(短編集)

カーテンが降りて



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初公開日(参考)1988年05月
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レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)

1988年05月01日 レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)

6歳のある日、少年の身に何が起こったのか?家を出て戻るまでの数時間、まるでカーテンが降りたように記憶が空白なのだ。母親も周囲も、少年は知らない《男》につれだされたのだという。それから12年後、思い出の場所を訪れた男が見るものは?―「カーテンが降りて」。子供と母親、夫と妻、恋人同士、女友達、肉親同士、そして人間とペット…様々の関係に生じる愛憎の齟齬が生む残酷な悲喜劇を描きだし、レンデル・タッチを湛能させる傑作集。アメリカ探偵作家クラブ最優秀短篇賞受賞の表題作ほか10篇を収録。(「BOOK」データベースより)




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カーテンが降りての総合評価:7.80/10点レビュー 5件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

私たちの隣にいる人たちの狂気

レンデル特有の悪意が詰まった短編集。

冒頭の表題作はミステリというよりも、ホラーにも似た1編。
因果応報の物語。本編でアメリカ探偵作家クラブ最優秀短編賞を受賞したとのことだが、候補作のレベルが低かったのか?

続く「誰がそんなことを」は親友が妻を殺した経緯を夫が語る話。本編で怖いのは語り部である主人公の真意が解らないこと。そして淡々とした語り口では主人公の嫉妬心が全く解らない。従ってそれが奇妙な怖さを与えている。

「悪い心臓」は、解雇した部下から夕食の誘いを受けた社長の一夜の物語。
解雇した社員からいくら執拗に招待を受けるとはいえ、果たして受けるものだろうかという日本人ならば抱く疑問はさておき、本書はその居心地の悪さが終始語られる。
妙にぎこちなく進んで盛り上がりに欠ける会話。話題が全て部下の解雇に繋がる等、おおよそその場には居合わせたくないシチュエーションだ。レンデルらしい実に意地の悪いお話だ。

今でいう確認恐怖症の女性を描いた「用心の過ぎた女」。
レンデルお得意の、何かの恐怖感、執着心に囚われている人間が他者が自身の生活圏に関わることで次第に冷静さを失っていく過程を描いた物語。
鍵をきちんと確認するのは私もよくあることだが、レンデルの描く人物は度が過ぎていてすさまじい。そんな精神障害を持つ人間が他者に対して平常心を保とうと無理をすることがすなわち破局への始まりなのだ。

奇妙な味わいを残すのが「生きうつし」だ。
二兎追う者は一兎も得ず。ゾィーに対してピーターはリザとは上手く行っていないと語り、リザに対してはゾィーと逢っていることはおくびにも出さない。そんな二重生活を続けていた中で訪れた皮肉な偶然。ホランド・パークで偶然再会したリザとゾィーは何をしゃべったのか。色んな想像が膨らむ結末である。

2人の老人を主人公に据えたのが「はえとり草」。
とにかくマールの性格の悪さが引き立つ話だ。私も社会に出て色んな人と出逢って気付かされたことがあるのだが、大体独身で30を過ぎた人はどこか子供めいた我儘なところがあるということだ(私の意見です、念のため)。柔軟性に欠け、自分の意見を通さずにはいられないという我の強さが目立つ傾向にある(あくまで私の意見です。念のため)。
マールはそんな人間の典型だ。読んでいる最中、どうしてダフネはこんな女性と友人関係を続けるのだろうかと首を傾げたが。最後の犯人はきちんと読んでいないと解らないようになっている。私はかろうじて解った。レンデルの人間観察眼が際立った1編か。

「しがみつく女」ははたまた精神障害者のお話。
愛と狂気の境界とは一体どこにあるのか。そんなことを考えさせられる1編だ。リディアという相手を愛しすぎるがために一時も離れたくないという女性が登場するのだが、通常ならばそこから結婚生活を送る夫が妻への恐怖を募らせる、と云うのがパターンだろうが、本作では主人公の彼もリディアを愛しており、彼女の希望を叶えようと仕事よりもリディアを取る生活を送る男だ。つまり半ば愛情の度合いが強すぎた男女だからこそ解る2人の間に存在するタブー。それを犯した彼が辿る行く末は実に奇妙な味わいを残す。

「酢の母」はその名の通り、ワインから酢を作り出す「酢の母」なる培養物とマーガレットとモップという2人の女の子の物語が繰り広げられる。2人の女の子が短期に滞在する別荘でモップが体験する夜中に屋敷を忍び込む影。そんな転換点が随所にあるものの、今いち吸引力に欠ける物語であった。

「コインの落ちる音」は不仲状態の夫婦の物語。
セックス嫌いの冷感症の妻に理解を示した夫が自身の性的欲求不満を解消するためにセックスフレンドがいることを告白したことで狂ってしまった夫婦と云う名の歯車。夫は理解を示さない妻に業を煮やして一刻も早い離婚を望み、恥をかかされた妻はどちらかが死ぬまで決して離婚しないという復讐を誓った。
そんな二人が夫の会社の会長の結婚式に出席するために滞在したホテルにあるコインを入れれば一定時間使用できる古いガスストーブ。
状況と小道具が見事に物語の結末に有意的に働いた1編だ。

