死のロングウォーク



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初公開日(参考)1989年06月
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長編小説

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バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)

1989年06月30日 バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)

近未来のアメリカ。そこでは選抜された十四歳から十六歳までの少年100人を集めて毎年五月に〈ロングウォーク〉という競技が行われていた。アメリカ・カナダの国境から出発し、コース上をただひたすら南へ歩くだけという単純な競技だ。だが、歩行速度が時速四マイル以下になると警告を受け、一時間に三回以上警告を受けると射殺される。この競技にはゴールはない。最後の一人になるまで、つまり九九人が殺されるまで、昼も夜もなく競技はつづくのだ。体力と精神力の限界と闘いながら、少年たちは一人また一人と脱落し、射殺されていく。彼らは歩きながら、境遇を語り、冗談を交わし、おたがいを励ましあう。この絶望的な極限状況で最後まで生き残るのははたして誰なのか―。死と直面する少年たちの苦闘を描いた、鬼才キングの問題作、ついに登場。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

死のロングウォークの総合評価:8.10/10点レビュー 31件。Bランク


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(7pt)

ただひたすら歩くだけの物語がこれほどまでに深くなるとは…

ロングウォーク。それは全米から選抜された14~16歳の少年100人が参加する競技。
ひたすら南へ歩き続ける実にシンプルなこの競技はしかし、競技者がたった1人になるまで続けられる。歩行速度が時速4マイルを下回ると警告が発せられ、それが1時間に4回まで達すると並走する兵士たちに銃殺される。

最後の1人となった少年は賞賛され、何でも望むものが得られる。

この何ともシンプルかつ戦慄を覚えるワンアイデア物を実に400ページ弱に亘って物語として展開するキングの筆力にただただ圧倒される。

その始まりも実にシンプルでロングウォークが始まるまでの葛藤や家族とのやり取りなどは一切排除され、いきなり物語開始わずか13ページ目でロングウォークは始まる。しかも始まるまでに上に書いたような設定に関する説明は一切なく、登場人物たちの会話や独白から推察するしかない。つまり純粋に死の長距離歩行のみが物語として語られるのだ。

100人の少年による決死行。その中の1人レイモンド・ギャラティを中心に物語は進む。出身地は出発点であるメイン州であるため、通り道では彼を応援する人々で溢れている。

その彼と共にウォーキングを共にするのがピーター・マクヴリース。無駄口を叩きながら時に励まし合い、またお互いの身の内を話しながら歩を進めていく。

その他にもロングウォーク終了後はその体験を1冊の本に纏めようと出場者全ての名前を記録し、話を聞くハークネスに、終始周囲に毒をまき散らしながら疎まれるバーコヴィッチ。そしていつも一人でしんがりを歩きながらも最初の出発時以外警告を貰わず、淡々と歩き、時にギャラティたちに過去のロングウォークについて訳知り顔で語る正体不明のステビンズとが交錯し、この単純な物語に様々なエピソードを添えていく。

しかしとにかくシンプルかつ残酷なイベントだ。ひたすら歩き続けることが生存への唯一の道。しかもその間睡眠さえも許されず、用足しも歩きながら、または警告覚悟で極力最小限の時間ロスで行わなければならない。

そんな極限状態での行脚でレイモンドはしばしば意識朦朧となり、過去の思い出が蘇る。
それは恋人ジャンとの出逢いだったり、小さい頃にいた隣人のジミーと2人で女性のヌードカレンダーをこっそり隠れてみて女の裸について語り合ったことなどが時折挟まれる。人は死ぬ前に過去を思い出すというが、この死の長距離歩行は黄泉の国への道行であるから当然なのかもしれない。

ただひたすら歩くという単純な行為は思春期の少年たちに様々な変化をもたらす。

馬鹿話からそれぞれの恋話、色んな都市伝説。思春期の少年たちが集まっては繰り返す毒にも薬にならない他愛のない話が交わされるが、やがて1人また1人と犠牲者が増え、次は我が身かと死がリアルに迫るにつれて、そして疲労困憊し、意識が白濁とし出すにつれて口数は少なくなり、意識は内面へと向かう。時にはそれは死と生について考える哲学的な思考に至りもする。

そしてどんどん人々が死んでいくに至り、彼らもリアルを悟るのだ。
ロングウォークの通知が来た時に彼らは自らが英雄に選ばれたと思い、即参加する者もいれば躊躇しながらも最終的に参加を決めた者もいる。また不参加表明のために直前になって参加意向の問い合わせが来た補欠選手もいる。

しかしそんな彼らはあくまでこれは年一回のイベントであり、最後の1人になるまでの死のレースであると解っておきながら、どこかで勝利者以外は死ぬという事実を都市伝説のように捉えていた参加者も少なくない。
しかし現実にどんどん脱落者が目の前で射殺され、脳みそが飛び散る風景が繰り返されるうちに明日は我が身かもというリアルが生まれ、変化していく。

