そして夜は甦る

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種別
長編
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あらすじ

1995年03月31日 そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

ルポ・ライターの失踪、怪文書、東京都知事狙撃事件…。西新宿に探偵事務所を構える沢崎が立ち向かう難事件の背後には巨大な陰謀が隠され、鮮やかなラストシーンに向って物語はスピーディに展開してゆく。レイモンド・チャンドラーに心酔する、ジャズ・ピアニストの著者が2年の歳月をかけ完成させた渾身の処女長篇。いきのいい会話と緊密なプロットで贈る、期待の本格ハードボイルド登場。--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。(「BOOK」データベースより)

評判

そして夜は甦るの評価:

6.67/10点 レビュー 6件。 B ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点6.67pt

そして夜は甦るの総合評価:

8.03/10点 レビュー 60件。

感想一覧

サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

全1件 1〜1 1/1ページ
No.1
(10pt)

受け継がれるチャンドラーの魂

デビュー作にしてこのクオリティ。この原尞氏はまさにチャンドラーの正統なる後継者だ。
物語の導入部にある大富豪更科の邸への訪問は正にチャンドラーのマーロウシリーズ第1長編の『大いなる眠り』へのオマージュそのものだ。そして冒頭と終盤に現れるあの男は『長いお別れ』のテリー・レノックスだろう。こういう舞台設定からして、チャンドラーを愛する者としては(自分のことをチャンドラリアンとまで評するほど、私はまだ判っていない)胸がくすぐられる思いがする。

さらに加えてプロットにはロスマク的家庭の悲劇も加味されている。権力に溺れゆく人々の狂った歯車がぎしぎしと音を立てて、沢崎によって一つ一つ解体されていく。
そして登場人物たち。悪友ともいうべき新宿署の錦織、「カイフ」とだけ名乗って去っていった男、渦中の更科一家はもとより、中盤以降事件の焦点となる都知事の向坂、その弟で俳優の向坂晃司。特に向坂知事はその描写からして元都知事の石原慎太郎氏をモデルにしているとしか思えない。この作品当時、まだ新宿都庁は出来ておらず、当然の如く都知事も違う。まるで原氏はこうなる事を予見していたかのようだ。

しかし正直に云えば、双子の兄弟でありながらある事情で苗字が違う仰木弁護士、失踪した佐伯を密かに慕う辰巳玲子、失踪した男の世話をしていた海部雅美などの登場頻度の少ない脇役の方が妙に印象に残った。
とどめはかつての沢崎のパートナーだった渡辺。手紙のみの登場をしなかった彼が今後シリーズにどのように関わってくるか、興味深い。

しかし何と云っても圧倒的存在感を放つのが主人公である探偵沢崎だ。その他者の侵入を容易に許さぬ姿勢、上下関係や権力者特有の主従関係など全く意に介さず、どんな相手にも自分の態度を崩さず対面する男。背伸びせず、粋がりもせず、かといって卑屈にもならない。読者の眼の前にいつの間にかあるイメージが上がっていく。
しかし、気付いたであろうか?文中、沢崎の人と成りを表した描写など一切ないことを。原は沢崎の台詞と仕草、動きだけで読者にそれぞれの沢崎像を作らせているのだ。この筆致の凄さは並々ならぬものがある。

さらに文章。チャンドラーの正統なる後継者と先に述べたが、その文章はチャンドラーの諸作に見られるような大仰な比喩が頻出するわけでもなく、きざったらしい台詞が出てくるわけでもなく、派手派手しいわけではない。しかし、この本にはノートに書き写しておきたい美文に溢れている。真似したい減らず口がある。
かつてチャンドラーを読んでいた時に駆られた、「私もこんな文章で物語が書きたい」と思わせる雰囲気がある。日常特に感慨もなく見ている風景が語る人によってこれほど印象深く描写されるのか、そう気づかされる事しばしばだった。

そしてやはり古典は読むべきである。名作ならば尚更だ。この沢崎シリーズを十二分に楽しむためにもやはりチャンドラーの諸作、少なくとも全ての長編には当たるべきだろう。そしてそうした私は正解だったと今更ながらに気付かされた。
今夜の酒はきっと美味いに違いない。

Tetchy
WHOKS60S

Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.54
(5pt)

時代を経て少し古く感じる部分はあるものの、間違いなくハードボイルトとしての傑作

読んだのは、これで3回目くらいだろうか?
こちらもだいぶ年を取り、主人公の年齢をはるかに追い越してしまった。

そのため、こうやって久々に読むと、青臭く感じるセリフもあるし、比喩や暗喩が大袈裟すぎると感じる部分もある。
しかし、これだけ練りに練られたプロット、多彩な登場人物、錯綜した人間関係、最後まで探偵の一人称で語られる展開は、まさに一級のハードボイルト作品。

この映像化作品を見てみたいものだが、この世界観を壊さずに映像化できる監督(白石監督?大友監督?)や俳優がいるだろうか?
そして夜は甦る (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) Amazon書評・レビュー: そして夜は甦る (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150019304
No.53
(5pt)

