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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数126件
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今作も不思議な世界観で楽しめました。
他人から見たら不幸の男女の恋愛模様で毎回安心して楽しめます。本作は非ミステリの恋愛小説でした。 今回は過去作に比べて説明や解説が多い印象でした。個人的に著者の本は登場人物達の心情や周りの情景を味わう感覚が好きなのですが、本作は寄生虫やコンピューターといった現実世界に存在する内容の解説が多く、雰囲気を味わうというより学習するような読書でした。ここは好みに合わずでした。 説明がしっかりしていたので、要素要素が最後に繋がるのかな?と思わせておいて活用がよくわからず。例えば、主人公高坂が引きこもってコンピューターウィルスを自作して、それらの系統はこんなのがあると詳しく書きますが、ただの自己紹介で終わってしまうなど。クリスマスシーンもラストに何か効果的に使うのかと思ってしまってました。そういう本では無かったという事で。 さて、ラストの締めくくり方は定番ですね。こういう所は安定して楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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書店でいっぱい並んでおり、帯の「どんでん返し」「一気読み」のコピーにつられて購入。
読後の正直な気持ちは、新鮮さや個性的な尖った要素が見あたらず、なんとなく想像できてしまうネタが続く物語でした。 ただ、個人的に刺激がなかっただけで、作品自体はミステリとして無駄なく整った作品でした。謎解きの要素をパズル的に散りばめていたり、緊迫感を出すために強盗の設定を加えたりと、お手本の様。文章も読みやすかったです。 現役医師の著者なので、医療に関する事は雰囲気だけでなく、仕掛けにも活用するなど独自路線の驚きが見てみたいなと思いました。 |
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60年も前に作られた不朽の名作の1つ。
日本の作品では『仮面ライダー』や『サイボーグ009』に影響を与えており、多くのSF作品のアイディアを感じました。物語の終盤あたりは近年の映画『インターテスラー』の表現を脳内でイメージしていました。 そんな名作と言われる本書なのですが、正直な感想を言うと、歴史的な名作としては十分に納得なのですが、内容の把握が困難で読書中は楽しめませんでした。 というのも、1文における内容の密度が濃すぎます。1つの文の中で、旅の準備をして違う惑星に移動していたり、新しい登場人物と出会って場所を移動していたりで、ちょっと目を離して文章を読んでしまうと、まったく状況がわからなってしまい、読書の混乱が起きるのです。 1行1行をしっかり把握しながら読み進めるのは正直疲れましたし、初回はよくわからない所も多かったです。 1度読んで全体を見渡してから、所々の解説を調べて、再読してやっと世界観や内容が掴めてきた所です。そうなってやっと所々の味わいやキャラの感情が楽しめてきます。個人的にはスルメ系SFといいましょうか。 見渡せば壮大な物語で圧巻。記憶に残る作品の1つでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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たまたま読む本が引いてしまっているのか、海外ミステリでは、誘拐、監禁、虐待の重いテーマに出会う事が多い。本書もその1つで気持ちが晴れずちょっと憂鬱。
2つの事件パートが最後に交わるのはよくある構成なのですが、視点が変わる事によって人物の役柄が不確かになるのが面白い。少女は被害者なのか加害者なのか。殺された人物は本当に被害者なのか。実は加害者ではないのか。女性弁護士は主人公なのか何かの被害者なのか。各人は別の役割なのか?ページが進む事で徐々に本書の背景に渦巻いている恐ろしい姿を感じる面白さがありました。 さて、本書は大分読みやすい本でした。最初に手に取って登場人物表を見た感じでは、馴染みのないオーストリア名な為、男女も区別できなくてチンプンカンプンでした。ただ、実際読んでみると誰が誰だか把握しやすいのでそこは巧いなと思います。上質なサスペンス映画を見ている気持ちでした。まぁ、ただやはり個人的にはかなり心境が重い本でした。その重さを少しでも軽くする為にラストはちょっと晴れやかにしたのかなと思いました。 |
