■スポンサードリンク
egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数147件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
絶妙な構成。狙って作っているのか、勢いで書き上げたらこうなったのか。
文章構造に味がある怪作ミステリ。 本屋の新刊コーナーで表紙と帯を読んで衝動買いした本書でしたが、現代ミステリではなく、実は1945年発表の古い作品である事に驚きます。今でも普通に楽しめます。 語り手による事件の再構成で進むストーリーは時系列がバラバラ。あの時こうだった。そう言えばもっと前はこうだったっけ。と言った具合。 違和感のある構成は叙述トリックでも仕掛けているのか?と思いたくなるのですが、読んで行くうちに、あっこれ、話が整っていないだけかも。。と感じる始末。 ですが、この構成が絶妙な混乱と錯覚を生み出して、スリラー小説がミステリになってしまっているのが面白い。 200P台でサクッと読める古典ミステリ。読後、全体像がわかると、あれもこれもと必要な設定要素である事がわかり、伏線やミスリードが狙って書いているわけではなくて、そういえば普通に書いてあったな……。ほんと普通に、、、構成が奇妙過ぎて見逃した。と、独特の文体にやられました。 話は読みやすく、舞台も小規模の山中の出来事であり、把握しやすいように地図の挿絵が含まれていて丁寧な作りです。 ストーリーや仕掛けではなく、文章に価値がある作品。 好みは人それぞれですが、他にない個性的な一品を感じる意味として手に取るのはアリでしょう。なかなか面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
久々に強烈なの来た!面白い。と思ったら、世間の評判がよろしくなくて温度差を感じた1冊(汗)
壊れっぷりが凄く良くて、刺激や毒のある構成が好みでした。 世の中、期待するものと内容の差が激しくてがっかりしている印象なので、どんな本なのか少しガイドします。 ネタバレを避けると要点は下記2つ。 ・超コテコテな孤島のミステリが舞台 ・事件シーンはスプラッター色が強い(グロい) あらすじにある『本格ミステリ』に期待してやってくるものを強烈な刺激で返り討ちにする作品です。 著者の本は本書が初めてなのですが、作品傾向でグロさが1つのウリでもある模様なので、そこが苦手な人は嫌な気持ちになる事でしょう。 グロいのも刺激、そして緊張感の中でミステリがあるなら好みかも。という人にはアリかもしれません。 本書で特徴的な演出の1つは『透明標本』。ネットで物を見てなんとも言えない気持ち。 骨格を染色した標本で、その神秘的というか背徳的な芸術を感じます。 その透明標本の博物館がある孤島が舞台。 見学会に集まった男女9名。 迎えのボートは明日の朝。 閉じ込められた孤島の屋敷内で、首だけ発見された殺人事件が発生する。 誰がどうやって?胴体はどこ?疑心暗鬼にかられる中、偶然メンバーの中に名探偵がいる事がわかり、事件の捜査を名探偵に"させる"。 うん。させるんです。人間臭さや人の醜い所を描きます。「名探偵解いてよ。」と人任せな流れ。後々効いてきます。 館の雰囲気も新鮮。透明標本に覆われ、室内は赤く染めれられている。 この不気味な空気感がとても読みやすく感じるので、嫌なんだけどなんか不思議な雰囲気を描くのは著者の持ち味なのかもしれません。 どういう展開になるのかはネタバレなので言えませんが、 冒頭に書いた通り、本格ミステリを期待した人をホラー色で蹴散らす狂騒っぷり。 でもちゃんと伏線があり、ミステリとして筋が通る話なので、面白く楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
これは好きな部類。90年代の新本格系のミステリを感じました。細かい矛盾は気にせず、閉ざされた空間で、探偵がいて、密室トリック、消失トリックなどの犯罪が行なわれて誰が犯人?という作品が好きなら当たります。この手のコテコテ作品が今の世は減ったので嬉しいです。
