熱病の木



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    初公開日(参考)1988年12月
    分類

    長編小説

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    熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)

    1988年12月01日 熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)

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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.2:
    (5pt)

    個人的には「メイとジューン」の、何とも愚かしく、うっとうしいながらも、哀れにも思える姉メイの姿が大変印象的

    「熱病の木 」。殺伐として荒涼とした、夫婦の心境が、怖い。レンデルって、「コインの落ちる時」もそうだけど、こういう夫婦の描写が多いような。
    「最後の審判 」。通常のミステリー要素は皆無のようなので、これはオカルトということですかね?
    「私からの贈り物」。恐ろしいですね。女性を弄んだりすると、痛い目にあうということでしょうか?
    というか、まず半狂乱になって、関係が破綻した男性に迫る女性の行動自体も、怖いけれど。
    「女を脅した男 」。これは何といっても、一見普通の社会人の男性の胸の奥に潜む、鬱屈した心理が読みどころでしょうか。
    目前の恐怖から逃れるために、更に決定的で大きな恐怖に足を踏み入れてしまうとか、この戦慄的なオチ自体は、割と他でも見るモチーフのような気がします。「毒を愛した少年 」。やはり、毒薬集めとかって、危険な趣味なんでしょうね。必ず悪用しようとする輩が。
    自らの幸せのために、子供を邪魔者に思うようになる、母親のエゴイズムというのは、良くあるテーマではありますが。
    「メイとジューン 」。一人の男性を挟んだ、姉妹の愛憎劇。とはいえ、憎悪という程、強烈な思いは、妹の方にはないとは思うが。
    これもいかにもレンデルという感じの、苦い、痛烈な話。
    それにしても、これは果たして、いつまでも妹に婚約者を奪われたことを、水に流せない姉の方が悪いのか?
    何か、この姉の心理とか、結末などが、一番腑に落ちるような感じがしました。
    それはよりにもよって、姉の恋人と結婚してしまった妹からすれば、夫も死んだことだし、もういいかげん、許してよ、という感じなのだろうが。
    確かに、読者の私とて、いつまでも詮なきことを想い続け、ここまで踏ん切りの悪い姉に対して、ここまで粘着質に、あきらめ悪く、いつまでも、結局は自分よりも妹の方を選んだような相手を想い続けないで、新しい相手でも探せば?そうすればもっと新しい人生が、いくらでもあったはずなのに、と思わないこともない。いつまでも、かつての恋人で、とうに妹の夫になってしまった彼に抱き続ける、この姉の幻想は痛々しくも、一方で愚かしくも、感じてしまう。
    しかし、私は自分が姉の立場なので、初め姉の恋人が、その妹とくっついてしまうという、この手の話は好きではないし、こういう経緯で結婚したこの妹夫婦の方の、印象が悪くなるのは確か。しかも、この妹の方が姉より美人な上に、聡明ときてはねえ。
    恋の場面でこそ、何かと自分より優れた妹に対し、唯一勝者となれたかもしれない姉メイの方に、否が応でも、同情を禁じ得ない。
    「悪魔の編み針 」。不吉な予感を孕みつつも、予想外に牧歌的な恋物語に進むと見せかけ、絶対、このまま、幸せに終わるはずがない、必ず何か、必ず、恐ろしい破局が待っているに違いないという読者の不安感を高め、やはり、ある意味、予想通りのオチでしたね。
    しかも、読後感最悪。さすがレンデル、と言うべきでしょうか。
    「絵具箱の館 」。そのまんま、ミス・マープルの、辛口なパロディーですね。
    熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)Amazon書評・レビュー:熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)より
    4042541186
    No.1:
    (5pt)