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オウムを漢字で表記したタイトル『鸚鵡楼の惨劇』。このおどろおどろしい文字の雰囲気はいいですね。
ただ、期待した怖さや嫌な雰囲気はあまり感じず、心理面はあっさりしていました。 宣伝キャッチのフジコを超える"戦慄"とか、 担当編集のコメントで使われている単語や、"惨劇"とか"イヤミス"とかのPRに期待してしまうと、ちょっと肩すかしな印象です。ただ、女性向けの商品作りとしては釣針が豊富で巧いなーと感じる内容でした。 作品内に出てくるエッセイストさんのセリフと読むと、仕事の為や読者サービスの原稿作りの考え方は、作者の気持ちが出ているように感じました。 ミステリ模様は終盤になってやっと発生しますが、それまでのエピソードを絡めて読者をミスリードする技は巧いです。やられた!というものではなくて、作品の作り方が巧いな~と感じる内容でした。文章が読みやすいのもよいです。 もうちょっと棘がある作品を期待してしまったので、個人的に普通なミステリの印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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200P台の本に11の作品が含まれた短編集。1つ辺り20Pちょっとで登場人物も少ない為、海外作品に苦手意識がある人にも読みやすい作品。ページ数が少ないとはいえ、中身に無駄がなく濃密な文章を得た気持ちでした。
ただこの作品、謎解きや仕掛けがあるミステリではないので、好みが分かれそうです。 弁護士視点から依頼者の犯罪を聞き、その犯罪の結果だけでなく、その人の人生模様を感じる文学作品となっています。私は、作品に気持ちが入りこむことはなく、様々な人生を眺めるような読書でちょっと物足りませんでした。 好みは『エチオピアの男』です。 『エチオピアの男』はなんといっても読後感が良い事。そして犯罪者とされる人物の人生が短いページ中にぎゅっと詰まっていてよい作品でした。 『犯罪』というタイトルから感じるオドロオドロしさはなく、寧ろ爽やかにも感じた本書。 嫌な気持ちにならずに様々な話を楽しめた不思議な作品集でした。 |
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100人の容疑者。これだけで手に取ってもらえる作品のキャッチとしてはアリですね。
パーティ開催中に殺人事件が発生。その舞台に集められていた人数は総勢100名。100人の容疑者という、読む前から把握できるのかと不安を感じる本書ですが、それは杞憂です。探偵やアシスタント、メイドや警察や殺し屋など、主要人物は特徴的に描かれているので、多くの容疑者は気にせず読書可能でした。 その場合、100人の意味はあるのかと考えると商業的なキャッチが主で、物語の必要性としては弱く感じました。50人でも80人でも変わらない気がしました。ただ、何故こんなに人がいる中で殺人が行われたのか?という考え方は面白かったです。 橋は爆破されて交通不可。なんで爆弾なんてあるんだよというツッコミや、よくある少人数のクローズド・サークルでは閉じ込める事に意味が見い出せるが、100人の規模の意味は何か。姿をくらませるから?でもそれなら犯人も逃げられないし、閉じ込める必要ないじゃん。などなど、舞台ならではの推論が考察されるのが面白い。 作中の雰囲気もユーモアに溢れて軽いのが個人的に読みやすかったです。著者の経歴を見るとゲームプランナーだったので凄く納得。多少非現実的でも面白さを優先させるゲームシナリオを感じていました。 100人いた為か、あまりキャラクターに思い入れができないままの読書だったのが残念ですが、ミステリのパズル的な面白さが楽しめた本でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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90年代の新本格物。たまたま検索していて見つけ、"密室"・"講座"のタイトルに釣られて購入です。