ゲームダンガンロンパのスピンオフ作品ですが、ダンガンロンパ自体は知らないでも問題ないです。 ただ前作を読んでないと、登場人物や犯罪者・探偵図書館などの設定が分かり辛い為、前作は読んだ方がよいです。 予め読者へ通知される本事件の主の題材は、『密室トリック』『消失トリック』『現金10億円』。 閉ざされたホテルに集められた10名にそれぞれ1億円づつ配布。 夕方にオークションが開催され、一番現金を積んだ者がその日の探偵権を獲得。 夜は各自部屋に待機しなければならず、犯人と探偵権を持つものが自由に行動できる。 犯人は夜に犯行を遂行する。探偵権を持つ者は殺されない。 デスゲーム作品のペナルティなどルールがある特殊設定、探偵権を得るためのオークションの心理戦、従来のミステリの密室・消失トリックなどなど、かなり面白い要素が豊富でした。 そして、それらがバラバラなエンタメ要素ではなく、上手く関連して事件を構成しているのが見事です。個々は見慣れていても使い方の複合技がとても巧妙です。 ゲームをしているのでより一層ですが、霧切の家庭や意外な一面を見せる素顔も魅力的でした。 ミステリ以外にも霧切&五月雨のペア探偵物語としても面白いですし、犯罪被害者救済委員会や探偵図書館の今後の展開も気になります。 続編が楽しみな作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
読後の率直な感想は、バカバカしい(笑)。そして初期のメフィスト賞を思い出すキワモノ。
新しい刺激としては満足。心が広くミステリを読み慣れている人向け。万人に薦められないけど、理解ある人へは薦めてみたくなるそんな作品。だけど理解ある人が分からない(苦笑)読んだ人いますか?と悶々とする作品。 タイトルからネタ本なんだけど読んだ後はネタを突き抜けた巧妙さがうかがえます。 ミステリとコミカルが上手く合わさっており、読んでいて楽しかった。没ネタになりそうなアイディアを世に出したメフィスト賞にも拍手。新たな刺激に出会えました。 当初は、あんまり気にしていなかった本なのですが、タイトルの特殊性からネットでの話題が目に入る。ネタバレされる前に読んでおこうと思って手に取りました。何も知らずに読めて良かったです。 冒頭に読者への挑戦があり、ちゃんとミステリが読みたい!って人向けに、孤島のクローズド・サークルを用意して密室殺人事件も起きる。 ミステリの中に1発ネタを盛り込んだ奇作ですね。 読み返すと、あれもこれもとネタが巧妙で素晴らしく感じます。 ネタとミステリがちゃんと関連しているのが見事でとても楽しい作品でした。 なんとなく「かまいたちの夜」の裏シナリオのような登場人物達のコミカル+ミステリは個人的にツボです。 好みが非常に分かれると思う作品。 ネットやAmazon書評などネタバレが増えてきているので、ネタ本も楽しめる方は調べず読書が良いと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
読後、ついに念願の作品を完成させたんだな……。と感慨深くなりました。
物語の面白さについては正直好みとは違うのですが、歴史に刻まれる仕掛けの1つを作品に残した点で評価です。 著者言葉にある、 『すべての文章、いや、すべての言葉が伏線になっているミステリー』 このコンセプトを実現させる為にどんな方法をどう表現して物語に組み込んだらよいのか。その1つの解答が本書です。 作者初めての方の場合は、読んでもさっぱりかもしれないので、 導入のしやすさ、わかり易さという点で『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を手に取ると良いと思います。 私は著者の作品は『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』から入った口ですが、その作品以前である5年以上前から、幾度となく作者の言葉で、作中すべてが伏線になっているミステリーが理想でそれを作りたい。という想いを読んできました。著者の写真や、参考文献まで伏線にした病的な作品も生まれていますが、『本』である事自体が絶対的な要素。電子書籍では表現できない、本と言う作品を作るという事の想いはとても感銘を受けたものです。 本書で使われている題材と仕掛けの選び方は見事に調和されていますし、過去作の『五色沼』『不可能楽園』では仕掛けを施す為に読み辛くなってしまった点が、本書では改善され質も上がっています。 ついに完成したんだな……と、感動しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
