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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数247

全247件 61~80 4/13ページ

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No.187: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ぬばたまの黒女の感想

シリーズ1作目『ナキメサマ』がホラーとミステリの見事な融合だったので続けて読書。ただ2作目の本書は少し期待し過ぎてしまった気持ちです。

全身骨が砕かれる死体の発見という怪異を扱う物語。
前作同様に地方の村を舞台としたホラーは雰囲気抜群で大変好み。前作から共通キャラクターとして参加の怪異譚蒐集家の那々木悠志郎は良い味を出しています。「作家の私を知らないのか?」という登場シーンが最高に好みです。

物語の中盤まではワクワクで楽しかったです。ただ今回好みに合わなかったのは、前作のようなミステリ仕掛けを施そうとした為か謎に関する要素は都合の良い展開が多かった事。そして怪異の現象が非現実的過ぎてしまい、ホラー&ファンタジーに感じてしまった事でした。
ホラーの要素が前作のように必然ではなく、過剰な演出なだけに感じられて好みに合わなかったのが正直な気持ちです。特に主人公以外はちょっとね。。。という感覚。

3作目も購入済みなので次に期待です。

▼以下、ネタバレ感想
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ぬばたまの黒女 (角川ホラー文庫)
阿泉来堂ぬばたまの黒女 についてのレビュー
No.186: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件の感想

見立て殺人がメインの本格ミステリもの。クローズド・サークル、館もの、次々に殺される招待客、絵画に見立てられた殺人。といった具合で設定は抜群に面白い。ですが好みにそぐわない理由として、雰囲気や情景が浮かび辛く読んでいて面白くなかったからです。

ミステリの仕掛けや見立て殺人をテーマとした中で、犯人が見立て殺人ができないように環境を破壊してしまいましょうといった偏屈した展開は楽しめました。探偵役のシズカの発言や行動は、連続殺人は100%起きるという前提の元に行われており、物語の中の人物というより外側のメタ視点で本書を眺めていると感じます。本書の面白かった所はこの探偵役の思考と行動でして、他のミステリでは味わえない新鮮さを感じました。

読み終えてから、以前シリーズ2作目にあたる『首無館の殺人』を読んでいる事を思い出しました。
2作目は切断される首がテーマで、犯人が首を切ろうとするなら切れないように対策しましょうと言った展開がなされるので、本シリーズの探偵の特徴が1作目から構築されていると感じます。ロジカルに推理するのではなく、連続殺人が前提の中で犯人の行動を抑制していくスタイルです。

シリーズ他本も気になる所ですが、評判の理由が同じ傾向なので少し様子見かな。

▼以下、ネタバレ感想
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使用人探偵シズカ: 横濱異人館殺人事件 (新潮文庫nex)
No.185: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

火のないところに煙はの感想

虚実混交による怪談ミステリ。
著者が小説新潮から怪談小説の執筆依頼を受けた所から物語が始まります。

新潮社がある神楽坂。そこから始まる怪談物語。
短編集の構造で、それぞれの短編は実際に2016年から『小説新潮』に掲載された短編たち。時系列や各人達の関り方が活用されており、現実と虚構を曖昧にしているのが面白い。
いつから企画構成が練られていたのかはわからないですが、実際の日常と共に怪奇に遭遇していく話の展開は面白く、巧い企画の作品だと思いました。
当時、著者のTwitterにて怪奇に悩む投稿があるなど演出が凝っています。

それぞれの物語は非現実的な怪談を扱ってはいるものの、起きている事象を論理的に解釈すると、怪奇とはいえどういった部類の怪奇現象なのかが導かれる為、その展開はミステリを感じました。謎と結末が怪談要素というのも良かったです。

これって本当の話?あの人やこの現象はどうなるの?といった一昔前のオカルト体験が楽しめます。ホラーにしてはサクサク読めるのも好感でした。
火のないところに煙は (新潮文庫)
芦沢央火のないところに煙は についてのレビュー
No.184:
(6pt)

