ライノクス殺人事件
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さる保険会社に多額の金が送られてきてという結末が発端でやがて・・・というお話 普通なら最後に置くべき結末を発端に置いて、という実験的手法で描かれた本格ミステリ。書かれたのは1930年とのことで、クリスティの「ゼロ時間へ」(1944年)にも影響を与えたかもしれない実験的な作品。更に途中なんども著者から読者に解説が挿入されるところはカーの「読者よ欺かれることなかれ」(1939年)にも影響を与えたかもしれない小品ながらも侮れない作品。この著者は他にも実験的な作品を数多く残したということで、まだ黎明期の英ミステリ界でミステリの枠を拡げようとしたと思われる尖鋭的な人だったらしく、その著作も時に失敗作だったり、時代とともに古びたものもあるらしいが絶対に無視してはならない存在だと思います。この作品も小品なれど、前記のように英ミステリ界には重要作だったと思しき作品で本格ミステリに興味のある人には読んで損はないと思います。 構成の妙が光る逸品。機会があったらどうぞ。 | ||||
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都筑道夫が述べたように、P・マクドナルドは趣向に淫した作家であった。 本書も独特の趣向の作品である。 さて、それが作品の内容と面白さという点で機能しているかというと、いまひとつとしか言えない。 確かに、解決にいたるロジックは面白いし、都筑の言う「モダン・ミステリ」の作家だろう。 しかし、クラシック・ホラーとモダン・ホラーとを比べた場合に、どちらがより恐怖感を味わえるかといったら、その恐怖の種類が違うことを考慮にいれても、私はクラシカルなほうに軍配を上げる。 ミステリの場合も、モダンが必ずしもミステリとしての面白さ、すなわち魅力的な謎とそのきれいな解決、ということにならないのである。 ミステリにおける魅力的な謎の占めるファクターは大きいのだ。 だから、島田荘司のミステリは面白い。 読んでいる時は、間違いなく面白い。 しかし、本作の読後に残るものは、ストーリーではなくその趣向であろう。 傑作といわれるミステリは、すべてそのストーリーが記憶に残るものであることを考えると、本作を手放しで称賛しにくいところである。 しかし、この趣向はまちがいなく記憶に残る。 本作の最大の欠点は、ストーリーよりもその趣向が強く印象づけられてしまう、ということであろう。 | ||||
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Philip MacDonaldの『Rynox: an Exercise in Crime』(1930年)の新訳。 日本では1957年に六興出版部から長谷川修二による翻訳が出ているが、長らく入手困難となっていた。 フィリップ・マクドナルドは『鑢』や『ゲスリン最後の事件』で知られるイギリスのミステリ作家。日本でも評価は高いものの、あまり訳されてこなかった。 本書は、ノン・シリーズでゲスリンも出てこない。表題の「ライノクス」というのは、事件の起こる会社の名前である。 どんでん返しもあるし、細かなアイデアが効いた、完成度の高い作品。ただ、発表当時は意外性のあるトリックだったのだろうが、いまの読者には通用しないかも知れない。わりと早い段階で真相に気付いてしまう人も少なくないだろう。 しかし、後半部分はロマンスをからめた痛快なコンゲームになっており、充分に楽しめた。 結末もロマンチックで、非常に後味の良い作品だった。 | ||||
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本書は昔から古書の世界では非常に高値で流通している超稀少本の一冊で、これまで恐らく自分が生きている内には読めないだろうなと思っていましたので、書店で新刊コーナーに無造作に並んでいるのを見て一瞬あ然とし、暫くの間信じられませんでした。著者には名探偵ゲスリン大佐という有名なシリーズがありますが、本書は珍しいノン・シリーズで通読すると探偵不在である必然性が深く納得出来ます。著者は英国本格ミステリー界随一の技巧派で、本書でも冒頭に結末、最後に発端という普通とは逆の章を配置し、読者を煙に巻いて鮮やかな効果を上げています。また、芝居のような場面割り・中盤の書簡や報告書のみで構成された章・各章の終わりに著者によるヒントが挿入される等の工夫が為されています。物語の展開としては、警察は常識的な線でしか捜査せず探偵もいないとあって一体どうなるのかと心配させられつつ、最後に一気に謎が解明されます。手掛りについては物質面の細かい部分よりも動機面に於いて心情的に深く肯けると思います。それから本書の良さは、全体的に深刻でなく非常にユーモラスに書かれている点です。例えば銀行の客の老婆が意味不明の言葉を喋って行員が笑いをこらえる場面は可笑しく、被害者の息子アンソニー・婚約者で美人のピーター嬢を始めとする大半の登場人物が明るく生き生きして元気一杯で犯罪の暗い翳りが全く見られません。犯罪の解明部分も爽快で微笑ましく、唯一結びの部分では一瞬涙を誘われます。今回本書を読み終えまして、時代を超えて鑑賞に耐え得る見事な出来の傑作だと思いました。これまでは一部の好事家のみに愛されていた作品でしたが、今回多くの人に読まれるよう再刊されたのは、とても喜ばしい出来事だと思います。こういう埋もれた作品はまだまだ数多くありますので、出版社様には大いに頑張って頂いて、これからも幻の名作を掘り起こして読ませて頂けるように願います。 | ||||
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