あらすじ通り、閉ざされた空間で連続殺人もの。誰が犯人で、どんなトリックで、目的は何なのか?と、コテコテの展開が楽しめます。お約束な展開そのままで隠れた名作なのでは……?と思いながら読みました。 ただ、300Pぐらいの本で、200P終盤まではワクワク・ドキドキ楽しめていたのですが、収束の仕方が盛り上がらず、残念な気持ちになりました。パズル小説としての展開は良かったのに妙に人間的になってしまったからでしょうか。キャラクターが無駄に不快になり、拍子抜けでがっかりでした。 "密室講座"も舞台の設定なだけで期待するようなものはありませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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デビュー作の『罪色の環』が個人的にツボだったので2作目はどうなるのだろうと楽しみにしていた所、作風が一気に変わった装いに驚きました。表紙からミステリなのか判別つかなかったのですが、とりあえずファンタジーも好きなので手に取り読書。
ライトノベルが好きな読者に対しては、本書は綺麗にまとまった内容なのでお薦めですが、ミステリ志向な方にはそぐわない内容かと思います。一応ファンタジー×ミステリです。 著者は元警察官という経歴であり、留置場での看守時代、留置人との会話の実体験が本書に活きていると述べていまして納得。 階級が烙印として体に刻まれており、上の者からの指示は絶対で逆らうと烙印の影響で死んでしまうという世界観。今回は被疑者や身分が違うものとの関わりが強く感じる物語でした。 数年前の『執事×お嬢様ブーム』の影響か、本書もその手の会話がありまして序盤は楽しめましたが、終盤のシリアスな佳境においては雰囲気が崩れてしまった気がします。ちょっと狙い過ぎかなと。 ミステリとしては、オカルト実験のスクエアで起こる殺人の謎が提示されます。暗闇の中、四隅に人を配置して、壁伝いに前の人をタッチして周る定番のやつですね。 このネタは有名過ぎて、不可解な状況が起きても仕掛けが思いついてしまうのが難点で、ファンタジーの怖さやミステリの謎に魅力が弱かったのが正直な感想です。 ただ、本書の魅力は設定が全てなわけではなくて、王女アリシアと拷問官ジグの絆の物語が楽しめます。 王女のアリシアは我儘だけど脆くて可愛いし、ジグは暗殺者の過去と現在の優しき二面性があり、キャラ物として安定して好み。無実の王女を、命令だからという理由で意志のない人形のように行動した序盤とは違い、段々とジグの思いの変化が感じられました。 世界観や話の伏線も丁寧なので個人的に新作が楽しみな作者さんになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは1作目を読んでからの方が良い作品です。ストーリーの繋がりはないのですが、作風を事前に知る意味でです。
デビュー作の『○○○○○○○○殺人事件』では、ネタ本なんだけど、ただのネタだけで終わらず意外にも真面目で本格志向だ!と感心すると同時に、この作風からして2作目はどうするのだろう?と色々思っている所に早速2作目が刊行。『上木らいち』が探偵役の短編集。 援交高校生の名探偵の設定通り、下ネタや過激なネタを活用しているのですが、それが単純なネタだけでなく、その設定を活かしたミステリにしているのが見事。人によってはバカミスの部類になると思うのですが、前作同様に骨格は真面目にミステリをしているのがとても感じるのが良いです。 まぁ、ただホント、人を選ぶ作品ですね。 読後感として、後半の『橙』と『赤』の章は正直好みではありませんでした。『赤』の章に関してはやっている事は凄いのですが、それが面白さに感じられませんでした。『橙』自体も作風が変わってしまい、補足する為だけの存在に思えて可哀想になりました。この2章は他の作品に比べると後付けに感じてしまいました。 それ以外は総じて面白かったです。 『黄』の章の短いながらもしっかりミステリをしている話。『青』の本作ならではの、ぶっ飛んだ仕掛けは脱力ものです。 『上木らいち』自身もキャラが確立していて好感。サバサバしていて性格も良いですし特殊設定の探偵として個性的。読んでいて楽しいです。 この作風、3作目はどうするのだろう。。。と心配と共に期待してしまう気持ちがありますが、 作風が変わったとしても、作者の本格好きはとても感じるので次回作を楽しみにしてます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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扱うテーマは「生と死」であろうか。自殺願望、孤独、児童養護施設、ホスピス。絶望や希望の内面を描く物語。ミステリにおける事件が起こるわけでもないので、求心力が弱く感じましたが、文面は整然としいて読みやすく読書はあっという間でした。