太陽のシズク~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~の感想

あらすじ通り2度読み系の恋愛小説でした。

"宝石病"という体内に結晶を溜め込んでしまう難病を患った女の子の、残された時間の青春物語です。
恋がしたい女の子の恋愛小説を起点としますが、読んだ印象としては自己犠牲や相手を想う気持ちを表した作品だと感じました。

難病ものなので何となく結末は予感させつつも、あらすじには"ハッピーエンド"と書かれているので、どのような結末になるか楽しみでした。読者の期待する結末と沿うかどうかが好みの別れ所になるかと思われます。
個人的には期待するものとは違った作品でした。ただもう一度読む楽しみがある本ではあるので、ライトミステリとしての面白さは備わっています。そこに惹かれる人もいると思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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太陽のシズク ~大好きな君との最低で最高の12ヶ月~ (新潮文庫nex)
No.183: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

静かな炎天の感想

女探偵葉村晶シリーズの短編集。
謎解きミステリというより、主人公のキャラクターの魅力と、全体を通してのハードボイルドな文芸を楽しむ作品。葉村晶の境遇は今でいうイヤミスのようで読んでいて辛い心境になりました。ここは好みの別れどころでした。見様によってはブラックコメディ。
6編ある短編はどれも曲者ぞろいであり、ストレートな進行ではなく新たな事実により二転三転する。飽きさせない面白さはあるのですが、短編では場面転換が速すぎて好みに合わなかったのが正直な気持ちでした。全ての結末が描かれていない物語もあり、スッキリしない事が多かったです。そういうのが好きな時もあるのですが、今回は読むタイミングが悪かったかもしれません。
静かな炎天 (文春文庫 わ)
若竹七海静かな炎天 についてのレビュー
No.182: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

自由研究には向かない殺人の感想

青春ミステリ模様が現代的で面白かったです。
まず、主人公である女子高生のピップは性格も行動力もよく読者の視点となる探偵役として読んでいて気持ちがよかったです。犯罪にぐいぐい足を突っ込む行動力は危なさで不安になりますが、物語の主人公としてはアリかと思う。携帯の履歴、SNSのフォロワー、パソコンの操作など、時代に合わせた捜査力は中々ナイス。コツコツ地道に自身の考えを読者に提示していくので謎解き小説として楽しめる構造になっていました。

ただ、個人的な心境として期待し過ぎてしまったのと、内容が好みではなかったのが正直な気持ち。読書が長く感じました。
驚きの真相や派手な仕掛けがあるタイプではなく、ティーンエイジャー視点での犯罪と捜査模様が展開される作品です。2022年度のミステリ各誌にランクインしていたのもあり余計な期待を抱いてしまっていました。
謎解きミステリとして街で起きた過去の事件が明かされる様子はスッキリするのですが、一方、明かされた事により人間関係の闇や若者の社会的犯罪を見せられるのはあまり気持ちよくないもの。
学生を読者ターゲットとしてその年代の犯罪と解決が描かれているので、そういう意図の作品としてはアリ。そんな感想でした。
自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫)
No.181: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。の感想

西洋童話をモチーフとして、著者が再構築したオリジナルの物語です。
前作の時も感じましたが、昔話の内容について新解釈を述べるものではなく、キャラクターや世界観を活用した創作となっており、題材となる昔話の設定に必然性がないミステリなのが好みと違いました。
『ヘンゼルとグレーテル』に関してはお菓子の家ならではの仕掛けがあり、この短編はミステリとして楽しめました。
それ以外は人物や世界観の設定を用いたファンタジーを読んだ程度の印象で特に何か印象に残るものはなく、普通に楽しめた読書でした。

物語やミステリの仕掛けに対して、童話の世界観にする必然性が弱いのが物足りないです。逆にそこが補完されて、だから赤ずきんなのか!だからシンデレラを採用したのか!という驚きと納得の気持ちになれれば今以上に良い作品に化けると思いました。
幅広い層に読ませる商業的な商品戦略としては巧い商品という印象です。
赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 (双葉文庫)
No.180: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