これは面白かった。斬新で知的好奇心をくすぐられました。法医昆虫学を扱ったミステリ。
科学捜査系の小説で、焼死体を解剖すると中の内臓は荒らされ、異様なウジの塊が見つかる――。 前半の導入から虫達のウネウネと気持ち悪い雰囲気を醸し出して敬遠されそうですが、この虫が何故こういう成長を遂げているのか?現場の虫の生態系に変化がないか?など、虫を基点に推理を進めていくのが斬新で、気持ち悪いよりも虫から導かれる科学捜査の流れに興味津々で楽しめました。 また、虫の気持ち悪い雰囲気を払拭するかの如く、捜査依頼された昆虫学者が底抜けに明るい性格の女性に設定されているのも良いです。 虫が大好きで生態系を楽しく解説してくれたり、おもむろに網で虫を採集しだすわと、変人ぷりも活き活きしてます。警察が、うげーっこの人は住んでる世界が違う!というやり取りがユーモア溢れて楽しめました。 TVドラマでも楽しめそうだなーと思いましたが、虫の映像がちょっとNGか...。 類似作品が思い浮かばない斬新な小説で面白かった。次作も楽しみ。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
横須賀米軍基地の内側と外側が舞台の本格ミステリ。
日本でいながらアメリカの法律が適用される米軍基地の特殊な舞台。 基地の内側で発見された惨殺死体と基地の外側で発見された大量の血痕の関連性の謎から始まる『基地の密室』という問題が新鮮でした。 基地の内側と外側、事件現場はどちらなのか?被害者or犯人はどうやって出入りしたのか? 密室殺人でのテーマが基地の規模で行われている面白さがあり、さらに法律の違いから、基地の内側の米軍と外側の日本警察とで情報共有の制限が生まれ、今ある手がかりで事件を推理するロジカルな面も楽しめます。 本書を読む前は、警察小説のサスペンス的な本なのかと思っていたのですが、上記の密室問題。手がかりを得るための推理考察。最後は関係者を集めての推理披露の解決編。などなど、好きな様式の本格ミステリを味わえました。 また、作品の中に組み込まれているテーマや話題など無駄なく関連していたり、手がかりの散りばめ方が綺麗で読み直すと発見もある。かなり整ってます。 雑誌のランキングからは外れている作品なのですが、見落とされて読まれていないのでは?と思う気がするぐらい、よく出来ている作品だと思います。 好き嫌い分かれそうな要素もありますが、とてもよかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
日本の高齢化社会、介護問題を改めて突きつけられ、なんとも言えない気持ちになりました。
ミステリ要素は弱め。ただ、ミステリの形式を借りた社会派小説としては一級品です。 扱われている伏線も社会的なテーマの為に存在していると感じました。 裁判にかけられた犯人の供述から始まる冒頭。 犯人が行なった犯罪は、在宅介護に苦しむ家庭を探し出し、老体を自然死に見せかけて毒殺して周った事。 殺人=罪で悪い事だという人間的な感情がありますが、介護に苦しんだ家庭にとっては地獄の日々が終わり、救われた気持ちも芽生える事から、殺人が必ず悪ではない状況が生まれている問題を読者に投げかけます。 正義の立場である検事をキリスト教徒とし、度々現れる教えの扱いが凄い。 黄金律である、 『人にしてもらいたいと思う事は何でも、あなた方も人にしなさい』 この言葉の意味を本書の介護においてみた時、介護の苦しみを終わらせてほしいという希望を叶えた犯人の行動は正しかったのか?道徳的に考えさせられます。キリスト教徒の検事の葛藤が何とも言えませんでした。 犯人、キリスト教の検事、介護会社の社員、現場の介護スタッフ…。それぞれの視点から描く高齢化社会の問題。お金が無ければ安全地帯である老人ホームの施設に入るのも難しい。また介護者達の時間、金銭的、精神的なストレスなど、今は身に覚えなくても将来自分が高齢になった時、社会や家族はどうなるのか。とても考えさせられました。 誰が犯人なのか?と言ったミステリの下地はありますが、それを考える暇がない程、この本書の掲げているテーマは深いもの。 読後将来について不安を感じる後味は辛いですが、一読の価値はある作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
2作目も満足。シリーズが楽しみになりました。