とりわけその中でもハンク・オルソンという少年が印象的だ。
レースが始まる前の集合場所では訳知り顔でロングウォークに関する色んな話と攻略法などを述べ、更に威勢のよさを見せつけるようなパフォーマンスをしていたが、やがて足が痛み、レース継続困難になるにつけて寡黙となり、内に内に籠っていく。そしてもはや飲食をも忘れ、排便も歩きながら垂れ流し、ただただ前に向かって足を交互に出すだけの存在と化していく。

突然の腹痛に襲われ、リタイアを余儀なくされる者、足が麻痺して歩くなり、悔しさを滲ませながら銃殺される者。色んな死にざまがここには書かれている。

また印象的なのはこの生死を賭けたレースを通り沿いにギャラリーがいることだ。
時に彼らは参加者を応援し、思春期の少年たちの有り余る性欲を挑発するかのようにセクシーなポーズを取る女性もいれば、違反行為と知りながら食べ物を振る舞おうとする者、家族で朝食を食べながら参加者に手を振る者もいる。さらに彼らが口にした携帯食の入れ物をホームランボールであるかのように記念品として奪い合う者、参加者が排便するところをわざわざ凝視して写真を撮る者もいる。
死に直面した若い少年たちを前に実に牧歌的で自分本位に振る舞う人々とのこのギャップが実は現代社会の問題を皮肉に表しているかのようだ。

今目の前に死に行く人がいるのにもかかわらず、それを傍観し、または見世物として楽しむ人々こそが今の群衆だ。
テレビを通して観る戦争、その現実味の無さにテレビゲームを観ているような離隔感、リアルをリアルと感じない無神経さの怖さがここに現れている。彼らはこの残酷なレースを行う政府を批判せずに年一度のイベントとみなしている時点でもはや人の生き死にに無関心であるのだ。

一応本書はアメリカを舞台にしながらも現代のアメリカではない。裏表紙の紹介には近未来のアメリカと書かれているが、これは正解ではないだろう。地理、文化とも実在するアメリカではあるが我々の住んでいる世界とは別の次元のアメリカでの物語である。
それを裏付ける叙述としてこのロングウォークの参加取消の〆切が4月31日となっているからだ。つまり現実にはそんな日は存在しないことから本書の舞台が我々とは地続きでない世界であることが判る。
しかしここに書かれているこの奇妙な現実感は一体何なんだろうか。若い命が死に行くことを喜ぶ様は、そうまさに我が子を戦争に送り出し、それを勇気ある行動と称賛する風景に近似している。そう考えるとこの荒唐無稽な物語も単なる読み物として一蹴できない怖さがある。

シンプルゆえに考えさせられる作品。
解説によればこれを学生時代にキングは書いた実質的な処女作であるとのこと。だからこそ少年たちの心情や描写が実に瑞々しいのか。
この作品が現在絶版状態であるのが非常に惜しい。復刊を強く求めたい。


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Tetchy
WHOKS60S
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No.30:
(4pt)

裏タイトルはきっとスタンドバイミー

読み進めるうちにこんなに自分自身の気持ちが変化するとは思わなかった。
はじめはキャラクター達がただ歩くだけなので少し退屈に感じていた。次第に仲間が減りキャラクター達の体力もメンタルも極限に近づくにつれ、物語に引き込まれていったが同時に読み進めるのが辛くなった。なぜならページを繰らなければまだキャラクター達が生きてるから。
しかし、終盤に差し掛かると今度はキャラクター達の最期をしっかり見届けなければいけないと思うようになった。

周りの死は自分が生き残る可能性を高めるはずだった。参加者同士で語り合い助け合い、仲間意識が生まれていく。次第に仲間が減っていくことでの寂しさ、モチベーションの変化に胸が苦しくなった。

読後の良し悪しの捉え方は人それぞれだと思うが、それを越えた不思議な余韻が残る作品だった。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)より
4594004539
No.29:
(5pt)

絶望の中でこそ

なんというか世界観がすごい。決してハッピーな話ではなく、むしろややもすれば普通に暗い話なのだけれど、その中に一瞬のきらめきを感じた。この喩えが正解ではないかもしれないけれど、しんどい部活のしんどい練習の合間に仲間と交わす冗談みたいな。
自分は米澤穂信さんが好きでそのつながりで本書を手にとったのだけれど、夜のピクニックの恩田陸さんも、もしかしたらこれに影響受けてるのかなと思ったり(あれは確か自身の出身校の行事が元になっているのは知っているし、そもそも物語の方向性は正反対だけれど)。
不条理や絶望の中でこそ輝く友情や生命、そして圧倒的な現実。その意味では、SFだけれどすごいリアル。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)より
4594004539
No.28:
(4pt)

