聖週間
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ドイツ南部の田舎警察の妙ちきりんなコンビ「ヴァルナー&クロイトナー」シリーズの第三弾。新たな殺人事件をきっかけに解決したはずの事件に隠されていた秘密を解明していく、警察ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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2009年のクリスマスの朝、人気女優カタリーナ・ミルルートが、母屋から離れて建つ元家畜小屋で娘レーニの射殺体を発見する。犯人として出頭したのは、一緒に暮らしている義弟のヴォルフガングだった。 そして4月、復活祭前の聖週間に配送車の荷室から、元女優ハナ・ローヴェルクの遺体が発見される。第一発見者は地元警察のクロイトナー上級巡査だ。 ハナとミルルート家の間には浅からぬ縁があった。さらにこの二人と関わりがあったルーマニア人女性ソフィア・ポペスクが行方不明になっている事実が判明する…… ----------------------- ドイツ南部のバイエルン州ミースバッハ刑事警察署の上級巡査クロイトナーと主席警部ヴァルナーが怪事件の捜査にあたる警察小説《Wallner & Kreuthner》シリーズの第三弾です。『 咆哮 』、『 羊の頭 』と同じく、またしてもクロイトナーが遺体の第一発見者となって、事件が大きく転がり始めます。 クロイトナーとヴァルナーの二人は、通常の警察バディとは大きく異なり、手を携えて捜査に当たる仲間同士というコンビではありません。というのも、クロイトナー上級巡査は制服外勤組である「保安警察(SchuPo)」、そしてヴァルナー主席警部は私服刑事の犯罪捜査部門「刑事警察(KriPo)」と、所属が違います。また一癖も二癖もあるはみ出しもの的存在のクロイトナーと、厄介な祖父の面倒を見ながら謹厳実直に捜査にあたるヴァルナーとでは、その性格は水と油。さはさりながら、クロイトナーが、かなり無鉄砲なやり口ではあるものの、ヴァルナーの私生活にかかわる案件に、奇妙に手を差し伸べるところがあって憎めません。 さて、事件の行方は二転三転。しかも、読者を欺き、映像化が困難な形で、物語が緊迫感をどんどん高めていくところは、前二作と同じです。その点では確かに読ませます。ドイツ語圏のミステリーを数多く訳してきた酒寄進一氏の優れた訳文にも助けられ、400頁を超える長編もなんのその、一気に読み終えることができます。 ドイツにまつわる情報もあちこちに散りばめられていて、ドイツ語圏文化に強い関心を持つ私の心もくすぐられます。 被害者のハナがドイツ系ロシア人でその血縁者はカザフスタンに住んでいること。ヴァルナーの祖父マンフレートが口ずさむのはハインツ・リューマンのヒット曲「どんなに乙にすました女も俺にかかればいちころさ(Ich brech’ die Herzen der stolzesten Frau’n)」であること。ドイツの謝肉祭のハイライトとなる日を「バラの月曜日(Rosenmontag)」と呼ぶこと。ツィムトシュテルン(Zimtstern)というクリスマスの星型クッキーや、ビーネンシュティッヒ(Bienenstich)というアーモンドをトッピングしたイーストケーキがあること。 とはいえ、食い足りなさが残ったのも事実です。 描かれている怪異事件と「聖週間」という舞台設定との間に連関性は特段みられません。復活祭にまつわる仕掛けがされている様子はないのです。また、被害者とその家族に対して肯定的な感情移入をする余地は見いだせず、事件の性格はまったくもって後味の悪いものです。 そして事件の背景に、一般読者にとって卑近な社会問題や今日的課題といったものが感じられない点も、私がこの小説をあまり評価できない理由です。同じドイツ語圏作家では、フェルディナント・フォン・シーラッハやネレ・ノイハウスのほうが、ミステリー小説を使って今という時代を切り取ってみせるという気概が感じられて、私の好みとするところです。 . | ||||
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「咆哮」(2021/1月)「羊の頭」(2021/9月)に続く「ヴァルナー&クロイトナー」シリーズの新しい翻訳「聖週間」(アンドレアス・フェーア 小学館文庫)を読み終えました。 聖木曜日。またもや死体を見つけてしまうクロイトナー。そのいきさつが相変わらず破天荒です。殺されたのはかつて女優でもあったハナ・ローヴェルク。そして、その事件は、2009年12月に起きたレーニ・ミルルート殺人事件に繋がる様相を見せることになります。事件は、クリスマス・イブ、女優、カタリーナ・ミルルートの家族が集合し、麗しい団欒になるはずだった夜に起因しています。尚且つ、その事件の犯人は訴追され、事件は解決されたはずでした。ハナは何故殺害されたのか?という<現在>とレーニ・ミルルート殺人事件の本当の犯人は誰なのか?という<過去>が謎として残され、物語は絡まり合うように進行してきます。 いつものようにダメ警官、クロイトナーによって掻き回される事件。しかしながら、彼の道を外れた(笑)活躍によって、事件解決の道筋が見えてきます。一方、恋人・ヴェーラに寄り添いながら、これまた破天荒な祖父・マンフレートに振り回されるヴァルナーの冷静な判断とその「コントロール・フリーク」ぶりが今回もこのミステリに輝きを与えているように思えます。 また、ここでも女優・カタリーナを通して(海外ミステリで語られることが多い)巨大な母性に基づく<家族>の悪しき姿が描かれています。直近で言えば、「嵐の地平」(C・J・ボックス)。ケイツ一家の女家長・ブレンダの姿を想起したりもしました。 総じて、パズラーとしてはどうでしょうか?悪戯に複雑にし過ぎているように思えるストーリー展開がそれなりの<意外性>に辿り着くことになりますが、前二作に比較すると少し物足りなく感じました。ヴァルナーによる謎解きは、分析的で納得がいくものでしたが。 | ||||
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