聖アンセルム九二三号室
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作者の長編は完読したつもりだったが、本書が抜けていた。有栖川先生の本で知った。 数十年ぶりのリベンジだ。 ホテルの一室が主役である。923号室に泊まった客の様々な人間模様が描かれる。 場所を固定して時代の移り変わりを追うというのは、ユニークな着想だ。 七章に分かれていて、最初はホテル開業の1896年6月20日から始まる。 新婚夫婦のわくわくハネムーンだが、ウールリッチだから平穏にすむわけがない。 じわじわと迫る黒い疑念が心臓を締め付ける。 兵隊と恋人の逢瀬、落ちぶれたギャングのボスの隠れ家、大恐慌で破産した投資家など時代を映す鏡のように人も風景も移り変わる。第六章のみ日付が記されていないが、これは日付そのものがオチになっているのだ。 そして最終章1957年9月30日、取り壊しの決まったホテルで最後の夜を過ごす客とは。 この結末には、首を180度捻りたくなる。なんとなく予想はできたが、主人公の発言があまりにも異様なのだ。 本書は普通小説なので謎も恐怖も出てこないが、ある意味ホラーより怖い話である。 作者はよっぽど女性が苦手だったんだなあ。同性愛者だったとか暗くて偏屈だったとか、色々な噂がある。 そんなこと作品の価値には関係ないけどね。 | ||||
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有栖川有栖さんの「鍵のかかった男」からたどり着きました。昔からのウィリアム・アイリッシュ(著者の別ペンネーム)ファンですが、この作品は未読。 有栖川さん、ありがとうございます。 *************************** ニューヨークの一角にある聖アンセルム・ホテル。 20世紀まであと一息のその開業の日から廃業前夜までの60年余のうち、最上階の923号室に泊まった客たちの、7つの夜の物語。 一般的なミステリ(パズラーや現代ミステリ風)ではもちろんなく、アイリッシュ(作者の別ペンネーム)お得意の不条理や恐怖からくるサスペンスとも 少し違うのに、なぜ「その日」(話によっては「その年・その時代」のこともありますが)なのか、そこに泊まる人たちが誰なのか、に焦点を当てると、 なぜこれがポケミス収録なのか納得。 インターネットですぐ調べられるので、アメリカ人と同じタイミングで(たぶん)「そうか!」と膝打てます。 最初の1・2編は翻訳がきつい(さすがに古めかしい)と思っていましたが、慣れると徐々に気にならなくなっていきます。時代物だしね。 どなたかのレビューで「アイリッシュ節」と仰っていた通り、感情のアップダウン、追われる人間の絶望、華やかさの裏の虚無、そして一筋の希望が入り混じった人間の感情を描くのが本当に上手な作家です。 個人的に「おお、これはミステリだ」と思ったのは、「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・の日」と題された短編。 これ、ぜひ地図を広げてお読みください。 ミステリ体質の方にはひとつだけ注意事項が。 あとがき・解説から読むのが好きな方、この本のあとがき・解説部分、一部ネタバレがあります (先に読んでしまって後悔した人間がここに)。読みたい気持ちをぐっとこらえ、本編を先にどうぞ。 この小説、白黒の往年のパラマウント映画風とか、オムニバス形式のドラマで、誰か映像化してくれないかなあ。 映像だと原作のよさがより活きそうな気がします。 | ||||
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それぞれのエピソードで主役を演じるのは、新婚夫婦、若い兵隊とそのガールフレンド、ギャングのボス、破産した男、駆け落ちした恋人たち、そして老婦人・・。 「1896年」 あくる日をその眼差しに押し包み 貴方はいってしまった 「1917年」 その狂騒の一晩 悪趣味な愛の神は親切だった 「1918年」 再会 純真さを失った世代の 気が合う伴奏者として 「1924年」 やがて来る きっと来る 心寒き最後の瞬間にそなえよ 「1929年」 誰かが言った 99回倒されても 100回目に立ち上がればよい 「・・・・年」 今はただ・・つかの間の幸福をむさぼれ 「1957年」 それで本当に幸福だったのですか 貴女の過した年月を想うとき 切なさが止まりません 彼らのドラマというコーヒー豆を、マスター・ウールリッチが絶妙の味加減で私たちに淹れてくれました。もちろん一つ一つの味は別物ですが、人生のほろ苦さという点ではどれも同じです。ちなみに私には「1929年」という味が合っていたようです。 あなたはどれがお気に召しましたか? | ||||
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数年間沈黙していたウールリッチが、母の死をきっかけに再びペンを手にして発表した長編です。基本的にはミステリではなく、19世紀末に開業したホテルが20世紀後半に廃業するまでを、人の一生になぞらえて描いた物語となっています。ウールリッチは長い間母親と一緒にホテル暮らしをしていたそうなので、その思い入れからこのような作品を書いたのでしょう。 作中には人の死も少しは出て来るのですが、人の死にまつわる謎を解いたりとか、迫り来る死から逃れようとする人の恐怖心を描くとか、そんなことは一切ありません。それでも読者の心をつかんで離さないところは全盛期の彼の作品を彷彿とさせます。そして、ラストのお涙頂戴。彼の作品には泣ける作品が多いですが、私の涙腺からもっとも多く涙を流させたのはこの作品でした。 | ||||
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