ヒューマンドラマ

スティーブン・キングが別名義で執筆した作品です。

これはホラーではなく、追い詰められた極限状態にある少年たちのヒューマンドラマで、結末(誰が生き残るか、という意味です)があらかじめ想像がつくにもかかわらず、ぐいぐい読ませてしまうのは流石です。

スティーブン・キングの別の一面を知りたい方、ぜひどうぞ。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)より
4594004539
No.27:
(3pt)

彼らはただ歩く。そしてリアルを悟る。

ロングウォーク。それは全米から選抜された14~16歳の少年100人が参加する競技。ひたすら南へ歩き続ける実にシンプルなこの競技はしかし、競技者がたった1人になるまで続けられる。歩行速度が時速4マイルを下回ると警告が発せられ、それが1時間に4回まで達すると並走する兵士たちに銃殺される。
最後の1人となった少年は賞賛され、何でも望むものが得られる。

この何ともシンプルかつ戦慄を覚えるワンアイデア物を実に400ページ弱に亘って物語として展開するキングの筆力にただただ圧倒される。
その始まりも実にシンプルでロングウォークが始まるまでの葛藤や家族とのやり取りなどは一切排除され、いきなり物語開始わずか13ページ目でロングウォークは始まる。しかも始まるまでに上に書いたような設定に関する説明は一切なく、登場人物たちの会話や独白から推察するしかない。つまり純粋に死の長距離歩行のみが物語として語られるのだ。

しかしとにかくシンプルかつ残酷なイベントだ。ひたすら歩き続けることが生存への唯一の道。しかもその間睡眠さえも許されず、用足しも歩きながら、または警告覚悟で極力最小限の時間ロスで行わなければならない。
ただひたすら歩くという単純な行為は思春期の少年たちに様々な変化をもたらす。
馬鹿話からそれぞれの恋話、色んな都市伝説。思春期の少年たちが集まっては繰り返す毒にも薬にならない他愛のない話が交わされるが、やがて1人また1人と犠牲者が増え、次は我が身かと死がリアルに迫るにつれて、そして疲労困憊し、意識が白濁とし出すにつれて口数は少なくなり、意識は内面へと向かう。時にはそれは死と生について考える哲学的な思考に至りもする。
そしてどんどん人々が死んでいくに至り、彼らもリアルを悟るのだ。

また印象的なのはこの生死を賭けたレースを通り沿いにギャラリーがいることだ。時に彼らは参加者を応援し、思春期の少年たちの有り余る性欲を挑発するかのようにセクシーなポーズを取る女性もいれば、違反行為と知りながら食べ物を振る舞おうとする者、家族で朝食を食べながら参加者に手を振る者もいる。さらに彼らが口にした携帯食の入れ物をホームランボールであるかのように記念品として奪い合う者、参加者が排便するところをわざわざ凝視して写真を撮る者もいる。死に直面した若い少年たちを前に実に牧歌的で自分本位に振る舞う人々とのこのギャップが実は現代社会の問題を皮肉に表しているかのようだ。
今目の前に死に行く人がいるのにもかかわらず、それを傍観し、または見世物として楽しむ人々こそが今の群衆だ。テレビを通して観る戦争、その現実味の無さにテレビゲームを観ているような離隔感、リアルをリアルと感じない無神経さの怖さがここに現れている。彼らはこの残酷なレースを行う政府を批判せずに年一度のイベントとみなしている時点でもはや人の生き死にに無関心であるのだ。

シンプルゆえに考えさせられる作品。解説によればこれを学生時代にキングは書いた実質的な処女作であるとのこと。だからこそ少年たちの心情や描写が実に瑞々しいのか。この作品が現在絶版状態であるのが非常に惜しい。復刊を強く求めたい。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)より
4594004539
No.26:
(5pt)

説明・起承転結・どんでん返し

↑のような物語を求めるならば引き返すべき。
だらだら長いとの批判も見られるが、ではこれが短篇だったら最後のカタルシスは得られなかったはずだ。
何気ない会話から少しずつ生きることと死ぬことを考え始める少年たち、苦悩や喜びや疑問が沸々とたぎっては消えていく。
決して後味のいいものではないが、かといって陰惨なだけではない青春の輝きに胸が痛む。
少佐の基盤などどうでもよい。何故ならギャラティが知ることの出来ない情報をこちらも知る必要性がないからだ。
何にでも説明や話の盛り上り(この小説に盛り上りが無いとは思わないが)、どんでん返しを求めるのはいかにも読者が過保護に慣れきっているような気がする。
キングが成熟した今は書けない(今も素晴らしい作家だが)、その時だけの熱量がある名作と言えるだろう。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)Amazon書評・レビュー:バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)より
4594004539



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