そして誰も死ななかったの感想

著者の作品は好みに合わないのだけど、今度は面白くなっているかも?と期待して手に取る。他にはない個性が好みではある次第。

エログロ系+ミステリの作風なのですが、んー……正直な気持ちとしては今回も好みに合わず。
"そして誰も〇〇〇"という名作タイトルをもじり、表紙もとても良いのですが、それに対する内容が期待にそわず名前負けかなと。
エロも艶やかなエロではなくただの下品。グロも感情を掻き立てるグロではなく文字の羅列。前半は☆3ぐらいな感想。

ただ、後半からミステリへちゃんと変容しているのは見事。
舞台設定やグロを用いて特殊な世界観でちゃんと新しいミステリを作っている。この雰囲気もそうだし本書ならではの仕掛けは個性があるのでそこは好感でした。
後半のミステリ模様は☆8ぐらい。なので、半分で☆5かなという感覚。

2017年の某特殊設定ミステリを著者風にしたらどうなるか。本書の企画アイディアはそんな基点から生まれたのだろうと感じる読書でした。貴志祐介の某作の影響を受けてそうだと感じます。新しいミステリを生み出そうという気持ちは〇。注目はし続ける作家さんです。

▼以下、ネタバレ感想
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そして誰も死ななかった (角川文庫)
白井智之そして誰も死ななかった についてのレビュー
No.179: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリックの感想

ミステリ愛に溢れた作品でした。
まず世界の設定が発明もので良かった。
それは『密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある』という判例が起きた世界。どんなに怪しい犯人でもアリバイがあれば無罪になるのと同様に、密室の謎が解けなければその人には犯行が不可能であるとし無罪となる世界線。この設定が発明ものです。この設定のおかげで密室を作る理由を考えなくてよく、密室殺人が多発する理由にもなります。

ミステリ小説において密室ネタは出し尽くされ古臭いものと扱われますが、あえてそこに脚光を浴びせた意欲作だと感じます。
舞台は雪の山荘、クローズドサークル内での連続殺人。現場にはトランプや見立てやらで古き良きミステリの雰囲気を味わえます。登場人物達の雰囲気は個人的に好きなゲーム『かまいたちの夜』の印象でして、怪しい面々と砕けた会話は良い意味でライト。陰鬱さはなく連続殺人でもサクサク進行します。

そんな好みの雰囲気であるコテコテのミステリだったのですが、好みにそぐわなかった点として、あえての悪い言い方で恐縮ですが、トリックの問題集になってしまっている事。それぞれの事件に関連性もなくバラバラな印象だった点もよりそう感じてしまった次第。
他本と比較するのもアレですが、トリックを連撃しながらも問題集にならず名を残しているミステリは、それ+αの要素があります。ホラーやエログロなどで感情への刺激を加算するものや、キャラクター性を強めるもの、社会派と組み合わせて考えさせたりなどなど。本書は密室トリックを主体としながらそれだけで勝負しているのは好感でもあるのですが、最後の最後まで出し惜しみした仕掛けのインパクトが非常に弱いものだったので(演出力なのかもしれませんが)、肩透かしを食らってしまった気分でした。なので物語になっているような印象はなくトリックの問題集に感じた次第でした。

終盤より途中のドミノに囲まれた密室は面白かったです。トリックがというよりその状況のシチュエーションが新鮮でした。ミステリ読者程その他で使われた内容を考察する作品は読み慣れてしまっているので、こういう内容の方が面白く映るのではないかな。

というわけで、密室トリックというミステリ要素についてはあまり印象的ではなかったのですが、ミステリに対する著者の想いやミステリ好きだと感じさせる要素要素の数々は好きなので、デビュー作後の2作目でどうなるか期待です。

あとタイトルと表紙がとてもミステリ好きに刺さるので、これは編集者がナイスだなと思いました。特徴的なので書店も売りやすそう。商品として巧いと思った。

▼以下、ネタバレ感想
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【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
No.178: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