作品内容の為か、登場する人物達にまったく共感ができなかったです。 正直扱いがアレでしたが、一番共感して、まともだと思えたのはベンツ(あだ名)でした。 なので釈然とせず、作品の意志と共感できない所が多い為、好みに合わずでした。 1年間何があったのか。その話の全容が分かった最後にやっとミステリらしくなって、なるほど。と楽しめた作品です。 テーマのわりに、終わりが爽やかにまとめているのが良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらず伊坂幸太郎作品らしいと感じる、ちょっと外れた登場人物達。そして音楽に絡んだキザなセリフや軽妙なテンポは読んでいて楽しかったです。小説ならではと感じます。
個人的に苦手な、著者作品に入り込む悪意の模様については、本作の世界が殺し屋達の物語なので、そういうものだと嫌な気持ちにならずに読めたのが良かったです。 ザ・一般人代表といった鈴木の巻き込まれ型作品で、様々な殺し屋達の視点と共に物語が進み、どこに着地するのかわからない楽しさがありました。 が、一方、読み終わってみると、何も解決していないような、何かが心にグッと残るでもなく、一時の夢のように通り過ぎてしまった不思議な余韻を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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警察官になる前の、警察学校が舞台の連作短編集。どんな思いで警察官になろうとするかは人それぞれだと思いますが、本書に登場する人物達やエピソードが陰湿で暗い。相手を利用したり騙したり陰口やらで足を引っ張り合う。仕舞には退学や傷を負ったりとする訳で、厳しい所なのは伝わりましたが、これから警察官になろうとする人たちが舞台の警察学校において本書の内容はいかがなものかと思いました。
新しい警察小説としてPRされてますが、警察学校の舞台と内容の組み合わせが今までやらなかっただけで、 囚人達が更生して行く舞台の方が合っているような複雑な心境になりました。 ただ、感情的な好みの点はおいておいて、 警察学校の舞台を活用した、職務質問の実習内容や、拳銃の考え、書類、日誌などの制度を元にした物語の作りは良かったです。 他のミステリに登場する警察官達も、こういった警察学校を卒業していると思うと違う見方に変わります。 他の本の話になりますが、ミステリでスパイ養成学校を舞台にした柳広司『ジョーカー・ゲーム』と言う作品があるのですが、こちらは一種ファンタジーのような無関係な舞台のスパイの場を使う事で、場の疑問は感じさせず、厳しさや頭脳的な要素に専念できました。本書は警察官という現実的な存在を扱った為、仕掛けの面白さ以外に、日本の警察はどうなの?と、違うノイズを感じてしまった事が個人的に好みとは違った次第です。 |
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文芸+ミステリ。
子供にとっての夏休みというのは、ある一定期間での出会いと別れがあり、青春小説の定番舞台。六甲の別荘にて男の子2人が出会った女の子とのエピソードから始まり、ミステリらしからぬ雰囲気のまま物語が始まります。 著者の本は初めてです。読んでいて、あぁ文章が綺麗だなー。表現が丁寧だなーと、国語の教科書を読んでいる気持ちになり文芸を味わいます。ミステリらしい謎は全く感じない読書でした。 時代は変わり、戦争前の昭和の物語に入ると登場する人物達がカッコよく魅力的。ベルリンで出会った謎の女性とのエピソード。時代を歩んで社を育てた翁の貫録のある行動やセリフ。この過去エピソードがとても楽しかったです。 そうこうするうちに物語は終盤に至り、あれ?これミステリだったの?どういうことだ?・・・あっ!となりました。 Amazonレビューなどでは「だまされた!」と言う表現がありますが、そういうトリック系の話ではなくて、表向きは文芸書。物語の裏側に謎がある系のミステリです。なのでミステリを期待すると退屈です。文芸書を読む感じで物語に浸る感覚で手に取ると良いと思いました。 物語の背景にミステリが存在する作品は好きな方なのですが、本作は、あまり乗り気になれませんでした。 文学にゆったり触れるより、刺激やワクワク感が好みだからかもしません。 あと、倉沢家の登場人物の把握に混乱して感動を弱めた気もします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルや表紙の絵柄通り『不思議の国のアリス』をモチーフにしたミステリ。