SFかと思わせたのが「人間に近いもの」だ。
ネタバレに感想を書くが何とも味わいのある作品だ。

最後の「分裂は勝ち」は我々の生活に身近な問題を扱っている。
親の介護という誰もが直面する問題を題材に実に人間臭い卑しい考えが横溢した作品となった。自分に忙しいマージョリーは母親の世話を妹のポーリーンにこれまでように任せて今の生活を維持しようとする。そんな中に現れたポーリーンの恋人の医師。冒頭は不器量で変わり者のポーリーンが本書における異分子かと思いきや、マージョリーもまた我儘の強い人物だったことが解る。なんとも救いのない話だ。


数あるレンデルの短編集の中で日本で初めて紹介されたのが本書。
長編でも短編でも書ける作家レンデル。彼女の持ち味は人間がわずかに抱く悪意や不満といった負の感情が次第に肥大していき、あるきっかけがもとになって悲劇を招くことが非常に自然な形で読者の頭に染み込んでいくような丹念な物事の積み重ねにある。

本書でもそれは健在だが、短編と云う決められたページ数のためか扱われる内容は実に我々の生活の身の回りの出来事であることが多い。
やたらとモテる友人への嫉妬心、解雇した部下への苦手意識、潔癖症、独身生活を続けたゆえに生まれた独善的な思考、誰かに愛されていないと生きていられない女、夫婦の不仲、厭世的な人間嫌い、苦労を厭い、できれば身内に面倒を押付けたいという願望。
それらは誰もが周囲に該当する人間であり、もしくは自分の理解を超えた存在ではなく、どこかに必ずいる、ちょっと変わった人たちだ。みな何かに不満を持ちながら、それでも生きているのが現状であり、何もかもに満たされ、毎日が安定して幸せな生活を送っている人たちなどほとんどいないだろう。
従ってレンデルの作品に登場する人物は不思議なお隣さんの生活を覗き見するような趣があり、時にそれはリアルすぎて生活臭さえ感じられるほどだ。

この世に流布する物語の大半がいわゆる日常生活が非日常に転換する何かのきっかけ、すなわちトリガーを切り出した話である。
レンデルはこのトリガーが非常に自然であり、また我々の生活に身近にあるような題材、内容なので読了後なんとなくわが身の将来に起こる不安感を掻き立てられたりするのだ。

本書の原書が刊行されたのは1976年だが、収録されている作品に出てくる人物たちは21世紀の今でも不変的な存在だ。いやむしろ精神障害の種類が細分化された現在だからこそ、40年近くも前にこのような作品が書かれたことに驚く。
それまでは特徴的な性格として捉えられていた内容が現代では名前が付けられ、分類されている。特に最終話に登場する“想像上の友達”に関してはこの時代に既にそんな認識があったこと、そしてそれを小説の題材に扱っていたことに驚かされる。

本書に収録されている物語の結末は全てが数学を解くかのように割り切れるような内容ではなく、何かの余りを残してその後を想像させるものが多い。それがこの作家の、人間というものに対しての思いなのだろう。
だからこそここに出てくる人物たちが作者の掌上で操られているのではなく、自らの意志で行動しているように感じてしまう。作者はそんな彼らに事件と云うきっかけを与えているだけ。そんな風に感じてしまうほど彼らの行動や出来事の成り行きが自然なのだ。

読めば読むほどレンデルの人間観察眼の奥深さを知らされることになる。だからこそ訳出が途絶えたことが残念でならない。どの出版社でもいいのでレンデル=ヴァインの作品を再び刊行してくれることを切に願っている。


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No.4:
(2pt)

とにかく表題の作品が

一番ですね。誰でも加害者にも被害者にもなってしまう経験がありそうで、ちと怖い。あとは平均並みです。
レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)Amazon書評・レビュー:レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)より
4042541151
No.3:
(5pt)

殺意が芽生えるその一瞬、そして日常から非日常、正常から異常へのズレの始まり、偏執 サイコサスペンスの傑作集

「カーテンが降りて」。これも人間心理の不可解さというか、奥深さを感じるような。
「用心の過ぎた女 」。これも、レンデル流の、その人物の嗜好や癖が、かえって仇にという展開ですね。
そしてふとしたことから、日常から非日常、正常から異常へとズレていく描写が絶妙です。
「生きうつし 」。男性の身勝手さが特徴的な、時々、クリスティー作品にもある、オカルト色が濃い作品。
「しがみつく女 」。本当にうっとうしい、の一言につきる女性ですね。
夫から、何もかもを遠ざけてしまう、典型的なタイプというか。延々と続く、夫の終わらない憂鬱に、読者も憂鬱な読後感。
「酢の母 」。光と影のコントラスト。少年少女ののどかな日常の延長に、突如浮かび上がる、醜い大人達のドロドロとした世界。
「コインの落ちる時 」。何かこの妻も、相当どうかと思う。これじゃ、夫が疎ましさが募り、果ては憎悪すら芽生えても、したかないような。
やはりそういう、うっとうしい女を、意識的に描いたのかな。一番嫌われるやり方ですね、とっくに愛の冷めた夫への嫌がらせに、頑として離婚に応じないって。
レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)Amazon書評・レビュー:レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)より
4042541151
No.2:
(5pt)

