垂直の死海
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森村氏は、これまでに自動車優先社会に疑問を呈する作品を多く書いています。本作では、大手自動車メーカーの腐食に迫っています。物語の発端となるのは、異なる二つの自動車による死亡事故です。一つは、大手自動車メーカー蔆星自動車のテストドライバーが新型車の試験運転中に操作を誤ってテストコースの壁に衝突して死亡した事故。だがこれは、車の欠陥だったのではないかと遺族が会社側に説明を求めていた。もう一つの事故は、工場用地の買収に反対していた平岡老人が、何者かの運転する自動車に轢き逃げされた死亡事故。二つとも、事故に疑惑がもたれていた。この二つの事故を解明するのに、森村氏は新しいキャラクターを登場させた。それは、損害保険会社の損害査定員(アジャスター)千野順一である。千野は、正当な保険金を支払うべく事故の査定調査を行うスペシャリストなのである。損害の状況を調査し適正な保険金額を見積もるのが主業務。また、保険金を不当に搾取するため、故意に起こした事故を見抜くのも重要な役目なのです。その千野の捜査が大手自動車メーカーの不正を暴いてしまうのだから面白い。千野は、平岡老人の轢き逃げ事故の状況を聞き込んでいたところ、平岡老人は、殺されたのだ、と言う穏やかでない話を聞き込んだ。それによると、大手自動車メーカー蔆星自動車は、量産に伴う設備拡張のため大規模な新工場の建設に迫られていた。一か所で広大な面積を確保し、労働力や原材料の入手に適したうえ、完成車を船に積み込み搬出できる環境を求めていた。だが、そんな都合の良い土地は、なかなか無かった。ところが、蔆星自動車は、本社から指呼の距離にある干潟に目を付けた。埋め立ててしまえば平坦な土地となり、工場用地としては、最適である。しかし、この干潟には、所有権があったのだ。ノリ、カキ、エビの養殖地としての所有権である。山林原野に入って薪を切ったり、家畜の餌草を刈り取ったりする入会権と同様のものである。地主は、約2500人いた。地主も先祖伝来の歴史的な所有権を簡単に手放すはずが無かった。一人一人と買収交渉を進めていたのでは、埒が明かない。そこで、蔆星自動車は、政治家の力を利用して、法を変えてしまうのである。先ず、その干潟を工業整備特別地域に指定した。そして、今まで干潟と呼ばれていた地域を海と解釈の変更をしてしまった。工業整備特別地域に指定されれば、地元の発展と地域の開発のために所有権を放棄せねばならなかった。さらに、干潟は、海と変更されてしまった。海上には、所有権は認められていない。従って、会社側は、干潟の権利は消失していると言うのだ。この事に、猛反発していたのが平岡老人であったので、見せしめのために殺されたと囁かれていたのである。千野によってこれらの事が暴かれていく。テストドライバーの死は、車の欠陥を隠蔽するための会社側の責任逃れであり、干潟の土地搾取は、詐欺にも等しいのである。 | ||||
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某大手自動車会社に、巨悪が渦巻いている臭いがぷんぷんする。 それは、会社の利益のためなら、殺人を含む、手段を選ばぬ姿勢が見え隠れする。 しかし、こんな事が、一般人の目にも見え隠れするなんていうのも腑に落ちない。 もし、こんな悪が明るみになると、巨大自動車会社の信用は、地に墜ちる。 この真相を暴くべく立ち上がるのが、某損害保険会社の査定員だ。 複数の殺人被害者と複数の容疑者相互の間には、複雑な相関関係があって面白い。 森村作品の中に、警察と並行して、民間人が事件を追うものがいくつかある。 この作品も、正にそれであり、警察や探偵ではなく、一民間人が事件を追う方が親近感を覚える。 つまり、娯楽性の高い、社会派推理小説だ。 全体のまとまりも良く、多くの森村作品の中でも、質が高い方だ。 十分に堪能出来た。 | ||||
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