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ランゴリアーズ



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初公開日(参考)1996年07月
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ランゴリアーズ (文春文庫―Four past midnight)

1999年06月30日 ランゴリアーズ (文春文庫―Four past midnight)

図書館警察―あの懐かしい薄闇には怖ろしいものが…。サン・ドッグ―異世界を写し出すポラロイド・カメラの怪。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

ランゴリアーズの総合評価:8.43/10点レビュー 21件。Bランク


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(7pt)

作家の潜在的な恐怖を暗喩したかのような作品2つ

キングの『恐怖の四季』に続く中編集。しかし1編の分量はその比ではなく、例えば1編目の「ランゴリアーズ」は425ページもあり、正直長編だ。
本書は“Four Past Midnight”と名付けられた中編4編を収めた1冊を2作ずつに分けて刊行された作品で本書はその1作目と2作目が収録されている。

まず本書のタイトルにもなっている「ランゴリアーズ」は国内線の中で睡眠から覚めると乗客の大半が消え失せてしまった奇怪事を扱った話だ。

飛行中の飛行機からほとんどの乗客が消え失せ、それだけでなく彼ら10人の乗客以外全米の人がいなくなった世界の中の話。作中にも出てくるが実際にあった有名な怪事件乗客含め、船員たちが恰もついさっきまで働き、また食事を用意中もしくは既に食べている途中の様相を呈して忽然と消え失せたマリー・セレスト号の事件を客船ではなく飛行機に置き換えたような作品になっている。

物語は飛行機の中からメイン州のバンゴア空港へと移るが、そこも無人の空港であることが判明する。つまりこの10人の乗客以外の人間が世界中から消え失せてしまったかのような様相を呈するが、乗客の1人ミステリ作家のロバート・ジェンキンズは空港にある物、マッチやサンドイッチやビールが全く使い物にならない、食べられない、気の抜けた飲み物になっていることから、自分たちこそが乗客の中から消え失せ、異次元の世界に行った人間たちなのだと推理する。

この10人の乗客がそれぞれ個性的で、物語の中心人物はアメリカン・プライドという航空会社のパイロットであるブライアン・エングルであり、彼をサポートするのは自称英国大使館員のニック・ホープウェルで彼は下級館員と云いながら、大きな取引のためにボストン行きを主張するクレイグ・トゥーミーをねじ伏せる敏捷さを持ち、コクピットの鍵のかかったドアを蹴り破る膂力の強さを見せ、更には暴力をも辞さない態度を示す謎めいた男だ。

その彼と恋に落ちるのは女性教師のローレル・スティーヴンスン。彼女は文通相手の男性に逢いに行くために休暇を取ってボストンへ向かっていた。彼女は異次元世界の異様な事態に陥ってる最中にニックに恋心を抱き、触れ合いたいと欲望を募らす恋に飢えた女性である。

アルバート・コスナーは天才ヴァイオリン少年で本格的に音楽を学ぶためにバークリー音楽院に向かう途中だった。彼は自分のヴァイオリンの才能が特別であると自覚しており、そしてそれが彼をあの少年よりも優れた人物であり、腕っぷしも強く、機転も利く万能少年として自らをエースと名乗っている。まあ、いわゆる中二病的キャラクターだが、要所要所で17歳の少年とは思えないほどの機転と知恵を発揮する。

その彼と恋仲になるのはヤク中の少女べサニー・シムズ。なんだかシンディ・ローパーを想起させるキャラだ。

ロバート・ジェンキンズはミステリファンの大会で講演するためにボストンに向かっていたミステリ作家で持ち前の推理力を発揮して、この10人の乗客が陥った異常現象の謎を解き明かし、取るべき行動を示唆する先導者的存在だ。

ボストンで目の手術をするために叔母と一緒に29便に乗ったダイナ・ベルマンは本書のキーを握る存在へとなる。

キングの作品では異常な状況に耐え切れず、そして己のルールに固執するがゆえに狂気に陥るキャラがよく登場するが、本作ではクレイグ・トゥーミーがそれ。彼は大銀行の重役だった父親によって幼少の頃からスパルタ教育で育てられた銀行の重役で常に完璧を求められていた。それ故に常にプレッシャーに晒され、そのプレッシャーを彼はランゴリアーズと名付け、恐れていた。

本書における登場人物はそれぞれに存在意義を備えているが、1人だけそこに加わらない人物がいる。それは終始睡眠中の黒髭の男だ。
但しこの人物もまた意味を持っているようにも思える。後ほど述べよう。

