死のロングウォーク
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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ロングウォーク。それは全米から選抜された14~16歳の少年100人が参加する競技。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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読み進めるうちにこんなに自分自身の気持ちが変化するとは思わなかった。 はじめはキャラクター達がただ歩くだけなので少し退屈に感じていた。次第に仲間が減りキャラクター達の体力もメンタルも極限に近づくにつれ、物語に引き込まれていったが同時に読み進めるのが辛くなった。なぜならページを繰らなければまだキャラクター達が生きてるから。 しかし、終盤に差し掛かると今度はキャラクター達の最期をしっかり見届けなければいけないと思うようになった。 周りの死は自分が生き残る可能性を高めるはずだった。参加者同士で語り合い助け合い、仲間意識が生まれていく。次第に仲間が減っていくことでの寂しさ、モチベーションの変化に胸が苦しくなった。 読後の良し悪しの捉え方は人それぞれだと思うが、それを越えた不思議な余韻が残る作品だった。 | ||||
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なんというか世界観がすごい。決してハッピーな話ではなく、むしろややもすれば普通に暗い話なのだけれど、その中に一瞬のきらめきを感じた。この喩えが正解ではないかもしれないけれど、しんどい部活のしんどい練習の合間に仲間と交わす冗談みたいな。 自分は米澤穂信さんが好きでそのつながりで本書を手にとったのだけれど、夜のピクニックの恩田陸さんも、もしかしたらこれに影響受けてるのかなと思ったり(あれは確か自身の出身校の行事が元になっているのは知っているし、そもそも物語の方向性は正反対だけれど)。 不条理や絶望の中でこそ輝く友情や生命、そして圧倒的な現実。その意味では、SFだけれどすごいリアル。 | ||||
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スティーブン・キングが別名義で執筆した作品です。 これはホラーではなく、追い詰められた極限状態にある少年たちのヒューマンドラマで、結末(誰が生き残るか、という意味です)があらかじめ想像がつくにもかかわらず、ぐいぐい読ませてしまうのは流石です。 スティーブン・キングの別の一面を知りたい方、ぜひどうぞ。 | ||||
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ロングウォーク。それは全米から選抜された14~16歳の少年100人が参加する競技。ひたすら南へ歩き続ける実にシンプルなこの競技はしかし、競技者がたった1人になるまで続けられる。歩行速度が時速4マイルを下回ると警告が発せられ、それが1時間に4回まで達すると並走する兵士たちに銃殺される。 最後の1人となった少年は賞賛され、何でも望むものが得られる。 この何ともシンプルかつ戦慄を覚えるワンアイデア物を実に400ページ弱に亘って物語として展開するキングの筆力にただただ圧倒される。 その始まりも実にシンプルでロングウォークが始まるまでの葛藤や家族とのやり取りなどは一切排除され、いきなり物語開始わずか13ページ目でロングウォークは始まる。しかも始まるまでに上に書いたような設定に関する説明は一切なく、登場人物たちの会話や独白から推察するしかない。つまり純粋に死の長距離歩行のみが物語として語られるのだ。 しかしとにかくシンプルかつ残酷なイベントだ。ひたすら歩き続けることが生存への唯一の道。しかもその間睡眠さえも許されず、用足しも歩きながら、または警告覚悟で極力最小限の時間ロスで行わなければならない。 ただひたすら歩くという単純な行為は思春期の少年たちに様々な変化をもたらす。 馬鹿話からそれぞれの恋話、色んな都市伝説。思春期の少年たちが集まっては繰り返す毒にも薬にならない他愛のない話が交わされるが、やがて1人また1人と犠牲者が増え、次は我が身かと死がリアルに迫るにつれて、そして疲労困憊し、意識が白濁とし出すにつれて口数は少なくなり、意識は内面へと向かう。時にはそれは死と生について考える哲学的な思考に至りもする。 そしてどんどん人々が死んでいくに至り、彼らもリアルを悟るのだ。 また印象的なのはこの生死を賭けたレースを通り沿いにギャラリーがいることだ。時に彼らは参加者を応援し、思春期の少年たちの有り余る性欲を挑発するかのようにセクシーなポーズを取る女性もいれば、違反行為と知りながら食べ物を振る舞おうとする者、家族で朝食を食べながら参加者に手を振る者もいる。さらに彼らが口にした携帯食の入れ物をホームランボールであるかのように記念品として奪い合う者、参加者が排便するところをわざわざ凝視して写真を撮る者もいる。死に直面した若い少年たちを前に実に牧歌的で自分本位に振る舞う人々とのこのギャップが実は現代社会の問題を皮肉に表しているかのようだ。 今目の前に死に行く人がいるのにもかかわらず、それを傍観し、または見世物として楽しむ人々こそが今の群衆だ。テレビを通して観る戦争、その現実味の無さにテレビゲームを観ているような離隔感、リアルをリアルと感じない無神経さの怖さがここに現れている。彼らはこの残酷なレースを行う政府を批判せずに年一度のイベントとみなしている時点でもはや人の生き死にに無関心であるのだ。 シンプルゆえに考えさせられる作品。解説によればこれを学生時代にキングは書いた実質的な処女作であるとのこと。だからこそ少年たちの心情や描写が実に瑞々しいのか。この作品が現在絶版状態であるのが非常に惜しい。復刊を強く求めたい。 | ||||
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↑のような物語を求めるならば引き返すべき。 だらだら長いとの批判も見られるが、ではこれが短篇だったら最後のカタルシスは得られなかったはずだ。 何気ない会話から少しずつ生きることと死ぬことを考え始める少年たち、苦悩や喜びや疑問が沸々とたぎっては消えていく。 決して後味のいいものではないが、かといって陰惨なだけではない青春の輝きに胸が痛む。 少佐の基盤などどうでもよい。何故ならギャラティが知ることの出来ない情報をこちらも知る必要性がないからだ。 何にでも説明や話の盛り上り(この小説に盛り上りが無いとは思わないが)、どんでん返しを求めるのはいかにも読者が過保護に慣れきっているような気がする。 キングが成熟した今は書けない(今も素晴らしい作家だが)、その時だけの熱量がある名作と言えるだろう。 | ||||
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