早朝始発の殺風景の感想

高校生の日常におけるちょっとした一コマの出来事をミステリ仕立てにした短編集です。

表題『早朝始発の殺風景』は、始発の電車で遭遇した普段あまり話さない同級生との一コマ。
『メロンソーダ・ファクトリー』はファミリーレストランでクラスメイトと学園祭準備の打合せでの一コマ。
『夢の国には観覧車がない』は部員達と遊園地に遊びに来たときの一コマ。
という具合で高校生活の日常の1場面を切り抜いてそこで起こる日常の謎を扱います。

これといった印象強い派手な要素はないのですが、高校生活における空気感や友人達の微妙な距離感が見事に描かれており雰囲気を楽しむ事ができました。テーマが揃った短編が集まっている為、短編集として整った作品であると感じます。

個人的には『夢の国には観覧車がない』が好み。
人物配置、場所、状況、何故そうしたか、全てに無駄なく高校生活の日常としても合っていて良かったです。

エピローグも巧く作品全体をまとめており、各人達のその後が見えてなんだか嬉しいサービスに感じました。
早朝始発の殺風景 (集英社文庫)
青崎有吾早朝始発の殺風景 についてのレビュー
No.177: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

美亜へ贈る真珠の感想

SFにおける時間要素と恋愛小説を掛け合わせた短編集。
新版では8作品収録されています。短編集タイトルになっている『美亜へ贈る真珠』に至っては1970年代の作品。

80年代、90年代、そして現代に至るまで、時を扱った作品は小説や映画や漫画やアニメなど数多くあります。それらの時間要素と恋愛作品を絡めた作品の歴史において、本書は外せない1作という情報を得て手に取りました。

確かに読んでみると数多くの作品を思い浮かびます。このネタはあれだ。あの映画もこのネタなのか。などなど。SFとしての時間要素は昔からあれど、そこに恋愛要素を加えて淡く叙情的なドラマを感じさせているのは中々見事で楽しめました。

ただ一方、既存作品に慣れているから仕方がないですが、原点的な本書を読んでも新鮮な読書にはなりませんでした。文章が少し古いというか固く難しいので面白かったかどうかと聞かれればSF作品×恋愛の歴史としてこういう作品があったのかと知識として体験した感想。
ミステリで例えると、2000年代のミステリから入った若い人へモルグ街や海外古典を読んで大絶賛するか……という話で、ちょっと違う気がするような感覚。なのでそのジャンルの歴史を体験したという感想でした。

個人的に好みだったのは
『詩帆が去る夏』と『梨湖という虚像』での恋人の再現。
『玲子の箱宇宙』『"ヒト"はかつて尼那を……』という、多次元や宇宙を扱った物語。
ここらが読み易く印象に残りました。
美亜へ贈る真珠 〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
梶尾真治美亜へ贈る真珠 についてのレビュー
No.176: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

廃遊園地の殺人の感想

廃墟となった遊園地が舞台のクローズドサークルもの。
廃墟コレクターの資産家よって集められた男女10名。当初のイベントは廃墟を舞台にした宝探し。だがそううまくいかず殺人事件が発生する。廃墟になる原因となった観覧車からの銃乱射事件との関りは……?という流れ。

舞台である遊園地の雰囲気はとても良かったです。
CCの環境で起きる本格ミステリはとても面白い。仕掛けもよいですし、物語の真相となる何故事件が起きたのか?という背景の作り込みがとてもよくて好感でした。
主人公の探偵能力がコンビニのアルバイト経験で表現されるのが面白くてツボ。この主人公キャラを活かして今後も『廃墟シリーズ』として続編が出る事を願います。

さて、物語や雰囲気と事件模様はとてもよいのですが、評価としては芳しくない気持ちでした。
それは校閲漏れがいくつか見られる事。事件現場の情景のイメージ付かなかった事。この2点。例えばP28の序盤で登場人物達の初めましてで名前を名乗っていないのに、相手の名前が描かれている。知り合いなのか?と変な違和感を得るけど、少し読むとこれはミスだと気づく。そのような文章が他にもあるが、そっちは実は伏線で活用されたりする。おそらく小説作りの後半で文章を並び替えたりしてのミスだとおもうのですが、ミスなのか伏線なのか混乱してしまい、後半の真相でこれは伏線でしたと言われても、あの表現はミスだと思ってた……と感じる事がありました。情景がイメージし辛い所もあり、混乱する読者が多いと思いました。

