぁ。
    ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)より
    4102143122
    No.2:
    (5pt)

    怪物とヒーローヒロイン以外の時間が静止した世界での逃避行が圧巻

    最凶の化物の最強の能力、ザ・ワールド!時よ、止まれ!!いいぞいいぞいいぞ、おもしろいな。ゴヤの話題が出る世界一知的レベルの高いホラー。怪物とヒーローヒロイン以外の時間が静止した世界での逃避行が圧巻。元SF作家のクーンツなので、科学考証もそれなりに密度があって、知的興奮します。犬視点(犬の一人称)もあり、犬SFとしても、いいぞ、いいぞ、いいぞいいぞいいぞ、おもしろいな。
    ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)より
    4102143114
    No.1:
    (2pt)

    龍の涙は甘いか、苦いか!?

    怪力で発火能力を持ち、神出鬼没で時さえもあやつるナゾのホームレスに襲われる主人公たち。追われ、逃げながらも正体をつきとめようともがく人間たちの姿は感動的だが、この物語の不幸は〈創られた恐怖〉よりも、挿話の〈’90年代アメリカで本当にあった残虐事件簿〉の恐怖の方が数倍勝っていることだろうか。今回に限らず、現実の解決しがたい難問をフィクションに持ち込むと、文学性はともかくとして、優れたエンターテインメントにはなりえないようである。日本の村上春樹をはじめ、この現実の闇に囚われてその影響下から抜け出せぬ作家は多く、それが作品にミソをつけているとすればたいへん残念なことである。 どんな姿も持ちえる怪物が、わざわざホームレス(しかも、鼻が曲がりそうな臭気さえ伴って)の姿をとることが腑に落ちず。怪物本体はけっこうナルシストなのにな。
     ワンちゃんが大活躍するところが物語に光を与え、救いとなっているのは良かった。
    ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)より
    4102143122



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