そして彼ら10人がなぜ異世界に紛れ込んだのか、そしてなぜこの10人なのかをミステリ作家のロバート・ジェンキンズが一つ一つ推察していく。

この“トワイライトゾーン”を思わせるB級ホラー的な設定だが、私はこの作品にかなり強い意味合いがあるように思えた。それについては後ほど詳しく述べていこう。

キングには作家物とも云うべき小説家を主人公にした作品があり、実はこの時期『ミザリー』と『ダーク・ハーフ』という長編を続けて出している。
2編目の「秘密の窓、秘密の庭」はこの系譜に連なる中編だ。

作家に纏わる、いわば有名税とも云うべき実害を盛り込みつつ、更にそれを狂気の領域まで発展させた作品だ。

本作に書かれているシチュエーションは作家にとってよくある弊害だろう。
ある日いきなり全くの赤の他人が訪れてきて、貴方は私の作品を盗んだ、正直にそれを世間に告白して私に賠償金を払ってほしい、なんていう輩はキングほどの有名な作家になれば現れてくるに違いない。

あくまで戯言だとあしらっていたが、その人物は自分がオリジナルを書いたと信じて疑わず、認めなければ危害を及ぼすぞと脅し、ペット殺しから放火、そして殺人にまで発展する。この狂えるフリークがエスカレートしていく様はキングの真骨頂とも云うべき作品だが、本作はそこに一味加えている。

それは本作がサイコスリラーであることだ。作家が生み出した人物が狂えるファンを生んだ『ミザリー』や独り歩きするペンネームの別人格が生まれる『ダーク・ハーフ』と双方を併せ持つ狂気が本作には盛り込まれている。

本作もまた当時のキングの創作に対する不安が露見したかのような作品のように捉えることができる。これについては後述しよう。

本書は上にも書いたようにキングの中編集“Four Past Midnight”に納められた4編の内、2編を収めた作品集。
しかしこの先に書かれた中編集“Different Seasons”が『恐怖の四季』として訳されているのに対し、どうして本書は原題のままなのかがよく解らない。直訳すれば「真夜中4分過ぎ」となるが、例えば『未明の悪夢四夜』なんて付けられなかったのだろうか。

本書に付された序文によれば『恐怖の四季』がそれまでに思いつくままに綴った作品を収録した物であったのに対し、本書はキングが不調で引退したと思われていた2年間に書かれたホラーであることが異なっている。

余談だが、映画『スタンド・バイ・ミー』が大ヒットした映画監督のロブ・ライナーは自分の設立したプロダクションを<キャッスルロック・プロダクション>と名付けたらしい。

また本書では各編に創作ノートが付けられているのも特徴だ。そこにはキングはそれぞれの物語の着想を得た時の状況やあるアイデアから物語が膨らみ、各編へと至った経緯が語られており、興味深い。

特に私が驚いたのはキングが「アイディア・ノート」を一切作っていないこと。
彼は良いアイディアはすぐには忘れられるものではないとし、自然消滅するようなアイディアはつまらないものだと思っている。そしてよいアイディアは折に触れ頭に浮かび上がり、次第に形になっていくものだと述べている。

「ランゴリアーズ」では旅客機の隔壁の亀裂を必死に抑え込んでいる女性のイメージが浮かび、ベッドに就いている時にその女性が亡霊であることに「気付き」、そこから物語が出来ていったそうだ。

このようなエピソードを読むとやっぱりキングは全身小説家とも云うべき常に物語が頭にある稀有な作家なのだと思い知らされる。

そんなキングが生み出した本書2編に私は作者の作家としての苦悩と恐怖を感じた。

本書の表題作である「ランゴリアーズ」。

読んでいる途中にある既視感を覚えたが、それは登場人物の推測によって確信に変わった。それは東野作品の『パラドックス13』が本書の本歌取りになっていることだ。
3月13日13時13分13秒に死に直面し、異次元の東京に飛ばされた登場人物たちは本作の、LA発ボストン行きの29便でたまたま睡眠に陥り、異世界のアメリカへと飛ばされた10人の乗客と同じである。

キングは本書を『恐怖の四季』とは異なり、全てホラーを書いたと述べた。しかし本書は確かに異世界に迷い込み、そこで発狂する人間が登場し、それによって殺人が起こるパニック・ホラーではあるが、結末は何とも清々しい。
つまりこの「ランゴリアーズ」という作品そのものがスランプを脱し、再びモダンホラーの世界に戻りながらも、それまでの作品とは違った風合いを持った作品を放つ新生キングの誕生の声高の宣言書のように読み取れるのだ。

そしてこの物語で唯一何もしない登場人物がいる。それは終始寝たままの黒髭の男だ。異世界に迷い込み、どうにかそこから生還しようと知恵を絞りながら、迫りくる脅威に怯える他の登場人物たちを尻目に彼はひたすら惰眠を貪る。登場人物の1人アルバート・コースナーは彼のように何の心配もなく眠れたらいいのにと羨望の眼差しを向ける。