    イヤミスの味が全開の重苦しい物語の他に皮肉なユーモアも加わった円熟の傑作集です。

    イヤミス系サイコ・ミステリーの女王レンデル女史が著した本国イギリスでの円熟の第3短編集です。どうにも気が滅入るばかりの暗く重苦しいイヤミスの王道を行く作品群なのに怖い物見たさで次から次へとどんどん読み進んでしまう著者の作風ですが、本書には新傾向として読者を鮮やかに騙してみせる皮肉なユーモアも加わっていますので良い気分転換になり更に楽しめる事でしょう。尚、「カーテンが降りて」と本書「熱病の木」の角川文庫版日本語訳書が現在アマゾンさんには頁がないので止むを得ず洋書にレビューを投稿している事をお断りしておきます。
    『熱病の木』アフリカ旅行を楽しむ夫婦の心中では夫が妻の無邪気で幼児的な性質に苛立ちを感じ始めていた。常に危険な動物が徘徊する野生の環境での殺人衝動を実行に移すのはこんなにも容易なので仲が微妙なカップルは要注意ですね。『最後の審判』陰鬱な墓地で働く四人の男達の中で女好きの変人が美しい女神像を盗んでズらかろうとしたのだが・・・・。まさしく天罰が下るとはこの事ですね。『私からの贈り物』オーストラリアに旅立ち一年後に帰って来た同棲生活中の恋人の男が彼女に不意に冷たく別れを告げる。異国の地の新恋人女性が受け取る荷物は恐ろしい狂気の贈り物なのですね。『女を脅した男』妻子持ちの実直な男が田舎の夜道で見知らぬ女を怖がらせる事に快感を覚え始める。陰湿な悪戯が呼び込んだ凄まじい凶悪な殺人の実態に愕然としますね。『不幸な暗号』連続女性絞殺魔の変質者が逮捕されたが、五人目の最後の犠牲者だけはどうやら別の事情だったらしい。結局の所世間は信じたいと望む事だけを信じるのだという諦念が感じられる物語ですね。『毒を愛した少年』毒薬を作る事を趣味にして来た少年が最後まで自分の部屋に保管していた一瓶が数年後遂に不注意から大事件になりかけるのだが・・・・。遺産相続を巡る物語である程度オチの見当はつきましたが人間は欲に目がくらむとどこまでも薄情になれる生き物なのだと痛感させられましたね。『メイとジューン』妹のジューンに愛した男を奪われた姉のメイは激怒し姉妹は一時疎遠になるが、やがて男の死後やっと二人は仲直りする。このまま平和に終わらせないのが著者の流儀であまりの殺伐たる結末に心が沈みますね。『悪魔の編み針』実は暴力的な性格の看護婦アリスが患者の男性と相思相愛となり幸せに結婚したのだが・・・・。編み物の趣味を毛嫌いする男なんてちょっと信じられませんが、運命とは誠に残酷なもので粗暴な女に平穏な暮らしが一生続くはずもなかったのか、それにしても編み針が最後に果たす役割にはぞっとしましたね。『思い出のベンチ』海岸通りに並ぶ6個のベンチの最後の椅子に座るのを好む老婦人には何かの事情がありそうだった。嘗て妻の殺人容疑で裁判の末に釈放された男が寄贈した椅子を好む女は彼を愛した共犯者なのか?最後の頁を読んで思わずニヤリとさせられましたね。『絵具箱の館』絵具箱の館と自ら呼ぶ屋敷に住む八十四歳の未亡人エイヴィスは近所の浮気女が殺された事件に興味を惹かれ有名な「ミス・マープル」を気どって推理するのだった。クリスティー女史のミステリーのパロディーとも言える本編では、著者がまさかの意外な結末のオチで逆の意味で楽しませてくれますね。『タイプがちがう』連続絞殺事件が続く夜の町に出歩く事を止める母の心配を他所に小柄な男バリーは「自分はタイプがちがう」と一笑に付して今夜もまた出掛けるのだったが・・・・。本編は明らかに著者が騙しのテクニックを発揮した殺人ミステリーで、ある先入観に縛られてひたすら物語の推移を追っていた読者はどんでん返しの結末の真相にびっくり仰天される事でしょう。
    熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)Amazon書評・レビュー:熱病の木 (角川文庫 赤 541-18 レンデル傑作集 2)より
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