アリスの世界観が活きていて、会話が噛み合わない独特の雰囲気が健在。 登場キャラクター達の会話の可笑しさにクスっときました。 夢の世界では不思議の国のアリスに登場するキャラクターになっており、その夢は登場人物達と共有されます。 夢と現実世界はリンクしていて、どちらかの世界で殺されると、本当に死んでしまいます。 ※最初の事件は夢の世界でハンプティ・ダンプティが塀から落とされ死亡。ハンプティ・ダンプティになった夢を見ていた人が現実世界で死亡する。 本書は、夢or現実で事件を起こしている犯人は誰なのか? と言う、謎から始まる特殊なミステリです。 現実世界と仮想世界がリンクする物語の定番要素である、誰がどのキャラクターなのか?の割り当てを感じながら読書をしようと思いましたが、会話主体の構成の中、不思議の国のアリスの世界観での噛み合わない会話に混乱してしまい、あまり事件は意識せず世界観に浸る感じで読みました。 最後の展開は好みが分かれる所だと思いますが、アリスの世界観と著者らしさを十分に感じる作品であると思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作の『黄昏に眠る秋』に続く冬の2作目。シリーズ作品となっていますが、前後の関係性は殆どないので、今作から読んでも問題ないです。
冬の灯台、観光客がいない時期のひっそりとしたエーランド島。派手さがない情景や雰囲気と島の人々の模様を描く静かなミステリ。幽霊やら、日本のこっくりさんのような要素もでてきてオカルト色が強いです。とはいえ、ホラーや恐怖の派手さもなく、幽霊要素は雰囲気の1つに取り込まれている感じです。 私自身の記録の為にも感想を残しておきたい所なのですが、特徴的な派手さがないこの手の作品はどうやって感想を書いたら良いか悩む次第。 ここがいい、あれがいい。と言うのではなく全体的な雰囲気が神秘的で、読後良かったなと思う作品です。 静かな冬の空気感を味わう文学ミステリ。 いろいろな賞を受賞している本作ですが、日本の受賞作品で感じる、仕掛けや論理や推理展開とは違った評価が、海外ミステリで行なわれているんだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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海外物は異常な登場人物やバイオレンスなど、日本にはない刺激的な要素でスリルやサスペンスといった作品に出会う事が多いのですが、本書はそれらとは違う作品です。
非常に刺激がない。 秋から冬にかけての哀愁漂うシンミリした雰囲気。 メインの登場人物は老人でスピード感がでるアクションはなし。 ここら辺の感覚から好みに合わなかったり退屈に感じてしまうかもしれません。 単に私が中盤までページの進みが遅かっただけですが。。。 が、読み終わってみればミステリ文学といいますか、 作品に張られている伏線がミステリとしての面白さを感じ、 舞台のエーランド島の空気感やそこに住む人々の模様を味わえるよい作品でした。 読む前のオススメですが、 本書の舞台となる、『エーランド島』をGoogleの画像や地図検索で視覚的に見ておくと、より作品に入り込めます。 何かの手がかりというわけではないのでご安心を。 石灰岩の荒地や平野の何か物寂しい感じを一層引き立てると思います。 20年前に子供が行方不明になって悲壮感漂いながら暮らしていた母ユリア。 介護施設で暮らす80歳近いユリアの父 イェルロフ。 人生の終盤で、季節でいうところ冬の一歩手前と言うところ。 今頃になって何者かから子供の靴が届く。 子供は生きているのか?行方不明になった時、何が起きたのか? 現在と過去を繰り返すよくある構成の中で、読者は物語の真相を知っていきます。 読者は過去も見れるので、登場人物達より多い情報量で話を把握して行くわけですが、 ここがなんというか魅せ方が巧かったです。 途中まで面白さが分からなく読書が大変だった為、好みの点数はそんなに高くないです。 2作目以降は同じ舞台や登場人物で内容把握が容易らしいので、より楽しめそう。 続けて読んでみようと思います。 |
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