登場人物の名前についてはちょと癖が強くて読みづらい。登場人物一覧を見ながら読書でした。※人物一覧があるのは良かった。
渉外担当だから渉島。売店担当だから売野。編集長だから編河。と分かりやすいようにしている気がするのですが、読書中はイメージし辛い。資産家の十嶋庵(としまいおり)は、"としまあん"⇒豊島園(としまえん)遊園地のもじりかな?とか気づく所は面白いのですが。。

といった具合で読み辛さで残念に感じる所が多かったです。是非とも文庫化の時は加筆修正してもらいたいです。ミステリとして面白いし、見取り図が遊園地のパンフレットになっているなど拘りが楽しい反面、地の文がおかしいと残念な気持ちになります。

廃墟を舞台にしたミステリ。主人公のキャラクター性。遊園地やリゾート開発の背景を含めた村との物語。ここら辺は抜群によくできていて面白かったので、『廃墟シリーズ』として続編を希望です。
廃遊園地の殺人 (実業之日本社文庫)
斜線堂有紀廃遊園地の殺人 についてのレビュー
No.175: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

老虎残夢の感想

序盤苦労しましたが、読書した結果は面白い物語でした。

江戸川乱歩賞受賞の本作。乱歩賞は社会派の作品が多いので勝手なイメージから最初はコテコテ中国の歴史ものかと思いきや、読み終わってみれば若い世代を狙ったライトな能力もの作品と感じました。
江戸川乱歩賞というより同じ版元の講談社ならメフィスト賞のような印象。ここ数年ミステリ界隈では『特殊設定ミステリ』がもの珍しさから流行っている為、江戸川乱歩賞としても新たな読者を得るべく、その設定を取り入れた本書を採用したのかなという思いを感じました。その為のダブル受賞というのを感じます。

序盤の感想として、武侠小説に馴染みがなかった為か開始30ページで挫折でした。最初の1ページから読み辛い漢字の羅列。非現実的で意味不明の環境や会話。正直読むの迷いました。江戸川乱歩賞受賞だから再度読む事に決め、そもそも武侠小説とはどういう物なのか調べてから本書を読み直す事にした次第です。

同じ思いの人がいましたらコツとしてお知らせですが、わかりやすく説明すると本書は能力ものです。
武侠小説×ミステリとすると難しく感じますが、能力もので、超能力・ファンタジーを扱っていると考えたら理解しやすい作品でした。

私のように武侠小説に慣れていない人の為のお伝えメモとして、出てくる能力の説明を。
・外功(がいこう)という能力は、力・筋肉の物理能力。
・向功(ないこう)という能力は、防御・治療の回復系能力。
・軽功(けいこう)という能力は、体重を軽くする能力。達人になる程、高く飛べたり水面も歩ける。
ちなみにこれらの言葉はwikiにも存在しており中国武術の一般知識でした。

そりゃこういう能力が成り立ったらファンタジーになっちゃうから"ノックスの十戒"も中国人を禁止したくなるわと思い出しました。一方、こういうものだと設定として認識できてしまいえば本書はとても読み易く楽しめます。
能力ものと認識できればアニメやラノベをイメージしてスラスラと描かれているシーンが浮かびました。軽功の優れた能力者は湖の横断は船ではなく歩いて渡ったり、『踏雪無痕』という能力になると足跡を付けずに雪の上を歩ける。向功の達人には毒が効かない。ふむふむ、だんだんとミステリの設定条件になってきた。そんな具合で理解です。

これらは序盤で一応説明されますが、文章ゆえか理解し辛いのが本音。登場人物も見慣れない名前でイメージし辛い。
是非文庫化する時は、簡単な能力表、登場人物表、周辺地図や現場の図を添えると評判がより良くなると思います。手に取って最初の数十ページの印象が難解過ぎます。50ページぐらい読むと雰囲気と会話文主体で読み易くなりました。文章の雰囲気が違うので加筆して調整したのかな。