前作ファンの期待に答えるロジカルな推理が健在。前作は1本の傘。今作はモップとバケツの手がかりから真相を導き出していく思考錯誤は楽しいです。 警察が高校生に事件捜査を頼ったり、アニメオタクな探偵など、読者を選ぶ要素がありますが、私は金田一少年の事件簿系統の学園かつ本格物はとても好物なのでハマります。 11人の容疑者から犯人を特定していく流れについても、前作同様に推理の過程が丁寧。 ○○だから、数人一気に除外という荒削りな消去法はなく、1人1人丁寧に論理的に除外されていきます。 犯人が絞り込まれていく過程は読んでいて大興奮でした。 ただ正直な所、事件やトリックなど特出して印象に残るものではありませんでした。また、分単位で事件を検証する所に、そんなに正確な時間をみんな意識して行動しないよなぁ、と感じたり、本当にこれが唯一の解なのか?と思えたりとするのですが、 そんな細かい事は気にせず、なんか推理している様子が単純に楽しいと思える作品なのが好みです。 2作目だから水車館をもじった水族館についても、言葉だけではなく、ちゃんと水族館ならではの事件・動機であり、とても考えられていて面白かったです。 また、製本の見返しや、しおりひもも水族館ぽく青に染めてあり、色々とこだわりを感じました。 次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
|
||||
---|---|---|---|---|
過去作より、『花窗玻璃』での読者に与える文学表現や『ジークフリートの剣』を読んだ時の印象を融合して継承したような作品でした。作りが巧いです。
物語は将来を見出せない学生が単位取得を目的に高齢者向けのお弁当配達のボランティアを始め、そこで知り合ったおばあちゃんの過去に触れていく。 介護問題、戦争話など、高齢者と若者の関わりも描いており、要所要所で社会への訴えを感じたりしていましたが、雰囲気はユーモアが多く楽しいのが良かったです。 この方の本は、小説の作品として意味があるのが素晴らしく感動します。 映画を見てストーリーが良かった。という感想だけなら、それは映画じゃなくてもよいと思いますが、 この本は本だから受ける感じ方を操作されていて、文章を紡ぐ作家の凄さを感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
マンションを軸に、そこに住む者、関わる者の交差に謎を散りばめているのが面白いです。
上下左右の隣人がどんな人か分からない。人との関わり方が減った現代のマンション住民の模様を巧みに活用しています。 例えば、 ・上の階から聞こえてくる子供の騒音に苦情を申し出た所、幼児虐待疑惑の母親に遭遇。『子供を静かにさせる』と言ったあと、確かに足音はなくなった。騒音の悩みはなくなったが、子供はあれからどうなってしまったのか気が気でない・・・。 ・高齢のおばあちゃんを最近見かけない。部屋にいるのか。そういえば最近家から変な匂いがする気がする・・・。 と言ったマンション住民間で起きる疑惑の物語。 隣人との干渉、騒音問題、年金不正受給、高齢化社会、etc...。 社会的なテーマを持ちつつ、それでいて結末は予想外な方向へ展開するのでミステリとして面白いです。 著者の持ち味である、話の隠す所、見せる所の作り方がうまい。何が起きているのか気になって読めてしまいます。 さらに雰囲気もライトでテーマが圧し掛からず、読みやすかったのが良かったです。 こんなにも問題を抱えているマンションはどうなのよ。と言うのは気にせず、喜劇を見る感じて楽しみました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
警察小説、3億円事件。社会的で硬質漂うので、あらすじを読んだ印象では好みに合わない感じでした。ですが、評判で気になって読んだ所・・・当たりです。これは食わず嫌い本でした。
自殺とされた事件が殺人の可能性をおびて、時効寸前の前日に調査を再開。関係者を集めて過去を聞きだし真相を探っていく。 時効寸前というタイムリミットと、警察内の雰囲気がとても緊迫感をだしています。 容疑者達から過去の物語を聞いていくのですが、何が起きていたのか分らないもどかしさも重なって、ミステリの謎が気になる。という好奇心ではなく、真相がわからない事による『焦り』の雰囲気が巧かったです。 謎や伏線に至るミステリの面白さに、警察小説の雰囲気や人間模様などうまく絡んでおり、警察小説も悪くないと思わせる作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
