イプクレス・ファイル
- スパイ小説 (147)
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英国の情報部員の「わたし」にある生化学者を探す様に命令が下り・・・というお話。 この小説に関しては、韜晦で判りずらいという前評判を聞いていたので、覚悟して読みましたが、やはり判りずらい作品ではありました。主人公の「わたし」に関して殆どどういう人物かの説明もないし、扱う事件もはぐらかして記述されている様で判りずく、最後まで精読したつもりではありましたが、些かどういう話か判ったか自信のない読後感を持ちました。 それでも、文章は巧く、明晰で読み心地はよく、全体の風通しは良いので、面白く読めました。スパイ小説に新生面を切り開いた作品との事ですが、その理由としてスパイを特別な存在ではなく一労働者とした描いた、スパイの世界が迷宮でそれを特化して描いたと言われておりますが、確かに主人公は特殊なタイプではないし、話も込み入っていて、なるほど、書かれた当時は画期的な作品だったのだなと思いました。ただ、この手のスパイ・謀略小説の宿命で時間が経つと少し古くなりやすいという所は本書でも散見されたので☆はこの点数にしておりきました。そんなに古くはなってないですが。 書かれた当時は画期的だったスパイ小説。機会があったら是非。 | ||||
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おもしろかったです! これは、1929年ロンドン生まれの作家レン・デイトンが1962年頃書いた第1作で、スパイ小説です。 60年代といえば日本は高度経済成長まっただ中、であったわけですが、 そもそも日本は戦争で負けてボロボロになったところから必死で復興していたわけで、 戦後の東西冷戦体制の、スパイ状況、水面下の攻防には、ある意味かけ離れていました。 西側、米側のいうことを聞いて、逆らわず、必死に復興に専念していた、と言えると思います。 ところが、敗戦国ほどボロボロにはされなかった国々は復興はしながらも、次なる東西の戦いへと 水面下で、戦争時と同じくらい命がけの情報戦、そして核開発がどちらがどのくらい先んじるか・・・ということに しのぎを削る・・・つまり冷戦を続行していったわけですね。 そういった情報がお金になるわけですから、西側東側両方にうまく立ち回って情報を売って、 そのたびに身の安全を確約させながら、大金を得てぬくぬくしていた頭のいい人もいたのです。 その中で、洗脳、という恐ろしい手法もバンバン行われたわけで、隔離して食べ物や生活状況をどんどん奪って 精神を追い込んで・・・従わせる、自分がそう思っていると信じ込ませる・・・ということが冷戦にとって重要と思われる キーとなる人物に対して行われたこともうかがえます。 この話はイギリス人の主人公が、アメリカやソ連やその他の国々の人物たちと様々な駆け引きを行うので、 その辺の60年代のスパイや政治的駆け引きが想像されて、・・・それに引き替えあのころ日本人はのんきにも自分たちの復興で めいっぱいだったなー、ということがよくわかりました。 ところで、スパイ小説と言いますと、007がありますが、こちらのレン・デイトンや、ジョン・ル・カレなどほかの小説では、 007みたいに冒険的暴力的派手ではない、もっと、国に雇われているサラリーマンぽい、いろいろ上司との駆け引きもある 現実的スパイ、の流れ、と言われております。この主人公も事件が一件落着して、何か欲しいものがあるか、 と上司に聞かれて、出張手当や経費が8か月分もたまっているんですが・・・なんて言わなくてはならなくて、 (アメリカと違って?)イギリスの公的機関は金払いがそんなに気前よくないみたいだなー、と思いました。 しかし、そういう庶民臭いところが、小説として魅力になっています。 主人公はとにかく頭がいいです。いろいろな情報も全部はしゃべらないで、相手の反応を見ながら進んでいきます。 大体味方の側にいる人でも、スパイかもわからないわけですから、今スパイじゃなくても将来どうなるかわからないし、 総てその調子で、スパイの保険、的味方をいたるところに作りながら…進んでいくのです。 すべてが終わって、つまりあいつはこういうつもりだったのだ・・・ とわかる、想像がつく・・・というスタンスで進んでいくのです。まあ、ある意味現実の人付き合いと同じ部分があります。 そして、あんまり主義主張を全面に押し出すこともなく、4割が自分の所属している国家の女王陛下のためとしても、 6割はお給料をもらって生きていくため、みたいな感じがします。どんな上司に対しても、媚もせず、嫌味の一つも言える男なのです。 逆らわず、従わず・・・って感じ。これだけ誰も信用できないとなると、信じるのは自分だけ、だから、仕方ないと思います。 そういうところが、強くてカッコいいメンタリティなんです。 トクウェ環礁というところが出てきますが、マーシャル諸島のひとつ、とかでしょうか? 戦争中日本軍が土を掘って基地を作っていたみたいで、ものすごく良く丁寧に作られていたみたいです。 そういうことが書かれています。そこを戦後は米軍が核実験などをするのに使ったようです。 そんなことも、日本は復興、経済成長に忙しく、大して何も言いませんでした・・・アメリカのやることだったし。 この本は1965年に井上一夫氏によって邦訳、そして出版されたわけですが、 井上一夫氏というと、ホームズものの翻訳の大家延原謙氏の教え子的存在なのかな、とも思うのですが、 チーズのカマンベールをカーメンバート?とか、歌手のサラ・ボーンをサラ・ボギャーン?とか、 中国人のことはシナ人、とか、当時のいい方なんだと思いますが、ちょっと、今読むと戸惑う訳もあります。 この物語はマイケル・ケイン主演でハリー・パーマーとして映画化され、 ボンドとは違うタイプの渋いスパイとして世界ではファンが多いですが、 日本では派手なボンドしかあまり知られていないけど、 冷戦時代のむしろ過酷なスパイ時代がより身近であった諸外国の方が、 この主人公を、より身近に理解できるスパイだったんだろうなー、と思います。 沢山書いた割には解説できてませんが!本当に、才能あふれる、面白味の多いスパイ物の一作です! | ||||
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