中盤以降は、限られた個性的な人物達のやりとりがキャラものとして読ませますし、謎の提示やそれぞれの立場からの議論は面白く読めました。ただミステリとして残念なのがファンタジーの能力ものの条件が曖昧な事。何ができて何ができないのか、現実とは異なる能力が存在する世界なので、条件が定まっていないと、実はこんな事ができます・起きていましたと言われても後出しに感じるのです。

"江戸川乱歩賞"として見ると違和感があるのですが、ミステリを気にせず1つの物語としては本書は面白かったです。
『老虎残夢』というタイトルはカッコよく内容に合ってるのが好感です。表紙のイラストもよくて、今までの乱歩賞のイメージを変える作品に位置付けられているんだなと感じました。宣伝方法から新しい読者を得たい気持ちを感じますが、最初の数ページが難解で、試し読みで敬遠されてしまいそうなのが気がかりにも感じました。

1つの物語として完結していますが、紫苑を主人公とした異なる物語をもっと読んでみたいなと思いました。旅物語ならシリーズ化できるぐらい良い設定と魅力ある舞台です。次作があるなら楽しみです。
老虎残夢 (講談社文庫)
桃野雑派老虎残夢 についてのレビュー
No.174:
(4pt)

Ghost ぼくの初恋が消えるまでの感想

表紙のイラストとタイトルに惹かれて購入。

連続殺人事件の被害者となった幼馴染のお姉ちゃん。10歳の主人公の元に幽霊となって現れ、被害者がこれ以上増えないように殺人犯逮捕に向けて行動するという始まり。著者の作品に触れるのは久々です。

幽霊を用いた青春物語。事件やミステリ要素はありますが謎解きを楽しむものではなく、主人公の少年の成長と当時の姿のままのお姉ちゃんの幽霊との淡い物語がメイン。設定からしてどう展開しても万全のハッピーエンドになり辛い状況なので、読んでいて心苦しい。登場人物の雰囲気や物語の起伏についても明るさはなく、良い意味では落ち着いてますが、主人公の理人もまわりの友達も負の感情の雰囲気が立ち込めていて重苦しい読書な為、個人的に苦手でした。

詳しくはネタバレで書きますが、学園青春ミステリとしての負のテーマである"いじめ"を取り入れていますが、その解法の扱いが自己成長というより環境によるものなので、何か得たり感動する点がなかったのが残念でした。
最終章の最後の一文も中途半端。はっきりすればいいのにと思いました。ネタバレで後述。という事で☆6-2(好みに合わない点が多い)気持ちの点数でした。

▼以下、ネタバレ感想
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Ghost ぼくの初恋が消えるまで (星海社FICTIONS)
天祢涼Ghost ぼくの初恋が消えるまで についてのレビュー
No.173: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

法廷遊戯の感想

作品テーマや物語の構造はとても素晴らしかったです。ただ好みでいうと何とも言えない気持ちになる作品でした。

2020年度のメフィスト賞受賞作。最近のメフィスト賞からイメージする緩さはなく硬派な社会派作品でした。
タイトルから感じる通り法廷ミステリの部類。そして特徴的なのは、事件を主軸に争う法廷ミステリというより、法律自体がメインとなっている作品。法律の紹介、その法律に従い動く者たちの姿が強く印象に残りました。

読書中の正直な気持ちとしては好みではなく楽しめませんでした。
なんというか、事件の報告書を読んでいる気分。登場人物達が曲者で好きになれない為、誰にも感情移入できません。なので俯瞰して物語を眺めますが、事件模様の描き方がエンタメという起伏ある魅せ方というより、淡々と何が起きたのか描かれているような感覚。それでいてミステリとする為に出来事を小出しにしている為、全体像が掴めず物語が良く分からなくて退屈という気持ちでした。

終盤はそれまでに散らばった各エピソードが意味を持って繋がり全体像に驚きます。ただその全体像が見えた時はなんとも言いようのないイヤミスのような嫌な印象でした。本書の紹介帯では『感動、衝撃の傑作ミステリ』とありまして、確かに言葉の意味通り感情が動かされた"感動"となりますが、印象は悪い意味でどんよりさせられました。ミステリとしては巧いです。
これは人により好みが分れるかと思います。

