イベリアの雷鳴
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
評判
イベリアの雷鳴の評価:
8.00/10点 レビュー 1件。 B ランク
イベリアの雷鳴の総合評価:
8.53/10点 レビュー 15件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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緊迫するイベリア半島に、一人の日系ペルー人宝石商・北都昭平の姿があった。彼もまた、日英独西が四つ巴で暗躍する事態の重要な鍵となる人物だった……。
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独ソ不可侵条約を結んだ後に、ヒトラーがポーランド侵攻へと突き進み、その結果、ドイツと英仏との間に戦端が開かれた後のヨーロッパ大陸で、スペインという国がどういう位置づけにあったかは多くの日本人読者には馴染みがないものでしょう。
しかし、スペイン近現代史にどっぷりのめりこんで政治スリラーを物してきた逢坂剛先生の面目躍如ともいえるこの一大長編(700頁教強!)を読めば、当時のイベリア半島を巡る地政学的駆け引きが実によくわかります。
ドイツのポーランド侵攻のきっかけも、ポーランド兵が国教を越えてドイツの小市にあるラジオ局に侵入し、ドイツを罵倒する挑発放送をおこなったことにあると記されます。しかしどうやらこの侵入ポーランド兵は、同国軍の制服を調達したドイツ兵による偽装工作だったのではないかとの説が披露されます。
またポーランド国内でドイツ系少数派が弾圧されていることを口実にドイツが侵攻したというのですから、今年(2022年)勃発したロシアによるウクライナ侵攻と重なる事態が80年以上も前に起こっていたことが想起され、歴史の繰り返しを思わずにいられません。
さらには、イギリスは不干渉協定を盾にスペイン共和国政府を見殺しにしていたことや、フランコ反乱軍政権をアメリカがいち早く承認して石油や農産物の輸出入でスペインを支援していたこと、ドイツのオランダ侵攻計画には最終的にイギリスへの攻撃発進基地を確保する狙いがあったこと、仏ペタン政権がスペインを仲介者としてドイツとの休戦にこぎつけたのはペタンがかつてスペイン駐在大使だった縁があること、などの史実が物語が進む中で説明されていき、歴史を知ることの妙を大いに味わえます。
そしてなんといっても物語の――そして史実としても――重要な鍵になるのは、ジブラルタルです。スペイン継承戦争によって1704年以来、200年以上もイギリス領となった半島の先端部分は地中海と太平洋とを結ぶ重要な拠点です。ここを抑えた国がヨーロッパの命運を握るといっても過言ではない戦時下で、ここを取られまいとするイギリスと、ここをスペインの許可と支援のもと攻め落としたいと考えるドイツとの間で、フランコ独裁スペインは大いに揺れていたのです。
ドイツがフランス国境からスペインを一気に南下して、ジブラルタルに向かうという軍事計画が論議されますが、実はフランスとスペインでは鉄道の軌道幅が異なるので、フランスからジブラルタルまで一気に通過するわけにはいかないという豆知識も披露されます。
そのドイツとスペインの綱引きの間に登場するのが日系ペルー人・北都昭平です。この鵺(ぬえ)のような男が、何を理由にマドリードに滞在しているのか。その実態も目的も霞がかかった奥に隠れていて、読者にはなかなか判然としません。彼に絡むのはスペイン貴族のロマニジョス伯爵夫人や、貧しい葉巻売りの少女ペネロペ、保守系ABC紙の記者ハイメなど個性豊かな登場人物たちです。
やがて物語はスペインとの国境沿いにあるフランスの町アンダイ(エンダヤ)における、フランコとヒトラーの首脳会談へとクライマックスを迎えます。エンダヤ首脳会談という重大な史実の影に、この小説が紡ぐ物語があった――かもしれないという虚実ないまぜの巨編に私は大いにうなり、堪能させられました。
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*619頁:1940年、エンダヤ駅に列車で到着するフランコを迎える際、ドイツの軍楽隊が「スペイン国歌《リエゴ讃歌》を演奏し始め」たとの記述があります。しかし《リエゴ讃歌》は1939年に瓦解した共和国政府時代のスペインの国歌ですから、その共和国政府を倒したフランコに敬意を表するために演奏するのは理屈に合わないように思いますが、これは史実なのでしょうか。
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