いやはや。今回も楽しませて頂きました。この方の作品凄いです。
推理物のミステリとは違う小説ですが、『知るとは何か?』をミステリの謎と言うより哲学的に問いかけるSFよりな作品です。 堅物な作風だと頭が痛くなるような専門用語や論述をライトノベルの作風を使ってとても読みやすくしているのは毎回凄い所。 テーマの感じさせ方もうまく、読後余韻に浸り、いろいろと考えさせられました。 まず感じたのは『情報格差』です。 脳に付与された機器によって、得られ、隠せる情報制限を人々にランク付けさせる世界。 一般人はランク2。官僚はランク5。社会適性がないものはランク0で個人情報筒抜け。 コンピューターの進化や超情報化社会に発展する未来において起こり得る格差世界を体感させられます。 脳とコンピューターが接続する世界において知識とは、事前に知っている必要はなく、瞬時に検索してアウトプットできれば同義になるなど、未来における考え方の変化も興味深いです。 現代でもすでに知らない事はネットを活用して瞬時に回答を得られる能力があれば事足りる状況もあるわけで、その世界においての『知っている』『知らない』『知りたい』とは何なのかを感じる読書でした。 人間の生きるとは何なのか、全てを知るとはどういう事なのか、深いテーマを掲げて、 脳とコンピューターのSF世界をライトに楽しめる作品はそうそうないです。 ネタバレは後述するとして、作者の考え方の仏教や宇宙など巻き込んだ思考の到達点はかなり痺れました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
深海4000メールの実験施設で起きる密室殺人。
SFミステリまで空想ではなく、理系ミステリと言った所です。 ミステリの舞台からしてシチュエーションの新鮮味を受けます。 外界から閉ざされたクローズド・サークルものであり、 犯行方法も然る事ながら何故ここで殺人を犯さなければならなかったのかの議論も魅力です。 登場人物達は施設にいる研究員なので、状況把握、思考回路も理路整然していているのもよいです。 事件が起きても他に影響されず、行動は自分で何事も判断。研究を続ける。個人の問題。無関心。 光が無い深海の冷たさ同様、『個』が強調されているのが魅力でした。 本書には地球の資源問題や深海を研究する上での土地問題、生物や食糧問題の解決、エネルギー問題の重要性などのメッセージ。 コンピュータが発達してネットワークでコミュニケーションが取れるようになった今、 人の繋がりを求める場合、物理的に同じ空間に人は必要なのか? コンピューターに映し出された文章に人を感じるなら、感情をもった人工知能が人の繋がりを代用できるのか。など、 人との触れ合い、孤独とは何かのテーマ性を色々と考えさせられました。 ミステリとしても、テーマ性にしても特徴的で面白く、 また、それらが巧く融合された作品となっています。 理系のミステリが好きなので満足でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
人気がある本は何故か手に取らなくなってしまう傾向があり、
読み漏れていた作品でしたが、、、食わず嫌いは勿体ないですね。とても良かったです。 倒叙ミステリのように序盤で毒殺を扱う所が描かれますが、 そこから誰が、どうやって?の謎を最後まで飽きさせず展開するのは見事過ぎました。 毒殺なんて古くからミステリで見慣れた要素なのに、古臭く感じさせません。 それは、科学捜査や、晩婚や不妊など社会的な内容を混ぜ込んで、 現代をしっかり描き活用しているからだと感じました。 人気シリーズはそれなりの理由があると再認識します。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
純粋な推理とパズルの事柄が組み合わさる展開が大変面白かったです。