読者に身近な事件を扱い、それによる負の連鎖、冤罪や贖罪を体感する作品としては傑作なので社会派好きにはオススメ……かも。ただ個人的にはちょっと合わない作品でした。
法廷遊戯
五十嵐律人法廷遊戯 についてのレビュー
No.172: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

呪殺島の殺人の感想

設定は面白いのですが、雰囲気作りや言動がそぐわなかったのが残念に感じました。

内容は呪われた孤島を舞台にしたクローズドサークル・館もの。屋敷を舞台に密室殺人から始まる連続殺人が発生。タイトルからしてミステリ読者がターゲットなので、ミステリ好きが好む要素を盛り込んだ作りは好感でした。冒頭にて主人公が目を覚ますと遺体と一緒の密室内にいるシチュエーション。さらに記憶喪失で状況不明。主人公と読者の情報量を合わせ、何が起きているのかという所から始まる物語です。

さて、これらの設定や要素はとても興味が沸きました。ただ残念なのが雰囲気作りと各人の言動です。悪い意味でライトな扱いになっていました。タイトル『呪殺島』にある通り一族が不幸な死を遂げる呪いを扱いますが、おどろおどろしさがなく、そもそも"呪い"を何で扱ってしまったのかと疑問に感じるほど意味がない。ただ単に人が多く死ぬ理由付けでしょうか。
登場する人物達の会話も緊張感がなくライトというよりボケや冗談を聞かされているように感じます。笑い話な感覚での会話であり、真面目さが感じられない。それでいて大事な所は急に固い口調で説明される。
例えるなら映画やドラマで役者のセリフが棒読み過ぎるとシラケますがその感覚に近いです。無理して悲鳴を上げたり推理しているのですかと感じる。特に主人公が大根役者で、言動が軽すぎて作品にまったく没入できませんでした。

所々に好みはあるのですが、残念に感じた読書でした。
呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)
萩原麻里呪殺島の殺人 についてのレビュー
No.171: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

大聖堂の殺人 ~The Books~の感想

堂シリーズ完結。
メフィスト賞を受賞してデビューした『眼球堂の殺人』は理系の本格ミステリとしてシリーズを期待させるものでした。2,3作目と少しパワーダウンしましたが、4作目『伽藍堂の殺人』からは物語を様変わりし最後に向けて出来る中での物語を作り上げて、ちゃんと完結させたという所は評価です。
毎回の読後感は謎の勿体なさを感じる気持ちで不満が多いのですが、読みたくなる魅力は備わっていました。数学的な話や本格ミステリ、キャラクター達は気になる方々。今回最終回ということで主要な人物達を出してまとめているのは改めて最後なんだなと寂しさを受けました。

ミステリの仕掛けについて思う所として、4作目ごろから本作品は理系の本格ミステリ傾向の中、題材やトリックは数学的な机上の空論であり、実際にそれができるのかという物理的制約が無視されているのが気になりました。面白くて派手ならいいでしょという感覚が見え透いております。物語は数学なのにミステリの解決は論理的ではなく、トリックは物理的なのに現実では実現できない。このちぐはぐが残念な印象を受けました。

本作ではシリーズに出てくる大ボスの数学天皇の藤衛が登場しました。最終回という事で風呂敷を閉じる意味で出てきたのもありますが、なんというかしょぼい幕切れかなと。
このシリーズをリセットさせたいのか、読者に好まれるキャラクターがいなくなってしまっているのが残念。個人的に好むキャラは善知鳥神ぐらいでした。十和田も1-2作目の頃は好きですが、それ以降はちょっとね。

途中で辞めず最後まで読みたくなったシリーズとしての魅力。物語が完結したという所の評価で☆6。
大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)
周木律大聖堂の殺人 ~The Books~ についてのレビュー
No.170: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~の感想