時代を経て少し古く感じる部分はあるものの、間違いなくハードボイルトとしての傑作

読んだのは、これで3回目くらいだろうか?
こちらもだいぶ年を取り、主人公の年齢をはるかに追い越してしまった。

そのため、こうやって久々に読むと、青臭く感じるセリフもあるし、比喩や暗喩が大袈裟すぎると感じる部分もある。
しかし、これだけ練りに練られたプロット、多彩な登場人物、錯綜した人間関係、最後まで探偵の一人称で語られる展開は、まさに一級のハードボイルト作品。

この映像化作品を見てみたいものだが、この世界観を壊さずに映像化できる監督(白石監督?大友監督?)や俳優がいるだろうか?
そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) Amazon書評・レビュー: そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))より
4150305013
No.52
(5pt)

とにかくセリフが素晴らしい!

とにかくセリフが素晴らしい。それに尽きる。この著者が遅筆だったのはセリフに凝りすぎたせいではないかと思ってます。
そして夜は甦る (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) Amazon書評・レビュー: そして夜は甦る (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150019304
No.51
(5pt)

とにかくセリフが素晴らしい!

とにかくセリフが素晴らしい。それに尽きる。この著者が遅筆だったのはセリフに凝りすぎたせいではないかと思ってます。
そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) Amazon書評・レビュー: そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))より
4150305013
No.50
(4pt)

「澤崎」という新しいヒーローの造形にすべてを費やした渾身の処女作に圧倒される

ハードボイルド小説において、最も重要なものとは何だろう?当方にとって、それはまず辛口のユーモアだ。たとえば、<弁護士を雇えるような身分ではないので、彼のいまの忠告を正しく理解できたかどうか自信がないのですが―要するに彼は、ぐずぐず言わずに知ってることを喋ったほうがてっとり早く金になるぞ、と言ってくれているのですか>
こういうことをどんな場面でもさらっと言えてしまうような主人公でなければ務まらない。または―、<そうだろうな>と、私は言った。<見上げなければならない人間か、見下していい人間か―あんたには二種類の人間しか存在しないからだ>
ここには苦い人間観察も含まれている。これくらいの警句もすっと出てきてほしいものだ。あるいは―<大変恐れ入りますが、ただいま旦那様は来客中ですので、お差し支えなければ―><差し支えるね。><客なんか糞喰らえだ。大事な一人娘が殺人事件に捲き込まれる恐れがあると伝えてもらいたい>―こういう杓子定規をものの見事にぶっこわす暴言も時には必要だろう。
または、<私は信頼していると言ったはずです。><それとも、皆さんの世界では、信頼という言葉は別の意味で使われますか>とまるで外人のようにトボケてみせ、言うに事欠いて、<信頼できるとは言ったが、友人だとは言いません>なんてことも平気で言う。
そして、<和洋折衷にろくなものはないがあんパンだけは例外だというのが、元パートナーの渡辺の持論だった。>というところで初めて人の名前が出てくる。もちろん引用は恣意的だが、主人公の名は「澤崎」とだけ。彼は「渡辺探偵事務所」の探偵であって、「渡辺」賢吾はその「元パートナー」というわけだ。彼は一度も小説の表面には登場することはない。それでも、澤崎との不定期の連絡を通してかろうじて繋がっていることが知れる、という関係だ。他にも25名からの人物が登場するが、主人公を含めて苗字のみの人物が7名いる。しかも、「錦織」という新宿署捜査課の警部などは、まさに“友人ではないが信頼のおける”人物だ。「橋爪」という暴力団幹部とだって随分と仲がいい。仰木、韮塚の弁護士双生児、某石原兄弟をモデルとした向坂兄弟、これにルポ・ライターや新聞記者らがからんできて政界のスキャンダルの渦中へと主人公たちを巻き込んでゆくことになるのだが、これだけ堅固に、また柔軟に造形された登場人物あってこその大法螺話ではあるだろう。いや、荒唐無稽がウリのエンタテインメントなぞでは決してない。全36章のうち、探偵の仕事は30章までで終えてしまうのだ。では、あとの6章は何のために設えられているのか?―言ってしまえば、ここからはハードボイルドには無用の謎解きの部分かも知れない。そして、ここにこそ秘められた<夜>が息づいており、その甦生してくるおぞましい姿を目の当たりにしなければならない永い永いコーダなのだろう。目を背けたい人は読まない方がいいかもしれない。それでも、ここには“未生の人”原尞が丹精込めた画龍に睛を点じたかったのだろう思いがひたひたと打ち寄せてくる。
“これ一作”、に賭ける心意気にはいささか息詰まるほどの迫力が感じられはするものの、一方では、「狼は天使の匂い」の篇中上映や、ビートルズや岡本太郎に対する嫌悪感など趣味丸出しで挑んでいるところも散見され、決して一枚岩の頑固一徹というだけでもない作風は本作全体の風通しをよくしていると思われた。
そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) Amazon書評・レビュー: そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))より
4150305013

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