完全無欠の名探偵



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初公開日(参考)1995年06月
分類

長編小説

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完全無欠の名探偵 (講談社文庫)

1998年05月01日 完全無欠の名探偵 (講談社文庫)

異能の名探偵が挑む謎の連鎖。 殺人の動機、不倫に隠された秘密。精緻な論理で明かされる意外な真相。 遠く離れて暮らす孫娘りんのため、大富豪がお目付け役に送り込んだ青年山吹みはる。「誰も嘘をつけないのよ、きみを前にすると」彼が短いあいづちを打つだけで、人々が勝手に記憶の糸を辿り、隠された意外な真相へと導かれる。精緻なロジックで事件が分析、推理されていく究極のアームチェア探偵新登場。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

完全無欠の名探偵の総合評価:7.75/10点レビュー 16件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

好きなんだなぁ、こういうの

バラバラ殺人事件ばかりを扱った連作短編集『解体諸因』でデビューした西澤保彦氏はその後特殊な設定の下でのミステリを多く輩出していく。それらは読者の好みを大きく二分し、賛否両論を生むようになるが、作者2作目にしてまさにその特殊設定ミステリ第1弾であるのが本書である。

本書の主人公は山吹みはる。SKGという会社の警備員をしている凡庸とした青年で特徴としては2mに届かんとする巨漢の持ち主。しかし身体は大きいが性格は至って温厚、というかちょっと鈍く、どんな女性も奇麗に見え、また敢えて喋ってはならないことも思わずポロっと喋ってしまう、社会人慣れしていない男である。

しかし彼にはある特殊能力があるのだ。それは話している相手の潜在意識を言語化させることができるのだ。

つまり簡単に云うと山吹みはると話している相手はいつしか自分の記憶の奥底に眠っていた、当時気になってはいたが、そのまま忘却の彼方へと消えてしまったとある出来事を想起させ、案に反してみはるに喋ってしまうことになるのだ。

それは彼と喋ると突然不思議な浮遊感に襲われ、たちまち立て板に水の如く、話してしまう。そして当の山吹みはる当人は相手に異変が起きていることに気付かず、単に話を聞いているだけなのだ。

さらに話し手の方はみはるに話すことで当時の違和感を思い出し、推理を巡らし、相手の隠されていた真意、もしくは当時は気付かなかった事の真相に思い至るのだ。
つまり山吹みはるが相手の話を聞いて事件を解決するわけではなく、あくまで真相に辿り着くのは話し手自身なのだ。つまり山吹みはるは話し手が抱いていながらも忘れていた不可解な出来事を再考させ、新たな結論へと導く触媒に過ぎないのだ。

作中では人は勝負において勝ちたいという願望があるのと同じく負けたいという願望も同時に抱く、それを自己放棄衝動と云い、山吹みはるはその衝動を活発化させる能力を持っていると説明されているが、私としてはもっと解りやすく解釈した。

例えば私の場合、いつもは話そうと思わなかったことを思わず話してしまうことになるのはお酒を飲んでいるときである。思わず酒杯が重なるとついつい口が、いや頭の中の引き出しに掛けていた鍵が開けられ、話し出してしまうことがよくあるが、山吹みはるはそんなお酒のような存在なのだ。

物語の本筋は白鹿毛源衛門の孫娘が高知大学を卒業してもなお高知に留まり、就職した理由を山吹みはるが探ることで、一応長編小説の体裁を取っているが、山吹みはるが遭遇する登場人物たちの抱える過去の不自然な、不可解な出来事が短編ミステリの様相を呈しており、それらが実に面白い。

それらのエピソードの数々は時に忌々しい思い出が思いもよらない善意を知り、逆に胸に仕舞っておいた良き思い出が秘められた悪意を悟らせる。
まさにネガはポジに反転し、ポジはネガに反転するのだ。

そしてこれらのエピソードは次第に蜘蛛の巣に囚われた餌食のように関係性を帯びてくる。

また山吹みはるの能力も万能ではなく、例えば話そうとしていた矢先に他人から話しかけられると意識がそちらに向いて浮遊感は雲散霧消するし、強い意志があればその力に抵抗できるようだ。

一方山吹みはるの登場するメインの物語とは別に1人の少女が登場するfragmentと題されたサブストーリーが節目節目に挿入される。それは一種幻想小説のようで、主人公の少女が慕っていた家庭教師の“彼女”がある日差し入れで持ってきたケーキの箱を開けるとハトの死骸が入っており、その日を境に少女は“彼女”に少しだけ嫌悪感を抱くようになる。そして“彼女”との関係が悪化したハトの死骸をケーキの箱に入れた犯人を捜すことを少女は決意する。

このサブストーリーを間に挟みながら、やがてメインの物語は次第にそれぞれの登場人物たちの繋がりを見せ始める。

本書は日本の本格ミステリの歴史の中でもさほど評価の高い作品ではなく、ましてや数多ある西澤作品の中でも埋没した作品である。しかし個人的には面白く読めた。

それは私がこのような複数の一見無関係と思われたエピソードが最後に一つに繋がっていく趣向のミステリが好きなことも理由の1つだ。

そう、私がこの作品を高く評価するのはデビューして2作目である西澤氏の野心的で意欲的なまでのミステリ熱の高さにあるのだ。それは明日のミステリを書こうとするミステリ好きが高じてミステリ作家になった若さがこの作品には漲っているのだ。