堂シリーズ6作目。残り1冊で完結の最終巻前。
単体のミステリを楽しむ作品という感覚ではなく、シリーズとしての物語を楽しむ作品でした。
本書はシリーズを順番に読んでいる人向けの作品となります。

本作は過去編。
シリーズ内の重要人物として挙がる沼四郎や藤衛などが会し2名の被害者が出たとされた過去の事件。
鏡で覆われた堂での事件となります。最終回に向けて風呂敷を畳んでいくような印象でした。

ミステリ単体で見ると事件内容は大味なのですが、シリーズ作品として見れば、本シリーズ特有の館ものとしてのお約束や、理系要素を用いた仕掛けが楽しめました。
トリックも物理的や現実的にどうかとか、このシリーズに関してはもう気にしなくなりました。なんか凄い事をしているという雰囲気で押し通しちゃう感じですね。ここまでくればこれはこれでアリかな。

次回最終回。残りの登場人物達がどう動くのか楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)
周木律鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ についてのレビュー
No.169: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

予言の島の感想

『初読はミステリ、二度目はホラー』のキャッチフレーズの本書。
2度読みを謳う作品は警戒しつつも手に取ってしまう性分であります。

さて、結果としては宣伝に偽りなく2度読みしたくなる要素を兼ね備えた作品でした。とある意味でミステリからホラーへ変容するのはとても面白い。終盤は見事です。

ただ正直な所、読書中は面白くありませんでした。
率直な理由として非常に読みづらい。文章から情景が浮かばず読んでいて混乱でした。
著者のデビュー作『ぼぎわんが、来る』は読書済み。ホラーとミステリの融合の面白さ、そして雰囲気も然ることながら読み易さが印象的でした。が、本書は同じ作者なのかと疑う程に文章が分らない。今この場に誰がいて何処で何をしているのか混乱が多い読書でした。その為、物語を楽しむ事ができませんでした。
霊能者や番組の参考として宜保愛子や上岡龍太郎など、芸能人の名前を挙げますが知らない人は余計な登場人物名ですし、ファミコンのゲームソフトの「くにおくん」など挙げる必要があるのかわからないノイズが多かったのも気になりました。横溝、京極、三津田…と、作家の名前を挙げて現実感を出す表現も違和感でした。

本書の評価は最後のネタをどう楽しむかに集中するのではないでしょうか。
初読はミステリと言えど、途中の被害者などの事件模様の印象は残らなかったです。
とはいえ最後のネタは面白かったですし、2度読みしたくなるのは間違いないので好みの問題でこの点数で。

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予言の島 (角川ホラー文庫)
澤村伊智予言の島 についてのレビュー
No.168: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

その日彼は死なずにすむか?の感想

タイムリープ。人生やり直しもの。
17歳の男子高校生の主人公が爆発事件に巻き込まれてしまう。死の直前の世界で、7年前に戻りそれから7年間で全ての"奇跡の欠片"を集める事が出来たら生き残れるというゲームが提示される流れ。

記憶を保ったまま10歳の小学生からやり直す作品ではありますが、俺つえぇ系の知識をひけらかす内容ではなく、子供心として、あの時ああしていれば良かった、勇気が足りなかった、という後悔を改善して行動に移す姿を表現した作品に感じました。

読後に感じた事なのですが、この本は著者の後悔や願望なのでは?と思いました。
外国からきた金髪の女の子、趣味が通じる女の子、近所の年上のお姉さん、その時々に正しい選択をした事で仲良くなっていくのですが、何となく心境というか結果の盛り上がりの雰囲気から著者の昔の後悔や願望を感じた次第です。タイムループや死の回避の話の影は薄く、女の子との日常の楽しさの方がよく描かれており、恋愛ものゲームのフラグ回収のような感覚も受けた次第です。著者あとがきにソフィアのモデルがいましたとあったので、子供の頃の気になった人を投影したのかなと感じます。

悪い印象などの不快感はないのでサラッと読めますが、物語よりも著者の願望を強く感じた印象で、好みとしてはこの点数で。

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その日彼は死なずにすむか? (ガガガ文庫)
小木君人その日彼は死なずにすむか? についてのレビュー