全編が謎の発見と推理だけの構成です。パズラー小説が好きな方へはおすすめです。 事件の始まりは、残業した男女二人のうち、女性の方が忘れ物をしたと言い、 エレベーターに乗ってオフィスに戻る途中そのまま行方不明になるというもの。 あらすじから感じる話の内容はとても地味なのですが、 監視カメラに映る内容の違和感や、何故忘れ物をしたのか?そもそも忘れものは何だったのか? エレベーター搭乗後オフィスに戻れたのか?戻ってないのか? と、細かく疑問点をロジカルに推理していく展開が楽しめます。 また、話に登場してくる胡散臭い人物達、細かい手がかりの数々など、 読んでいく中で、あぁこれは何かある。怪しいと読者は感じると思いますが、 それらの要素が物語中、無駄なく活用されるのが見事です。 タイトルの『あみだくじ』の印象通り、 起点となる要素から推理していく中で、 外れの道もあれば断片的に当たりの道も通っていく推理。 誤推理だったとしても真相に触れて近づいている前進感は得られ、 パズルゲームのコンテニューをしている気分でした。 突拍子もない手がかりや結末の失望感はあるものの、 推理やパズルの魅力が勝り、楽しく読めました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
久々にボリュームが多い本を読みました。なんと言うか圧倒されました。
何処を紡いで感想を書こうか悩みます。 著者はスウェーデンのジャーナリストであった立場を活かして、 主人公ミカエルを同じジャーナリストの立場に置き、 女性犯罪や市場などの深い闇を訴えるメッセージ性の強い社会派小説を描いていると感じました。 社会派小説と言うとアクの強い読まされる本になりがちですが、 本書はそれを古典ミステリの様に限られた容疑者による孤島を舞台にしたり、 人間消失、暗号、被害者のミッシングリングを演出し、 違った一面では、どんな個人情報でも盗み出すハッカーを加えて現代風に味付けしたりと、 社会的テーマが強烈なのにそれを覆えるほど魅力的なミステリとなっているのに驚嘆します。 ミカエルが孤島に足を運び、ハリエットの失踪事件の依頼を受ける際、 『解決するかわかりません』と後ろ向きかつ、 『容疑者が多くて誰が誰だかわからない』と言ったセリフを述べますが、 私自身も同じく読み始め、この本はどんな話か見当が付かず、 登場人物についても40名を超えて頭に入るか不安な心境でした。 それが、上巻の中盤を超えたあたりから、謎が明かされていくにつれて、深い闇を感じていき、 ミカエルやリスベットの気持ち同様、何が起きたか最後まで知りたい。そんな気持ちの読書でした。 三部作なので時間を見つけて2,3作目と手に取って行こうと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
何としても合格したいという目標を持った子に、
仲間たちが知恵を出して支えていく青春ストーリーは爽やかで気持ち良かったです。 デジタル機器などの扱いについて、 本書が2006年出版から6年も経過した事を考えると真新しさを感じないかもしれません。 ただ、本書からは、カンニングの手法や是非を問う話ではなく、 姉の死に引きずられた玲美と教員やそこに関わる仲間達の触れ合いが印象的で、 最後まで十分に惹きこまれました。 内容や意外性などは弱くて物足りなさを感じるかもしれませんし、 ベタベタな要素もありますが、それはそれで単純に好みで良かったです。 人との触れ合いと成長が気持ちよく描かれた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
このシリーズは、1,2,3作と、相互にリンクし合う世界観作りな為、順番に読むと良いです。
本作はミステリ要素よりも世界観の物語に比重が大きいのですが、 十分に楽しく堪能できました。 1作目のメンバーが戻ってきての物語であるのも一層楽しさを増しました。 事件は、水晶体に閉じ込められていた夜壬琥姫の死体。 その結晶魔術を扱える容疑者の鉄壁なアリバイ。 また、その容疑者は海賊島に匿われた為、どんな裏が動いているのか。 と言った謎で展開していきます。 ファンタジーの世界なので、 新たな魔法の存在があるのか、どう組み合わせたのかなど、 普段のミステリとは違った感覚を得ながらの謎は刺激になりました。 あと、今回はキャラクターをとても大事に扱っていると感じました。 2作目に登場した防御魔法の使い手のニーガスアンガーやら、 1作目に出てきたムガンドゥだったり、 前後の作品で補足し合いながらの活用のされ方は、 1キャラ毎に相当大事に考えて作られているんだと感じます。 魅力的な世界とEDの軽妙な言葉のやり取りも良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|