これもキング自身の心情吐露のように思える。黒髭の男はいわば一般人だ。スランプで小説が書けなくなったキングが普通の人を見て、私も彼らみたいに悩まされない職業に就けばよかったと云っているかのように思える。

しかし一方次の「秘密の窓、秘密の庭」は逆に小説家という職業に付きまとう根源的な恐怖を描いている。
自分が紡ぎ、世に送り出した小説が実は今まで自分が読んだ他者の小説の影響を潜在意識下で受け、模倣、剽窃したのではないかという恐れだ。

スランプに陥り、新たな出発を誓いつつ、その一方で今から書くものは本当に自分のオリジナルなのだろうかと自らを苛むキングの姿が見えるようだ。

従ってある日知らない人が訪ねてきて、「あなた、私の作品、真似したでしょ!」と糾弾され、次第に狂っていくモート・レイニーの姿はキングの根源的な恐怖の象徴なのかもしれない。

またこの作品では映画化される予定の作品が昔の作品に類似していることから頓挫したエピソードが出てくるが、これもまた作者の実体験のように思われる。
人間が生まれてそれほど数えきれない数の物語が語られ、書かれてきた現在、完全なオリジナルの作品は皆無と云えるだろう。同じパターンの話を設定と語り口を変えてヴァリエーションを増やして生み出しているというのが現状だ。例えばこの「秘密の窓、秘密の庭」の話自体、今やそれほど驚かされる話ではない。しかしこの作品が映画化までされたのはそこに作家キングの影や彼自身が抱く潜在的な恐怖が滲み出ているからだ。

スティーヴン・キングという作家は『ミザリー』で数年後に訪れる自分の災厄を予言し、『ダーク・ハーフ』とこの「秘密の窓、秘密の庭」で作者の頭の中で生み出された人物が作者自身に襲い掛かる、超越した存在を示した。

この時期のキング作品には彼自身の創作意欲が放つエネルギーがもはや虚構に留まらず、現実世界にまで及んでいると感じさせられるほどの凄みがある。

さてこのもはや中編集と呼ぶには厚すぎる作品集の後半『図書館警察』ではどんなキングの懊悩が垣間見れるのだろうか。
もしくは全く異なる、純然たるホラー作品なのか。
本書で感じ取った作家の業を念頭に置きながら手に取ることにしよう。


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Tetchy
WHOKS60S
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No.20:
(4pt)

流石はキング作品!

ランゴリアーズはキングらしい作品です。途方もない設定から、読者を引きずりこむ力量は見事です。
ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))Amazon書評・レビュー:ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))より
4163633308
No.19:
(5pt)

面白そう

とても綺麗な本で感謝です。
安く買えて良かった。Kindle化されてないので単行本でチャレンジ。
ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))Amazon書評・レビュー:ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))より
4163633308
No.18:
(4pt)

ホラーというよりSFミステリー

相変わらず登場人物の描写がすごいです。今回の事件とは関係のない部分まで作りこまれており、強い読ませる力を感じます。

また本作はSFミステリーとしてもかなり論理派です。材料を集めて一歩一歩真実に迫っていく描写はパズルゲームとして説得力があります。また無人の空港の描写などSF的「絵」も非常に巧みです。
ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))Amazon書評・レビュー:ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))より
4163633308
No.17:
(5pt)

音が反響しない、時の止まった死の世界に取り残された生存者たち。元の世界に戻る方法を見つけるのだが、それは…

トワイライトゾーンの一編を思わせるスティーブン・キングの傑作ホラー。時空の裂け目を通り、異次元空間に迷い込んだアメリカン・プライド航空の旅客機。だが、眠っていた10名の乗客を残して、他の乗客は忽然と消えてしまった。一体何が起こったのか。やがてフライト中から精神に異常をきたしていたビジネスマンが脅えながら言うのだ。何でも喰らい尽くすランゴリアーズが来るぞ、と。

海外旅行のお供にどうぞ。何の変哲もない機内がアトラクションに早変わりします。視線をおとしても顔を上げても飛行機の中ですから、消灯した後の夜間業務の機内に、作中と同じ違和感と不審感を覚えるくらい、私は小説に没入できました。
スティーブン・キングの小説はデビュー当時から同じ概念と構造で書かれていますが、このランゴリアーズも例外ではありません。キャリーの頃から変わらぬキングらしさに溢れています。キングらしさはいろいろありますが、キングの宗教観から来ているもの、やはりそれが大きいのでしょうな。
ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))Amazon書評・レビュー:ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))より
4163633308
No.16:
(4pt)

ランゴリアーズ

若干汚れが目立つものの、鑑賞に十分耐える装丁です。十二分にO.K. で、すでに新刊では書店でも入手できないため、有難いサービスです。
ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))Amazon書評・レビュー:ランゴリアーズ―FOUR PAST MIDNIGHT〈1〉 (Four past midnight (1))より
4163633308



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