上に書いたように山吹みはるが遭遇する登場人物たちそれぞれのエピソードが1つのミステリとなっている。

この設定が作中のショートショートがメインの殺人事件の解くカギとなっている泡坂妻夫氏の傑作『11枚のとらんぷ』を彷彿させたのだ。

また1つ、私の偏愛ミステリが生まれた。好きなんだなぁ、こういうの。

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

完全無欠の名探偵の感想

新しい展開には違いないけど、賛否両論わかれる作品には違いない。

この手の作品はキャラ次第になるのかな~・・・


▼以下、ネタバレ感想

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mkaw11
HAAP6CBX
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.14:
(5pt)

面白い超能力

大財閥の総帥白鹿毛源衛門の孫娘りんの監視役として山吹みはるが高知の女子短大に送られる。この山吹みはるは2メートルの大男で、極めて気のいい男なのだが、相手を知らず知らずのうちに饒舌にしてしまう。喋りまくった後に自分自身で隠された真相に気付くというのだ。一種の超能力だ。この山吹みはると白鹿毛りんが、複雑に絡み合ったある事件を解決するというもの。複雑な関係も最後にはお互いにピタッとはまり込む。これにもちゃんと理由が用意してある。
作者のデビュー第2作だそうだが、結構力作だ。使われている土佐弁も面白いし、みはるの人柄がいい。シリーズにしても面白かったかもしれない。後の神麻嗣子の超能力事件簿に繋がる作品だ。
完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)より
4061818473
No.13:
(4pt)

過去、現在、未来が複雑に絡み合い、最後に真実へとたどり着く

20数年前の作品であるが、色褪せることのない西澤ファンタジーが繰り広げられる。みはるがそこにいるだけで、過去を思いだし、饒舌に喋り出す。その能力をみはる自身も理解していない。しかも、その能力をみはるに授けたのはりんであったとは、最後になるまでわからない。最後に全てが分かり、読者もスッキリすることだろう。
完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)より
4061818473
No.12:
(3pt)

デビュー作を発展させた2作目

西澤氏の2作目であり、1作目の連作趣向をさらに複雑に発展させて、その後の西澤作品の定番になるSF的ガジェットも盛り込んだ意欲作となっている。
高知が舞台で高知弁の会話文が多用されている。作品の雰囲気作りには効果をあげているが、やはりやや読みにくいのは否めない。
最初は事件らしい事件も起きず、どういう方向性の話なのかさっぱり分からないが、後半は連鎖的に事件が結び付き意外な真相が判明するデビュー作の解体諸因と同趣向の技巧派作品。
非常に凝った内容だが、煩雑過ぎてややすっきりしない読後感でもある。
個人的には初期西澤作品の中ではあまりしっくりこない作品という印象。
完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)より
4061818473
No.11:
(2pt)

煩雑すぎる

事件背景をやたらとこねくり回し過ぎていて作品としてのまとまりを感じられない。
また、事件がやたらと凄惨で解決されてもスッキリせず、犯人の中にお咎め無しの人物が居て読後感は非常に悪い。
完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)より
4061818473
No.10:
(5pt)

西澤SFミステリの隠れた名作

本作では、高知県を舞台に、幾重にも錯綜した因果と犯罪が描かれる現在パート
「SCENE1〜9」と、ヒロインが幼い頃にトラウマを負った事件の顛末とその解明が
描かれる過去パート「fragment1〜9」が交互に展開され、最終的にSF的な“世界
の謎”に繋がるという連作短編の形式が採られています。
無関係に見えた個々のエピソードが、じつは因果の糸で繋がっており、最後には
思いもしなかった巨大な絵柄が浮かび上がるという連作短編特有の面白さもさる
ことながら、本作の第一の美点は、“究極の聞き上手”とでもいうべき超能力者の
設定に尽きると思います。
超能力者・山吹みはる(純真無垢な大男)は、自ら推理することはありません。
その代わり、彼と会話をした人間は、衝動的にそれまで己の胸の内に秘めて
やりすごしてきた過去の出来事を嘘偽りなくしゃべり始め、そうしている内に、
自分がした勘違いに気づき、過去の事件の真相にたどり着いてしまいます。
こうしたキャラの設定は、作者が後期クイーン的問題にSF的解決をつけよう
と企図したものですが、そんな方法論は抜きにしても、みはるの人物造形は
チャーミングです(どことなく、亜愛一郎を彷彿とさせる)。
本作では、ヒロインのトラウマの超克がテーマとなっており、そのため、
最初からシリーズ化が想定されていないというのが何とも残念なところ。
まあ、続編は無理でも、深夜ドラマか何かで映像化すれば、マニア
以外の層にも、結構うけると思うのですが……、いかがでしょうか?
完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:完全無欠の名探偵 (講談社ノベルス)より
4061818473



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