サイコ・サスペンスの女王が災厄をこれでもかとばかりに描く無慈悲なイヤミス短編集。

20世紀後半に我が国でも大人気を獲得したサイコ・サスペンスの女王レンデルの真髄を味わえる徹底的に無慈悲なイヤミス短編集です。ミステリーですから当然ではありますが、本書に収録された11編の9割には死者が出て来まして全てがサイコ・サスペンスと呼んで良い現代社会の恐怖譚になっています。ほぼ確実と言ってよい程に最後にはろくでもない無慈悲な結末が待っていますので、気の弱い方は相当の覚悟の上でお読み下さいとご忠告致しますね。
『カーテンが降りて』6歳の時に見知らぬ男に連れ去られたのだがその瞬間の記憶を失くしていた男が大人になってから思い出の場所を再び訪れると・・・・。人間が衝動的にどんなに残酷になり得るかを実感させられますね。でもこれはまだほんの序の口で大人しい方です。『誰がそんなことを』女にだらしないプレイボーイと噂の作家と夫婦で友人になった事が思いも寄らぬ不幸を招くのだった。ああ!まさに「知らぬは○○ばかりなり」のよくある話で、気がついた時には既に手遅れの最悪の運命ですね。『悪い心臓』会社を解雇した夫婦から自宅で食事に招かれた社長の男が極度の不安に襲われ遂に・・・・。考え過ぎは体に良くなく命取りになりますから貴方もくれぐれもご用心を。『用心の過ぎた女』常に厳重な戸締りを心掛ける用心深い女が金銭面の事情から止むを得ず同性のルームメイトを受け入れるのだが・・・・。潔癖症とだらしない性格は水と油でまさかの凶運を引き寄せてしまうのですね。『生きうつし』結婚間近の恋人同士が公園でふと別のカップルと出会いその女性二人が「生きうつし」でそっくりだったのが不幸の始まりだった。この奇妙な話には誰が悪いとか言う理屈を超えたオカルト的な不吉な運命を感じてしまいますね。『はえとり草』植物をこよなく愛する女と同じマンションに越して来た旧友の女が不運にも思わぬ最悪の末路を迎える。うーん、ここまで来るとまさに悪夢としか呼びようのない強烈な残酷さですね。『しがみつく女』飛び降り自殺をしかけた女を救った男がやがて互いに愛情を抱き合い幸せに結婚するのだが・・・・。あまりの愛情過多は逆に息苦しさを生んで・・・・最後に男の本心が行動に出てしまいましたね。『酢の母』11歳の時に同じ学校の女の子同士の友達の別荘に遊びに行った折の忘れられない恐ろしい思い出。子供には全く理解できない部分で大人は醜いドラマを密かに演じていて或る日一気に沸騰し爆発するのですね。『コインの落ちる時』不仲なのに離婚できずぎくしゃくした関係の夫婦がホテルに泊まった夜に妻が夫に対し不意に殺意を抱く。この結末は偶然の悪戯ながら殺されかけた事へのお返しにもなっていて残酷な中にも少しコミカルな皮肉がありますね。『人間に近いもの』人間嫌いで犬と動物を愛する殺し屋の男が今回引き受けた仕事には難しい面があって・・・・。この物語が一番好きだという解説の小池真理子さんの気持ちが良くわかる珍しくホッと安堵できた一編ですね。『分裂は勝ち』毎日苦労しながら年老いた母の面倒を見ている独身の妹に負い目を感じる既婚の姉が、最近妹にボーイフレンドが出来たと言う噂を耳にして先行きが不安になる。この巧妙なトリックは読みながら薄々こうなるのではないかという予感が働きましたが、わかっていても心底から恐ろしく著者は幕切れにふさわしい戦慄のシナリオを用意してくれて読んでいる私もヒロインと同時に思わず悲鳴を上げて絶叫したくなりましたね。
レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)Amazon書評・レビュー:レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)より
4042541151
No.1:
(4pt)

The Fallen Curtain

犯罪の深層心理を鋭く描きつづける英国の作家、Ruth Rendelの短編集。瓜二つの人に出くわすと1年後に死亡すると噂される公園で、婚約者と同じ顔の女に出会った男、解雇した男の家に招待される上司、自殺未遂に終わった女と結婚した男、不義を働いた妻を殺したとして親友を牢獄に送り込んだ男、母親の介護を押し付けられた女のとんだ結末。どこにでも転がっているストーリーから、登場人物の心理の奥底にまでメスをあてる。そして1話ごとに読者を圧倒するどんでん返しの結末。作者の真骨頂が将に示されている1冊である。
レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)Amazon書評・レビュー:レンデル傑作集〈1〉カーテンが降りて (角川文庫)より
4042541151



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